金曜日, 11月 26, 2021

論評【国内で直面する危機は「ブラジル製」だ】

問題を生じさせるという点でブラジル経済はまさに自家発電状態である。 政府が政府として機能せず寄る辺となるロードマップも与えられずに2022年のブラジル経済は、世界経済が減速しようがしまいが成長はわずかな水準にとどまりそうだ。高インフレとサプライ問題、生産チェーンに関連する部門で失われた秩序は、中国とアメリカ、その他のブラジルの貿易相手国に影響を与える。先進諸国が物価を抑制するために利上げすれば、この状況はさらに悪化しかねない。そうなればジャイール・ボルソナロ大統領とパウロ・ゲデス経済大臣はもうひとつ、情けないブラジルのパフォーマンスについて弁解する余地を確保できる。だが、このような話を真に受けるのは無知蒙昧の徒か並外れたお人好しの市民だけだ。いくつかの問題は国際的なものだろうが、ブラジルは既に、常軌を逸脱したインフレと、その他の新興国と比較しても極めて高い失業率、停滞した活動など、世界に異相をさらす存在なのだ。 ブラジル工業だけでなく農業も、薬剤などの原料や投入財の不足により被害を被っている。肥料は一層高価になり、自動車産業などいくつかの産業では、輸入するコンポーネント不足から生産を削減している。だが、このような国外の問題が存在するにもかかわらず、貿易黒字は極めて堅調に推移している。中国経済は活力を失い、第1四半期に年率換算で18.3%、続いて第2四半期には7.9%の成長を記録した後、第3四半期は4.9%にとどまった。だが農業関連産業の輸出は9月、数量ベースでは前年同月比-5.1%となるも単価が+27.6%を記録したおかげで、101億ドルという過去最高額を計上した。 その9月に中国は、ブラジルの農業関連産業品目で最大の輸入国という地位を維持した。中国の輸入額は、業界の輸出のおよそ3分の1となる32億7,000万レアルで、前年同月を42.8%上回った。9月は、ブラジルにとり主要な20か国の輸出先も輸入を拡大しており、農業関連産業の貿易収支は、88億5,000万ドルの黒字を計上した。 今のところ、ブラジルの貿易は輸出を堅調に維持しており、貿易収支の見通しも満足のいくものになると確実視されている。世界経済にはある種の冷却の兆候が見られはするが、国外市場は引き続きブラジル資本にとって魅力的であり続けている。 この動きには、複数の要因が絡んでいる。金融市場の専門家がしばしば推奨する収益の見込みと分散投資は、通常の状況で、極めて分かりやすい要因だ。だがブラジルの場合、国外へ資金を移転させる動機付けはそれだけではなく、政治的緊張と公会計の前途に対する不安からくる国内の不確実性が要素として存在する。これらの不確実性と懸念には、共和国大統領の態度とリスクだらけの選挙イヤーになるという見通しが根本に存在するのだと特定するのは容易なことだ。 世界経済に予想される減速はブラジルにいくばくかの問題を及ぼすだろうが、ブラジル経済の見通しは基本的に国内要因で趨勢が決まる。金融機関を対象に中銀が実施している経済動向調査「Focus」がまとめたデータによると市場は、国内総生産の成長予測を継続的に下方修正している。最新の予測では、2021年が+5.01%、2022年が+1.5%、2023年が+2.1%だ。反対に、2021年と2022年の2か年のインフレ率に対する見通しは、継続的に引き上げられており、2021年は+8.69%、2022年は+4.18%だ。 高インフレはこれからも、失業率が依然として高い状況下で既に不足気味の世帯収入を侵食し続けるだろう。物価上昇への対策として今後も中銀が政策金利の引き上げで対処するため、消費量の着実な回復は予想できない。Focusによると市場は、現時点で年利6.25%のこの金利が、2021年12月までに8.25%に達し、さらに2022年末には8.75%に至ると予想している。 不安感が払拭されない状態が続くことで、ドルは、国内通貨に対して過大な価値を維持して物価の上昇を助長し続けるだろう。従って、ブラジルのインフレ状況と世界のその他の国々で発生しているインフレの違いは、ブラジリアで湧き上がる不安感に影響された為替相場によって、その大部分を説明できる。経済成長に対する障害と同様、物価の混乱においても、ブラジルという国は問題を自家発電しているのだ。(2021年10月19日付けエスタード紙)

欧州の工業部門が中国の影響力拡大を懸念しメルコスールとの貿易協定を要求

近年では珍しい対応であるが、経済団体が自由貿易協定案の迅速な批准を要求している。 フランスなど一部の国が抵抗していることからしばらく見ることのなかった珍事として、欧州連合(EU)の加盟国に対して欧州の産業団体13団体が連名により、メルコスールとの自由貿易協定(FTA)に関する合意を早急に批准するよう強く求めるという事態が発生した。 今回の共同声明で産業諸団体は、両経済圏が交渉した最大規模で最も意欲的な貿易協定を前進させ、ネックを解消させる時が来たと表明。さらに、両経済圏の企業に対する優遇措置を伴う協定が、現在の不況と健康危機からの回復を助けると主張した。 さらに協定批准に失敗すれば、「相互の信頼を構築し、かつ、現代のより大きな課題に対処する上で、その手段がより限定的なものになる」と警鐘を鳴らした。その上で、批准されないことでブラジルとアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイは、環境規制と労働規制の基準が大幅に低い貿易パートナーとの関係を継続あるいは拡大することすら有り得ると例証した。 今回の意見表明は、有利な状況の中国によってEUでビジネスをさらに失うことへの欧州側の懸念の表明でもある。 アマゾン熱帯雨林の保護に対してメルコスール側に環境分野で追加のコミットメントを含めるよう強力な圧力がかかっている中、欧州の産業諸団体は、この協定には持続可能性に関する確固としたコミットメントが盛り込まれており、「ブラジルは長期的に協力関係となるパートナーであり孤立させるべき国ではない」と指摘した。 EUの行政を担う欧州委員会は、2021年の年初、環境に関する追加のコミットメントについてメルコスールと交渉するための提案をまとめると発表した。だが今のところ、いつ行われるのかだけでなく、本当にそれが提出されるのかも、何の兆候もない。実際のところ、加盟国間、欧州議会内で合意を批准する政治的条件が存在しないのだ。というのも欧州では、2022年4月に行われるフランスの大統領選挙前にメルコスールとの協定が前進することはないと受け止められている。 こうした事情から今回、欧州版全国工業連合会(CNI)であるビジネスヨーロッパと、建設機械の欧州建設機械委員会(CECE)、工作機械の欧州工作機械工業連盟(CECIMO)、自動車部品の欧州自動車部品工業会(CLEPA)、皮革品のヨーロッパ皮革産業連合会(COTANCE)、テクノロジー分野の欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIME)、乳製品の欧州酪農協会(EDA)、サービス業の欧州サービス会議(ESF)、蒸留酒産業のスピリッツヨーロッパ(Spirits Europe)、繊維・衣料品の欧州繊維産業連盟(EURATEX)、フットウェアの欧州靴工業協会(EFC)、小売及び卸売のユーロコマース(Eurocommerce)、玩具工業の欧州玩具工業協会(TIE)が共同で声明を発表したことは、驚きをもって受け止められた。 実際のところ、これらの団体は、基本合意から2周年を迎える6月、欧州の人々が時間とビジネスを無駄に失っていることを示す目的で、これを祝すことに決めた。協定によりメルコスールからの輸入が10.6%拡大すると同時に、EUは、ブラジルとアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイに対する輸出を52%引き上げる可能性があると訴えている。欧州の工業にとっても、欧州が輸出した財にメルコスールが課徴する輸入税率が引き下げられることで、年間40億ユーロを節約できるという。 これらの欧州の産業諸団体は、財及びサービスに限らず、知的財産権の保護、そして「パートナーシップを発展させ気候変動の緩和を支援し、双方が効率的な形でパリ協定を推進するという持続的な開発に関する準備をさらに進めていく」ことを含めて、通商が改善するものだと主張している。 また森林伐採または木材貿易に対する既存の規定の見直しのようなEU内の一方的な立法府の取り組みは、「EUに対する輸出が現在の森林伐採または土壌の荒廃に対して貢献しないという状況を強め確実にしてしまう」と主張している。 これまでのところ、協定に反対する声のほうが大きかった。だが今回の産業諸団体が主張するのは、もはや、両経済圏による協定の批准とコミットメントの実行を断固として進めるべきということだ。 一方のブラジルではCNIが、ブラジルがメルコスール=EU貿易協定の義務だけでなく「同様に環境及び労働に関する置く最適な合意と協定に基づくコミットメントについても」実行するために参画と準備を整えているというビジョンを示すべく小冊子を作成した。(2021年6月30日付けバロール紙)

