8月2日(土)市内のローザ・ロザルン(イベント専門の会場)において日伯両国の新たなビジネス分野での交流拡大により両国の経済関係が より多様かつ強固になる事を期待してJETRO、日本経済新聞、地元紙ValorEconomicoはブラジル日本商工会議所の後援下でビジネスフォーラ ムが開催された。
超満員の会場には土曜日にも関わらず北はパラ―州、南リオグランデ・ド・スル州に至る政府関係者、ブラジルの経済団体、日本政府の在ブラジル公館関 係者またサンパウロを中心に多くの日系、非日系の民間企業の代表者等また日本から総理に随行した政府関係者や経済ミッション等を加えると約400人を超え るビジネスフォーラムだ。
このフォーラムが始まる1時間半前には同会場の地上階でも日伯医療分野規制に関するセミナーが開催され合わせると700人規模に達する。ビジネス フォーラムには会議所関係者は理事会社の代表者を中心に部会長、約5~60名が参加、全会員宛てに案内した医療セミナーにはメディカル分科会を中心に大勢 が参加した。
オープニングセッションでは先ず、主催者の石毛博行日本貿易振興機構理事長からブラジルは地理的には遠く離れているが、100年以上も前から日系移民を受け入れ、多くの日本企業が進出する等、心理的には非常に近い国である。そのようなブラジルに於いて安倍晋三内閣総理大臣をはじめとする皆さまをお迎えして本日のフォーラムが開催出来る事は私たちにとって大変大きな意義があると挨拶。プログラムの概要を簡単に説明した。
第1セッションで「広がる日伯ビジネス」をテーマにこれまでの日伯間のビジネス交流のこれまでのレビューと今後の展望について講演頂く。
第2セッションでは「ブラジルへの期待、日本への期待」と題してインフラ、食品、建設等、日伯双方への期待について、
第3セッションでは「新しいフロンテアへ」をテーマに新しい産業を興し創造しようとされている企業の方、特に中堅・中小企業の方々にもビジネスポテンシャルを紹介頂く事になっている。
本日の日伯両国の良好な経済関係は従来からの友情と信頼によるところが大きいと思う。ただこれは絶えずお互いに交流をし、刺激をし合う事で発展するものでもある。本日のフォーラムがその契機になる事を祈念したい。
主催者挨拶に続き、安倍総理が記念講演(下記)、来賓として経団連の榊原定征会長およびジョゼ・マスカレーニャス ブラジル全国工業連盟(CNI)ブラジル日本経済委員長、ジェラルド・アルキミン サンパウロ州知事が挨拶を行った。
※以下安倍総理の記念講演のテープ起こし。8月3日テープおこしの後、外務省サイトにスピーチ文があった事に気が付き部分的に照合・抜粋、率直な感想を交えて記事にした。(平田事務局長)
安倍総理は冒頭、日本の総理大臣や閣僚は、ブラジルや中南米の国々に、もっと頻繁にやって来ると説明。そうすることによって、ブラジルはじめ中南米 の国々と日本は何をしたいのか、分り易く3つのポルトガル語訳を読み上げ、progredir juntos、liderar juntos、inspirar juntosを披露、観衆をドット沸かした。発展、主導、インスピレーションを共にしようと言う意味だ。
またこれ等「juntos」を、日本の中南米外交における、「三つの指導理念」と位置付け、手を結びあい、心を通わせ合って苦労や努力を共有出来る歓喜を共にする大切さを強調した。
progredir juntos
力強い前進を始めた日本と、中南米の間で、経済の結びつきを一層深めよう!と訴えた。
「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」という第一、第二の矢に継ぎ、民間投資を喚起する第三の矢(成長戦略)を説明。
農業で、医療分野で、あるいはエネルギー産業で果敢な改革を続けており日本を頼れるパートナーとして欲しいと訴えた。
日本から経済界や各界のトップ・リーダーがたくさん同行、共に発展を目指し日伯のまた中南米諸国の企業家達との間で互いに実りを齎したいとアマゾン熱帯雨林の監視衛星といった最先端の分野の協力の可能性も付言した。
