日本経団連とブラジル全国工業連盟(CNI)が日伯経済合同委員会を東京で開催

5月17~18日、日本経団連・日本ブラジル経済委員会(槍田松瑩委員長)は大手町の経団連会館で、ブラジル全国工業連盟(CNI)と第13回日本ブラジル経済合同委員会を開催した。ブラジル日本商工会議所は30数年来、日本経団連とはカウンターパート関係にあり、歴代会頭の中には随時、東京会議に参加の経験がある。今回の東京会議は中山立夫会頭に加え平田事務局長も参加した。

以下平田事務局長の会議メモと談話
本合同委員会は2007年3月、サンパウロ開催から3年ぶりの開催である。開会式は午前9時半、経団連ホールで行われ日本経団連 槍田 日本ブラジル経済委員長に続きブラジル全国工業連盟(CNI)マスカレーニャス・ブラジル日本経済委員長およびネーベス駐日ブラジル大使ならびに島内駐ブラジル日本大使が各々挨拶した。

槍田委員長は近年日伯関係には大きな変化が見られ、世界金融危機以降、世界経済は先進国から新興国へ移行しつつあると前置き、2014年にワールドカップ、16年にはオリンピックの開催など大規模なインフラ投資が目白押しの中、技術協力を含め日本が協力できる分野は多いとし、企業による技術移転が可能になるように、より一層のビジネス円滑化の重要性を説いた。各種法制度の改善を昨年からスタートした政府間レベルの日伯貿易投資促進合同委員会に期待を寄せた一方で、2日間に亘る本合同委員会会合の活発な議論の展開を望んだ。

マスカレーニャスは1974年に発足した日伯経済合同委員会の歴史を振り返りながらブラジルはここ20年間に大きな変化を遂げ、特にエネルギーやインフラの分野で新しいビジネスの展開が期待できるとし、2010年はインフレの安定を図りながら6%の成長を予想、岩塩層下の深海油田開発の投資拡大にも言及した。近年の日伯間の往復貿易高や日本からの対内直接投資状況にも触れ、ブラジルの企業が国際化するにつれ輸出の強化や新規投資分野で個々の企業は両国政府の協力で成り立つ事を強調した。

ネーベス大使は冒頭に日伯間のGDP成長率、ブラジル5.5%、日本2%成長率予想に言及しながら日伯間に存在する非関税障壁、各種制度特に衛生検疫上の問題、ブラジル企業が日本企業とJVの際のブロクラシーの存在、ブラジルからの豚肉輸出など両国間の懸案・協議課題として挙げた。

一方、島内大使は健全なマクロ経済で運営するブラジルを褒め称え、今年は6~7%の成長、自動車の生産台数は世界屈指、深海油田開発、2014年のワールドカップ、16年のオリンピック開催までのインフラを中心とした莫大な投資、オリンピック開催時は世界第5位の経済大国になる勢い、日本の誇る高度技術とブラジルが保有・誇りとする資源・エネルギーや先端技術および大消費市場、グローバルな技術協力の一例を地上デジタルTVの南米・アフリカ諸国への普及、リオ・サンパウロ間の新幹線導入、日伯象徴のセラード開発を手本としたモサンビークへの3国間協力など、躍進するブラジルの現状とポテンシャルの魅力をアピールした。

今回2日間に及んだ合同委員会の特徴は日伯間の中長期を見据えたあるべき将来像に立脚、今現存する重要なテーマを含め全て網羅されている事だ。30数年の歴史を持つ日伯経済合同委員会は原則的に隔年1回、両国で交互に開く慣わしであるが今回の東京会議は第13回目にあたる。ブラジル経済界が回復基調にある中で、将来の両国経済協力について話し合う充実した会合となった。

以下のテーマの種類や密度の濃い内容と参加者メンバーの数がそれを如実に実証している。加えて昨年からスタートした両国政府の関係省庁と民間を交えた事務次官レベルの対話と協議の場、日伯貿易投資合同委員会が追い風となり、本合同会議を後押ししているのも事実である。地理的に最も遠い両国の間で昔から日伯関係強化を叫び続けてきたが、今それが具体的な形で実現されつつあると言っても決して過言ではない。

