第20回日本ブラジル経済合同委員会開催

第20回日本ブラジル経済合同委員会は、全国工業連合(CNI)並びに経団連、パラナ州工業連盟共催で2017年8月28日午前9時から午後6時、29日の午前9時から午後1時過ぎまでパラナ州工業連盟大講堂に日本、ブラジル双方から企業関係者総勢500人が参加して開催された。

開会セッションでは、初めにホブソン・ブラガ・ド・アンドラーデ ブラジル全国工業連盟(CNI)会長は、2014年8月の安倍総理訪伯の際、両国首脳間において共同声明を発表、この中で穀物輸送インフラが果たす戦略的重要性の確認、また昨年のテーメル大統領訪日時のインフラ事業の更なる民営活性化を目的に、PPI(Programa de Parcerias de Investimentos)での協力要請、2019年までの日本と南米南部共同市場(メルコスル)の経済連携協定(EPA)交渉の締結、日伯貿易の縮小、投資環境改善に結び付く議論を示唆した。

続いてエドソン・カンパニョーロ パラナ州工業連盟会長は、パラナ州はサンパウロ州に次いで日系人が多い。特に北パラナに日本移民が入植して農業や漁業分野に大いに貢献。ブラジルで最も投資環境が優れたパラナ州への投資を呼びかけた。

元クラビン社長のファビオ・シュバルツマン ブラジル日本経済委員長は、今回の経済合同委員会に対する日本進出企業や経団連に感謝の意を述べ、日伯貿易縮小傾向に危惧しており、貿易の活性化、2017/2018年のロードマップ、日・メルコスルとのEPAの重要性を強調した。

マルコス・ホルヘ・ド・リマ ブラジル産業貿易省大臣代理は、毎年両国の深い関係を継続して、今年は第20回日本ブラジル経済合同委員会まで継続、ブラジル国内には日系人が150万人、日本の優秀な技術をブラジル国内の製造業部門に導入するためには投資環境の改善が不可欠であり、テーメル大統領が進めている構造改革の継続。日本企業にとっては、PPIによる上下水道や穀物輸送などで大きな投資チャンスに結び付くと結んだ。

飯島彰己 日本ブラジル経済委員長は日本側代表として、日伯は120年間に亘って友好な関係を続けており、今年4月にはサンパウロ市でジャパンハウスを開設、「世界を豊かにする日本」としてワークショップなどを開催。ブラジルでは700社に達する日本企業が多岐にわたる分野で進出しているが、更なる投資環境整備が必要。大国の米国は保護貿易への傾倒のきらいはあるが、ブラジルとは更なる自由貿易を推進したい。テーメル大統領訪日ではインフラ整備投資の覚書ができ、PPIでのインフラ投資では日本の高い技術力ノウハウが発揮できるにも関わらず、ブラジルコスト削減をしないとWin-Win構築が難しいが、ビジネスチャンス拡大のために大いに議論したいと述べた。

チーダ・ボルゲッティ パラナ州知事代理は、日系移民は、日本の文化・教育で大きなパワーをパラナ州にもたらしてくれている。マリンガ市と加古川市は古くから姉妹都市を締結。また多くの日本進出企業はパラナ州に投資を行っている。パラナ州はラテンアメリカで最も投資環境が優れている。パラナグア港湾は、港湾エフィシエンシーではブラジルトップ。州内には7大学で9万人の学生を抱えて優秀なマンパワー供給できるので、日本企業の投資を歓迎すると述べた。

山田 彰 駐ブラジル日本国大使は、着任して2週間弱で第20回日本ブラジル経済合同委員会に参加できるのは非常に幸運。安倍総理からのメッセージを代読では、テーメル大統領訪日時のインフラ整備投資覚書、インフラ整備拡大に期待。日本企業への支援、2018年の日本移民110周年記念の節目で両国関係の更なる強化と務め、この2日間の第20回日本ブラジル経済合同委員会の有益な意見交換を楽しみにしていると読み上げた。