産業人材の育成という面でも日本はユニークな貢献が出来ると故人アイルトン・セナの印象的な語りを回想、日本企業が持つ工場の作業現場が、働く喜び を教える学校の様なものが著しい特色だと象徴的な日伯合弁事業の1つであったウジミナス製鉄事業を指して「ウジミナス学校」と呼んだり、造船の合弁イシブ ラスの「イシブラス学校」と呼んだ事を例に挙げた。
最新データによれば、日本企業の対外進出件数で、中南米は、他の何処より多い新規進出件数を示している事に言及、だからこそ、プログレジール・ジュントスだ。日本企業を、どうぞパートナーにして下さい。共に発展していこうではありませんかと観衆を魅了。
liderar juntos
共に、何を、どんなふうに、リードしていこうというのか問いかけ、日本にとっては中南米諸国とは、いつも新しい地平線を開いてくれる国々であったと前置き。
日本がメキシコ、チリ、ペルーとの結んだ経済連携協定(EPA)大いなる成功例であるとし、これら3国を含む、TPPの交渉に臨んでいる事を明かした。
また、現在EPAをコロンビアと交渉中である事に触れ提携の暁には太平洋同盟加盟国の全てとEPAのネットワークが構築できる事になると表明。
過去の歴史にも遡り、日本が近代化に向け格闘していた時、平等な条件の条約を、日本といち早く結んでくれたのも、それから戦後、日本が国際連合に加盟する時、揃って賛成してくれたのも、中南米の国々であったと回顧。
今や日本が、外交の地平を広げようとするとき、中南米諸国こそは、日本が頼りとすべきパートナーである。日本と中南米には、価値と、志における共 通性がある。平和を希求してきた、歩みの一貫性。自由を尊び、民主主義を大切にし、人権と、法の支配を尊重する価値観。日本と中南米が一緒になって、世の 中を少しでも良くしていこうとするとき、これらが私たちの足腰を支えると力説。
リオ・サミットが、気候変動枠組条約と、生物多様性条約につながったことは、誰もが知っていると前置き、日本はいま、ブラジルと伴に、気候変動対策 に役立つ議論を、途上国、先進国の垣根を越えて推し進めて行けるよう非公式会合を主催している事を明かし、国際社会をポジティブな向きへ推し進める力とし て、さまざま困難な国際課題に立ち向かう「liderar juntos」の好例だ。
日本とブラジル、日本と中南米諸国は、地球を覆う課題と立ち向かうには、これ以上ない資格を備えている」と確信。
リオ・グランデから、リオ・デ・ラ・プラタまで、自由と、民主主義、人権と、法の支配を重んじる皆さんの生き方は、幾多の試練を乗り越えながら、常に一貫 していた、日本人は、そこにとても心丈夫なものを覚える、だからこそ、「liderar juntos」なくてはならないと強調。日本は中南米諸国首脳の皆さんと、中南米諸国において、またあらゆる機会をとらえて、話し合っていくつもりと力 説。
世界の平和、地域の平和に、日本がもっと積極的に貢献できるよう、安全保障の法制度を整備することに言及。
ハイチに赴いた自衛隊の活動は、感謝と、称賛をいただいた。ハリケーン被害の救援に出かけたホンジュラスでも、自衛隊員は、感謝の歓呼に包まれたと説明。
再びチリの女流詩人ガブリエラ・ミストラルの「エル・プラセール・デ・セルビール(奉仕の歓び)」を引用、日本の旗印、「積極的平和主義」を掲げる決意になったと述べた。
世界から不幸を、危険を、法の蹂躙を少しでもなくして行く様、ともに先頭を歩もうと訴えた。軍縮で、不拡散で、さらには環境問題で、 「juntos」、一緒に働ける分野が、近年とみに増えた。あらゆる機会をとらえて協働し、世の中を少しでも良い方向へと一緒にリードして行こうと強固な 決意を表明。
inspirar juntos
平和で豊かな世界を築き、子孫に残していくためと明快に話した。
日本が中南米へODA開発援助は累計で300億ドル以上に及んだと事や「不毛の大地」と言われた広大な土地セラードを、大豆という温帯作物を、熱帯地域で 立派に育ててみせ、世界最大の穀倉地帯に変貌させた日本人の本郷豊氏の20年以上の苦闘を紹介、何もなかったところから、食品加工のように、産業の一大バ リューチェーンを構築。日本とブラジルの協力が成し遂げた世界史的達成だ。セラード開発で経験を積んだブラジルの専門家は、土地柄が似たアフリカで、大豆 の生育に取り組んでおり、夢の再現まさしくインスピラール・ジュントスではありませんか。と会場を感動させた。