グローバル・タックス

セルソ・ミンギ* 過去に例を見ない合意を通じて6月5日に先進7か国首脳会議(G7)で、フェイスブックとアマゾン、グーグル、アップルのような多国籍企業の巨人に対するグローバル・タックスを設立することが決定した。 この提案には、最も重要なポイントが2つある。こうした大企業の利益に対して15%を最低税率とする所得税を導入すること。そして、各国が、自国内でこれらの企業が財とサービスを販売して得た利益分に対して、法人の本社が国外にあったとしてもその税金を課徴可能とすることだ。 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック時期に失われた税収を補填するためだとか、あるいは、そうでなければ税負担のより公平な分配を保証するためだと一部の人は言うわけだが、そうした意見は内実を伴わないレトリックだ。この税金の承認プロセスが完了するのは、つまり最終的な確定に至るには各国の議会での可決が必要になるはずで、3年とはかからないだろうが、それまでにはパンデミックは終息しているだろう。100社強の企業の利益にわずか15%の税率で課税したところで、税負担の公平性の改善というものに大きな違いは生まれないだろう。早速行われた計算では、この追加の税金で欧州連合(EU)には580億ドル相当、アメリカには490億ドル相当の税収が発生するという(表を参照のこと)。単なる比較として例を挙げると、ジョー・バイデン大統領が立ち上げたインフラ及びクリーン・エネルギー分野への投資の新パッケージは、2兆3,000億ドルである。 今回の合意は、課税を統一する初めての試みであり、世界的に課税を調整する必要性が高まっていることを示している。それはまた、タックスヘイブンの影響力を取り除くために初めて真摯に共同で推進される取り組みだ。そして同様に、これまで課税の網をすり抜けていたデジタル取引を組み入れる第1歩でもある。 合意は、より広範囲なグループを形成する新興国、20か国・地域首脳会合(G20)の加盟国殻も賛同を求めていく。この方面での交渉は、7月にベニスで初会合が予定されている。この提案に反対がないとは誰も考えていない。むしろ反発があり、それも、強いものになるだろう。ただ、少なくとも今回の合意は、経済的に豊かな国が将来的に他国の鍋にスプーンを差し入れる先例になると解釈されるはずだ。 何はさておき、疑問は解消しておくべきだ。今のところ、どれほどの数のどのような企業がこの課税の対象になるのか、さらに今後、どのように他の多国籍企業にこの税金が課徴されるようになるのか、不明なままである。こうしたポイントの策定は、未確定の規定がこれから決められるという意味だ。第2に、企業に対してだけでなく国に対しても、違反をどのように扱う(処罰する)のかという点だ。 グローバル・タックスを導入する大きな理由のひとつが、税制戦争を抑止すること、言い換えると、特定の国に投資する傾向のある企業に恩恵を与える減税を阻止することである。こうした減税は、12.5%の法人所得税率を設定してビッグテックと小企業を呼び込んできたアイルランドの政策の柱である。発展途上国も同様に、今回の判断に満足しているようには思えない。これらの国々は、最低税率という体制が開発にインセンティブを与える政策に対して扉を閉ざすこととなり、これらの国々が世界経済の中で取り残されることにつながりかねないと主張している。 途上国のアナリストらは今回の取り組みについて、先進国がライオンの役回りをして肉にかみつき、貧しい国にはしゃぶり終わった骨だけを与えるものだと批判している。中国は意見を表明していないが、それでも同国はこの取り組みが同国の成長を抑制するという目的も含まれていると理解しているはずであり、同国を納得させるのは難しいだろう。 もうひとつ、多国籍企業が事業を展開している多く国にとってこの15%の税金が、財政赤字を埋め合わせるような十分な税収増につながらないという主張もある。アメリカは、税率を21%に設定すべく取り組んだ。だが15%で妥協した理由は、より高い税率では引き続きタックスヘイブンに魅力を与え続けるだけだと理解したからだ。またG7の首脳らは、今回の合意が単に最低税率を定めただけでありこれを上回る課徴が禁じられたわけではないという点を明確に強調した。 一部の多国籍企業の経営者は、今回の決定を支持したようだ。だがそこでの印象は、とりわけフランスなどで合意以前に計画されていた水準よりもG7の合意が少ない出血で済んだことを歓迎しているだけのようでもある。 新興国、あるいはより重要な中国とロシア、インドのような国がこの提案を受け入れなかった場合、G7が次にどのような方向に足を踏み出すのかはわからない。大国が、一方的に遠慮なく税金を課徴できるようになるのだろうか? *エスタード紙解説者(2021年6月13日付けエスタード紙)

多国籍企業に対する法人税の最低税率が導入されればブラジルは年間56億レアルの税収増に

ビッグテックを含む大企業に対する課税に関するG7の合意で、ブラジルの税収が拡大する可能性がある。 長年にわたって足踏みしてきたものの、多国籍企業に対して15%を最低税率とする法人税を課税することで先進7か国首脳会議(G7)が歴史的な合意に達したことで、国家間で争われている税制戦争のシナリオの変化が促されるだけでなく、ブラジルにとっては、9億ユーロ(55億8,000万レアル)の税収増を保証する見込みだ。この数字は、パリ経済学校内に本部を置く税務分野の独立研究機関、欧州連合(EU)税務観測所の研究者によってされたシミュレーションを基に算出され、発表された。 この研究では世界的な税金の導入に関して様々なシナリオを想定した。シミュレーションに基づくとアメリカは、さらに407億ユーロ、EUには483億ユーロの歳入増につながる。仮に税率が15%から25%に引き上げられれば、EUでは1,680億ユーロの税収増、アメリカは1,660億ユーロの税収増となる。他方、ブラジルも税収が74億ユーロ(約560億レアル)発生する。ブラジル政府は今のところ、G7(ドイツとカナダ、アメリカ、フランス、イタリア、日本、イギリス)の首脳が6月13日に署名した合意に関する公式の意思表明をしていない。 ブラジルは、この合意に関して協議する次回の20か国・地域首脳会合(G20)で、公認の立場を表明する見込みだ。 先週、連邦収税局の代表者は、企業利益をタックスヘイブンに移転することで発生する各国の「課税ベースの侵食」と呼ばれる問題や、いわゆるデジタル経済と呼ばれるものへの課税に対する解決策を模索している経済協力開発機構(OECD)の実務者協議に参加した。 この浸食は、大規模な多国籍企業が「利益」を低い税率の国に移転することで発生する。そのオペレーションは、単なる経理に過ぎない。こうした企業の手続きは、生産能力を高めることなく、税率が非常に低い税率で課税されるように利益を人為的に動かし、机上で行われる。実際面では、多国籍企業はタックスヘイブンに子会社を設立し、課税ベースの利益を全てそこで計上するように一連の会計行為を実施する。 ドナルド・トランプ大統領が政権担当時のアメリカは、この議論で対策に反対する態度をとってきた。だがジョー・バイデン大統領の登場で、アメリカは合意の導入を模索する協調的な立ち位置を取り始めた。 協定は2本の柱で構成されている。最初の柱は、アメリカが強い関心を持っているもので、多国籍企業に対する法人税率を少なくとも15%と定めること。2本目の柱は、欧州各国が関心をもっているもので、いわゆるデジタル経済と、テクノロジー分野の巨大企業(グーグルとアマゾン、フェイスブック、アップル)の無形サービス、例えばパーソナル・データ処理アルゴリズムやその他のデジタルサービスにどう課税するのかだ。 経済省応用経済研究院(Ipea)のエコノミスト、ロドリゴ・オライール氏は、「こうした特徴は利益をある所から別のところへ、その際に税金を一切支払うことなく移転するのを容易にする」と説明する。 「ビッグテック」が本社を置くアメリカは、これらの企業が利益を計上した利益について、サービスの発生地だけでなく目的地(サービスが提供された場所)でこれらの企業の利益の一部に課税することに合意した。これは欧州諸国の要求で、一部の国はG20で合意されるまで暫定的に課税している。なお、インドはこの考えに抵抗している国のひとつである。 対立構造の鎮静化 オライール氏は、今回の合意が国家間のは対立に歯止めをかける希望につながると受け止める。この国際情勢は、市役所が市税のサービス税(ISS)を舞台に大企業を誘致しようと競い合う状況と酷似している。ただ同氏は、「支払うべき税金を算出する課税ベースをより大きく控除するメカニズムが採用されることが有り得るため、より低い税率が税制戦争の終了を意味するわけではない」と話す。こうした対策は、様々な自治体で行われている。 それでも同氏は、今回の合意によりアメリカがG7に加盟するEUの4か国と理解を深めたことを意味しており、G20での合意に向けてより強力に推進されることになると受け止めている。 ゼツリオ・バルガス財団(FGV)の税務観測所のマノエル・ピーレス主任は、「G7のリーダーシップが反対派の勢いを削ぐ」と話す。同主任によると、合意前には各国が個別に解決を試みるよう圧力が掛かっていたが、これには常に報復の懸念があった。 今回の変化についてピーレス主任は、さらなる発展が可能なことを示唆していると受け止めている。多国籍企業に対して15%の最低税率でグローバル・タックスが課税されると同氏は説明した。例えばこの税金が導入された場合、ブラジルは自国に進出している多国籍企業への課税が可能になる。 国内の税率は、引き続き国内向けに設定される。「多国籍企業の場合、仮に当該企業が(タックスヘイブンなど)利益を計上した国で低い税率で課税されていた場合、発生国は、最低税率との差を課徴できる」とピーレス氏は言う。言い換えると、仮にブラジルの多国籍企業がタックスヘイブンで2%が課税されている場合、ブラジルは15%に達するまで、その差額を課徴できる。 ただし同主任によると、ブラジルのように法人所得税(IRPJ)の税率が高い(34%)国の場合、多国籍企業は今後もこの種のオペレーションを継続するインセンティブを持ち続けるだろうという。 テクノロジー分野で大企業が展開するデジタルサービスの場合、ブラジルはサービスの輸入と支払いの送金に課税するため、その影響の分析を慎重に行うべきだとオライール氏は言う。こうした事情からこれらの企業の大部分が、ブラジル国内に支社を設立している。より大きな効果を得るには、浸食につながる別の抜け穴を埋める必要があると同氏は受け止めている。またブラジルが仮にグローバル・タックスの導入を希望する場合、国内の所得税法を改正する必要がある。なお今回の国際的な合意の前進は、まさに国会が税制改革の一部を可決しようと取り組んでいるタイミングと重なった。(2021年6月14日付けエスタード紙)

