国土交通省主催のサンパウロ都市交通・都市整備セミナー開催

国土交通省並びに(社)日本モノレール協会主催の「サンパウロ都市交通・都市整備セミナー~わが国官民が有する軌道系交通や都市整備における技術・経験を紹介~」が2009年11月3日午前9時から午後1時までルネッサンス・ホテルに130人が参加して開催された。

初めに東京大学の家田仁教授「都市構造、交通、持続可能性 ~世界最大の公共交通都市東京~」と題して世界の大都市圏(メガロポリス)リストで世界最大の人口の東京都市圏は3,360万人、7位のサンパウロは2,060万人、巨大都市のメリットとして集積経済、デメリットとして渋滞や環境の脆弱性、メガロポリスの輸送システムでは東京の鉄道比率が高く、二酸化炭素の排出量はソウルなどと共に低いが、広大な国土を擁している車社会の米国、オーストラリアやカナダの大都市の一人当たりの車のエネルギー消費が高いと指摘した。

東京都23区の鉄道利用率は都市交通全体の73%と圧倒的に高く、自動車は9%、バスは2%にとどまり、発達した鉄道ネットワーク、品質の高いサービスを提供、東京の鉄道の総延長距離は2,300キロ、民間鉄道会社25社、1日あたりの鉄道利用者は3,560万人に達している。
東京の輸送効率は世界でも飛びぬけてトップ、地下鉄は80年前から開通して総延長距離は300キロメートル、1960年代から路面電車区間を地下鉄に替えだした。

輸送システムの速度比較では郊外電車が最も速く、地下鉄、モノレールと続き、バスが最も遅く、東京並びにコペンハーゲンの交通網は放射線状に延びる「手のひらと指」と呼ばれるが、車社会のロスアンゼルスは道路と駐車場が大きな比重を占めている。

日本の大都市は郊外電車の延長と共に沿線の都市開発やニュータウン造成、テーマパーク、駅構内のステーション・ルネッサンス開発などで大都市のネガティブ面の解決を図ってきたが、日本の都市整備の経験をサンパウロ市の都市再開発の参考に役立ててほしいと強調した。

国土交通省都市・地域整備局整備室の有安敬室長は「日本における軌道系交通システム整備とまちづくり」と題して、1950年代から70年代の日本は現在のブラジル同様に高度経済成長を達成、都市の区画整理、路面電車の廃止、1964年の東京オリンピックに伴う新幹線や東京モノレールの開通、多摩ニュータウンの造成など急速に発展した。

しかし1970年から90年代は1973年のオイルショックや国鉄の民営化など急速に都市交通の環境変化を余儀なくされ、インフラコストの安い多摩モノレールやゆりかもめの開通、2000年以降は人口減少、ワールドカップ開催、二酸化炭素排出が最小限の環境にやさしい軽量軌道輸送(LRT)や次世代型路面電車(BRT)の導入、 沖縄や福岡の都市モノレール、大阪や神戸のガイドウエイ輸送システムの導入など各地のモノレールについて説明した。

国土交通省鉄道局総務課国際業務室の平石正嗣課長補佐は「世界各国に貢献する日本の軌道系交通技術」と題して、初めにモノレールが導入されたのは1901年のドイツ、日本は1957年からと大幅に出遅れたが、今では世界全体の50ヵ所の20%に相当する10ヵ所で導入、急勾配や半径の小さなカーブなど不利な条件化でも建設可能であり、環境にやさしくて建設コストやメインテナンスコストが安いと有利な点を述べた。

日本のモノレールはシンガポール、中国、韓国やアラブ首長連合国でも導入されており、重慶市は交通緩和や大気汚染改善のために導入、2号線はJICAが融資して2005年から開業、3号線は都心と空港を結んでいる。

シンガポールのモノレールはカーブの半径が35メートル、最高勾配が57.9%の悪条件下で建設されて2007年に開業、ピーク時には4,000人が利用、高温多湿のドバイのモノレールは海岸沿いを走るために塩害防止が施されており、2009年4月から開業している。

東京都都市整備局の座間充部長は「多摩都市モノレール整備と沿線まちづくり」と題して、1950年代から開発に着手された東京都の多摩ニュータウンの核都市を結ぶモノレールの概要と重要性、利用者の内訳、核都市のモノレール駅周辺の土地利用状況、飛躍的に伸びる駅周辺の商業活動などについて説明した。

