第21回日伯経済合同委員会に出席

第21回日伯経済合同委員会は7月23日から24日の2日間にわたって経団連会館(国際会議場)で開催されている。

初日23日は午後一時半から開催され、開会セッションでは飯島 彰己 経団連日本ブラジル経済委員長、ルイス・エデュアルド・オソリオ Valeサステナビリティおよび組織関係担当役員、カルロス・マリアーニ・ビッテンクール FIRJAN副会長(日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議ブラジル側座長)、三村明夫 日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議日本側座長、ホブソン・ブラガ・デ・アンドラーデ ブラジル全国工業連盟(CNI)会長、 中前 隆博 外務省州南米局長、アンドレ・コレア・ド・ラーゴ 駐日ブラジル大使の順で挨拶、特別セッションの日伯経済の現状と展望では ジョゼ・アウグスト・フェルナンデス CNI政策戦略部長、星 文雄 三井住友銀行顧問、小林 真 三菱UFJ銀行常務執行役員の通り進行。

今回の合同委員会のハイライトである初日のセッション1:貿易・投資 ― 日メルコスールEPAでは大前孝雄 経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長がモデレーターをつとめた。椋田 哲史 経団連専務理事、コンスタンサ・ネグリ CNI通商部長、松永愛一郎 ブラジル日本商工会議所会頭、島内 憲 日本ブラジル中央協会副会長、横尾 英博 デンソー常務役員、ロナウド・コスタ ブラジル外務省経済財務担当次官、アブラオン・ネット 産業貿易省通商局長の順で発表があり、経団連、CNI による共同報告書の説明やブラジル日本商工会議所や日本ブラジル中央協会および進出日本企業からEPA の緊急必要性を訴えられた。

Pdf第21回日伯経済合同委員会における松永愛一郎会頭発表資料【英文】Toward Japan  Mercosur EPA( Issued in July 2018)

ブラジル政府側からのプレゼン後、大前モデレーターは同セッションを総括した上で会場の参加者約200名(日本側150名、ブラジル側他50名)にEPA 支持の賛否を諮り全会一致で承認を得た。共同報告書の採択を記念して経団連飯島日伯経済委員長またCNIのロブソン会長、駐日メルコスール各国大使等による記念写真撮影が行われ、メルコスール議長国を代表してウルグアイ臨時大使が採択を記念し挨拶。同大使は、1974年に発足した経団連とCNIによる日本ブラジル経済合同委員会は 両国の経済関係強化に大いに貢献して来たが、今後もさらに貢献し続けるだろう、今後もメルコスール加盟国は日本との経済、貿易投資基盤をより強化するために共に努力して行く、またこの機会が今後も生産的な交流となるよう協力して参るとともに本委員会のご尽力に対し心から敬意を表すると結んだ。

最後にコレア・ド・ラーゴ大使が、今回アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの同志とともに同じ目標に向かい日本政府や民間と作業ができる事は嬉しい、我々4カ国の政府は共に関心を示しオープンな対話の場を作って行きたい、また多くの専門家等が今後の見通しについても話したが、共同報告書を説明したコンスタンサはアルゼンチン人即ち同胞であり、ここであらためて経団連およびCNIに心から感謝を申し上げる、と述べた。同報告書は安倍総理に提出されるとの言及があったが、我々はTPP11にも大変関心を持っている、日本のリーダーシップはチャレンジングであり、我々ができなかった事が可能になる時代に突入したとし、メルコスール加盟国大使の挨拶を締め括った。

【大前モデレーター総括】

本セッションの最大の成果は日本ブラジル両国の経済界が連携、日本メルコスールの早期交渉開始を強く働きかけていくことで合意、具体的提言内容が盛り込まれた報告書が本日採択された。この共同報告書において日本メルコスール間の貿易ならびに互恵的な対外直接投資を促進するためには貿易の自由化、投資障壁の解消、ビジネス環境の整備を目的とする法的枠組みの確立が極めて重要であることがこの報告書に提唱されている。

先般、ブラジル日本商工会議所の松永会頭からは日メルコスールタスクフォースが主導、実施したメルコスール進出日本企業を対象に実施した意識調査の結果が非常に臨場感をもって報告されるとともに、それを踏まえたEPA交渉の早期開始の必要性が強く訴えられた。その中で特に現場サイドからはEUおよび韓国と他の経済圏から劣後、競争を強いられる事への強い危機感、さらにはメルコスールにとって貿易投資ともに最大相手国となりつつあり日本にとって将来の大きな脅威となり得る中国に先んじて交渉を開始することで優位性を確保したいという声が上がっている。又単なる関税協定に留まらずより包括的なEPAを実践することが貿易のみならず投資環境を含むビジネス環境全体の改善につながり、以てメルコスール域内への日本からの投資を呼び込み、さらに活性化する契機になろうとの期待も上がっている。