特別セッションの「日伯経済の現状と展望」について、モデレーターは、日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議ブラジル側座長のカルロス・マリアニ・ビッテンクール FIRJAN副会長が務め、初めにジョゼ・アウグスト・フェルナンデス CNI政策戦略部長は、予想よりも遅い経済リセッションからの回復、企業経営者の景況感、インフレ指数の低下、CDSリスクの低下、今後回復に向かう失業率、企業並びに一般家庭の負債軽減傾向、労働法改正並びに年金・恩給改革、税制改革などの構造改革に着手しだしたが、ブラジルコスト削減のためのビジネス環境整備では、日本が良い見本であると説明した。

続いてロベルト・ジャグアリベ ブラジル輸出投資振興庁長官は、「輸出支援政策」と題して、ブラジルは政治経済で大きな過渡期に差し掛かっており、ブラジルコスト削減に直結する構造改革に着手したものの、構造改革は大手術と同様に大きな出血を伴うが、必要不可欠である。

今年の穀物生産は記録更新予想でブラジル経済を牽引している。PPIプロジェクトによるインフラ民営化はポジティブであり、大きく変わろうとしている。ペトロブラス石油公社再編やエレトロブラス公社の民営化などは大きなチャンスとなっている。日本と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)について大枠合意した一方で、メルコスールとヨーロッパ連合のEPA交渉は停滞したままとなっている。また日本との貿易が縮小傾向となっているために向きを変える必要がある。日本からの投資再開を歓迎すると強調した。

星 文雄 三井住友フィナンシャルグループ顧問は、「アベノミクスの現状とチャレンジ」と題して、アベノミクスは15年間続いているデフレからの脱却を図る政策で”3本の矢”(大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略)を柱とする経済政策で経済は好循環。今後の経済回復計画は緩やかで製造拠点は海外に移動してきている。

ドイツの「Industrie4.0」も包含する日本の新しい成長モデルとなる「Society 5.0」は、人口減をものともしないスマートな社会、高齢者や女性等、あらゆる個人が活躍できる社会、サイバー・フィジカルいずれも安全・安心な社会、都市と地方がつながり、あらゆる場所で快適に暮らせる社会、環境と経済が両立する持続可能な社会などについて説明した。

木下 誠 MUFGブラジル三菱東京UFJ銀行頭取は、「日本企業の成長に欠かせない投資」について、日本政府はインフラシステム輸出を推進しており、アベノミクスは海外で利益拡大、海外現法の役割は大きい。インフラ整備プロジェクトにおける安全・安心の高品質のインフラ輸出。インフラプロジェクトのリスクの官と民の役割分担、社会経済開発銀行(BNDES)の役割や長期ローン金利変更、民間銀行のクレジット提供、ブラジル政府の財政再建と取組、規制緩和、債権市場の育成、政府と民間企業のリスク分担の重要性などについて説明した。

 最後に清水新一郎 日本航空常務執行役員秘書室長は、「両国間の人材交流」と題して、日本航空は1978年から2010年まで日本とブラジル間の定期便を運航、2008年にはEmbraer190を導入、現在は26機を保有して運行しているがトラブルが少なくて評判が非常に良い。南北アメリカの航空機利用者の97%は北米。南米3%の55%はブラジルが占めている。日伯間の運行分の47%は中近東経由。

日本人が海外旅行をしない理由として長期休暇が取れないが35%でトップ、国内旅行志向が19%、治安問題は18%、テロ・感染症不安は14%を記録して、日本人特有の心配性が特徴となっている。ブラジル人に対する日本の魅力発信としてジャパンハウスの活用が重要となる。直行便の再開要望に対する精査、2018年の日本移民110周年記念による国際会議・展示会・エキシビジョン・人的交流の拡大。リオオリンピックに続く2020年の東京オリンピックへの参加などについて説明した。

貿易及び投資セッションでは、中富道隆 日本アマゾンアルミニウム社長がモデレーターを務め、初めに 矢島浩一 丸紅顧問は、「丸紅のブラジル企業活動」について、丸紅は1858年創業、1949年意丸紅コーポレーション設立で5グループから構成。穀物取扱量は6700万トンで日本ではトップ。ブラジル国内では、大豆を1100万トン取り扱って輸出の20%を占め、コーヒーは日本の消費量の30%に相当する13万トンを輸出。

ブラジル国内の水事業では都市住民900万人へのサービス提供。ブラジルでのビジネス障害として、インフラ整備プロジェクト向けローン問題、ブラジルコスト削減に繋がる労働法改正。ブラジルのインフラ事業向けハイテク技術導入に対する税制、PPPリスク。日伯EPAから好調なアルゼンチン経済を統括する日・メルコスルEPAへの舵取などについて説明した。