GDPの錯覚

「この見通しの修正は、その大部分が、ある年から翌年に持ち越される上げ底効果を考慮したものである」 2021年第1四半期の驚くほどにポジティブなGDP成長率が発表された後、2021年GDPに対して+5.0%かそれ以上の成長を予想するアナリストが増えている。だがブラジル人は、自身の日々の生活の中で経済がこのペースで成長していると実感しているのだろうか? 金融機関を対象に中銀が実施している経済動向調査「Focus」によると、2021年のGDP成長率に対するアナリストの予測のコンセンサスは、過去数週間で改善してきた。2020年末時点で2021年GDP成長率に対する予測は+3.32%だった。これが直近のレポートでは、+3.96%に上昇している。 2021年のGDPがこれまで以上の成長率になるという予測が増えたことは偶然ではない。イタウ銀行とフィブラ銀行が、+5.0%と予想している。ゴールドマン・サックスは+5.5%の成長を予測。そしてバンク・オブ・アメリカの予測は+5.2%の成長。 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2021年第1四半期GDPは、アナリストの予測のコンセンサスとなっていた+0.70%を上回り、2020年第4四半期との比較で+1.2%を記録した。その発表の直前まで、複数のエコノミストが、緊急所得支援の終了やその他の理由から、1―3月期の経済をマイナス成長だと予想していた。だが経済活動は、予想以上に大きな回復力を示した。その上、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック第2波が経済に与えた打撃は、2020年よりも軽微だった。 2021年GDPに対する見直しは、労総市場の過熱や様々な業種が活況を呈しているといった経済活動の勢いという実質的な改善よりは、実際のところ、その大部分が計算上の影響、いわゆるキャリー効果あるいは統計上の置き土産と呼ばれるものに由来する。 これが発生する理由は、ブラジルにおけるGDP統計は、前年の四半期の平均に対してその年の4四半期の平均を考慮して算出するためである。その年の第1四半期に非常に大きな成長を達成した時はいつも、ベース効果によって、残りの3四半期の経済が横ばいだったとしても年間の平均はより高い数字が出るのだ。それは逆もまたしかりで、マイナス成長の場合も大きくなる。 2020年のGDP成長率は-4.10%だったが、これにより既に、2021年のGDP成長率に対して+3.60ポイント分の統計上のお置き土産を残している。これはすなわち、直近のFocusで2021年のGDP成長率に対するアナリストの予測のコンセンサスが、実際にはゼロをやや上回る成長率だということを意味する。 マウアー・キャピタルのルイス・フェリペ・ラウダリ投資担当取締役は、「経済が回復しているという認識は、人々の肌感覚としては実際にありはするだろうが、年末年始に+3.0%から+3.5%を見込んでいたものが今では+5.0%だと言われてもそこに大きな差は見ないだろう」と話す。つまり、「実際のところこれは、成長が加速しているよりも、計算上の効果によるものなのだ」。 同取締役によると、2021年3月末を期日とする浮動四半期の失業率は14.7%だったが、これを歴史的な水準の労働力人口を考慮して調整するならば、実際には21%に達していたことになるという。「これほどの高い失業率で、それほどの高い経済効果が得られると考えられるだろうか?」と同取締役は主張する。「パンデミックによって多数の企業が倒産したことは言うに及ばない。言い換えると、人々の肌感覚は、数字で見る以上にはるかに脆弱なのだ」という。 ラウダリ取締役は、実質給与支払総額がより緩やかなペースで回復すると受け止めている。その上、深刻な不況が発生した後は一般的に、経済で生産性の上昇が見られると話す。「企業は、より少ない労働力で不況前と同じ数量の生産が可能だということに気づく。その結果、実際には、経済の回復期の失業率は不況時を上回るのだ」と指摘した。 しかしながら、+5.0%を大幅に下回るペースで経済が回っているというのが人々の肌感覚だとしても、たとえ統計上の効果が原因だとしても今回のような大きな成長という結果が出たことは、ポジティブな影響を与えるものである。すなわち、財界関係者の景気に対する信頼感を改善し、実業家の投資判断を後押しし、消費者が財布のひもを緩めることにつながるのだ。 2021年のGDP成長をブーストする統計上の置き土産というコインの裏側は、2022年に計算上、比較対象となる基準がかさ上げされていることから来る負の影響である。このことで様々なエコノミストが、2022年の経済成長の見通しを引き下げたのだ。 ファビオ・アルヴェス エスタード紙コラムニスト (2021年6月2日付けエスタード紙)

第1四半期GDPの発表を受け市場では2021年に最大で+5.5%の成長を予測

生産活動   農畜産物と鉱産物の輸出が牽引してブラジル経済が2021年1―3月に前期比+1.2%の成長を達成。ただしパンデミックの第3波と電力不足が依然として懸念材料。 2021年第1四半期に国内総生産(GDP:当該期間に経済活動によって生み出されたすべての価値)は、農業と鉱業などの輸出が後押しして2020年第4四半期との比較で+1.2%の成長を達成した。ブラジル地理統計院(IBGE)が6月1日に発表したもので、IBGEによると+0.7%前後だった市場の予想を上回るもので、今回の結果を受けて一部の金融機関は2021年に最大で年間+5.5%の成長も有り得ると見通しを上方修正させた。とは言え、国内で新型コロナウイルス(COVID-19)感染の第3波が発生しかねないことと電力不足に陥る可能性がある点は、経済活動に対する最大のリスクだと複数のアナリストが指摘している。   2021年1―3月の成長を受けてブラジルのGDPは、パンデミックが発生する前の2019年第4四半期の水準まで持ち直した。だがブラジル経済がピークを記録した2014年第1四半期との比較では、この水準を依然として3.1%下回っている。   今回の結果について連邦政府は経済政策の正しさを裏付ける指標のひとつと位置付けており、パウロ・ゲデス経済大臣は、予算で凍結していた財源の開放にも言及した。一方、証券取引市場では6月1日にサンパウロ平均株価指数(Ibovespa)が3日連続で最高値を更新し、企業が収入を拡大させるとの期待感から12万8,200ポイントを記録した。   エスタード紙のオンライン・サービス「ブロードキャスト」が金融機関22社から集めた予測でも、2021年のGDPに対する見通しは改善している。公式発表前の段階で平均+4.2%だった予測は、発表後には+5.0%に上昇した。現時点における予測のばらつきを見ると、下は+3.3%で、上は+5.5%。最も楽観的な見通しを示している金融機関のグループには、ゴールドマン・サックスとBNPパリバが含まれる。更にブラデスコ銀行とイタウ・ウニバンコ銀行がそれぞれ、+4.8%と+5.0%と予想している。   このように高い成長率を達成するシナリオが現実化するには、依然として、パンデミックの感染状況の推移といった問題から労働市場と所得が活況を取り戻せるかどうかといったリスクまで前途に横たわっている。食品の高インフレと高い失業率、連邦政府による緊急所得支援の不在(4月になって支払いを再開)といった要因が影響して2j021年第1四半期の民間最終消費支出は前期比-0.1%とわずかなマイナス、実質的に横ばいだった。   しかも水不足は、電力の供給不安だけでなく電気料金への適用が見込まれる値上げを原因とするインフレによって、経済成長への脅威となる。ブラジル国内でクレディ・スイスのチーフエコノミストを務めるソランジェ・スロー氏は、「パンデミックの悪化だけでなく水不足も、コストの移転や補助により、歳出拡大を迫るために財政(のバランス)にとって脅威になる」と話す。   農業   第1四半期の経済成長を牽引したのが農業で、当期、農業は大豆の豊作などで前期比+5.7%という成長を見た。また工業も資源業界が+3.2%を記録したことに後押しされて当期は+0.7%だった。支出面からは、石油・ガス産業に対する課税基準の変更を受けて人為的にこの分野が押し上げられたという側面はあるものの、総固定資本形成(GFCF)が+4.6%増を記録して経済成長を牽引した。   パンデミックの影響をより強く受けたサービス業は、生産から見たGDPの柱であるが、当期は前期比+0.4%にとどまり、回復の足取りが依然として緩やかなことを示した。サービス業は、2020年第1四半期と比較した場合は-0.8%だった。   ABCブラジル銀行のエコノミスト、ダニエル・シャビエル氏は「農業は当期も絶好調で工業とサービス業は再適応に取り組んでいるところだ。第2四半期に目を向けると、先行指標は、ほぼ全て高い確度でいずれも好調だ。そしてモビリティーも地域ごとに実施されたロックダウンの影響が色濃く表れるということはなかった」と話す。   LCAコンスルトーレスはレポートの中で、パンデミックが発生した当初は、接触に対する制限が製造ラインや販売、サービスが過去に例を見ないほど停止して経済活動を崩壊させたと指摘。それから数か月が経過する中で、経済指標に現れるモビリティー低下の影響は縮小していったと分析する。そして「技術の集中的な活用と労働における(対面方式とオンライン方式の)ハイブリッド・システムの導入、eコマースの拡大」により「経済がパンデミックに適応した」ことを示唆した。(2021年6月2日付けエスタード紙)   再適応 「農業は今第1四半期に絶好調の状態が続いたが、工業とサービス業は再適応に取り組んでいる」 ダニエル・シャビエル氏/ABCブラジル銀行エコノミスト

「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて

東アジアの安全保障状況は不確実であり、国際社会は協力して航行の自由と法の支配を確保しなければならない。 3年間のサンパウロ総領事としての勤務を終えて帰国した野口泰氏は、2020年8月から防衛省防衛政策局次長に就任。ブラジル勤務時から東アジアの治安状況は不確かであったが、そこで目の当たりにしたのは、我が国が置かれている厳しさと不確実性を増す安全保障環境であった。 北朝鮮は、核・ミサイル開発を継続しており、2020年10月の軍事パレードで新型ICBMやSLBMの可能性が高い弾道ミサイルを披露している、また、国際法との整合性の観点から問題がある規定を含む中国海警法の下で、中国海警船が、我が国南西部にある尖閣諸島周辺の領海への侵入を繰り返すとともに、南シナ海では、中国による軍事拠点化が進められるなど、力による一方的な現状変更の試みが行われている。また、こうした懸念に加え、サイバー空間や宇宙においても懸念すべき状況が確認されている。約20万人の日系ブラジル人が日本に住んでいることもあり、ブラジルも日本周辺の安全保障環境には多大な関心を有すると承知している。 こうした状況のもと、我が国は、自国の防衛力の強化、日本の唯一の同盟国である米国との防衛協力強化、その他の諸国との安全保障・防衛協力強化の方針に基づき、我が国の安全を確保することとしている。本稿では、この政策の第3の側面である日本の対外防衛協力について詳しく述べたい。 インド太平洋地域は、世界人口の半数以上を養う世界の活力の中核であり、この地域の安定的で自律的な発展を実現することは世界の安定と繁栄にとって不可欠である。この方針のもと、防衛省が重視しているのが、2016年8月に安倍総理(当時)より提唱された「自由で開かれたインド太平洋」ビジョンである。①法の支配、航行の自由などの普及・定着、②経済的繁栄の追求、③平和と安定の確保をその内実としている。(2021年4月5日付けVeja Online紙記事翻訳)

