「知的財産権保護に関する勉強会」に(財)知的財産研究所ワシントン事務所の澤井智毅所長を招いて開催した

ジェトロ/コンサルタント部会(佐々木光部会長)/企画戦略委員会(松田雅信副委員長)の共催で、5月29日午後1時30分から午後3時30分まで商工会議所に17人が参加、講師には(財)知的財産研究所(IIP)ワシントン事務所所長兼、ジェトロ・ニューヨークセンター知的財産部の澤井智毅部長を迎えて、「知的財産権保護に関する勉強会」を開催した。

澤井所長は初めに米国における模造品・海賊版対策の背景として、米国経済が被る被害は30兆円にも上り、75万人の雇用損失、全世界の模造品取引額は年間80兆円、国境を越えた取引額は20兆円と推定されており、全世界の模造被害額は世界貿易額の5%から7%に及んでいると規模の大きさを説明した。

特許庁の昨年の模造被害調査リポートでは調査対象企業の25%が模造被害を経験、日本企業の被害状況は日本を含む東アジア、主に中国、台湾や韓国で顕著であり、欧米や中南米での顕在化、中国製模造品の拡散は中国国内が28.5%でトップであるが、日本、欧米、東南アジアなどに拡散しているが、日米ともに税関での水際での輸入差止件数が増加してきている。

昨年の日本の輸入差止件数は2万3,000件近いが、トレードマークなどの商標権侵害が圧倒的に多く、特許権侵害15件に留まったが、特許権侵害増加は日本の産業界の大損害を与えるために防止する必要があり、また模造品の仕出国では日米ともに中国が圧倒しており、米国での輸入差止物品比率では履物が40%、衣類14%、家電、ハンドバッグ、時計がそれぞれ7.0%前後となっている。

米国政府の取組としてUSTR、商務省、特許省庁、司法省や国務省が連携して模造品・海賊版対策に取組んでおり、「STOP、イニシアチブ」を2004年に開始、ホットラインの設置、ウエブサイト開設、知財アタシェを中国、ロシアやブラジル大使館などに派遣して現地政府とに協力関係強化や米国企業支援を実施、国内中小企業向けセミナーの開催、水際作戦の強化や税関に対する知的財産権のオンライン記録手続きの実施などを行なっている。

また優先監視国の内で中国並びにロシアと二国間協議で合同商業委員会の開催など、多国間協議では模造品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の国際協議に着手、国際協力の推進、知財権の執行強化、法的規律の形成が3本柱に掲げている。

米国議会の取組では模造品対策関連法案を相次いで改正、知財権重視の法案PRO-IP法案が圧倒的多数で下院本会議を通過したが、上院議会での法案承認が必要である。

産業界の取組として活発なロビー活動、各国の米国商工会議所を中心に各国団体と組んだグローバル知財フォーラムの開催、対模造品海賊版連合(CACP)を主導して、米国主要企業・団体500社参加して啓蒙活動しているが、米国における知的財産の経済価値は年間5.5兆ドルと見積もられており、米国発の知財重視(プロパテント)時代が今後も継続、「権利の取得無くして、行使無し」で模造品対策には、戦略的な権利獲得とその行使が必須であると強調して講演を終え、意見交換ではメーカーの担当者の安全面でも問題が共通して深入りできないことや、模造品の故障でブランド名の劣化、模造品製造企業の摘発の困難化などについて大いに意見の交換をできて、非常に有用な勉強会となった。

参加者は講師として澤井智毅氏(知的財産研究所ワシントン事務所所長、ジェトロ・ニューヨークセンター知的財産部部長)、佐々木コンサルタント部会長(ジェトロ)、松田雅信企画戦略副委員長(パナソニック)、田中会頭(リベルコン)、井澤氏(ジェトロ)、堀江氏(ホンダ・サウスアメリカ)、倉橋氏(パナソニック)、野田氏(パナソニック)、高津氏(NTN)、西村氏(ミツトヨ)、尾崎食品部会長(東山農産)、山本氏(シチズン)、須賀繊維部会長(クラシキ)、松尾化学部会長(住友ケミカル)、田畑副領事(サンパウロ総領事館)、平田事務局長

パワーポイントで知的財産権保護の勉強会の様子

左から佐々木コンサルタント部会長/平田事務局長/澤井講師/松田企画戦略副委員長

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