コンサルタント部会セミナー『ブラジルでの人事管理上、日本人管理者がブラジル人の性格や社会習慣を考慮してどのような点につき注意したらよいか』

コンサルタント部会(都築慎一部会長)主催のセミナー『ブラジルでの人事管理上、日本人管理者がブラジル人の性格や社会習慣を考慮してどのような点につき注意したらよいか』が2011年9月27日午後4時から5時半まで会議所の大会議室一杯になる61人が参加して開催、講師は人材紹介会社Authent社社長の破入マルコス氏が務めた。同氏は会議所企業経営委員会の副委員長として長年にわたり月次労働問題研究会のコーディネイトを行っている。また、講師サポート役として、ブラジル日本語センター理事のマルガレッチ・シムラ氏も参加した。
 
両氏は本セミナーの目的は「日本人駐在員及び現地採用スタッフの関係を豊かな人間関係にすることによりエクセレンスのある環境を保つこと、また、労働法、民法、刑法上の訴訟リスクを抑えること」であると切り出し、2つの異なった文化環境においては相互理解が必要であり、「幹部である人間には、海外駐在員であろうと現地採用社員であろうと、新時代の波をうまく乗り切りそして生き延びるため、新しいマインドセットつまり考え方が必要とされる」と説明した。
 
ブラジル人の人生のビジョンは日本人のそれと異なっており、前者は仕事をする目的は主に生活を支える為にあるものと考え、健康、教育、年金などに重点を置く。これらのニーズはブラジルでは政府が十分にカバーしていない事もあり、企業が負担する事になり、またそれらのベネフィットがブラジル人にとっては仕事に対するモチベーションにもつながると述べた。
 
政治・経済の安定、グローバル時代の到来、ブラジルのC、Dクラスの消費力向上等により以前に比べブラジルは大きく変化したが、一般人の教育レベルの面においてはまだ劣るところがあり、破入氏は例としてブラジルでは企業が社員のMBAコースの費用を賄う事があるが、質が問われるものが多く(ブラジル国内で正統なMBAを実施しているのは5校のみ)、念入りに分析するべきと警戒した。
 
次に破入氏はクライアントである日本進出企業20社にヒアリングした結果を挙げた。
 
まず、駐在員がブラジル人に対する不満 として、「基本がわかっていない」、「教育レベルが低い」、「責任を取らない」、「時間を守らない」、「会社より個人」、「嘘をつく」、「約束を守らない」、「計画能力がない」、「態度が悪い」、「Job Jumper」、「ルールを守らない」、「わがままである」、「会社のアセットを大事にしない」、「会社のお金を無駄遣いする」が指摘されたと発表。
 
続いてブラジル人が日本人駐在員を評価する点 として、「データ・情報が正確だ」、「働き者だ(勤勉だ)」、「教養が高い」、「グローバルな観点を持っている」、「プロセス方法論が正確できっちりしている」、「教訓的」、「几帳面でフォーマルだ」、「時間を守る」、「親切かつ謙虚(プレッシャーが掛かっていない時)」、「ブラジルやブラジル文化に対して興味を持ってくれている」が挙げられた。
 
その反面、ブラジル人が日本人駐在員に対する不満は「モラルハラスメント(日本でいうパワハラ)」、「私生活や家族問題に対して鈍感」、「ブラジル人が途上国つまり後進国の国民であるという偏見」、「女性がプロフェッショナルである事に対する偏見」、「現地採用スタッフのキャリアに対して無関心」、「非日系ブラジル人がトップマネージメントへ昇格することへの不安」、「現地採用スタッフの努力・達成あるいは結果・業績を金銭的に評価しない」、「日系二世や三世に対して日本的感覚を持っているべきだという期待感」、「フィードバックが客観的でない」、「リスク回避ばかりする」、「ブラジルの労働法や人事のやり方に対する誤解」他挙げられたが、他の社員の前で怒鳴ったり、日本進出企業に多い単身赴任者と同じリズムで家族を尊重するブラジル人に残業を求めたりする事が嫌われると破入氏が追加コメントした。
 
多数の質問などに対し、破入氏は様々な事例を紹介、その内ブラジル人社員を海外へ派遣させるにあたってのリコメンデ―ションを求めた参加者に対し、家族を持っている社員には単身赴任は禁物と指摘したり、また自らのクライアントである米系企業のケースなども挙げた。
 
最後に破入氏は、ブラジル人と日本人との仕事のやり方の違いを題材としたジョークを披露し、また、参加者との意見交換が行われる場面もあり、活気のあるセミナーとなった。

リンク→ プレゼン資料(PDF)

講師の破入マルコス氏 (Fotos: Rubens Ito/CCIJB)

満席の会場で活気のあるセミナーとなった。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=35687