全社員を対象とした在宅勤務など企業が急進的にリモートワークを推進

不確実な時代における経費の削減を視野に企業が、完全なリモートワーク・モデルのテストを推進している。 税務コンサルティング会社のラクロウが新しい事務所に移転したのは、昨年の灰の水曜日、2020年2月26日のことだった。1月に賃貸契約をまとめて手早くリフォームを行い、同社の事務所は300㎡から570㎡に拡大した。その3週間後にロックダウンが実施され、リモートワークの経験もなく、またその計画もなかったラクロウは、在宅勤務のうねりに「放り込まれた」のだった。 新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの中で連邦政府が租税の納付期日を変更したことを受け、同社は、需要に対応するため従業員数を引き上げる必要に迫られた。この結果、同社の従業員数は2020年3月の68人から、2021年1月には100人に達した。一方、サンパウロ市内ブリガデイロ・ファリア・リマ大通りの同社オフィスは、誰も出勤しない状況が続いていた。結局、「夢のオフィス」は放棄されることになった。 ラクロウの経営パートナー、フラーヴィオ・ロペス・デ・アルメイダ氏は、「当社は内部留保を確保するため、不動産を返却することに決めた」と話す。「賃貸料は当時、当社の支出の20%に相当した。そして現在、そのコストはゼロになった」という。同コンサルティング会社は、ワクチン接種が行われた後、将来的に新たな事務所を賃貸する可能性については否定しない。だがそれは、同社のニュー・リアリティー(新しい現実)に即して推進される。言い換えると、以前よりも非常に小規模になるということだ。 同じ道を選んだもうひとつの企業が、テクノロジー系スタートアップのブルーで、使用していた事務所を完全に解約して賃貸コストをゼロにした。ブルーの共同設立者、ルイス・マリーニョ氏は、「我々は自問した。果たして、このモデルで機能するだろうか?と。そして答えは、イエスだった。むしろ、その方が良い可能性すらあった」と話す。マリーニョ氏は事務所を閉鎖する判断、それも恒久的なものになると同氏が考える判断を下したことに対し、現在400人いる従業員の反応は、一時的にも2020年内に事務所業務を再開して欲しいとする「要求はゼロだった」という。 折衷対応の企業も 技術系企業のFSセキュリティーは、軸足を等分に置き続ける判断を下した。125人の従業員(2020年の年明け時点と同人数)を、より小さなスペースに収容可能なことに気づいたのだ。このため、事務所スペースは50%縮小した。同社のカルロス・アルベルト・ランディン社長は、「在宅勤務で会社の業務を回していることに困難はなかった。ただ、今のところは問題解決に向けたアイデアを煮詰める作業には物理的なスペースを確保していることが重要だと確信している。そのプロセスは、対面式で進めればより豊かな成果につながるのだ」という。(2021年2月15日付けエスタード紙) 

事務所の賃貸解約の「波」が押し寄せサンパウロ市内の空きオフィスが50%増加

変化する企業の日常 在宅勤務に対して従業員から好評価を得ていることに勇気づけられ、企業は、事務所の規模を3分の1削減する、あるいは事務所そのものを閉鎖する判断を下している。その結果、2020年第1四半期に13.6%だった事務所用不動産の空室率が現在では20%以上に達している。新型コロナウイルス(COVID-19)の国内感染が確認されるや国内の多くの企業が在宅勤務を導入したことで、2020年に事務所用不動産の世界では、オフィスビルの将来に関して新たな疑問が投げかけられるようになった。パンデミックから12か月が経過した2021年の年初、この疑問に対する答えが明確になりつつある。事務所の賃貸契約を解約する波が既に押し寄せており、不動産業界の複数の専門家が、年間を通じてこの状況が更に悪化すると指摘している。 企業側のこうした動きは、この市場のデータから直接的に見て取れる。法人向けの不動産を専門とするアメリカ企業、JLLによると、オフィスビルで即時賃貸可能な物件の比率が、2020年第1四半期から第4四半期にかけて、50%増加したという。つまり、パンデミックが発生する以前の1―3月には全体の13.6%だったオフィスビルの空室率が、第4四半期には20%以上に上昇したのだ。 最新のレポートでJLL自身が、2021年には在宅勤務の動きが更に拡大する上に国内不動産市場のバロメーターとされるサンパウロ市内でオフィスビルが新たにオープンすることから、2021年に法人向けに提供される不動産は20万㎡以上の増加となって、年間を通じて状況が悪化していくと警鐘を鳴らした。国内諸州の州都では、より深刻な状況に見舞われている都市も存在する。それがリオデジャネイロ市で、同市ではオフィスビルの空室率が40%に達している。 事務所の賃貸契約を解約する「波」は、広範囲に押し寄せている。伝統的に事務所を大規模に賃貸してきた企業、例えばラタン航空のような航空会社から、イタウ・ウニバンコ銀行とブラジル銀行のような銀行にとどまらず、中堅企業にまで連鎖している。そこには、ひとつの明確な局面が見て取れる。すなわち、ポスト・パンデミックにおける専門職の日常には、在宅勤務という要素が強力に組み込まれるということだ。 企業からの聞き取りに基づいてJLLのロベルト・パティーニョ、JLL取締役は、平均すると企業の法人としての労働力の3分の1が、在宅勤務に軸足を置いた労働形態になると話す。顧客の応接に強く依存しない業種では、縮小される物理的な事務所スペースはより徹底したものになる。過去数週間、エスタード紙は、事務所規模を40%、あるいは50%、中には100%削減した企業に取材を重ねてきた。 パティーニョ取締役によると企業は、事務所の賃貸契約を打ち切るだけでなく、規模の見直しも進めている。間もなく、有名企業の大規模な入居に営業を集中してきたオフィスビルのオーナーらは、戦略の転換を迫られることになる。その理由は、スタッフの多くが在宅勤務となり、事務所スペースに対する需要が次第に縮小し、より柔軟な労働スペースに対する需要が拡大すると見られるためだ。これは、ウィワーク(Wework)のような企業が提供する共有オフィス・モデルだけの話に限らないのだ。 事務所スペースの見直しに着手した企業の幾つかは、各労働者に作業スペースを割り当てるという旧来の事務所構造を改革し、共有スペースに変更している。例えば、1,100人の従業員を抱えるBMG銀行がこのケースに相当する。アレシャンドレ・ウィナンディ組織改革担当取締役によると、サンパウロ市内でも賃貸料が高額な地域、イタイン・ビビ区のプレジデンテ・ジュセリーノ・クビシェキ大通りの事務所では、賃貸面積を33%削減した。 同銀行は今、フロアのひとつを対面/オンラインのハイブリッド式会議室と、電話応対ブース、行員の私物保管ロッカーに改装した。ロッカーは個人に割り振らず、終業時に私物を全て持ち出す必要がある。ウィナンディ取締役によると事務所のリフォームは、在宅勤務に関して94%の行員が満足しているという調査結果を受けて断行されたもので、5月には完了する予定。 賃貸コストの削減 企業内教育のコンサルティング会社で350人の従業員を持つアフェロラボは、各地の事務所の大部分が過去のものとなった。リオデジャネイロ市とサンパウロ市、ジュイス・デ・フォーラ市(ミナス・ジェライス州)に事務所とスタッフを抱えていた同社は、パンデミックが発生する以前から週1日の在宅勤務を認め、相対的にホーム・オフィスへの取り組みが進んでいた。「ただ、『コマンド・コントロール』モードでスタッフを統括する管理職からは、一定の抵抗もあった」と同社のレオナルド・バル社長は言う。 しかしパンデミックにより企業の多くが企業内教育に対するコストを削減したことで取引が減少し、在宅勤務はアフェロラボにとって有意義な組織の在り方と位置付けられるようになっただけでなく、解雇を「思いとどまらせる」ためにコストを削減するオプションのひとつとして浮上した。結果として、リオデジャネイロ市のオフィスを閉鎖し、サンパウロ市のオフィスを半分の規模に縮小した。これによる経済効果は? 果たして、およそ120万レアルとなった。(2021年2月15日付けエスタード紙)

2020年にGDP比10%に達する財政赤字

2014年から財政赤字が続いてきたブラジルだが、財政状況が弱り切っている状況下で新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが直撃し、支援策に資金を提供するために国庫の解放を余儀なくされた。その結果は、7,431億レアルという過去最悪の赤字である。  パンデミックは、2020年のブラジルの公会計に過去最悪の赤字をもたらし、最終的に我が国の歳入が歳出を上回る状態まで復帰するには2027年を待たなければならないという、大きな傷を残した。財政赤字は、ブラジル経済が生み出した富の総額として計測される国内総生産(GDP)の10%に相当する7,431億レアルだった。2014年から財政赤字が続いてきたブラジルは、財政状況が弱り切っているタイミングでパンデミックの直撃を受け、COVID-19が引き起こしたパンデミック禍で身を守る術のない企業と国民を支援するため、国庫の開放を余儀なくされた。政府総債務残高はGDP比90%まで急上昇し、これまで年を追いながら先送りされてきた黒字化は、さらに遠のいた。連邦政府の経済スタッフは、公共支出の削減を支援して公会計の改善の足取りを加速させる財政改革を弁護する主張を強めた。 国庫管理局のブルーノ・フンシャル局長は、「歳出の効率を改善してGDPに占める歳入の比率を改善する改革を推進して前進していくかどうかは、我々次第だ。税制改革と行政改革が歳出入の方向性に影響し、より早期の黒字化達成を可能性にする」と話す。 さらなる悪化もあり得た財政赤字 こうした状況であるが、2020年の財政赤字はさらなる悪化も有り得た。この赤字は、8,000億レアルの壁を突破すると予想されていたのだ。だが、COVID-19対策費の一部が2021年に繰り延べられたほか、社会保障費と、公務員への給与と賞与、失業保険に関連した支出が2020年は想定を下回ったこともあり、国庫管理局を助けた。 投資を含めた裁量的経費は、想定を76億レアル下回った。社会保障費(70億レアル)と、賞与及び失業保険(45億レアル)、人件費(32億レアル)でも支出が想定を下回った。社会保障サービス(INSS)の赤字は、11月の時点で2,682億レアルと予想されていたが、最終的に、年末時点で2,592億レアルに落ち着き、その差額は91億レアルだった。 こうした状況を踏まえて連邦政府は、2021年に歳出上限規定の履行を助けると期待される、これらの支出を見直すことになる。歳出上限規定はインフレ率以上に歳出が肥大しないように制限をかけるもので、義務的経費の増大と国会の思惑という圧力に強くさらされている。             「税制改革と行政改革が歳出入に影響し、より早期の黒字化達成を可能性にする」(国庫管理局のブルーノ・フンシャル局長) 国庫管理局によると、機械の調達費と投資を含めた裁量的経費は、2021年に「2020年の実績額に近い規模」になるはずだという。2020年が1,082億レアルだっただけに、財政への打撃を軽減する要因のひとつと言って差し支えないものになる。2021年の裁量的経費に関する最新の予測は、この中でおよそ830億レアを経費と投資に見込んむというもので、楽観性に非常に乏しいものだった。 エスタード紙の既報のように、連邦政府は既に、社会保障費及び人件費を引き下げるよう見直し、その結果、歳出の引き上げ圧力を緩和できる余地を生み出せると期待している。こうした歳出肥大への圧力のひとつは、最低賃金の調整に使用されるインフレ率、全国消費者物価指数(INPC)の昂進である。2021年予算では1,067レアルと計画された最低賃金だが、最終的には、これを大きく上回る1,100レアルに定められたのだ。(2021年1月29日付けエスタード紙)

