【トランプ米大統領が求めたのは大統領選で繰り出すカードのひとつ】

貿易対策に加えて中国のプレゼンス拡大を阻止しようとしているとアナリストが分析

米トランプ政権について複数のアナリストが、貿易分野への関心だけでなく外交関係で実績を作り出そうと試みていると受け止める。

貿易円滑化協定の発表のためにブラジルを訪問したアメリカ政府の代表団が、第5世代移動通信システム(5G)の周波数オークションにおける中国資本のファーウェイ(華為)のプレゼンスを阻止すべくブラジルに圧力をかける口実を生み出した。エスタード紙が複数のアナリストから意見を集めたところ、貿易分野への関心だけでなくアメリカの大統領選の投票直前というタイミングでドナルド・トランプ大統領が率いるアメリカ政府が外交関係に明るい話題作りに努めているという見方を示した。

5Gの周波数オークションでは中国系企業が参加するのに反対する態度を見せつつ、アメリカ側は、電話通信業界における「投資は何であれ」資金を提供することを厭わないと表明した。ブラジルを訪問した米当局者らの代表団は中国を非難し、ブラジルがその他の国の企業を選ぶことへの期待感を明確に示した。

ルーベンス・バルボーザ元駐米大使は、「アメリカ政府は議会の承認なく貿易円滑化のような交渉を進めることが禁じられているため、署名が交わされた今回の貿易円滑化がそのまま貿易協定につながるわけではなく、むしろ今回のイベントはトランプ大統領の外交政策の柱である反中国税に取り込むという考えの一環だ」と話す。

さらに同氏は、アメリカの代表団は今回のブラジル訪問をブラジルに対する融資と便宜を提供することで「周波数オークションから中国を排除するためにブラジルの面前にニンジンをぶら下げた」とコメントした。コンサルタントの同氏はブラジルにとってより懸命な道は、米大統領選の結果を待って5Gに関する判断を下すことだと話す。

同じく元大使で財務大臣を務めた経験もあるルーベンス・リクペロ氏は、アメリカとの二国間貿易の円滑化に関する対策の発表は、ブラジルが対米交渉でこれまで敗北してきただけだという印象を払拭するという点において、ジャイール・ボルソナロ大統領にとっても旨味のあるものだったと指摘する。「アメリカとの貿易交渉でブラジルは、同国から輸入するエタノールに対する非関税枠など、トランプ大統領を益する話題ばかりを提供してきた。今になって、貿易円滑化策が少し前進したが、これは世界貿易機関(WTO)の枠組みにおける合意がすでに想定していたものであり、新味があるものではない」と同氏は言う。

またリクペロ氏は、国家安全保障会議(NSC)メンバーのロバート・オブライエン氏が代表団に名を連ねるという珍しい状況を受け、今回の代表団の目的が5G技術の導入にあたってファーウェイを選択しないようブラジルに圧力をかける目的があったいう見方を強めるものだと話す。

オブライエン氏はブラジル国内の会合で、ブラジルがファーウェイの機器を選んだ場合、ブラジル政府やブラジル企業のデータが中国政府に読み取られる可能性があると指摘した。アルマンド・アルヴァレス・ペンテアード財団(Faap)のヴィニシウス・ロドリゲス・ヴィエイラ教授は、トランプ米大統領がアメリカの有権者、とりわけ新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを通じて増加した反中国意識の強い人たちから共感を得る実績を作ろうとしたのだと評価する。「同国政府は、ラテンアメリカ最大のマーケットであるブラジルに対して、反中国の十字軍として圧力をかけていることを明確に印象付けることを期待しているのだ」という。

この問題の不確定要素

米大統領選に関する世論調査でトランプ米大統領は民主党から立候補したジョー・バイデン候補の後塵を拝しており、11月3日の選挙でホワイトハウスから去る可能性がある。

ゼツリオ・バルガス財団(FGV)の外交MBAコーディネーター、オリヴァー・ストゥエンケル氏は、選挙を目前とした段階でトランプ米大統領との交渉には、わずか、あるいは何らの意味もないと受け止める。「最善の道は、待って、次の4年に大統領となる人物と交渉することだ」という。だがストゥエンケル氏は、民主党が選挙に勝利しても中国のプレゼンス拡大をアメリカが食い止めるという姿勢には大きな変化はないと予想する。

他方、国家電気通信庁(Anatel)の元総裁、フアレス・クアドロス氏は、世界の移動体通信ネットワーク市場でブラジルが第3位の市場規模を持つことを指摘しており、5Gを巡る駆け引きの舞台になるのは当然のことだが、その覇権争いは通常以上に政治的色彩を帯びることになると話す。「この種の競争に世界経済を牽引する経済国が割り込んでくるのは通常の状況ではない」という。同氏は米大統領選の結果を待って態度を固めることが賢明だとする一方で、ブラジルにおける5Gをどのようにするのか判断が遅れているのは欧州とウルグアイのような近隣諸国との兼ね合いもあると指摘した。

「ブラジルは、ただトランプ米大統領に明るい話題を提供しただけだった。これまでのところ、ブラジル側の進捗はわずかだ」と付け加えた。(2020年10月21日付けエスタード紙)