日伯社会保障協定に関するセミナーに会場一杯の66人が参加して開催

コンサルタント部会(澤田吉啓部会長)の日伯社会保障協定に関するセミナーが2012年4月11日午後4時から6時まで会場一杯の66人が参加して開催、元厚生労働省年金局国際年金係長で、ブラジルとの社会保障協定の提携で大いに力を発揮したサンパウロ総領事館の坪井俊宣領事が講師を務めた。

初めにコンサルタント部会の澤田吉啓部会長が開催挨拶として、回章をだしてから2時間で満員御礼を出すほど会員の関心が高いセミナーであり、日伯社会保障協定に関する疑問点を払拭してほしいと説明した。

初めに坪井領事は日伯社会保障協定について、INSS保険料の企業負担分の取扱いや、現地法人の役員への本協定の適用について様々な憶測が飛び交ったことについて、非常に重要なことは正確な情報の把握であり、本日の説明会では協定条文を資料として配布し、個々の事項の根拠がどこにあるのかについても併せて説明したいと述べた。


【社会保障協定の概要】

社会保障協定の狙いは国際的な人材交流の活発化に伴う年金等の問題解決であり、日本が協定締結している国は欧米諸国など14カ国、ブラジルとの協定締結は南米で初めてであり、今後は他のBRICS諸国との協定締結が予定されている。

なお、中国には13万人の日本人が生活しており、今年7月から外国人にも社会保険強制加入が適用され、二重加入が発生して年金の掛け捨てとなるために、社会保障協定の締結が急がれている。


【一時派遣について】

坪井領事は例として派遣期間が5年以上となる場合、協定第7条2項に基づき、プロジェクトが伸びた場合など明確な理由があれば、3年までの延長が可能であると説明。また、場合によればフレキシブルな対応もしてもらえると付け加えた。

「1年のインターバル規定」では、協定第7条3で規定されており、また二重加入は協定第12条で強制加入について解消される旨規定されているが、任意加入は認められていると述べた上で、ホームページに記載されているように、3月1日から厚生年金についても任意加入できるようになったと説明した。

「適用証明書」の取り扱いについて、ブラジル当局の担当官との間で何か問題が生じた場合には、担当部署や担当官の名前、誰のケースについてなのか等の具体的な情報を提供していただければ、問題解決に繋がると述べた。

これについて、ある企業の方より、INSSへの保険料の支払いをする必要が無いとは認識しているが、ブラジル当局側の対応に対して不安があるので、もう少し様子を見る必要があると聞いたとのコメントが出されたが、これに対して、坪井領事は法律的には問題は無く、監査が入っても適用証明書を提示すればよいと考えるが、もし問題が生じた場合には具体的な情報を提供してほしいと述べた。

また派遣期間の起算点に関する質問に対して、坪井領事は3月1日以前からブラジルで就労していた人は3月1日に就労開始とみなされ、3月1日以降に赴任した人は赴任日(適用証明書に記載されている派遣開始日)となると説明した。


【保険期間の通算について】

日本の年金法では、日本国籍を有している者の海外滞在期間はカラ期間となり、年金額には加えられないが、年金受給資格期間に加えることが可能。

例えば、日本に10年、ブランスに10年、米国に10年、ブラジルに10年それぞれ加入していたといった場合(いずれも二重加入ではない。)には、日本の年金受給のために二国間の通算は可能であるが、第三国の保険期間は算入しないと説明した。


【その他】

ブラジルの労災保険はINSS保険料に一体不可分なものとして含まれており、協定により当該保険料が免除されるとブラジル労災保険は適用されないことに加え、日本の労災保険は海外で就労する労働者に適用されないため、何らかの労災保険に加入することを勧めると述べた。

協定発効前にブラジルで年金保険料を納めた人が日本に帰国して65歳になれば、ブラジルの年金が受給できるのかの問い合わせに対して、坪井領事は受給できると思われるが、帰国前に書類や記録を確認しておくことを薦めると説明、また協定締結後は日本でブラジルの年金請求が可能となったと付け加えた。

澤田部会長は今回のセミナーに参加できなかった会員も多いので、要望があれば再度、セミナーを開催並びに地方都市や他州の会員向けのセミナー開催も坪井領事に快諾してもらっていると丁寧にお礼を述べ、参加者は不安一掃できたために、坪井領事に大きな拍手が送られ、素晴らしいセミナーとなった。

講演者のサンパウロ総領事館の坪井俊宣領事(Fotos: Rubens Ito / CCIJB)

会場一杯の66人が参加して開催されたセミナー

 

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