東京モノレール株式会社 技術・企画部の田村隆文部長は「東京モノレール45年間の運営と概要」と題して、浜松町と羽田空港を結ぶ東京モノレールは開通45年間で無事故、時刻表通りの発着、運河や鉄道上に建設可能で駅のスペースは最小限、モノレール内からの良い眺めと安全性、低い環境汚染や振動性、来年10月からの国際線ターミナルへの乗り入れで24時間営業や利便性などについて説明した。

午後2時30分からJICA、サンパウロ市交通局並びにサンパウロ交通機関公社(SPTrans)共催のサンパウロ市都市交通整備事業準備調査の公聴会が開催、初めに芳賀克彦JICAブラジル所長はサンパウロ市内を流れるチエテ川の洪水対策事業「チエテ川流域環境改善計画」への円借款、ポルト・アレグレ市において日本製車両を運行しているポルト・アレグレ都市内鉄道会社はJICAの集団研修に多数の研修員派遣などを説明、サンパウロ市へのモノレール導入に積極的な姿勢を示して、償還期間が長くて金利の低い円借款などこのワークショップで明らかになると開催挨拶を行った。

サンパウロ市のジルベルト・カサビ市長代理のルイス・マシャード技師はサンパウロの地下鉄は1974年に開通、旧CMTCのSPTransはサンパウロ市交通局の管轄下におかれているバス運行管理会社は70年以上バスを運行、2年前には地下鉄のない市内南部の貧困地域ボイ・ミリン地区にバス回廊を検討、しかし日本移民100周年をきっかけにJICAの支援でモノレール建設のための議論を展開していると説明している。

ラウリンド・ジュンケイラSPTrans交通計画監査役は「サンパウロ都市交通」について、サンパウロ市はGDPの28%の経済規模を擁してブラジル経済を牽引、またサンパウロ市並びにゴイアス市以外の大都市は海岸部に位置、サンパウロ州、メトロポリタン並びにサンパウロ市の交通管理局、ブラジルの中西部は食料基地であるが、輸出するための道路や港湾のインフラ整備の必要性、進展しない太平洋と大西洋を結ぶハイウエーや鉄道プロジェクト、サンパウロ市内は混雑する地下鉄や道路、汚染、トラック規制、人口増加、高齢化、犯罪多発など多くの問題を抱えているが、工事の進んでいるサンパウロ都市圏環状線、2014年には111キロメートルまで延長される地下鉄、市内のバス回廊などが計画、チラデンテス・エクスプレス、セルソ・ガルシア・エクスプレスやボイ・ミリン地区へのモノレール導入などサンパウロ市内も東京同様に地下鉄、モノレール導入や鉄道ネットワーク構築のためにJICAや日本の協力が不可欠であると強調した。

JICAの江口雅之ブラジル事務所次長は「JICAからの支援」について政府開発援助(ODA)として技術協力(技術協力プロジェクト、個別専門家派遣、研修員受入など)、有償資金協力(円借款)及び無償資金協力(贈与)などについて説明、ブラジルは50年前に農業支援分野で開始、昨年は150カ国向けに90億ドルを融資、日本への技術研修は260人で合計9,000人、エキスパートは40人で合計2,300人、国際協力銀行(JBIC)の円借款担当部門と統合した新JICAのシナジー効果、輸送部門の支援としてキャパシティ・ビルディング、各国にあった交通システム、都市部の生活レベルアップのための持続的な開発、ベトナムのホーチミン市の都市鉄道、バンコクの大量輸送システムプロジェクト、ニューデリーの大量高速輸送システムなどの円借款を説明、日本でモノレールの視察を行ったカサビ市長はモノレール導入を優先しており、円借款の可能性を受ける可能性を述べた。

最後にサンパウロ年交通政治事業準備調査についてジャイカの奥津明男調査団長は調査団18人、トンネルエキスパート1人の19人で11月は2回目の調査、来年5月に調査結果の取りまとめをして建設費の積算、また2号線のモノレール建設ルートのイメージビデオを見せながら代替ルートチェック、システムの選定、モノレールの適正乗客数、救援列車との連結に適切な先頭車両の形状、自由自在な座席配置、事故の発生が殆どない日本の優れたモノレール技術のアドバンテージを強調、今後もSPTransや市交通局と協力して日本のモノレール導入を進展させていくと強調した。

         

 開催挨拶の芳賀克彦JICAブラジル所長

        

 左は国土交通省の松谷春敏同省大臣官房技術審議官/テーブルの左から3人目は飯星ワルテル下議/大部一秋総領事/デウスビッチ・デ・ソウザ都市交通部長

               

サンパウロ年交通政治事業準備調査に講演するジャイカの奥津明男調査団長

 

 

 


 

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