急速かつ激しく崩壊する工業

サンパウロ大学(USP)イノベーション観測センターのコーディネーターがブラジルの脱工業化について、早すぎるタイミングで、かつ急速に、業界が労働者に再研修を施す余裕を持てないままま進んでいると話す。 サンパウロ大学(USP)イノベーション観測センターのコーディネーター、グラウコ・アルビックス氏は、ブラジル国内の脱工業化が早すぎるタイミングで、かつ急速に進んでおり、これが企業のイノベーションと再研修による新たな技能の習得を難しくしていると話す。同氏によるとブラジルでは、あらゆる人を新技術のウェーブに乗せるべく「実力行使を伴うキャンペーン」を実施していてしかるべきだったという。GDPに生じた空白地帯をサービス業が埋め合わせる形で勢力を拡大したとしても、「所得のピラミッドにおいて中間層と下部層が占めるシェアが急激に減少するだろう」と同氏は指摘した。 【エスタード紙】脱工業化の新しいウェーブがブラジルに押し寄せているのでしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】相当以前から、雇用だけでなくGDPにおける比重という観点でも、世界的に工業への依存を縮小させるという一般的な動きがあった。問題は、発展途上国においてはこの縮小の動きが加速しているという点だ。「中所得国の罠」を克服できずにいるのが、これらの国々だ。成長した国々は基本的な足場を獲得はするが、それ以上に前進できず、道半ばで足踏みする。 【エスタード紙】それが、ブラジルの凋落なのでしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】ブラジルは、エコノミストが「早すぎる脱工業化」と特徴づけた状況にあり、しかもそれがより急速かつ激しい形で進んでいる。ヨーロッパとアメリカは、製造業をサービス業に転換するのに長い時間をかけた。だがブラジルでは、脱工業化が急速に、それも再研修して新たな技能を身に着けるのに適した条件もないまま、機能不全の経済を生み出しているのだ。企業と労働者の一部は時流を受け止めているが、残りはそうではない。従ってハイブリッドな状況であり、それが製造コストに現れている。私が見るところそれは、実業家が回収できない本当のブラジル・コストなのだ。実業家らは税金問題とインフラ問題について話すばかりだが、この機能不全は、競争力に大きな影響を与えているばかりか先端産業が存在しないためにそのコストがブラジルの足手まといになっているのだ。 ◆中所得国の罠 「発展途上国において、(工業の)凋落は非常に加速している。これらの国々は、『中所得国の罠』と呼ばれる問題を克服できずにいる。成長することで各国は基本的な足場を獲得はするが、それ以上に前進できず、道半ばで足踏みするのだ」。 【エスタード紙】今回フォードのケースはこの脱工業化プロセスの背中を押すものでしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】今回の動きは、3つの点で説明できる特異な状況に立たされている自動車産業に対し、非常に強く影響するものだ。第1点は、石油に軸足を置く産業の著しい凋落だ。社会と、さらに企業の一部でも、石油の消費量を削減せざるを得ない行動の変化がある。これはブラジルに大きな影響を及ぼす。なぜなら、岩塩層下の石油資源に対する期待が、当初に想定されていた水準を下回ることになったからだ。第2点は、持続的で包括的な取り組みに関する議論で、これは、産業がその代替となる解決策を見つけ出せていない。そして第3点は、導入が困難だという大きな課題を抱える、工業を侵食する新技術の問題だ。一方には、伝統的な産業と一切関係のない業界でチャンスを切り開いている技術も存在する。だが、フォードと同じく特異な状況に置かれている他の自動車メーカーに関して言えば、国内市場は大きく、またそれが切り札の1枚でもあることから、雪崩を打ってブラジルから撤退するという影響を与えると私は考えていない。 【エスタード紙】工業において技術の変化がどのような重みを持つのでしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】あらゆる工業分野で企業にポジショニングの見直しを求める技術が誕生しており、いずれの業界でも生産と管理、マーケティングを進める手法には問題が提起されている。だが、どのような影響が出ているのかは業界ごとに異なる。 【エスタード紙】新しい産業はどのような姿になるのでしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】世界中で想定されていて、またブラジルにおいても同様に予想されている方向性としては、GDPに占める工業の比重が縮小するというもので、かつその比重はさらに縮小し、コンパクトで、より革新的で雇用もわずかという、国にとっては悲観的なものだ。だが経済の刺激という観点からは、引き続き重要な役割を担うことになる。工業は自力で今一度、産業革命を起こさなければならないが、それは大きな困難を伴う。 【エスタード紙】どのような形なら可能でしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】誰もが全ての水準で新技術のウェーブに乗るため、実力行使を伴うキャンペーンを進めるべきだ。産業の近代化と新技術の習得促進に対する非常な努力が求められる。国際協力プログラムを推進することで、このプロセスがより先を行く国々から学び、技術の習得を動機づけし、企業が大学にアクセスするのを容易にできる。そのインセンティブの一部では、費用の負担を求められるとしても、それ以外はそうならない。 【エスタード紙】工業が空洞化した部分をサービス業が埋め合わせるのでしょうか? 【グラウコ・アルビックス氏】それは国外で想定されている筋書きだ。 【エスタード紙】しかしサービス業の雇用は、一部の工業で求められるような高い技能を必要とするものではありません。 【グラウコ・アルビックス氏】一部はそうだろう。まさに、シリコンバレーで起きているようなテクノロジーに関係したものは。しかし雇用のピラミッドにおける中間層と下部層の所得の比率は、劇的に縮小するだろう。我々が住まうのは、労働市場の格差が次第に広がるというブラジルだ。それは解決するのが困難な、経済の構造的な問題だ。それは教育制度と職業訓練を通じて雇用の機会を提供して解決に向け取り組むことはできても、それでこれらの人たちがより良い職を見つけ出せるという保証はない。アメリカとドイツ、日本のような国でさえ、平均的な労働者の所得は下がっている。(2021年1月17日付けエスタード紙)

フォードの撤退はこのところの脱工業化の2波

CNIの経済問題担当理事によると、現在の動向は2014年のリセッションで見られたのと同じ足取りをたどっている。 フォードがブラジルから撤退するという今回の発表、さらに、それ以前にも数年前から冶金業界や石油化学業界など他業種が利用する投入財の生産チェーンにいる企業が同様にブラジルから撤退する判断を下したことに関して、全国工業連合会(CNI)のレナット・ダ・フォンセッカ経済問題担当理事は、2014年の前回のリセッションで始まった脱工業化の第2波だと受け止めている。同理事によると、国内に多国籍企業を引き留める方策は、税制優遇政策の導入ではないという。問題の解決策は、税制改革と、エネルギー分野と輸出向けのインフラに対する徹底した投資を通じて導き出されるものだ。 日本のソニーは、アマゾナス州マナウス市の工場で2021年3月末をもって製造を終了すると2020年9月に発表し、同様にブラジル国内製造から撤退すると判断した。同じく日本のミツトヨも、2020年10月にサンパウロ州スザノ市の計測機器工場を閉鎖した。一方、スイス資本の製薬グループ、ロッシュは、2024年までに医薬品の生産を終了すると発表済みだ。 「本社の判断基準は常に、より大きな利益を生み出すはずの国を探し出すことだ。ブラジルは、法的安定性に対して高いコストを要求する国だ。ブラジルは、離陸することがない。成長するが早いか失速する国だ。その結果、ブラジルの国内需要ですら、長期的には彼らをここに繋ぎとめておくことができないのだ」とフォンセッカ氏は状況を分析する。 輸出 CNIのフォンセッカ氏によれば、ブラジルは5年間で2度のリセッションを経験し、その結果として国内市場が活力を失い、企業は問題に対処するための余力を保てず輸出障壁が一層高くなった。「ブラジルで事業を展開する企業には輸出が必要だ。それができないなら、投資を回収し、輸入により国内市場に対処することになる」と指摘。さらに、「ブラジルは大きな貿易の流れから遠く離れた状況にあり、グローバルな生産チェーンに参加するのに必要な機敏さを備えていなかった」という。 フォンセッカ氏は加えて、過去のリセッションにおいて冶金業界、中でもアルミニウム業界、さらに石油化学業界が、エネルギーとガスの価格が高いことと官公庁の煩雑な手続きを考慮すると国内生産が高コストになっていると主張、これを理由にブラジルから撤退したことに、改めて言及した。 サンパウロ州に限定しても、2015年に製造業では4,451か所の工場が閉鎖された。2016年の年明けに、金属工業では、イートン、マクシオン、ランドンが、同じ週にいずれもサンパウロ州グァルーリョス市の工場を閉鎖すると発表した。その年の自動車部品工場の連鎖的な閉鎖は、過去数か月に自動車業界の発表を受けエコーとなって反響している。 その上で同氏は、「諸外国との競争が激しくなっている。過去数年でも、資源業界と造船業界向けの設備メーカー、アルミニウム業界、石油化学業界、繊維業界で次々と工場を閉鎖する動きが確認されてきた。自動車業界はまだ、ラテンアメリカ向けに輸出するというアドバンテージを持っていたが、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでその市場も多くが縮小した」と説明した。 また同氏は、多国籍企業の経営を繋ぎとめるための解決策は税制上の優遇措置を付与することではなく、むしろ、税制改革と、エネルギー分野及び輸出向けのインフラ分野への投資だと強調した。 最後に、「税制改革は、より長大な生産チェーンを持つ業界に貢献する。その生産チェーンの起点、例えば資源業界と農畜産業界は、競争力を備えている。他方、最先端工業はより多くの雇用を創出し、経済的に他業種を牽引していく力を持つ」と指摘した。(2021年1月17日付けエスタード紙) 