今では鮭の輸出量で世界一になったチリでも日本人の長澤有晃(ありあき)や白石芳一(よしかず)によるさけ養殖の成功例を挙げ中南米の大いなる可能 性に、若々しい夢を追った方々の志を継ごうとするなら、私たちに必要な心がけは、インスピラール・ジュントスです。心と、心を、感動の絆で結んで行きましょう!と呼び掛けた。
日本と中南米には、400年以上にわたる、長い友好がある。そこに、新たないのちを吹き込もう。若い世代のため、人と、人との交流を心がけよう。中 南米の未来を担う若いリーダーたちとの絆を深めるために、交流事業を拡充していこうと意志表明。早速本年度は、中南米の次世代リーダーと日系人1000人 以上の方に、多種多様な交流プログラムを提供する。
6世代にわたって日系の皆さんが築いてこられた信頼こそは、中南米における、日本に対する信頼の礎である。日系の皆さんが忍んだ労苦を思う時、私は いつも、襟を正したい思いに駆られる。「日系人次世代育成研修」と、「日系社会ボランティア」のプログラムを、それぞれ大幅に増やす。 日系人の皆さんにお手伝いをいただきながら、中南米で、日本語教育にもっと投資する。日本語を教える先生達をサポート、ITを活用し、日本語教育の効率を 上げて行く等と約束した。
しんかい6500
安倍総理はjuntosの精神で事に臨む時、私たちの協力が恵み深いものになるのだと教えてくれたのは、昨年、2013年の、4月から5月にかけて起きたある出来事を紹介。
ブラジル沖合の底に、日本の有人潜水艇「しんかい6500」が潜った。まだ見ぬ生き物や、海底の地層を探りに行った旅は、日本とブラジル双方の科学者たちが、知恵と、汗、努力を持ち寄った共同研究であった。
ブラジル沖の探査をリードした日本の学者は、日本とブラジル双方から、違う文化を持ち寄った科学者同士に本当の友情が生まれたことが、一番の思い 出だと述べた。つまりjuntosの喜びが、科学的発見にも増して大きな収穫だったと、日本人科学者たちは感じた事を説明、聴取者の感動を誘った。
「しんかい6500」の栄えある乗組員、サンパウロ大学で海洋生物学を研究、
する祖国の沖、母なる海の底まで潜ることを15年間追い求めたヴィヴィアン・ペリザーリ(Vivian Pellizari)女史を紹介。ペリザーリ教授達がJuntosの精神で、日本の学者、専門家たちと、一緒に働いたというそのこと自体を、総理は何より すばらしいと思ったと讃えた。
リオから東京、夢のリレー
安倍総理はここにおいでのブラジルの皆さんと、私たち日本人との間には、格別のjuntosがあると先ず前置き。
ブラジルの皆さんには2016年、私たちにはその4年後に、若者の祭典オリンピックがやって来る。東京は、リオデジャネイロから、夢のたいまつを引き継ぐ。リオでブラジルの、中南米の若者が見る夢は、そのまま東京にリレーされる。それが、6年後、2020年、と説明した。
ここを一つの目途として、日本の若者に、どしどし世界に出て、外国の若者と触れ合うよう促し続ける。「Sport for tomorrow」と名づけたスポーツ普及を助ける事業は、中南米でこそ、大いにやるつもりだと表明。
「どんなに遠くにあると、そう見えたとしても」と、セシリア・メイレレスは美しい詞に、「あなたたちは、私の記憶に留まり続け、私の念頭に常にあ り、私にとって、希望であり続けるだろう」と表現。アイルトン・セナと、ホンダの創業者、本田宗一郎は、メイレレスが詠んだとおりの、魂の結合を培ったこ とを、私たちは知っている、距離は、二人を隔てなかったと述べた。
発展を共にしましょう!世の中を良くしていくため、一緒に働きましょう!
すべての土台として、魂と、魂が触れ合って、深い共感を育てるよう、人と、人との交流に、力を注いでまいりましょう!日本と中南米を結び、互いの協力をどこまでも深めていく、三つの指導理念です。日本と中南米、Juntos!! 有難うございました!と総理は結んだ。
記念講演中の安倍総理
ジェラルド・アウキミン知事
ジョゼ・マスカレーニャス ブラジル全国工業連盟(CNI)ブラジル日本経済委員長
経団連の榊原定征会長