2003年上期業種別部会長懇談会-繊維部会


木口部会長

司 会 ありがとうございました。続きまして繊維部会の木口部会長よろしくお願いいたします。

原綿相場2倍に跳ね上がった、激動の02年

木 口  繊維部会長のユニチカ・ブラジルの木口でございます。繊維部会は綿紡績が主体ですので、これを中心に業界の回顧と展望をして参ります。
02年度の繊維業界の状況は、前半は暖冬で消費減退、在庫増、半ばから大統領選絡みで急激なドル高で、10月には瞬間4レアルを突破し、年間では50%以 上のドル高となりました。ブラジル原綿は25%もの減産とニューヨーク定期相場高とドル高で、年間で相場が2倍にも跳ね上がり、一部糸値に転嫁できました が、波乱含みの激動の年でした。

次に順を追って回顧と展望をして参ります。
まず 原綿について02年の回顧。01年度の国内外の相場安とわた摘み取り時の降雨による品質低下で綿作者は採算悪化になったことと、綿花の競合作物である大豆 の国際相場高により、02年は綿作の一部を大豆に転換した農家が多く、植え付け面積で14%の減反となり、作柄については全体的に生育期において長期間の 降雨など天候不良と病虫害発生があり、悪要因が重なって生産は25%近く落ち込んだ、とわれわれの業界では見ております。

相場ですが、02年の年初、上級品を中心とした品不足気味で2月末にはポンド当たり、100センターボを付けましたが、新綿シーズンに入り相場は若干下向 きになったが、前シーズン国内原綿の50%以上を生産したマット・グロッソ州の大幅減収により、相場は6月末より上昇し、また5月末よりニューヨーク定期 が上昇し、海外からブラジル綿に対する引き合いが増えると共に、国内の急激なドル高により5月から6月にかけて、輸出成約が相当量できました。10万トン 近くあったと見られています。国内原綿の大幅な減収と海外相場の上昇、輸出増大ということで原綿相場の上昇により、紡績も安値低迷していた糸値を値上げ し、8月以降この値上げが順調に吸収されました。また、紡績各社の原綿の引き合いが急に増えまして、相場は急上昇し、9月中にはポンド146(注:セント といいます)、146セントまで急騰しました。

政府は手持ちの在庫を放出しましたが、相場 沈静にはならず、輸入綿は国際相場高とドル高で高い値段になり、パラグアイからの輸入綿も少しはあったが、在庫綿が少なく品質的にも問題がありました。ま た、国内の生産者と一部トレーダーの手持ちの在庫も意外と少ない上、更に高値期待で売りしぶりがありまして、11月から更に高値更新を続け12月には 180セントになり、― この時点で2倍の値段に跳ね上がったと言うことですね― 原綿在庫の少ない紡績会社は非常に高い値で買ったところもあります。

今年も原綿減産見通し - その背景

03 年の展望ですが、02、03年度の植え付け面積についてブラジル全土で4%の減反と予想されております。02年度の相場が上昇、2倍にもなった訳ですが、 植え付け面積が去年に比べて減少しております。これは02年度の綿作者は資金手当のため、相場の安い時期に前売り契約したものもかなりあり、殆どの綿作者 は収穫後、換金のため在庫せずに売っており、また気候不順による生産の低下で綿作者の多くが採算割れとなり、綿作意欲を失ったと言えます。

一方、競合作物である大豆の相場高から大豆に切り替える生産者が多く出ました。大豆の耕作費用が綿花に比べて三分の一といわれており、植え付けから収穫ま での期間が短く、天候不順による問題も少ないので、先物契約による前渡金を受けての大豆への転換が促されると言うことです。

輸出についてはブラジルと同じく、南半球の大手の綿花生産国でその大半を輸出しておりますオーストラリアが潅漑用水不足のために、大幅減産になって輸出既 契約の量がショートしました。そのため、その代替としてブラジル綿の買いに入っていることもあります。かなりの数量が行くものと思われます。03年度のブ ラジル綿は、すでに02年度末までに7万トンほど輸出されております。ですから03年度の輸出は10万トンを超えるんじゃないかと思われます。

従いまして、03年度の綿花の需給ポジションはかなり窮屈になることが予想されます。今年に入って1月、ドルの傾向が沈静化しつつありましたが、またここ にきて3・5、3・6レアルとなっておりますので、まだ今の時期は現物が非常に少なくなっておりますので、現物相場がさらに高くなっております。さらに新 綿の植え付けはマット・グロッソ州を中心にあちこちで降雨、雨が遅れておりまして植え付けが全体に遅れました。植え付けたが雨不足で芽が出ずに蒔き直しが あったところも多く、さらに今年の生産の不安材料が大きくなって来ております。

綿糸、ドル高影響で値上がり - EU、中南米に輸出増

綿 糸の02年の回顧。02年度国内綿糸は年初から一般衣料消費の不振を受け、上期は低調に推移。6月末から国内綿花減産が鮮明になるにつれてドル高の影響も 受け、綿糸価格は上昇を始めました。これにより綿紡各社の採算は大きく圧迫されるものの、春夏物の生産を控えるアパレル、ニッターで急速に綿糸に対する先 高感が強まりました。さらに8月から綿花の価格が上昇を続け、年末の国内綿糸の価格は6月水準から比べて40%以上上昇しました。価格が年末までに大きく 改善できましたが、原料コスト・アップを売値に転嫁できた程度で、採算面まで満足できる物ではなかったようです。

綿糸の輸出ですが、8月まで国内市況の悪化でその後のレアル安により、輸出採算が改善し、各社、輸出商談を積極的に進め堅調に推移しました。仕向け地は北 米向けが、アメリカの景気後退等によって一時的には落ち込んでおります。また9月以降、ヨーロッパ、中南米などにも出ております。9月以降、アルゼンチン 向けの輸出が1年ぶりに再開されております。数量では01年度に比べて50%になっていると言うデータでございます。03年度の綿糸販売の展望ですが、昨 年後半に持ち直した綿糸市況も今上期には懸念材料が多く、早々に悪化して行くものと思われます。

原綿価格は昨年1年間で2倍以上に跳ね上がり、本年はスタートから高い原綿コストで売値にいかに転嫁していくか、これが一番の問題であります。昨年の冬物 商戦は暖冬などで不調に終わっており、製品在庫もかなりあり、仮需も期待できません。この原綿コストでは輸出競争力も低下し、国内の供給量も過剰になると 思われます。現在の高金利政策では消費の大幅な好転は期待しにくく、一部のアパレル、ニッターの信用不安の増大も懸念されます。需給バランスの失調、原料 高の製品安、決済期間の長期化に見舞われる可能性もあります。

まあ、こう言うことでかなり難しい厳しい状況と思われます。あと、新政権のもとで新しい経済政策に期待できるか、それにかかっておるようですが、いま言いましたように、厳しいシーズンになるものと思われます。

あと、繊維部会には、織物の薄地織物を扱っておるところとか、厚地織物の輸入販売を手がけておるところとか、化合繊糸の製造販売等、それとウールのニット 及び織り糸の生産販売、それから絹の業界等がございます。これらの業界についてもまとめておりますが、時間の関係で、書面(機関誌「ブラジル経済情報」) で報告させて頂く事にして、以上原綿と綿紡績中心の報告にさせていただきます。以上です。(以下本号末尾の繊維部会資料)

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30865