2003年上期業種別部会長懇談会-食品部会


渡辺部会長

司 会  続きまして、食品部会の渡辺部会長よろしくお願いいたします。

回顧と展望における6つの重要ポイント

渡 辺  東山農産加工の渡辺でございます。食品部会からの報告をさせて頂きます。
2002 年下期の回顧と2003年上期の展望ということで、ポイントを6つに絞って報告させて頂きたいと思います。その6つのポイントは何かといいますと、まず1 つ目が売上げは拡大基調が続いておりますが、ただしコスト・アップとの闘いが顕著になってきた。2つ目、農産物を中心に価格が高騰、インフレ指数を押し上 げている。3つ目、大手流通業者が納入業者の値上げに真っ向勝負を挑んできた。4つ目、各社新製品が売上げ増に大きく寄与している。5つ目が日系食品メー カーのライバル社の動きが引き続き活発であるということ。6つ目、最後になりますけど、食品業界にとってルーラ新政権の影響がすぐ直接出る可能性が少ない けれど、2003年については為替安定がまず望まれること。以上の6つの点についてこれからご説明させて頂きたいと思います。

 

1-売上げ拡大基調続くが、コスト・アップとの闘い顕著

まず1つ目、テーマとしては、「売上げ拡大基調でありながらコスト・アップとの戦いが顕著になってきた」ということですが、元々食品業界は不況に強いとい われていますが、その通りスーパーマーケットを中心とする食品の売上げは依然として拡大基調にあります。殆どの企業が売上げは前年比増で推移しておりま す。各メーカーは9月からこの1月までの間に殆ど値上げを実施いたしました。原料・資材高騰によるコスト・アップの解消に動いております。ただし、外食産 業だけは苦戦しておりまして、競争が厳しい上に料理のメニュー値がなかなか上げられない。食材のコスト・アップに加えて光熱費のアップが激しく、他店との 差別化を図って来店客数の確保に精いっぱいだったとの報告がありました。

 

2-農産物中心に価格高騰―インフレ指数を押し上げ

2番目は「農産物を中心に価格が高騰してインフレ指数を大きく押し上げている」ですが、ドル高、国際相場のアップ、それから輸出の最優先政策。この3つが 相まってレアル価での極端な高騰が出てきております。大豆、コーヒー豆、砂糖、米など半端でない値上げ状態でして、逆に言いますと、過去2年の超低価格か らの修正とも言えるかと思いますが、”ここぞ”とばかりに値上げしております。

特にコー ヒーは1昨年来の歴史的相場低迷の反動から、国内原料相場はこの4カ月で3倍くらいの値上がりになり、現在コーヒー農場は好景気となり。去年の今ごろとは 全く様変わりという状況です。参考までにコーヒーの昨年の輸出量は2800万袋、1昨年比19%増。これは過去最大の輸出量でして、世界の貿易における シェアを27%から30%に引き上げております。大豆についても先ほど、柳田さんからお話ありましたが、輸出ドライブが止まらないために、国内の中小食品 加工業者には品物が回らないというケースも発生しております。

 

3-値上げにおける大手スーパーと納入業者間綱引き

3つ目、「大手流通業者が納入業者の値上げに真っ向勝負を挑んできた」と言うことですが、まず大手スーパーと食品・飲料メーカーとの力関係を見ますと、2 大スーパーといわれるポンデアスーカルとカヘフール、この2つは2001年の売上げが約38億ドル。それぞれ約38億ドル。これに太刀打ちできるメーカー はアンベビ社(AmBev)の39億ドルのみでして、ネスレ社が25億ドル、サジア社16億ドル、ペルジゴン社が12億ドル程度となっており、こういう意 味でも2大スーパーはかなり力があると見ていいかと思います。

昨年10、11月に新聞紙上 を賑わわせておりましたが、ポンデアスーカル・チェーンが、消費者に理由を説明できない値上げには応じない「ジガ・ノン運動」(ノンと言おう)を展開しま した。こうした大手スーパーの動きに対して、サジア社は「損をしてまで売る気はない。大手スーパーだけが顧客ではない」と反論しております。
先 ほども話しましたが、”ここぞとばかり”の値上げの砂糖ですけど、メーカーの値上げ幅は77%。この理由は国際相場が5月から20%強アップ、ドルが 51%アップしたと理由を言っていますが、そうした値上げ通知に対して、ポンデアスーカルの店頭からアスーカル(砂糖)が消え、リオのセンダスの店頭から 大豆油が消えるという状態になりました。

しかしながら、決着はスーパー側が、「この異常な値上がりはメーカーの納入価格の上昇によるものです」と店頭に張り紙をして最終的には納品をいたしました。
過去のハイパーインフレになれたブラジル人は値上げをすぐに「仕方ない」と受け入れてしまう傾向がありますが、こうした極端な値上げに抵抗する姿勢はこれから大事なのではと、個人的には思っていますが、メーカー側から見ると「ちょっと困った問題」ではあります。

 

4-新製品で勝負の各社

4 つ目の「新製品の売り上げ増に寄与」というテーマでは、具体的には乳酸飲料でヤクルト40、同じく乳酸飲料ヨーデルにグレープ味とピーチ味が追加された。 それから味の素さんの粉末ジュース、ヘフレスコ、”MID”、それから日清味の素さんのカップヌードルこれはもともとアメリカから輸入販売していた物を、 ブラジル産に切り替えて非常に販売が好調であると。これらの新製品は非常に売上げに寄与していると言うことです。

 

5-ライバル社の動き活発

5 つ目の「日系食品社のライバル社の動きが引き続き活発だ」というテーマですが、ここでは具体的には世界最大の食品メーカーと言われるネスレ社を取り上げま す。情報は二つあります。第1の情報は。乳製品の輸出で世界最大量を誇るニュージーランドのフォンテラ組合グループがネスレ社と提携を結んで、デイリー・ パートネス・アメリカス・ブラジル社というのを設立しました。同社は米州全体で乳製品の販売を展開するという方針だと言うことです。第2は、インスタント コーヒー市場も非常に厳しい戦いが続いておりますが、ネスレ社については最近、シェアを伸ばしている日系メーカーの10%安い値段で店頭価格を設定すると いうキャンペーンでシェア取り返しに来ているというような動きもございます。

 

6-新政権では2003年にまず為替安定がのぞまれる

最 後、6番目に、「食品業界にはルーラ新政権の影響がすぐ直接出る可能性は少なくて、まず為替安定が望まれる」ですけど、ルーラ政権になったから、すぐに 「どうこう」と言うことではないのですが、むしろ為替、インフレ、金利と言ったファンダメンタルズの動きが非常に懸念されるところです。特に為替につきま しては、現在の日系食品加工メーカーでは米、小麦粉、脱脂乳とかが輸入原料でして、かなりそういったもののコスト高が心配される。
また、いくつ かの企業は南米を中心に輸出を展開しております。従いまして、輸入のコスト高を輸出でなんとかカバー出来るという状況ではあったんですが、アルゼンチン、 ウルグアイに続いてベネズエラまでおかしくなって来たということで、輸出全体はまだ好調ですが、個別に見るとちょっと心配要素が出てきた。特に数量的なも のよりも債権回収面で心配要素がだいぶ出ているということです。
また為替はインフレと連動しておりまして、乱高下を続けるならば、また今年も去年と同様、非常に経営としては難しいものとなるだろうということが懸念される食品業界でございます。以上です。(詳細は末尾の部会資料)

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