2003年上期業種別部会長懇談会-金融部会


山田副部会長 

銀行業界

レアル乱高下、インフレ再燃、高金利の02年下期

山 田   非常に大任でございまして、果たしてうまく出来るか自信がございませんが、それでは金融部会よりブラジル経済2002年下期の回顧と今年2003年上期 の展望について、銀行業界と保険業界に分けてご報告させていただきます。本日、部会長の村田が日本出張中で、私、みずほコーポレート銀行の山田が代理を務 めさせていただいております。

それでは、まず銀行業界のほうからご説明いたします。最初に2002年の下期の回顧につきまして。
概観といたしまして、2002年の下期のブラジル経済は大統領選挙による様々な思惑が市場を駆けめぐり、ブラジル通貨レアル、およびカントリーリスクとも 乱高下。インフレ再発の懸念など極めて動きの大きい期でありました。労働者党ルーラ候補の優位が確かな物になるに従い、カントリーリスクの上昇、レアルの 下落に拍車がかかり、10月10日には対ドルで4レアルをつけました。これは皆さんのご記憶にも新しいと思います。しかし、その後、労働者党金融担当のパ ロッシ氏による一連の金融市場沈静化に向けた発言が好感されまして、通貨は小幅ながら回復。また、ルーラ氏勝利後も労働者党は堅実な経済政策を継続すると 繰り返し発言したこともあり、市場は沈静化の方向に向かいました。
しかしながら、ルーラ氏優位の選挙戦は金融市場の不安を残念ながら募らせまし て、通貨レアルは対ドル比大幅に切り下がりました。その結果、ガソリン、電気、ガス等の値上げが実施され、インフレ再燃が再発。インフレ率、これは IPCAが対前年同月比では2002年6月には7・66%だったのが12月には12・53%まで高騰いたしました。
中銀はインフレ対策としてSELIC政策金利を段階的に25%まで引き上げ、高金利政策を採りました。これが昨年下期の回顧でございます。

業界トピックス

1-銀行のSPB導入 2-投信の時価会計制度導入

銀行業界のトピックスといたしましては二つございまして、一つはSPBの導入、もう一つは投資信託からの資金の移動。これについてご説明いたします。

まず一つはSPB、これはブラジルの決裁システムでございますが、これが新たに導入されました。決裁リスクの軽減と資金移動の円滑化を目的に、昨年の4月22日から導入され、この新しい決裁システムが採用したTED方式,これはあのリザーブ勘定の決裁方式です。
リザーブ勘定振替により資金化が早まりまして、送金日、当日決裁と受取人口座、当日入金が可能となっております。これが一つのトピックスでして、二つ目は 投資信託からの資金移動。債券相場の急落局面、また投資信託に対する時価会計制度導入の影響等がありまして、多くの投資家は資金を投資信託からポウパンサ 預金や銀行預金(CDB)等に移動いたしました。年間を通しておよそ700億レアルが投資信託から資金移動したと思われます。

議会運営に左右されよう新政権 

次に、今年上期の展望についてご説明させていただきます。全体の概観とそれに続きまして相場見通しと、という形でご説明をさせていただきます。

まずは概観。2003年の上期はルーラ政権の議会運営に大きく左右されるものと考えております。ルーラ大統領の船出は歓迎ムードで始まったものの、与党労 働者党はご存じのように両議会で過半数議席を持たないため、ルーラ政権は今後厳しい議会運営を強いられることと考えます。今月末から始まる国会で公務員の 社会保障制度改革、税制改革をいかに迅速に実行していくかが今後の課題になるものと考えます。 この議会運営の他に今後問題となるであろう点は、インフレ の動向であると思います。
昨年12月のインフレ率、これは先ほどご説明申し上げましたがIPCAで12・53、これは政府の当初目標の2倍以上 でございます。 かつ、過去7年間で最高でございました。大方のアナリストの今年上期の予想ではインフレ、実所得低下、これの継続、それから失業率の高止 まりというふうに見ております。

6月末の為替相場予測に大きなばらつき

相 場見通しにつきましては、後で別途ふれさせていただきます。外部要因としてベネズエラやイラク情勢等にも十分な注意が必要であると考えられます。ちなみ に、国連貿易開発会議(UNCTAD)と国連経済局の共同調査によりますと、ラテンアメリカ地域の今年の経済はアルゼンチンの穏やかな経済安定と、メキシ コ経済の回復が継続されるとすれば2・25%の成長が見込めると予想されております。
それではみなさんご関心の高い相場見通しについてふれさせていただきます。

