コンサルタント部会の経済セミナー

コンサルタント部会主催の鈴木孝憲講師の「ブラジル経済とビジネスの可能性を検証する」セミナーが1月23日午後4時から開催され、今までの記録を更新する70人が参加、ブラジル経済の先行きに耳を傾けていた

コンサルタント部会(渡邊裕司部会長)主催の経済セミナーが、1月23日午後4時から6時過ぎまで商工会議所会議室に70人が参加して今までの記録を更新、鈴木孝憲講師の「ブラジル経済とビジネスの可能性を検証する」セミナーで、ブラジル経済の先行きについて熱心に耳を傾けていた。

4年間の第二次ルーラ政権が開始したが、政治スタンスは第一次政権に引続いて中道化、第一次ルーラ政権の経済政策は、前カルドーゾ政権の政策を継続したが、契約は守ったが公約は殆ど達成しなかった。しかし1,000万人の雇用創出と数字でははじき出されているが、正規雇用は500万人以下、最低給料の実質価値倍増、数々の汚職スキャンダルで国会は空転、社会保障制度改革、税制改革や労働法改正などの構造改革は果たせず、公務員の大幅増加や5,900万人が恩恵を受けた貧困層への生活費補助(ばら撒き福祉)以外は殆ど成果を上げていない。

第二次ルーラ政権では年率5%の経済成長を掲げているが、痛みを伴う構造改革を避けて段階的な経済成長及び雇用の引上げを図っていく。22日に発表された経済成長加速プログラム(PAC)では経済安定を維持しながら、インフラ整備を中心に大型投資を行なうが、減税幅が小さくて民間投資を呼び込めない。5%の経済成長率達成には、現在20.5%の投資額のGDP比を25%まで引き上げる必要があり、5%達成は難しい。

ブラジルの政治リスクはBRICs諸国の中で最小であり、ロシアは資本主義への回顧のもたつき、サハリン2中止のように政治の透明性の欠如、中国は経済原則の躓き、4大銀行の25%に達する不良債権、エネルギー問題、インドはカースト制解消、インフラ整備の遅れなど大きな問題を抱えているが、左傾化傾向にある南米では、ブラジルはチリと並んで最も政治体制が安定している。

ブラジル経済の潜在力は、殆ど耕作可能な温帯から熱帯にまたがる広大な国土、全世界の20%に達する真水、12品目の農産物輸出が世界ランク4位以内であるアグロインダストリー、豊富な天然資源、小型ジェット機製造、深海油田開発技術、ユーカリ植林技術やエタノール/フレックス車開発など中南米トップの工業力など計り知れない潜在力を秘めている。

しかしメルコスール内の政治的結束が揺らいでおり、FTAA及びヨーロッパ連合とのFTA交渉が中断、ブラジルは農産物補助金、市場開放およびメルコスールに縛られてFTAが進まない。

世界500大企業のうち450社がブラジルに進出、96年以降の進出ブームで投資が大型化、スペインのテレフォニカ社は、98年に民営化移行のテレスピを75億ドル、サンタンデール銀行はバネスパ銀行、英国のHSBC銀行は11億ドルでバメリンドス銀行を買収して、ブラジルを重要視している。

また欧米企業はブラジルの国内市場規模も大きくて、輸出基地化も可能と見ており、ブラジルのコストは相対的に安く、ドイツの1/10、中国の3倍、マナウスでは中国並みのコストしかかからない。また労働力の質も優れており、エンジニアの国内調達が可能であり、そのうえ欧米市場に近く、政治リスクが小さいなど高く評価している。

欧米企業のブラジル戦略として、カルフール社のようにグループの収益の柱の構築、ボッシュ社のように、製品の一部をブラジルで集中生産して輸出に向け、新しい動きとしてファイアット社はデザインセンター、HSBC銀行はソフト開発、GM社はVECTRA車の世界生産拠点、チッセン・クルップ社はエレベーターや自動車部品の生産拠点にしており、またサムスン社やLG社の韓国勢の躍進が目覚しい。

しかしブラジル経済にも問題点は多く、GDP比37%を超える税負担、世界1の高金利や30%のレアル高の不均衡為替などで経済成長率が伸びず、また一向に進展しない構造改革も海外からの投資の障害になっている。貿易面では2004年にブラジルは中国を市場経済国に認定したために、繊維、履物玩具などの中国輸入製品が市場を席巻して、壊滅的な打撃を与えているが、アンチダンピングで提訴できない。

今後のブラジルでのビジネスチャンスの有望分野は、資源・エネルギー開発、アグロインダストリー、インフラ整備、産業用機会設備、環境関連、観光リゾート開発分野が有望である。

また最近のブラジル投資に対する日本企業の動向として、商社によるペトロブラスとのジョイントによる石油・天然ガス開発、紙・パルプの共同開発、リオドーセ鉱山開発会社への資本参加、オートバイ・自動車の生産拡大及び部品メーカーの追加投資や新規進出、食品関係の新規投資、インフラ部門では鉄道車両のリース事業、ガス配給会社や港湾ターミナル拡充への出資など投資が盛んになってきている。

ブラジル進出50年周年以上の企業も多く、今初めて付き合う国ではないし、大事にしていくべき親戚の国であり、世界の食料供給地図を塗り替える可能性のあるブラジルは、日本にとって資源確保の見地からも非常に重要な国であり、中国やアジアに集中しているリスクの分散や潜在力が素晴しく、豊富にあるビジネスチャンスをゲットにするために、日本勢がブラジル戦略を見直すことを期待したいと結んで、参加者から大きな拍手が送られた。

進行役は赤嶺尚由副部会長が担当、渡邊裕司部会長はセミナー開催挨拶及び鈴木講師の略歴を紹介、田中信会頭はセミナー終了後にお礼の挨拶を述べた。

尚、鈴木講師のご好意によりセミナーのプレゼンテーション資料は、会議所のホームページの右下のプレセンレポート欄に掲載しています。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=33665