サンパウロ州工業連盟(FIESP)と在サンパウロ総領事館共催のノンフィクション作家山根一眞氏の「環業革命~エコ時代の日本のモノづくりと世界貢献」講演会が2009年9月25日午前9時から午後1時まで100人以上が参加してFIESP講堂で開催した。
山根さんは今から38年前に初めてブラジルに自衛隊の練習艦隊に乗ってきたのはジャーナリストでサンパウロ新聞東京支局の日下野良武さんが押し出してくれ、3ヶ月かけてサントス港に着いた時には数万人の1世が出迎えてくれた。
陸路でアマゾンに1ヶ月かけて行き、トランス・アマゾニカ道路が開通して1週間後に1,200キロメートルを踏破したが、アルタミラはアメリカの西部劇と同じで自己防衛のために皆がピストルを提げていた。
またトランス・アマゾニカ道路はモーゼの十戒と同じ様に高さ40メートルの森林が両方の道路わきに延々と続いていたが、最近では水平線が見えるようになり、来るたびに胸が痛む。
環境に関心を持ったのはアマゾンが原点であり、私は文型のジャーナリストであるが、理系に興味があり、一般の人にわかりやすい話しができると思うと述べ、なぜ温暖化が悪いのか、なぜ発生したのか、世界の人は理解をしていない。
なぜ二酸化炭素排出が悪いのか、見えないものを論じることは非常に難しく、アマゾンの熱帯雨林がCO2を吸収したのは見えないが、日本のすばらしい衛星では目に見えることが可能となる。
今年の1月23日に衛星「いぶき」打ち上げて 宇宙から温室効果ガス濃度を10月から観測開始、結論はわれわれがどういう生き方をするかが重要となる。
飛行機から見たアマゾン上空の雲はアマゾンにしかない独特の雲であり、森林から水蒸気となって雲になって雨を降らして、アマゾンに来てよかったと思うが、私の乗っている飛行機はCO2を排出しているためにCO2を出さない飛行機を開発しなければならない。
石油燃料以外の飛行機の開発が必要で液体酸素と水素燃料の飛行機を製造して宇宙に出れば45分で世界一周が可能、日本からブラジルには28分で来ることが可能で技術の進歩は新しいものを造り、人類の力と工業の力で克服しなければならない。温暖化対策は負担が大きいが、新しい産業が生まれてそれ以上の恩恵を受けることが可能となる。
資源のない日本では日本人が努力と情熱を持って世界2位の経済力を持つ国となったことに私は誇りを持っており、日本の知性とブラジルの資源で緊密に協力して世界のために役に立つことを実行して行ければすばらしい。
私はロシアのサンクトペテルブルグ、モスクワ、アマゾン日本人移民80周年記念でトメアスー、マナウス、リオそして今、サンパウロで講演しているが、今回の世界10ヵ所の講演でロシアでの環境に対する認識が高いこと分かり、経済を牽引している BRICsの一国であるブラジルのFIESPがBRICs諸国に呼びかけて環境フォーラムを開催すればすばらしい。
1996年にパラー州で国際環境フォーラムを開催して18時間の議論をし、坂口陞(のぼる)さんが森林農業について講演、しかし誰も実行を希望する人はいなかったが、今ではトメアスーで日系人200家族、トメアスー周辺のブラジル人の5,000家族が森林農業を採用して今後はアマゾンの森林は回復、また森林を伐採して放牧するよりも収益率が高く、日本人の貢献に誇りを感じている。
ガーナではカカオ栽培に農薬を使って食品の安全性で問題があり、食品の安全性に厳しい日本では大手製菓が無農薬栽培のトメアスーのカカオ購入の契約を行い、日本人が栽培しているものは安全であり、チョコレートが売れれば森林が増えるサイクルとなり、80周年記念では最もすばらしいニュースとなった。
1997年にトメアスーで私が植えた木が残っており、日本と比べればすごい成長が速く、ブラジルは森林も天然資源も恵まれて遠大な可能性があり、神様は不公平であるが、温暖化になれば寒いところでも作物栽培が可能と間違った考えを持っている人もいる。
1992年にリオ市の地球環境サミットで「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」が提起されたのが原点であるが日本は不参加、その後1997年に京都議定書で具体的なスタートを切った。
2034年には世界の人口は100億人を突破、特にインドと中国の化石燃料消費が大幅に増加してCO2排出が急増、講演を行ったサンクトペトロブルグ、モスクワ、ベレンでも車の大渋滞が発生している。
岩塩層下原油発見でルーラ大統領は「舞様のお恵み物」と感激、原油埋蔵量は現在がピークであり、消費は益々拡大して行くためにエネルギーとしての消費を転換する時期にきているためにリサイクルしなければならない。
日本でも最も気に入っている福井県の一乗谷朝倉氏遺跡は自動販売機設置が禁止されており、日本の美しさはこの場所に凝縮されているが、100年間で初めての大水害で大きな被害が発生、温暖化の影響で海水温度が上昇するために世界中で水害が発生、インドネシアでは森林火災、中国では砂嵐発生、スイスではサハラ砂漠の熱風の影響で氷河が減少している。
1970年代の北九州市は7色の煤煙、洞海湾は水質汚染被害が酷くて生物が生存できなかったが、工場排水処理の環境技術で水質が改善、今ではリサイクル団地の北九州エコタウンセンターが誕生して世界中から見学に訪れている。
日本が開発している4メートルの高さの波のある海にも離着陸できる水上飛行艇US-2は12トンの水を積載できるために、無害な消化剤との混入で世界中の森林火災消火に役立つと見込まれ、日本企業は今までの1/30の水量で火災鎮火できる消化剤の開発も行ってコストダウンに結びつく。
日本では金融危機の影響で車販売は大幅に減少しているが、ハイブリッドカーのプリウスは売上げトップ、燃費が分かるパネル表示もあり、1リットル40キロメートル走れるために経済的であり、エコロジーはコスト高と考えられていたが、エコロジーはエコノミーであり、今後の本流は電気自動車になると見込まれている。
山根さんは環境問題を話し合う時に説得力をつけるために自宅をエコハウスにして山根式天然住宅システムとして雨水、ソーラーパネル、蓄電、人工降雨装置、地下水、熱交換器などを利用して、大切なお客を迎える時には虹を発生させる。
また太陽が届かない深海に「深海6400」で潜った時に320度の熱水からメタン、硫化水素を食べている微生物を食べるカニを見た時は生物は環境に合わせて生きている生命の神秘さを確認、人類は多様性の生物の世界を滅ぼしてはいけない重要性に目覚めなければならないと結んで講演を終えた。
講演中のノンフィクション作家山根一眞氏
山根氏の環境問題講演を会場一杯の参加者が熱心に聞き入る