次に2000年代半ばに駐ブラジル日本国大使を務められた島内氏からはご自身の経験を踏まえ日本メキシコEPAの絶大な経済効果を例に上げながら現在の取り巻く環境の好転を鑑みいよいよ日メルコEPA の交渉開始が熟したとして日伯両国が強いリーダーシップを取り早急に交渉を開始することの重要性が提言された。又デンソーの横尾氏からはブラジル、アルゼンチンを中心に活発に事業を展開されている日本の自動車産業にとって現地で生産する自動車の価格競争力強化の観点からも日メルコスールEPAの早期締結が如何に重要であるかが説明された。

一方ブラジル側からはロナルドコスタ次官ならびにアブランネット局長、またメルコスール4カ国大使より、メルコスール側としても日本メルコスールEPA 締結にオープンで非常に強い期待を持っている、日本政府のゴーサインを待っていると言う趣旨の話があったと理解している。このようにメルコスール側は官民こぞってその推進に積極的であると云う印象を受けた。日メルコスールを早期に実現するために先程にもお話があったように政治の強いリーダーシップが不可欠であり、すでに本年4月の第8回日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議では日本メルコスールEPA の早期の正式交渉開始を求める提言書をまとめて日伯両国首脳に上げている。

本セッションの総括として、日伯両国経済界がメルコスール経済界共々、本年11月末ブエノスアイレスにおけるG20サミットにて日本メルコスール首脳会議が開催されるがそこでの日本メルコスールEPA早期実現に向けた政治的決断が強く期待されるとともに、今後経済界として各国政府の作業に積極的に参画協力しその実現に貢献していきたいとの強い決意が確認された。本日採択された共同報告書には、先に実施されたメルコスール進出日本企業に対する意識調査の結果も現地進出企業の意見として反映されており、これをもとに経団連としては日商をはじめ他の経済団体とも協力し可及的速やかに日本政府に対し日本メルコスールEPAの早期交渉開始を求める要望書の提出を行うべく準備を進めて参る。

またこれと並行してCNIの協力を得ながらメルコスール各国経済団体を通じ当該国政府に対しても正式に交渉締結を含む働きかけを行うなどEPA交渉開始に向けた機運を経済界自らあらためて高めて参る。最後に以上申し上げた活動方針についてあらためてご出席の皆様方のご賛同とご支援をお願い申し上げて本セッションを終わらせて頂きたい。

二日目の24日のプログラムは、セッション2:農業・エネルギー・環境で、モデレータをコンスタンサ・ネグリ CNI通商部長が務め、釜 和明 IHI相談役、マルコス・ジャンク アジアブラジルアグロアライアンスCEO、佐々木義樹 日本たばこ産業たばこ事業本部原料グループ原料企画部長、フェルナンド・バロス Instituto Forum do Futuro統括部長、エミリアーノ・ボテロ Campo CEO、続くセッション3:投資機会・ビジネス環境整備では、モデレータを加瀬 豊 経団連中南米地域委員会・双日特別顧問が務め、佐藤一郎 新日鉄住金執行役員・グローバル事業推進本部海外事業企画部長、井上雅弘 トヨタ自動車中南米部長、ギルベルト・ペトリ リオ・グランデ・ド・スール州工業連盟会長、マルシオ・リマ CAMEX特別アドバイザーがそれぞれ発表を行った。

昼食をはさんだセッション4:インフラ整備では、モデレータを林 信光 国際協力銀行代表取締役副総裁が務め、佐藤真吾 三井物産常務実行役員、ルシエネ・フェレイラ・モンテイロ・マチャド BNDESインフラ部門副部長、柱本 修 農林水産大臣官房参事官、マウリシオ・エンドー ブラジルKPMGパートナー、政府及びインフラ部門が、発表。セッション5:SDGs実現のためのイノベーションと技術ではモデレータをカルロス・エドアルド・アビジャウディ CNI産業開発部長が務め、植村 憲嗣 三菱電機執行役員・産業政策渉外室室長、フレデリコ・ラメゴ CNI国際関係統括部長、久木田信哉 日本電気首席技師長、ホアオ・カルロス・フェラーズ リオデジャネイロ州立大学教授が発表を行った。

閉会のセッションでは、ホブソン・ブラガ・デ・アンドラーデ CNI会長、ルイス・エドアルド・オソリオ Valeサステナビリティおよび組織関係担当役員、飯島 彰巳 経団連日本ブラジル経済委員長がそれぞれ挨拶を行い、ブラジル側40約名、日本側約140名、合計約180名が参加した第21回日伯経済合同委員会が終了となった。

会議所からは松永愛一郎会頭の他、土屋信司 日伯経済交流促進委員長や、CNI側からの参加者申込みをした佐伯ジョージ(Saeki Advogados/会議所顧問弁護士)、平田藤義事務局長、また、Frederico Lamego Senai/CNI国際部長、Emiliano Botelho CAMPO社社長、坂本エドアルドANAブラジル担当ディレクター、AVANCE社の片山サラ営業担当、佐伯弁護士事務所の鍋島・黒田・ユリ弁護士、トヨタ自動車海外渉外部米州グループのアンジェラ・マスオカ氏など、平田事務局長の知人も多数参加した。

(左から)駐日ブラジル大使、駐日ウルグアイ大使代行、飯島日伯経済委員会 委員長、アンドラーデ CNI会長、駐日アルゼンチン大使、駐日パラグアイ大使    共同声明を囲んで

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