まず最初、為替相場です。昨年下期の為替相場は下期スタートとなる7月1日、これは2・8レアル台でした。そこからブラジルリスクの上昇とともに7月下旬 に3レアル台に乗せた後も上昇を続け、大統領選一次投票直後の10月10日には、先ほどご説明申し上げましたように、史上最高値の4レアルをつけました。 その後、ルーラ氏の勝利決定後は、徐々に沈静化し今年初は概ね3・2から3・4レアルのレンジで推移しておりました。
しかし、ご高承のように最 近時、公務員の社会保障制度改革の難航、イラク情勢等の不安材料から再び軟化の兆しを見せ始めまして、現在は3・6レアル前後で推移しております。昨日の アメリカの動向でですね、それまで3・5で推移していたものが今日現在3・6レアルにまたさらに軟化しております。
こういったなかでボラティリティーが高いせいか、主要4行の2003年6月末の為替相場予測、これは3・2から3・6レアルと大きくばらついております。
次に、SELIC政策金利につきまして。中銀はSELIC政策金利を昨年7月に4カ月ぶりに0・5%の利上げを行って18%といたしました。それ以降、10月より反転いたしまして、インフレ抑制のため段階に利上げを行い現在は25・5%としております。
ルーラ政権は大統領選挙の公約におきまして、利下げによる経済成長を謳ったものの、メイレレス中銀総裁はインフレ抑制政策の継続を表明しております。当面現状の金利水準を維持することによりまして、インフレ抑制に軸足をおいた政策が行われるものと考えております。

Selic金利は年末に20.5% - 中銀予測

主 要4行の今年6月のSELIC政策金利予測につきましても、為替相場同様、ボラティリティーが高いせいか、年21・5%から26%とやはり、これもばらつ いております。ちなみについ先日、新聞に載っておりました記事によりますと、中銀が金融機関100社を対象に行っております毎週の調査によりますと、 2003年今年末のSELIC予想値は20・5%。これは年末です。それからIPCAによる年間インフレ率予想は11・44%というふうに中銀が2月3日 に発表しております。

保険業界

全種目収保料30%伸びと好調

そ れでは保険業界につきまして2002年の回顧と03年の展望についてご説明させていただきます。2002年の回顧、保険監督庁(SUSEP)が発表しまし た2002年10月末現在の公式データに基づき、健康保険を除くベースで、収入保険料、損害率、引き受け動向について2002年を振り返ってみたいと思い ます。
まず収入保険料。新車販売台数の5%落ち込みが主因で自動車保険が伸び悩んだものの、全種目収入保険料は対前年同期で約30%の増加と極 めて好調でした。 また、近年主要州への集中化が更に進んでおりまして、サンパウロ州は全国の55%を占めリオ、ミナス、パラナがこれに続き、主要4州で 79%を占めるという状態になっております。

次に損害率につきまして。損害率は61%と昨年同期より5%改善。しかし、主要種目である自動車保険の損害率は逆に2%悪化しておりまして、自動車盗難件数が依然高い水準で続いていることによります。
次に引き受け動向。2001年9月の米国多発テロ事件以降、海外の再保険市場は極端にハード化いたしまして、その後も世界各地で発生している数々の天災事故により再保険市場の料率アップ、および引き受け条件縮小、この傾向が依然として続いております。

今年はゆるやかな伸び予測 - 保険監督庁 

そ れでは今年の展望。今のところ大きな保険政策面の変化はないと見ております。懸案だったIRB(ブラジル再保険株式会社)、ここの民営化は労働者党政権が 発足したことに伴い遠ざかった感が強いものの、再保険自由化は世界の潮流であり何らかの手を打つのではないかと思われます。また、国内再保険引き受けプー ルを創設し再保険の海外流出を防ぎ、料率高騰を緩和することも検討されております。
収入保険料については、SUSEP(保険監督庁)は全種目合計で11%程度の穏やかな伸びと予測しております。損害率につきましては、依然として治安悪化傾向に歯止めがかからず、最大種目の自動車保険の損害率悪化が懸念されております。

以上、金融部会より発表を終わらせていただきます。(詳細は末尾の部会資料)

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30869