過去6年に平均で1日に17か所の工場が閉鎖

過去6年に平均で1日に17か所の工場が閉鎖 フォードがブラジル国内生産から撤退すると判断したことは、脱産業化に向かうプロセスの明確な証拠であり、改革の必要性を浮き彫りにした。2015年から2020年にかけて国内では、3万6,600か所の工場が閉鎖した。 先週(1月第3週)、ブラジルで100年の歳月を重ねたフォードが国内工場を閉鎖する決定を下したと発表したことで、国内では脱工業化プロセスが進行中で、しかもその状況が悪化しているのだと証明した。ブラジルがリセッションに足を踏み入れた2014年以来、すなわち6年前から一貫してブラジルでは国内の工場数が減少している。2020年には、5,500か所の工場が、操業を停止した。全体で見れば、2015年から2020年にかけて、3万6,600か所の工場が姿を消した。これはすなわち、1日にほぼ17か所に相当する工場が息の根を止められているということだ。全国財・サービス・観光・商業連合(CNC)が独自に集計したデータを、エスタード紙に対して独占的に提供して明らかになった。 2002年に始まったCNCの集計によると、工業以外の産業が勢いを増したことから工業は、国内経済全体に占める比重を縮小しつつも2014年まで工場数を増加させてきた。その結果、6年前には国内の工場数が38万4,700か所を数えた。ところが2020年末になると、これが34万8,100か所に減少したという推計結果が出た。フォードが工場閉鎖を発表する少し前、別の多国籍企業も国内工場を閉鎖すると発表している。すなわち、ソニーと、同じく自動車メーカーのメルセデス・ベンツだ。 CNC経済部のエコノミスト、ファビオ・ベンテス氏は、「脱工業化プロセスは、(国産品を国外で値上げし国内では輸入品の値下げを後押しする方向に国内通貨の為替レートを誘導した)レアル計画の始まりと同時に発生した。ブラジル・コストに加えて、最近では生産性の低下と工業団地の一部で近代化が見送られて脱工業化プロセスに拍車をかけている」と説明する。その上で、「このところのレアル安は農業部門と資源業界を助け、貿易黒字の追い風になった。ただ、これらの業界と違って工業部門に対するプラス効果は即時的なものではないのだ」と指摘した。 ブラジルの国内総生産(GDP)に占める製造業のシェアについてベンテス氏は、2020年に11.2%まで低下すると推算する。これは、1946年に計測が始まって以降で最低となる。 CNCの調査は、2つのデータベースを基にしている。ひとつは、現在は経済省が管轄して実施する社会情報年次報告書(RAIS)である。もうひとつは、ブラジル地理統計院(IBGE)が計測する国民経済統計システムだ。この調査では、2020年に関係したデータのみ、製造業のGDP及び業界の生産性に対する予測値を基にした推計値である。それは、仮に生産が増加するなら、1パーセントポイント増加するごとに翌年には工場がおよそ1,200か所増加するという想定に基づく。落ち込みに対しても同じ比率の想定が当てはまる。「この変動の相関性を考慮すると、2020年には工場数がこれまで以上に大きく減少するという見通しを否定できない」とベンテス氏は説明した。 国内工業の現状は、ピークとなった2011年を14%下回る水準にある。工業開発分析研究所(Iedi)のチーフエコノミスト、ラファエル・カグニン氏は現在の状況について、敵対的なビジネス環境と業界の国際競争力にまで影響を及ぼす構造的要因の産物だと受け止める。その要因の核心部分は、ブラジルの複雑な税制だと同氏は指摘する。もうひとつ、基本的なポイントとして同氏は、イノベーション振興策という、政府の現在の取り組みから完全に抜け落ちている問題に取り組む必要性を挙げる。 COVID-19のパンデミックという状況下で国家間の物理的なやり取りに制限が設けられたことは、地理的に分散しながらも統合されたサプライ・モデルの息の根を止めかねない事態だったとカグニン氏は説明する。さらに、「技術が組み合わされ世界にバリューチェーンが張り巡らされた現在の国際環境では、競争力を抑えつける税制由来の負荷が拡大する傾向にある。この問題が解決されるのだという明確なシグナルが必要だ。それがなければ、投資を呼び込み、また惹きつけておくことは、非常に難しくなる」と付け加えた。 サンパウロ州工業連盟(Fiesp)の副会長でブラジル・プラスチック工業協会(Abiplast)の会長を務めるジョゼー・リカルド・ロリス・コエーリョ氏も、工場の閉鎖を企業が判断する重要な要因として、政府が改革を進めてビジネス環境の改善に向けた対策を着実に講じていくという展望を持てない側面があると指摘する。 フォードのような多国籍企業は、世界的な規模で生産を担う工場に投資するのだと、ロリス氏は話す。そして、ブラジルのように成長もせず国民の所得が10年前の水準で足踏みしているようでは製品が高嶺の花となり、会社も前に進めないのである。(2021年1月17日付けエスタード紙)

【州政府が公衆衛生事業に対する投資で民間部門との提携に期待】

ブラジル国内の過半数の州政府が、上水道整備あるいは下水処理、固形有機廃棄物(ゴミ)処理などの公衆衛生事業に対して、民間部門からパートナーを呼び込むプロジェクを検討、あるいは既に推進している。2033年までに公衆衛生サービスを普及させることが業界の新しい基本法に明記されたことを受け、州知事と市長の間で関心が高まっているのだ。これらの取り組みにより業界には、少なくとも600億レアルの資金が投下される見込みだ。しかしこの規模は、国内で業界が必要とする7,000億レアル近くの投資と比較すると小さな金額にとどまる。これらの計画は、少なくとも13州及び連邦区によって異なるステップで推進されている。この内3件、アラゴアス州とエスピリト・サント州、南マット・グロッソ州の計画は事業入札を実施済みである。新業界基本法に対する政治的な反発の強いブラジル北東部でさえ、9州の内、少なくとも6州が、コンセッション事業計画あるいは官民パートナーシップ投資計画(PPP)を検討しているか既に市場向けに立ち上げている。州政府が主導する事業計画以外にも、20以上の広域市区で同様に、コンソーシアム契約かどうかを問わず民間の投資の呼び込みに向けた取り組みが進められている。 下水道事業 民間との提携で推進するイニシアティブで国内の公衆衛生サービスに少なくとも600億レアルが投資されると期待されるが、必要とされる7,000億レアルには及ばない。写真:ジダ・サンパイオ(Dida Sampaio)/エスタード紙ブラジル基礎工業インフラ構造協会(Abdib)と地方自治体及び連邦政府、社会経済開発銀行(BNDES)のデータに基づいて実施された調査で、州政府と広域市区が公的財源以外から業界に資金を確保する必要性があることが示された。ブラジル国内では住民の46%が依然として下水道システムのない住環境に置かれており、16%が上水道システムのない環境に置かれている。更に、国内には埋め立て式のゴミ処分場が1,000か所以上も存在するのだ。Abdibによると業界は2020年に144億レアルの投資を受け入れた。だが2033年の時点で累計7,000億レアルの投資をこの業界が受け入れるよう道筋をつけるとするならば、毎年、500億レアル以上の投資が必要になる。現時点で、公衆衛生サービスの提供は州公社が支配的な地位を占めている。公衆衛生サービスは広域市区が責任を負っているにもかかわらず、州公社は、競争入札を得ずに市役所と直接契約を締結可能なことが幸いして事業を拡大してきた。だがこうした形態は基本法により禁止され広域市区の行政担当者らに対し、サービスの委託に当たって競争入札を実施することが義務付けられた。このような事情に加えて民間イニシアティブに対して魅力的な規定が想定されていることから、新法は、投資の水準を引き上げブラジルの公衆衛生がおかれている現実を変えていくことが期待できる方策と位置付けられている。 脱塩水取引の継続と投資能力を確保するため、様々な公社が提携するパートナーを探している。カミーロ・サンターナ知事(PT:労働者党)が率いるセアラー州は、この分野で様々な計画を展開している州のひとつに数えられる。フォルタレーザ市の住民のおよそ12%に供給する脱塩水の生産に取り組むPPPの外、BNDESとはフォルタレーザ大都市圏とカリリ大都市圏の下水道システムの普及を目指す研究を推進、ゴミ処理についてもプロジェクトを推進中だ。固形有機物処理事業は広域市区のコンソーシアムであるが、事業構築に向けて州政府と連邦貯蓄銀行(CEF)から支援を受けている。下水道システムのPPPだけで60億レアルの投資を呼び込むと期待されている。現在、同州で下水道システムの恩恵を受けているのは住民のわずか25.6%だけである。有機廃棄物の最終処分場を管理するためにコンセッション契約を進めようとしている広域市区のほとんどで、依然、多くが埋め立て式のゴミ処分場を使用している。この研究同様、2018年から立ち上げられた下水道整備計画も、これらのモデルを実際に施行に移すことがいかに複雑な問題をはらんでいるかを如実に示している。他方、7月から施行されている新基本法については、法的安定性が担保されることと、市場に対するアピール、同様に民間企業を呼び込むために重要だとの認識されている。セアラー州政府のパウロ・エンリッケ・ルストーザ都市局長は、「同法に即効性があるわけではないが、民間資本に対して非常にポジティブなサインを送る」と話す。新法が可決してから実施された3回の事業入札が成功したことで、業界の今後に楽観的なムードが広がった。その中の最初のケース、アラゴアス州マセイオー大都市圏への上下水道サービスに関するコンセッション契約に関する事業入札だけを見ても、権利金の最低額が1,500万レアルに設定された状況でBRK社は20億レアルを提示して事業権を手に入れた。バイーア州のルイ・コスタ知事(PT)も、この分野で民間のパートナーを熱望する州のリストに同州を登録した。バイーア州は、フェイラ・デ・サンターナ市と周辺8市で構成する広域市区で上下水道サービスを提供するためのプロジェクト策定を希望しており、他の提案についてもBNDESに協力を求めまとめたい意向だ。ブラジル州立衛生公社協会(Aesbe)の会長を務めるパライーバ上下水道公社(Cagepa)のマルクス・ヴィニーシウス・ネーヴェス総裁は、「州政府は、州公社を手放さない。そうであれば着眼点は、公社のガバナンスに民間を合流させ、より大きな資金で(普及を)迅速に実施することだ」とコメントした。(2021年1月5日付けエスタード紙) 