初日のテーマは概ね両国の政治・経済情勢について、世界的経済危機からの回復と持続的成長戦略(経済動向、政府の経済政策に対する見方、戦略的課題)、日伯両国関係と協力の可能性のある分野に関する戦略的な検討が第一全体セッションで討議された。ブラジル側は開発商工省のイヴァン・ハマーリョ事務次官の名代として、ファビオ・ファリア企画開発局長が、また、日本側は倉内東京三菱UFJの常務執行役員が発表した。

意見交換では、ブラジル政府の最大の課題、資源ナショナリズムと投資リスク要因、ネーベス大使発言による莫大な投資額600億ドル推定のインフラ投資に日本がJVでの参加案、為替動向(レアル通貨の過大評価)、経常収支の赤字拡大懸念などについて忌憚の無い活発な質疑応答になった。

第二全体セッションでは貿易・投資円滑化のためのビジネス環境整備に関し、ビジネス環境に関わる諸課題に対する日伯経済界の連携((税制、技術移転、知的財産権等)および日伯間にとって有効な経済的枠組み【(両国の締結している投資協定やEPA/FTA(メルコスールの現状を含む)の事例に基づく検討)がCNIのアルバレス貿易統括マネージャーおよび経団連の讃井暢子常務理事等がスピーチした。

立食形式の昼食会では経団連の御手洗冨士夫会長が乾杯の音頭を執り、長年の間、両国は資源・エネルギーの分野において緊密な関係を築いて来たが、今後も両国経済界の知恵と創意で一層の発展を期待したいと力強く挨拶した。

午後から分科会(マスカレーニャス委員長自ら今回の合同委員会で分科会形式を提案しモデレイター役である議長を勤めた)が開かれ両国のビジネス機会と協力分野を討議。
エネルギー、天然資源、バイオ燃料について、ETHバイオエネルギー、ペトロブラス、三井物産、ヴァーレ、新日本製鐵、JBIC各社から各々が関係する下記テーマについて、議長による厳しい時間コントロール下で発表した。

石油・ガス(深海油田開発における投資機会、官民連携の取り組み、日本からの資金協力に対する期待、共同プロジェクトによる第三国の市場開拓)、鉱物資源(新鉱山の開発に対する共同投資、持続的な開発のための技術の活用、第三国での資源開発における協力)、バイオ燃料がテーマ。

先端技術、製造業については経団連ホール(南)で開催された。分科会では先端技術の有望な分野として太陽光、風力などの再生可能エネルギー、IT、航空機、バイオテクノロジー、地上デジタル放送が、また産学連携および製品やサービスのイノベーションが討議され、製造業では投資促進と技術移転および地場産業の育成(自動車、電化製品)がテーマ。議長は三菱商事の森原地球環境事業開発部門が担当、 EMBRAER、三菱商事、 東レが発表。(同時並行開催につき平田事務局長は参加割愛)

農業(経団連ホール北で開催、以下のインフラと同時並行開催のためこれも参加割愛):テーマはブラジルの主要作物(肉、大豆、コーヒー豆、オレンジ等)、ブラジル農業技術の強み、日本市場におけるブラジル農産品の流通拡大、世界第三位の農業輸出国としての役割。環境関連技術(アグロフォレストリー、アマゾンの森林保護等)、日伯両国の新しい協力関係の構築。第三国における共同プロジェクト(モザンビークの熱帯雨林における農業開発等)
議長はブラジル農務省のポルト国際局長が勤めブラジル豚肉加工・輸出業者協会、伊藤忠商事が発表。

インフラは経団連ホール南で開催、大前孝雄日本ブラジル経済委員会企画部会長が議長役を勤め、ブラジル基礎・インフラ産業工業会(ABDIB)のテーラ副会長、Arena do Brasil社、三菱重工業が発表。テーマはブラジルにおける投資機会として鉄道、道路、住宅、公共施設などの都市整備、倉庫や港湾などの物流インフラの整備。情報通信インフラ、電力インフラ、2014年ワールドカップ、2016年オリンピックなどのスポーツ・イベントにおける協力、経済界の関心事項 (政府の調達手続き、事業リスクの分担)。