カルロス・マルシオ・コゼンディ 外務省経済金融局事務次長は、アルゼンチン,ブラジル,パラグアイ,ウルグアイの加盟4カ国で形成するメルコスルは、周辺国との協定を進めているが、アルゼンチンとブラジルの工業政策の相違でブロックとのEPAは止まっていた。年末にはメルコスルとヨーロッパ連合とのEPA交渉再開。メルコスルとカナダや韓国とのEPA交渉。日本とメルコスルとのEPA交渉進展などについて説明した。

富島 寛 住友商事理事南米支配人は、「ブラジルにおける水インフラビジネス」について、ブラジル国内の上下水道インフラは、脆弱で殆ど手つかずの状況であり、2007年の上下水道法制定で、海外からの投資が進んできており大きな投資チャンスとなっている。しかしラヴァ・ジャット汚職問題で進展しないプロジェクトファイナンスや社会インフラ整備に役立つTAX DUTY、 PPPプロジェクトリスク。的を得た日伯EPAから日・メルコスルへの軸足変更及び重要性などについて説明した。

最後にロナウド・ラザーロ・メディナ ブラジル連邦歳入庁関税局次長は、「投資アトラクション 通関業務簡素化アグリーメント」 について、認定事業者(Authorized Economic Operator)の税関手続の簡素化・迅速化等のメリットや目的、ベネフィット、ブラジルAEOモデル、120社のAEO認定、通関手続きの簡素化。通関業務フロー、通関エフィシエンシー、SISCOMEXなどについて説明した。

ビジネス環境整備および今後のビジネス機会セッションでは、カルロス・エドゥアルド・アビジャウディ CNI産業開発部長がモデレーターを務め、カルロス・エドゥアルド・アビジャウディ CNI産業開発部長は、「ブラジルの輸出加工特区EPZ(export processing zone)の投資チャンス」と題して、輸出加工特区EPZのコンセプト、国内マーケット向けの工業製品税(IPI)、社会統合基金 ( PIS)/公務員厚生年金(PAES)、社会保険融資納付金(COFINS)の免税、海外市場向け輸入税(II)、輸入税(II)、工業製品税(IPI)、社会統合基金(PIS)、社会保険融資負担金(COFINS)、商船隊更新追加税(AFRMM)の免税、20年間の長期契約並びに再度20年間の契約延長ベネフィットを説明。

現在のブラジル国内の輸出加工特区は17州に19カ所、特にアクレー州並びにピアウイ州、セアラー州にそれぞれ4カ所、セアラー州ペセン港湾EPZのポテンシャル、54億ドル投資で韓国企業との合弁のペセン製鉄所(Companhia Siderurgica do Pecem, CSP)、食品加工業やセラミック、繊維セクターが有望、整備されている港湾インフラ、ピアウイ州パルナイーバEPZは、農業ニューフロンティアのマトピバ地域の穀物や熱帯フルーツの加工及び輸出など将来性豊かな投資チャンスを紹介した。

セルソー・シモムラ トヨタ自動車ブラジルトヨタ副社長は、「ブラジル自動車業界の世界競争力を見据えて」と題して、強力な自動車政策の導入、ロジスティックエフィシエンシー改善、税制の簡素化。内的志向や保護貿易志向の遮断、メキシコとの自動車協定、自動車工業の競争力強化並びに自由貿易協定の促進、エコロジーカー輸入関税の軽減、テーメル政権による労働法改正並びに年金・恩給改革、税制改革などの構造改革の支援、電力料金やロディステックコストの引下、「INOVAR-AUTO」に替わる新しい自動車政策「Rota 2030 (Route 2030)」プログラムである新自動車政策と交通・物流推進について協議。日系自動車メーカーの新規事業などを紹介した。

ファブリジオ・パンツィーニ CNI国際渉外スペシャリストは、「日伯二重課税防止条約の再交渉」について、利益やロイヤリティ送金規制、契約の有効期限、人材派遣のサービスフィー、企業間ローン、ブラジルの租税条約ポリシー、二重課税防止条約締結の推移、経済協力開発機構(OECD)ガイドラインに従った二重課税防止条約の標準化などについて説明した。

