環境セミナーでは参加者全員が内田肇講師の話術に釘付け

9月3日午後4時から開催された環境委員会(前田一郎委員長)の環境セミナーでは前田一郎委員長が講演者の内田肇副委員長並びに本岡朗副委員長を紹介した後、ブラジル三井住友銀行の地球環境部長で環境委員会の内田肇副委員長が「地球温暖化ガス排出削減の現状と今後の見通し」と題して28人の参加者を前に講演を行い、その話術の巧みさや確固とした持論に参加者全員が釘付けとなった。

初めに3年前に排出権取引ビジネスを行なうために地球環境部を立ち上げたが、コンセプトが理解されずに非常に困難をきたしたが、今では確かなビジネスに成長したので、今日は恩返しのつもりで講演を行うと切り出した。

地球温暖化は20世紀初頭から議論されていたが、国連の気候変更に関する政府間パネル(IPPC)から1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締結国会議で温室効果ガス排出削減の数値目標並びに基本ルールが織り込まれたものが京都議定書であり、日本の2012年までの削減目標は1990年の排出量の6.0%減であるが、実際には2005年までに8.0%増加しているために14.0%の大幅削減義務を負っている。

京都議定書における排出量削減対象となっているのは二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)(=一酸化二窒素)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類、途上国が削減義務を負わないのは不理屈であると非難する先進国もあるが、途上国の言い分としては先進国では100年間も石炭などを燃やして地球を汚してきたと反論しているが、環境改善のために途上国への技術供与サポートが重要である。

またCDMメカニズムでは自国で排出削減達成が難しい時は途上国で代替クリーンエネルギーの事業を立上て、そのプロジェクトを国連CDM理事会に申請・登録、プロジェクトが承認された場合は排出権が発行されて、先進国との間で排出権取引を行なう。また途上国への技術移転で排出権を購入する取引も可能である。

国連承認済みのプロジェクト件数は1,146件、排出削減予測量はCO2換算で年間2億2,057万トン、プロジェクト件数ではインドと中国で過半数を占めており、ブラジル12.4%、メキシコ9.2%と続いているが、排出削減予想量では石炭による火力発電が多い中国が51.7%と世界の半分を占めており、インド14.1%、大半が水力発電のブラジル8.8%となっている。

投資国のプロジェクト件数では英国34.3%、スイス22.1%、国土の水位が低くて温暖化で影響を受けるために政府が率先しているオランダ11.2%、日本9.6%となっているが、英国やスイスは新しい事業展開ではいつも欧米に遅れをとって、リスクを避ける日本企業に高値で売買する投機目的で行なっており、最後は日本が買うからと取引権関係者が皆言うので悔しい思いをしている。

また京都議定書の排出権取引で金儲けだけを目論んでいるプロジェクトは必ず後で問題が発生、小型水力発電所(PCH)プロジェクトでは水位上昇で立退きを余儀なくされる住民に対して、移転に合意しているのか足を使ってインタビューしていると説明した。

排出権価格は気候・コモデティ価格と相関関係があり、柏原原発が止まった時は他の火力発電に切替るために取引権価格が上昇、また冷却水を川に依存している原発は旱魃になると価格が上昇、京都議定書で定められた削減目標が緩く、締約国が許可されている割当排出量(AAU)に対して、実際の排出量に余裕がある場合の余剰枠で世の中に何の役にも立たないロシア、ウクライナや東欧諸国のホットエアの潜在的供給量は73億トンに達する。

排出権取引はヨーロッパで盛んであるが、京都議定書を批准しない米国はシカゴ気候取引所、ブラジルではBM&Fで取引を行なっているが、ゴミ処理場のメタンガス回収での取引が成立したに過ぎない。

国別のCDMではプロジェクト承認済みが29件で熱帯雨林のマレーシアが野積になっている木材カスでバイオマス発電が48%、ペルーは砂糖キビ粕でのバイオガスが8.3%、チリでは地熱も利用していると説明、質疑応答では排出権の将来性、今までの取引量、ブラジルでの案件内容、植林事業による排出権取引など多岐にわたった。

講評では西林万寿夫総領事は環境問題がよく理解できて頭の整理が出来、またブラジル三井住友銀行がカーボン・ファイナンス賞の受賞は誇りであり、今後の更なる活躍を期待しているの述べ、田中信会頭も排出権取引の知識の点でも大いに収穫となり、銀行業務の新しい事業立上と実行力には感服、今後の更なる活躍を期待したいと述べて参加者から大きな拍手が送られた。

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巧妙な語り口で講演する内田肇環境副委員長

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熱心に排出権取引講演に耳を傾ける参加者

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=33384