【5Gでブラジルが親米反中に傾斜】

「中国共産党のような悪意を持ったプレーヤー」がシステムに侵入するリスクがあるとしてファーウェイ(華為)を排除すべきだとアメリカのトランプ政権が主張し提案するプログラムにブラジルが参加する方針だ。ただし最終判断は、大統領令の発布次第である。 ボルソナロ政権が11月10日、第5世代移動通信システム(5G)において中国の技術を排除するというアメリカ政府のイニシアティブへの支持を表明し、この問題で重要な一歩を踏み出した。アメリカからキース・クラーチ経済成長・エネルギー・環境担当次官、ブラジルからは二国間及びラテンアメリカ地域交渉担当局長を務めるペドロ・ミゲル・ダ・コスタ・エ・シルヴァ大使が出席して外務省内で行われた式典後、ブラジル政府は、トランプ政権が打ち出した「クリーンネットワーク」イニシアティブへの支持を宣言した。 これは、電話通信網から「信頼できないサプライヤー」を排除するよう各国に呼び掛けているアメリカの外交イニシアティブである。トランプ政権は、市民のプライバシーと企業の機密情報に関して、「中国共産党(CCP)のような悪意を持ったプレーヤー」による攻撃的な侵略から守るための包括的なアプローチと位置付けている。 コスタ・エ・シルヴァ大使は、「5G及びその他の新術に関連して安全で透明性、民主主義と自由の原則という価値観共有の促進を目的として経済協力開発機構(OECD)を含めアメリカが提案するクリーンネットワークの掲げる原則を、ブラジルは支持する」と表明した。 実務的な観点では、大統領令の発布が行われていないために今回の表明がアメリカのシステムとの交渉を公式に認めたものではない。だが、5Gに関連して、ブラジルがファーウェイを参画させる可能性を遠のけた形だ。今回の判断をアメリカ側は好意的に受け止めた。クラーチ次官は「ブラジルは、クリーンネットワークの原則を支持するラテンアメリカで最初の国だ」とコメント。同次官によると、OECDに加盟する37か国の内、31か国が既にこのイニシアティブに参加しているという。 2021年に5Gの周波数オークションを実施する予定のブラジルは、米中が最新の電話通信技術に対する主導権を争って火花を散らす国際的な戦場のひとつになっている。中国のファーウェイは、ブラジルだけでなく世界的に5G及びその他の電話通信機器で最大のサプライヤーになっている。だが同社は、スパイ用のバックドアをネットワークに設置しており中国共産党政府の管理を受けているとアメリカに批判されて攻撃の的となっている。なお、同社と中国政府は、この批判に反発している。 アメリカとブラジルの外交代表者は、中国に対する新たな地政学的対立軸を構築すべく、日本とアメリカ、ブラジルによる3か国間対話(JUISBE:日本大使館の仮訳では「日米伯協議」)の立ち上げに取り組んでいる。クラーチ次官によると各国は、次の3原則を確認している。それは、地域問題に対する政治的協力関係の強化と、経済安全保障の共有、民主的統治である。「日本とアメリカ、ブラジルは、弾力的かつ安全な5Gのネットワークを構築することを表明している」とクラーチ次官はコメントした。 これに先立ち、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、ブラジルが5Gに関連してアメリカ政府がイニシアティブの原則を支持することになるという情報を受け取ったと明らかにしていた。「数時間前、ブラジル政府が『クリーンネットワーク』の原則を支持するという彼(クラーチ時間)からの連絡があり、近い将来、両国が了解覚書に署名すると確信している。その判断を下したブラジルと同国の指導者らに謝意を表したい」とコメントした。 発せられた「アラート」 同様に正式な発表が行われる前、パウロ・ゲデス経済大臣は、ブラジル政府が5Gに関して中国の技術を排除するか承認するかの判断は下されていないと発言していた。ただし同大臣は、アメリカとイギリスのような国からの「アラート(警告)」と見なせるものを政府は考慮しているという点も認めていた。 「イギリスは5Gシステムの中核部分で中国企業を排除したが、ネットワークの辺縁部での事業は容認した。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが発生する以前、我々はこの方向へ向かっていた。我々は、デジタル革命の機会を逸することを望まないが、彼らの地政学的なアラートも受け取っている」。 トランプ政府はブラジルに対して、中国がスパイ活動を展開するバックドアを設置するというセキュリティー上の不具合につながることからネットワークへの中国の関与を完全に排除するよう、ブラジル当局に対して直接的な圧力をかけるまでになっていた。 二国間関係で見ると両国政府は、「環境ダイアログ」を立ち上げたが、トランプ政権とボルソナロ政権が取り組む活動としての比重は引き下げられた。他方、ジョー・バイデン次期大統領はこの問題を優先課題と位置付けている。環境ダイアログ宣言の目的は、先住民コミュニティーの福祉と起訴衛生(下水処理)、木材の違法な伐採に対して共同で取り組む可能性を模索することである。(2020年11月11日付けエスタード紙)

【クリーンネットワーク・イニシアティブの支持表明はファーウェイの排除を意味しない】

クリーンネットワーク・イニシアティブの原則に対する支持をブラジル政府が表明したことからアメリカ政府が掲げる技術的提案にブラジルが傾斜した形になったが、少なくとも現時点では、中国のファーウェイ(華為)に対して第5世代移動通信システム(5G)への参加を阻むことを意味しない。アメリカ政府の圧力があるものの、中国が提供する技術を排除するには、大統領令の発布が求められる。 2021年に5Gの周波数オークションに関する技術要件の策定を進める国家電気通信庁(Anatel)は、今回の表明を、驚きつつ受け止めた。ブラジル政府がこの問題に関して判断を固めていないことは、11月10日に外務省で開催されたイベントに通信省が出席していなかったことが示唆している。同省は、国内における5G問題の議論に対する責任を負う。ファビオ・ファリア通信大臣は、このイベントに出席していないのだ。この点について見解を求めたが、同省はコメントを避けた。 アメリカの大統領選でジョー・バイデン候補が選出されても、アメリカは、5Gでファーウェイを排除するようブラジルに圧力をかけ続けている。ただこれには、この業界を含め多方面から抵抗もある。例えば国内で事業を展開する電話事業会社は、トッド・チャップマン大使からキース・クラーチ経済成長・エネルギー・環境担当次官と面会するために招待されたことを否定している。 電話事業会社の反応 国内の大手電話事業会社を代表する組合コネクシスのマルコス・フェラーリ委員長は先週、書面で、「業界は協議の議題が極めて重要だと認識しているが、その前に、業界は議論のために出された提案がブラジル政府とともに業界が話し合いを進めているもので、しかもそれは公開討論の形で進められていることを明示しておきたい」とコメントした。 コネクシスに加盟する様々な企業が上場企業であり、これらの企業は株主に対して、そして企業として、透明性の確保をコミットメントしていると、フェラーリ委員長は話す。「その上で、国内で新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが発生している状況下では、依然として注意が求められており、これらの企業の代表者らは対面で協議するのを避けている」と付け加えた。 5Gの周波数オークションは2021年に予定されている。5Gに対して解放される周波数がオークションの対象となる。この周波数オークションへの応札は、電話事業会社と小規模のプロバイダに限り認められる。国内で営業する中国資本の電話事業会社は存在しておらず、つまりファーウェイも電話事業会社ではなく設備のサプライヤーなのだ。同社は20年以上前にブラジルに進出しており、同社の機器は、ブラジル国内の3G及び4Gの通信網の35%から40%で使用されていると推定されている。 クリーンネットワーク・イニシアティブにブラジルが参加することへのコメントを求めたが、コネクシスは声明を避けた。またファーウェイは、11日付で掲載されたこの記事の締め切りまでに何のコメントも寄せなかった。(2020年11月11日付けエスタード紙)

【5Gに対する判断は2021年に下すべきだとブラジル大使がコメント】

「どこそこの企業を排除するということではなく、国益にかなうかということである」とネストル・フォスター大使。ネストル・フォルスター駐米大使が10月20日、ブラジルの第5世代移動通信システム(5G)に対する周波数オークションへの参加をファーウェイ(華為)に認めるか認めないかという判断は2021年に持ち越されるべきだとコメントした。10月19日からブラジルを訪問したアメリカの代表団は、今回、ブラジルが5Gインフラの建設に対して中国以外の企業を選定することへの期待感を明確に示した。ワシントンの通信員らとのインタビューでフォスター大使は、「この問題は非常な重大性をもって検討すべきことは言うに及ばないし、私は、判断を下すのはもう少し先、来年の年明けに先送りすべきだと理解している」とコメントした。「どこそこの企業を排除するということではなく、国益にかなうかということである。天秤にかけられているのはまさにそこだ」という。アメリカは、世界最大の電話通信機器メーカーで5G技術の提供で主要プレーヤーの一角を占める中国のファーウェイを、周波数オークションから排除すべきとするロビー活動を展開してきた。アメリカ政府は、この企業が中国共産党による監視活動の一翼を担っていると主張する。中国は、この主張を否定している。だがアメリカにとって5Gの「クリーンパス・イニシアチブ」は、ファーウェイのようなアメリカの目から見て信頼の置けないサプライヤーを5Gの送信機器や管理機器、データ保存機器から排除すべきだという前提に成り立っている。今回ブラジルを訪問したアメリカの当局者らは、同国がブラジルの電話通信業界の「あらゆる投資」に資金を提供することをいとわないとコメントした。ブラジルの駐米大使は、アメリカが提供する資金は、アメリカ政府が立ち上げてブラジルが2021年3月に加盟する可能性のあるプログラム、「アメリカ・クレッセ(Growth in the Americas)」の枠内で確保されていることを明らかにした。このプログラムはそれだけでなく、技術分野を含めたインフラプロジェクトへの収支のためにアメリカの国際開発金融公社から600億ドルの資金にアクセスすることを想定している。アメリカは、中国企業をネットワークから排除することを約束している国の5Gネットワークの構築を支援するアメリカ企業と同盟国の企業に資金を提供するために、国際開発金融公社の融資能力を倍増させた。同大使は、「このテクノロジー分野への融資は、市場よりも有利な条件で受けられる可能性がある。改めて言うが、その判断はワシントンではなくブラジリアが下すものだ」とコメントした。(2020年10月21日付けエスタード紙) 

【今回の代表団に関連したFAQ】

1. 5Gって何?5Gは、第5世代移動通信システムのこと。この技術により、現行の4Gに対して最大で20倍という通信速度が実現し、動画やゲーム、バーチャル・リアリティー環境などより大量のデータ消費が可能になる。加えてサイトあるいはアプリのコマンド実行を命令してから実際に実行されるまでの待機時間を、現在の10ミリ秒から4ミリ秒に半減する。幾つかの状況によっては、これを1ミリ秒まで短縮可能で、このことは自動車の自動運転の開発、ロボットを使用した遠隔手術の開発において重要となる。2. ブラジル国内で既に5Gは展開されている?いいえ。幾つかの州都で、キャリアが自身の4Gの周波数を利用して4Gの10倍速の信号を提供している。しかしながら、このサービスは5Gではない。5Gは更に高速で安定性が確保されている。3. 5Gの周波数オークションの実施はいつ?ブラジル国内で5Gの周波数のオークションは、2021年の実施を予定する。周波数帯は、信号が空中を通過する「ハイウェー」のようなもの。5Gの場合、3.5GHz帯が中心になる。4. どのような企業が5Gの周波数オークションに応札できる?電話通信会社に限定される。クラーロとヴィーヴォ、TIM、オイ、アレガールのような大手だけでなく、全国の小規模のキャリアも応札可能である。5. 中国企業が周波数オークションに応札できる?ブラジル国内で電話通信事業を展開する中国企業は存在しない。中国のファーウェイ(華為)は中核設備を供給する企業である。設備のサプライヤーを選定するのはキャリア自身で、現時点ではいずれのキャリアもファーウェイの機器を使用している。6. 5Gを巡って米中が対立するに至った原因は?4Gにおいてアメリカはパイオニア精神を発揮して、シリコンバレーの成功と、FacebookとNetfliz、Google親会社のアルファベットといった企業の誕生につながった。これらのビッグテックは現在、世界的に最も価値のある企業群となっている。一方、ファーウェイは現在、5Gに対する中核設備の大手サプライヤーである。業界における中国の台頭は、世界的に人気のTiktokとWechatのようなアプリからも見て取れ、アメリカ企業の主導権を脅かしつつある。(2020年10月21日付けエスタード紙)