サンドラ・リオス CINDESダイレクターは、「日伯貿易交渉‐経済関係改善チャンス」と題して、両国の貿易関係では2013年以降下降傾向で貿易額は輸出入とも縮小。ブラジルの輸出は、依然として第一次産品の農畜産及び鉱業が牽引。ブラジルの輸入品目では資本財や耐久消費財が牽引。トランプ次期米大統領が脱退を明言する環太平洋連携協定(TPP)並びに東南アジア諸国連合加盟10ヶ国に日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含めた計16ヶ国でFTAを進める構想東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、ブラジルなどのメルコスールとのEPA提携の模索。ブラジル製品の日本市場への参入機会、特恵関税制度の見直しなどについて説明した。

粟屋 聡 ブラジル日本商工会議所専任理事・政策対話委員長は、「政策提言活動AGIR」について、¨AGIR¨とは、Action plan for Greater Investment Realizationの略で、ブラジル産業の国際競争力強化やブラジルコストの改善を目的とした政策提案を行なう活動。本活動は今年4年目を迎え、企業の経済活動に、より直接的に影響する「労働」・「課税」分野での政策提言に取組んでいる。 テーメル政権では、空港コンセッションでの「為替保証制度」導入など事業投資の阻害要因の解消へ向け、投資家の視点に立った試みが採択された。

本年度の活動の主軸の「本丸提言」として労働分野。今年7月の労働改正法13.467号の国会通過。1943年に制定された統一労働法CLTについて刷新。ブラジルのビジネス環境に適合する形への改定。「フレキシブルな労働時間」を始め、「休暇の分割取得」、「労働時間に含まれる通勤時間の基準見直し」など、同法改正には、我々が提言してきた項目と共通する内容が含まれている。一方で、今回の法改正に含まれていない提言については、ブラジル全国工業連盟CNIや連携団体との協力を維持しながら、規制緩和や労働法改正の提言活動を継続する。

同法改正で期待される効果として、労働訴訟件数の減少が挙げられる。 労働訴訟件数の増加には、判事や弁護士による解釈の開きからくる法的安定性の欠如が相関しており、改正法の施行後も運用面からの課題に注視していくことが重要。

現行の雇用制度では、企業成長率を上回る昇給率が、団体交渉を通じ、半ば強制的に課される仕組みとなっている。増え続ける人件費負担に対する企業努力も限界で、昇給の累積により一定の給与水準を超えた従業員を解雇する選択を迫られる。 安定的な雇用が守られないばかりか、経験やノウハウを身に付けた人材の損失は、企業の生産性や競争力を落とすことに繫がります。

AGIR活動では「安定雇用の実現」、「従業員のニーズやビジネス環境の変化に対応し得る柔軟な人事管理制度」を掲げている。今後の活動では、CNIの労働問題担当部門との連携を構築、政府当局の協力も賜りながら当会議所会員企業を対象としたセミナーを実施。 労働改正法や来年より施行開始予定のE-Socialへの対策を取上げ、積極的に議論を進める。

課税分野では「1.税制の簡素化・納税者の保護」、「2.ICMS制度の見直し」、「3.移転価格税制の国際標準化」の3つを課税分野での本丸提言としている。税制の簡素化・納税者の保護では、会議所では今年6月、353社の会員企業を対象にブラジル税制に関するアンケート調査を実施。

ICMS制度の抜本的改革として、ICMSクレジット残については、クレジットの移転や特別レジーム等を活用した解消策が講じられているが、申請手続きに掛かる煩雑な諸手続きは、納税者にとって負担となっている。本年度の活動では、相殺制度の実効性確保、実務上の問題点改善を求めるに留まらず、州間税率の統一という根本的改善策へも立ち向かっていく。

また、世界に類を見ないブラジルの「代行納税制度」についても見直しを求めていく。本制度は、規定の付加価値額について一括納付が義務付けられ、代行納税者に偏った負担を強いられ、代行納税者は製造業者であることが多く、昨今の経済環境にて苦境を強いられる中、各企業に与えるキャッシュフローへの影響は勿論の事、雇用基盤を支える同産業へのインパクトが危惧されている。

