コンサルタント部会主催による「M&Aに関する実務セミナー」に68人が参加して開催

コンサルタント部会(澤田吉啓部会長)主催による「M&Aに関する実務セミナー」が2012年4月17日午後4時から6時30分まで、会場一杯の68人が参加して開催された。

プライスウオーターハウスクーパーズ(PwC)会計事務所コーポレートファイナンス部のアレシャンドレ・ピエラントーニパートナーが「ブラジルのM&A マーケット概要& M&A のバイサイドプロセス」について、 昨年のブラジルのトランザクション件数は、世界のマーケットが不安定で不確実にも関わらず、746件と2010年並みの水準を維持、また公表された昨年のM&Aの取引金額が公表された1件当たりの平均は、1億8,300万ドルと中規模でディール金額の公表は36%に留まっていると説明した。

昨年の大型M&Aでは、テルニウム社のウジミナス社への27億ドルの資本参加、キリンによるスキンカリオールの25億ドルでの完全買収などがあったが、ブラジルでは負債込みのM&Aは少ない。

セクター別トランザクションでは食品・飲料セクターが41件で最も多く、平均取引金額は2億1,200万ドル、金融セクターが30件で2億2,600万ドル、小売セクターも30件で金額は1億2,300万ドル、平均取引金額が最も大きいのは鉱業セクターで6億8,300万ドルであった。

地域別の取引件数では、サンパウロ州並びにリオ州を抱える南東部地域が全体の73%、南部地域は14%、中間層並びに消費が拡大している北東部地域は6.4%、農畜産業が盛んな中西部地域は3.3%、マナウスフリーゾーンを抱える北部地域は3.1%であった。

昨年のトランザクション件数のうち63%に相当する403件は国内投資家、37%に相当する237件は海外投資家による取引、マジョリティ取引が全体の56%、マイノリティ取引が29%、ジョイントベンチャーが9.0%であった。

M&A のバイサイドプロセスについて、ブラジルでディールを行う場合に直面する課題として、不十分な情報並びに人間関係を重視する文化性、保守的なファミリー企業、コミュニケーション上の課題などが挙げられ、フェーズ①として計画及び戦略的定義からスタートして、対象企業の特定→初期コンタクトとミーティング、フェーズ②として交渉→コンタクト→クロージングの内容の詳細について説明した。

続いて、PwCトランザクションサービス部のレオナルド・デロッソパートナーは、
「日本企業がブラジルでM&Aを行う場合の留意点 – デューデリジェンスの観点」について、デューデリジェンスの典型的な交渉プロセス、実施する主な理由、セルサイド/バイサイドデューデリジェンスの立場から財務及び会計、税務と労務、監査のプロセスの注意点やリスクについて説明した。

またブラジルのデューデリジェンスにおける主な検出事項として、高い税務コンティンジェンシー並びに高い労務リスク、内部統制環境の問題、マネジメント経営管理資料やパフォーマンスモニタリングの欠如、オペレーションにおける情報のレベル、事業に登録された人の人件費、誤謬を含んだ財務情報、オフバランス債務について説明した。

PwC M&Aタックス部のホドリゴ・バストスパートナーは、「ブラジルにおける典型的な税務上の検出事項及びタックスストラクチャリング」について、トランザクションにおける税務・労務デューデリジェンスのアプローチとして納税の領域にフォーカス、労務/ペンションに焦点を絞って詳細に説明、税務ストラクチャリングの主な問題点、デューデリジェンスの準備としてシークレット情報の準備と保存、工場の現場視察とテクニカルスタッフの訪問と環境分析、アクションプランについて、マネジメントとの議論、主要検出事項の要約と同時にマネジメントによる行動について説明した。

セルサイドによるデューデリジェンスのプロセスの準備として社内スタッフとの連携や話合い、実行段階とコンプライアンスにおける役割の決定、弱点とリスクの特定、重要な問題点がトランザクションに与える影響の評価、矯正的なアクションプランの決定、バイサイドによるデューデリジェンスのプロセスの戦略的決定のためのシークレット情報の保持契約、MOU、LOI、財務ストラクチャー、対象企業の初期評価などについて説明した。

最後にL&P Advogadosのエンヒケ・ハダードパートナーは、「 ブラジルにおける典型的な法務上の検出事項及びリーガルストラクチャリング」について、法務デューデリジェンスのコンセプト、目的、実践としての販売並びにジョイントベンチャー、IPO、価値分析のプロセス、投資への傘下、新規の統括主体の任命、株主調査、分析の範囲としての会社並びに訴訟、不動産、活動の範囲として契約上、規制と環境、無形不動産、保険、M&Aトランザクションとして株式の売買、事業、資産、及び事業部門の売買、役員による経営権の購入などについて説明した。

またM&Aトランザクションの主要契約の主な規定として、株式の売買、価格、支払い方法、従前の条件、責任の特定、補償の校正、競合禁止、守秘義務、包括契約、言語、司法調停と裁判所、補償として価格の一部の支払い保留、銀行保証、貸し金庫、抵当、担保、個人補償、約束手形、保証口座、主なクロージング後の問題点は、一般的に補償とストラクチャリングの手続きに関連して発生すると説明した。

また当日の資料準備、音響機器及び同時通訳の一切の費用はPwC社が負担し、同社主導で本セミナーが実現された。

左から講演者のPwC会計事務所トランザクションサービス部のレオナルド・デロッソパートナー/PwC M&Aタックス部のホドリゴ・バストスパートナー/L&P Advogadosのエンヒケ・ハダードパートナー/PwCコーポレートファイナンス部のアレシャンドレ・ピエラントーニパートナー(Fotos: Rubens Ito / CCIJB)

左からコンサルタント部会の澤田吉啓部会長/都築慎一副部会長/関根実副部会長

会場一杯の68人が参加して開催されたセミナー

講演を前に関係者一同が打合せ(左から澤田吉啓コンサルタント部会長、平田藤義事務局長、PwC社カロリーナ・サカマ氏、同社トランザクションサービス部のレオナルド・デロッソパートナー M&Aタックス部のホドリゴ・バストスパートナー、コーポレートファイナンス部のアレシャンドレ・ピエラントーニパートナー、矢萩信行シニアマネジャー、都築慎一コンサルタント副部会長)


 

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