【トランプ米大統領が求めたのは大統領選で繰り出すカードのひとつ】

貿易対策に加えて中国のプレゼンス拡大を阻止しようとしているとアナリストが分析米トランプ政権について複数のアナリストが、貿易分野への関心だけでなく外交関係で実績を作り出そうと試みていると受け止める。貿易円滑化協定の発表のためにブラジルを訪問したアメリカ政府の代表団が、第5世代移動通信システム(5G)の周波数オークションにおける中国資本のファーウェイ(華為)のプレゼンスを阻止すべくブラジルに圧力をかける口実を生み出した。エスタード紙が複数のアナリストから意見を集めたところ、貿易分野への関心だけでなくアメリカの大統領選の投票直前というタイミングでドナルド・トランプ大統領が率いるアメリカ政府が外交関係に明るい話題作りに努めているという見方を示した。5Gの周波数オークションでは中国系企業が参加するのに反対する態度を見せつつ、アメリカ側は、電話通信業界における「投資は何であれ」資金を提供することを厭わないと表明した。ブラジルを訪問した米当局者らの代表団は中国を非難し、ブラジルがその他の国の企業を選ぶことへの期待感を明確に示した。ルーベンス・バルボーザ元駐米大使は、「アメリカ政府は議会の承認なく貿易円滑化のような交渉を進めることが禁じられているため、署名が交わされた今回の貿易円滑化がそのまま貿易協定につながるわけではなく、むしろ今回のイベントはトランプ大統領の外交政策の柱である反中国税に取り込むという考えの一環だ」と話す。さらに同氏は、アメリカの代表団は今回のブラジル訪問をブラジルに対する融資と便宜を提供することで「周波数オークションから中国を排除するためにブラジルの面前にニンジンをぶら下げた」とコメントした。コンサルタントの同氏はブラジルにとってより懸命な道は、米大統領選の結果を待って5Gに関する判断を下すことだと話す。同じく元大使で財務大臣を務めた経験もあるルーベンス・リクペロ氏は、アメリカとの二国間貿易の円滑化に関する対策の発表は、ブラジルが対米交渉でこれまで敗北してきただけだという印象を払拭するという点において、ジャイール・ボルソナロ大統領にとっても旨味のあるものだったと指摘する。「アメリカとの貿易交渉でブラジルは、同国から輸入するエタノールに対する非関税枠など、トランプ大統領を益する話題ばかりを提供してきた。今になって、貿易円滑化策が少し前進したが、これは世界貿易機関(WTO)の枠組みにおける合意がすでに想定していたものであり、新味があるものではない」と同氏は言う。またリクペロ氏は、国家安全保障会議(NSC)メンバーのロバート・オブライエン氏が代表団に名を連ねるという珍しい状況を受け、今回の代表団の目的が5G技術の導入にあたってファーウェイを選択しないようブラジルに圧力をかける目的があったいう見方を強めるものだと話す。オブライエン氏はブラジル国内の会合で、ブラジルがファーウェイの機器を選んだ場合、ブラジル政府やブラジル企業のデータが中国政府に読み取られる可能性があると指摘した。アルマンド・アルヴァレス・ペンテアード財団(Faap)のヴィニシウス・ロドリゲス・ヴィエイラ教授は、トランプ米大統領がアメリカの有権者、とりわけ新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを通じて増加した反中国意識の強い人たちから共感を得る実績を作ろうとしたのだと評価する。「同国政府は、ラテンアメリカ最大のマーケットであるブラジルに対して、反中国の十字軍として圧力をかけていることを明確に印象付けることを期待しているのだ」という。この問題の不確定要素米大統領選に関する世論調査でトランプ米大統領は民主党から立候補したジョー・バイデン候補の後塵を拝しており、11月3日の選挙でホワイトハウスから去る可能性がある。ゼツリオ・バルガス財団(FGV)の外交MBAコーディネーター、オリヴァー・ストゥエンケル氏は、選挙を目前とした段階でトランプ米大統領との交渉には、わずか、あるいは何らの意味もないと受け止める。「最善の道は、待って、次の4年に大統領となる人物と交渉することだ」という。だがストゥエンケル氏は、民主党が選挙に勝利しても中国のプレゼンス拡大をアメリカが食い止めるという姿勢には大きな変化はないと予想する。他方、国家電気通信庁(Anatel)の元総裁、フアレス・クアドロス氏は、世界の移動体通信ネットワーク市場でブラジルが第3位の市場規模を持つことを指摘しており、5Gを巡る駆け引きの舞台になるのは当然のことだが、その覇権争いは通常以上に政治的色彩を帯びることになると話す。「この種の競争に世界経済を牽引する経済国が割り込んでくるのは通常の状況ではない」という。同氏は米大統領選の結果を待って態度を固めることが賢明だとする一方で、ブラジルにおける5Gをどのようにするのか判断が遅れているのは欧州とウルグアイのような近隣諸国との兼ね合いもあると指摘した。「ブラジルは、ただトランプ米大統領に明るい話題を提供しただけだった。これまでのところ、ブラジル側の進捗はわずかだ」と付け加えた。(2020年10月21日付けエスタード紙) 

【「アメリカの非難には根拠がない」とファーウェイ現地法人】

10月19日からブラジルを訪問しているアメリカ政府の代表団が、電話通信機器メーカーのファーウェイ(華為)を非難してブラジル政府に対し国内市場で同社の営業を制限するよう求めている問題で、同社が反発している。ファーウェイのマルセーロ・モッタ国内サイバーセキュリティー担当部長はエスタード紙に対し、アメリカの非難には「全くもって根拠がない」と反発、さらに、同社が個人データにアクセスできてそれを中国政府に渡すことが義務付けられているという同社への批判も否定した。この非難の応酬は、ブラジルが第5世代移動通信システム(5G)に対する周波数オークションを2021年半ばに控えて、活発化している。入札への参加が認められるのは、移動体通信事業者で機器メーカーではない。だがファーウェイは、国内市場でエリクソンとノキアと鎬を削る3大サプライヤーの一角を占める大手なのだ。これまでのところ、ファーウェイが5G導入の波に乗るのを妨げるものは何もない。例えばサンパウロとリオデジャネイロで5Gの主な商用ネットワークでヴィーヴォは、既に同社の機器を導入している。国家安全保障対策室(GSI)は既に5Gネットワークを導入する際に導入すべきサイバーセキュリティーの要件をリストアップしているが、ここでは一切、ファーウェイを排除していない。だがこの問題の最終判断は、ジャイール・ボルソナロ大統領が下すことになる。(質問)アメリカの国家安全保障会議(NSC)メンバーのロバート・オブライエン氏の発言、すなわちブラジル政府と国内企業のデータがファーウェイの設備を通じて中国政府によって「盗み見される」可能性があるという主張を、ファーウェイはどのように受け止めましたか?(マルセーロ・モッタ)10年以上も前から一切の根拠もなく言われてきたことなので、その非難があたかも当然のようになされている。当社は、最優先事項としてサイバーセキュリティーとプライバシーを掲げている。当社のガバナンスは、多数のグローバルな、そして地域のトランスペアレンシー・センターによってテストを受けてきた。これら一連の努力は、顧客と取引先、政府に対して信頼性と安全性を提供する機器を背製造するために不可欠なものだ。(質問) 中国の法律に対する恒常的な批判があります。すなわち、あちらの政府が求める場合にファーウェイはデータを引き渡さなければならないということです。その義務は、実際に存在するのでしょうか?(マルセーロ・モッタ)いいえ。そして、そのような法律や義務も中国国内には存在しない。現行法はいずれも等しく、同国で事業を展開している電話通信分野のサプライヤーに適用される。すなわち、世界のすべての大手のプレイヤーということだ。その上、当社は単なる機器のサプライヤーだ。そして当社は、当社の顧客が直接扱うデータに直接的にはアクセスできない。従って当社は、個人データには一切アクセスできない。(質問)では、接続においてセキュリティー及びプライバシーの保護という観点で、ファーウェイがブラジルに提供できる保証は何でしょうか?(マルセーロ・モッタ)当社は、270件以上のセキュリティー及びプライバシーに関する認定を受けている。定期的に試験を実施している顧客に加えて、このような認定メカニズムはブラジル政府に対しても公開されており、第三者の根拠のない意見に左右されることなく顧客自身が独自に利用可能なツールを使用し検証できるということを強調することも重要だ。(質問)10月19日からブラジルを訪問しているアメリカ当局者による代表団からは、中国以外の企業が供給する設備を調達する場合、ブラジルの電話事業会社に対して資金を提供するという申し出があった。ファーウェイも同様に設備の調達に対して融資するようなオプションがあるのでしょうか?(マルセーロ・モッタ)当社は機器に対する融資は行っておらず、顧客は自由に資金を調達できる。ただ、資金を調達するということにはすべてコストが付随するということ、競争の自由が制限されることだけは指摘しておきたい。(質問)ブラジルやその他の国々でファーウェイの事業を制限しようとするアメリカの試みに対してどのように対応するつもりでしょうか?(マルセーロ・モッタ)当社が提供する機器は革新的で、競争力があり、エコ(低消費)で、インテリジェントで、安全だ。これらは当社の顧客が求めるもので、しかもコストは低減している。従って、幾つかの市場でこれらの機器のプレゼンスがないことは、僻地などにおいて小規模の通信事業会社のコストを2倍から5倍に引き上げるという、ブラジルで発生すべからざる事態を招くことになる。(2020年10月21日付けエスタード紙)