電子財務記録(Nota Fiscal Eletrônico)に始まり、Arquivo XMLやBloco K等が導入され、この10年で納税者を巡る環境も大きく変化。現在、ブラジルに必要とされるのは、誠実に経済活動を行う企業を応援する公平な税制度。代行納税制度を廃止し、各流通段階における付加価値に応じた累積排除型の納税制度への移行を要請する。

移転価格税制の国際標準化では、OECDガイドラインに準拠した移転価格税制を導入させる。5月ブラジルはOECD加盟の意向を正式表明。AGIR活動では、加盟へ向けた歩みの中、同機関が推奨のガイドラインに準拠した移転価格税制をブラジルでも導入を後押しする。

今年3月、ブラジル財務省国際課を訪問、政策対話を実施。AGIR活動開始以降第5回目となる政策対話において、財務省、及び国税局との意見交換会は初めての対話チャンネルとなった。また州政府が管轄となるICMS税にいては、適切なカウンターパートの選択と、対話チャンネルの構築、実務者間協議の機会を増やし、今年後期にはサンパウロ州税局の協力を受け、当会議所会員企業向けにセミナーを開催予定。 AGIR活動開始以降これまでも、CNI とは密な連携体制を維持。政策対話委員会では、下部組織として各専門分野について議論をするワーキンググループを設けている。 

進出日系企業としての立場のみでなく、ブラジル企業の一員として、これらの重要課題についての政策提言に取組み、所謂「ブラジルコスト」改善による産業競争力強化、そして日伯間のビジネス機会の拡大に結び付けていきたいと結んだ。

産業戦略及び政策セッションでは、椋田哲史 経団連専務理事がモデレーターを務め、初めにクラウディオ・リール 経済社会開発銀行(BNDES)産業サービスユニット 監査役は、「製造業部門への支援」と題して、経済社会開発銀行(BNDES)のミッション、組織、ビジョン、ヴァリュー。クレジットオペレーションとポリシー。パーフォーマンスとファイナンシャルデーターの推移、内訳。2018年から2022年までのアクションプラン、IoTやManufacturing4.0、スマートシティ、ヘルスケアなどのプライオリティなどについて説明した。

ジョアン・エミリオ・ゴンサルベス CNI産業政策エグゼクティブマネージャーは、「製造業部門の生産性改善とデジタル化」について、ブラジルの製造業部門の生産性推移、生産性改善のためのキーコンセプト、2014年から2016年のパイロットプログラムの概要、「第4次産業革命」と呼ばれるIndustry4.0のコンセプト、ネクストステップ、ニューパラディグマCNIのIndustry4.0テクノロジーの取組などについて紹介した。

久木田信哉 日本電気主席技師長は、「Society 5.0のチャレンジ」と題して、初めに日本電気の沿革、歴史、事業内容などを紹介。デジタルエコノミーのインフラ構築、世界の第4次産業革命の潮流の中で、ドイツの「Industrie4.0」も包含する日本の新しい成長モデルとなりうる「Society 5.0」を推進して、「未来創造モデル」を構築。ビッグデーター並びにIoT、AI、サイバーセキュリティをすべて包括するSociety 5.0の可能性などについて説明した。

江川和宏 新日鐵住金常務執行役員は、同社は1950年代からブラジルの国策事業であるウジミナス製鉄所建設に従事してブラジル産業の発展の貢献。過去2年間マイナス成長のブラジルの今年のGDP伸び率はプラスに転じると予想。一人当たりの鋼材消費量は年平均116キロと世界平均の500キロを大幅に下回った。同社の特許は世界70カ国に2万7,000件を保有。世界サプライネットワーク、ブラジル国内の事業拠点、ウジミナス製鉄所の歴史、Termium社との共同経営課題、ブラジルと日本のビジネス強化EPA締結によるビジネス環境改善などについて説明した。

8月29日の農業及びインフラ整備セッションでは、大前孝雄 経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長がモデレーターを務め、初めに前回の日本ブラジル経済合同委員会での同セッションの総括説明として、ロジスティックインフラ整備を優先課題、昨年9月のブラジル政府によるPPIプロジェクト発表、今年4月の賢人会や第3回食料対話でも農業関連輸送インフラが課題となった。日本企業によるインフラ投資案件が増加してきたが、穀物輸送インフラや都市交通インフラ整備の重要性や官民間でのリスク分担など再度問題点の洗い流しをして、ブラジル政府の支援・理解を求めたいと説明した。