17日のプログラムが終了後、国際会議場でレセプションが開催され経済産業省の石毛博行経済産業審議官が挨拶した。以下挨拶の要旨:
ブラジル財務省は2010年の経済成長率予測を5.2%から5.5~6.5%」に引き上げた。2014年のワールドカップ、16年のオリンピックに向けブラジル経済は世界から熱い視線を集め注目の的。今年3月までの過去半年の日本から中国への投資額が2千100億円に対しブラジルへの直接投資額は約1千500億円とブラジルに対する関心度は高い。去る4月中旬ブラジリアで両国の互恵的経済関係強化のため活発に議論を展開中である。本日は民レベルでも日伯間の経済関係強化に向け熱い議論が展開され、両国関係が力強く前進、日本政府は努力を惜しまず取り組むと表明。

ブラジル関係のエピソードを4点位【TAM航空がスターアライアンスに加盟しブラジルとの距離がさらに身近に、スーパーモデル長者番付1位は美人大国のブラジル人、W杯南ア大会の優勝確率大のブラジル、その代表スーパースターのカカは11歳の頃日本にホーム・ステイ経験の親日家、近年現職総理(小泉)や経済大臣(甘利)が訪伯】を披露し拍手大喝采の一幕も。

5月18日(火)経団連会館 経団連ホールにおいて 第3全体セッション として両国の協力分野は分科会で取り扱ったエネルギー、天然資源、バイオ燃料/先端技術、製造業/農業/インフラに関する総括と意見交換のプログラムで終了した。
2日間に及ぶ本合同委員会の総括纏めは経団連タイムス下記URLをアクセス、ご覧いただきたい。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2010/0527/02.html

なお、各々のスピーカーによる発表の詳細は恒例に従い経団連から冊子が発行される事になっている。当所に届き次第会員各位宛に案内、定例昼食会やセミナーなど適当な機会に配布する。
閉会の挨拶はハマーリオ開発商工省次官が行い、次の通り述べた。日伯貿易投資促進合同委員会(貿投委と略す)は軌道に乗り6ヶ月毎の会合を継続する。ブラジルではブラジル日本商工会議所(中山立夫会頭)主催のセミナーにも出席した。問題点をより一層明確にする必要から今日午後4時から石毛審議官と直接話し合う予定である。

ロジスティック、ビザ、企業や事務所開設あるいは閉鎖、知的財産権、工業所有権などに関し、8~9月頃、前広に話し合って次回東京会議では可能な限り具体化したい。第3回の貿投委では日本側80名のミッションが派遣された事に応え次回の東京会議には同数のブラジルミッションを検討したいと意欲を示した。

ブラジルは昨年、ゼロ成長に終わったが、今年2010年は6%の成長を確実視している。高速鉄道、各種輸送機器部品、化学、電気電子の分野は有望だ。ブラジルは現在自由化されており平均関税率は10~12%位である。対日貿易ではブラジル側の大幅入超となっていて、現在ブラジルにとって経常収支の赤字拡大が問題となっている。

対日貿易不均衡を指摘、是非均衡是正を図りたいと3回にわたって繰り返し強調した。そのため日本向けに食糧関係の輸出を促進する一方、特に日本が牛肉や豚肉をブラジルから輸入する案件で本日、農林水産省とも会合を持つ事にしている。今後も貿投委において引き続きCNI、経団連およびブラジル日本商工会議所と一緒に協議を重ねていく心算であると結んだ。

挨拶の直後、中山会頭は去る4月の第3回貿投委会合(ブラジリア)に先立ち3月末、会議所主催のセミナーでスピーチされたハマーリョ次官に対し答礼を兼ね、今後とも本合同委員会で採り上げたテーマを共有しながら、この政府間レベルの貿投委を是非、継続の上、ご協力頂きたいと懇請した。その後、マスカレーニャス・ブラジル日本経済委員長と槍田日本ブラジル経済委員長が挨拶、2日間に亘る本合同委員会は無事終了した。


 

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