エンリケ・アマランテ・ピント 大統領府PPI担当は、「投資パートナーシッププログラム PPI」と題して、ミッシェル・テーメル大統領は、2016年9月にインフラ事業の更なる民営化を目的とした投資パートナーシッププログラム(PPI-Programa de Parcerias de Investimentos)を発表、146プロジェクトで総額239億レアルの投資。空港4カ所、港湾ターミナル7カ所、電力エネルギー発電や配電。。97プロジェクトが入札公示準備。国内線のハブ空港であるサンパウロ市内のコンゴニアス空港や造幣公社、電力エネルギー、道路、港湾など57民営化プロジェクトを発表。ロジスティック国家プロジェクト(PNL)などについて説明した。

ジョナス農務省農業関連国際関連局担当は、「ブラジルのアグロビジネス」と題して、ブラジル農業は潜在的ポテンシャルが非常に大きく、砂糖ならびにコーヒー豆、オレンジジュースの生産並びに輸出は世界1位。大豆生産は世界2位で輸出は世界トップ。また人口が2億人を突破するドメスティックマーケットが非常に重要。飛躍的に農産物の生産性が飛躍したために新規耕地面積の拡大は最小限で可能。国土面積の61%は未耕地。2013年から2015年のブラジルへの対内直接投資は、ヨーロッパ連合並びに米国、中国、香港に次いで5位。輸送インフラ整備部門への投資として道路の北部回廊ではマデイラ軸、タパジョー軸、北東部回廊としてサルバドール軸、サンルイス軸、南東部回廊としてサントス軸、ヴィトリア軸、南部回廊としてパラナグア軸、リオ・グランデ軸で大半がトラック輸送に依存。PPIプロジェクトの鉄道建設プロジェクト、穀物保存のPCAプロジェクトなどについて説明した。

土屋信司 三井物産執行役員 /ブラジル三井物産社長は、「鉄道輸送と都市交通インフラ整備」について、三井物産のブラジル国内のアグリビジネスとして、Multigrain社やXINGU社、SLC-MIT社の事業内容、マトピバ地域における日本企業の事業内容、ブラジル資源大手ヴァーレ子会社で一般貨物輸送事業を運営するVLI社に出資して北部地域の輸送事業に参画。穀物生産のニューフロンティアのマトピバ地域のポテンシャルやイタキ港湾の拡大について説明。

また官民パートナーシップによるインフラ整備プロジェクトに関する提言として、プロジェクト開始前の長期クレジット契約。ラヴァ・ジャット汚職問題影響で社会経済開発銀行(BNDES)のクレジット停止によるサンパウロ地下鉄6号線のプロジェクト中断などを避けるためのコンプライアンスリスク関連の法規整備、社会経済開発銀行(BNDES)の今後の役割の確認。またSuperに関するリオ州政府への財政支援などについても説明した。

続いて植田真五 三菱重工業執行役員フェロー・南米総代表兼伯国三菱重工業社長は、「都市交通システム」について、初めに三菱クループの沿革、事業内容ではパワーシステム、化学プラント、造船、手章夫、航空機、宇宙空間システムなどを紹介。ブラジル国内ではジュンジアイ市並びにピラシカーバ市の製造工場の製品説明。

ブラジル・サンパウロ地下鉄6号線の建設・運営事業体から全自動無人運転の鉄道システム建設プロジェクトを受注。本プロジェクトは、土木・建築工事とシステム一括を含むブラジル初の本格的鉄道PPP(Public Private Partnership)方式。土木・建築工事を担当する現地ゼネコン連合とコンソーシアムを組み、全自動無人運転鉄道システムの信号、通信、電力、架線、車両検修設備、プラットフォームドア、トンネルベンチレーションにわたる各システムの設計・調達・据付・試運転を担当しているが、ラヴァ・ジャット汚職問題影響でサンパウロ地下鉄6号線工事が中断。しかし工事に従事していた優秀なエンジニアへの継続した雇用維持などについて説明。

ブラジル政府への提言として、プロジェクトの入札では、コスト評価の比重が非常に大きく、日本の比類ないハイテクノロジーの正当な評価。また為替リスク、煩雑で高い税率の軽減を説明した。

モデレーターの大前孝雄 経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長は、総括の提言では、PPPプロジェクト完工するための入札前の長期融資確保、新規投資家に対するコンプライアンス法規整備、社会経済開発銀行(BNDES)による適切なファイナンス導入などについて説明した。

天然資源およびエネルギー(環境関連)セッションのモデレーターは、ロベルト・ロドリゲス元農務大臣が務め、初めにエドゥアルド・レオン・ド・スーザ UNICAエグゼクティブダイレクターは、「天然資源とエネルギー」と題して、ブラジル国内の砂糖・エタノール業界のポテンシャルとして、業界雇用は84万人、年間売り上げは400億ドル、世界2位の生産と世界貿易の20%のシェア、ブラジルの再生可能エネルギーの電力エネルギーに占めるシェアは、世界平均の14%を大幅に上回る44%。ブラジル国内の20自動車メーカー販売の200機種はフレックス車対応。砂糖栽培は南東部地域並びに北東部地域に集中してアマゾン熱帯雨林から2000キロメートル以上遠距離での栽培。技術革新によるエタノール栽培の生産性向上、日本とブラジルの第2世代エタノール技術協力について説明した。

釡 和明 IHI相談役は、南大河州にはブラジルの石炭の90%以上の埋蔵量があり、日本のハイテク技術による環境に配慮した石炭ガス化複合発電事業は大きなビジネスチャンス、ブラジルの低品質石炭の活用メリット、火力発電所の近代化政策、日本の技術協力とファイナンス、エフィシエンシー向上、経済効果分析、プロジェクトスキームなどについて説明した。

林 信光 国際協力銀行代表取締役専務取締役は、「天然資源開発向けファイナンス」について、国際協力銀行の天然資源開発向けファイナンスサポートスキーム、690億ドルに達する過去10年間の世界の天然資源開発向けファイナンス、ラテンアメリカ向けは20億ドル、そのうちブラジルは37%に相当する120億ドル、ブラジル国内向け鉱山開発や紙・パルプのセニブラ拡張、石油・天然ガス向けファイナンスではプレソルト油田、アマゾナス州ウルク天然ガス油田やFPSO向けファイナンス、代替え燃料エネルギー開発、46億ドルに達するグリーンファシリティファイナンスなどについて説明した。

閉会セッションでは、ホブソン・ブラガ・ド・アンドラーデ ブラジル全国工業連盟(CNI)会長は、日伯パートナーの重要性を再確認、2018年7月に東京で第21回合同会議開催を説明、エドソン・カンパニョーロ パラナ州工業連盟会長は、今回の合同会議には513人が登録して記録更新、ブラジルは現在ラヴァ・ジャット汚職問題で、政治・経済で過渡期にあるが必ず克服できる。ブラジルが海外投資家にとって安全な港を意味するPorto Seguroになるようにサポートしたいと述べた。

続いて飯島彰己 日本ブラジル経済委員長は、今回の合同会議では素晴らしい議論ができた。労働法改正、経済リセッションからの回復、アベノミクス紹介、ブラジルコスト削減やビジネス環境整備の提案、日本・メルコスールEPAの重要性のアップデート、AGIR活動報告、穀物インフラの重要性など今後も議論の継続を確認。来年7月の東京での再会を約束した。

山田 彰 駐ブラジル日本国大使は、非常に貴重な意見が聞けた。ブラジルは過去2年間マイナス成長であったが、経済回復の兆しが出てきた。新たな発展に向けて痛みを伴う構造改革を進めて、ブラジルの潜在ポテンシャルがさらに強化する。今後もビジネス環境整備で大いに意見交換してほしい。パラナ州工業連盟での会議は素晴らしかった。再度パラナ州を訪問したいと述べ、ホブソン全国工業連盟(CNI)会長から記念品が贈呈された。

 

 

 

Governadora em exercício, Cida Borghetti, durante a abertura da 20ª Reunião Conjunta do Comitê de Cooperação Econômica Brasil-Japão, nesta segunda-feira (28), em Curitiba. Curitiba, 28/08/2017. 
(Foto: Orlando Kissner/ANPr)

 

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