2014年下期の業種別部会長シンポジウムに160人が参加して開催

2014年下期の業種別部会長シンポジウムは、2014年8月21日午後1時から6時までマクソウドホテルに160人が参加して開催、前半の司会は上野秀雄総務委員長が務め、初めに藤井晋介会頭は、開催挨拶で福嶌教輝在サンパウロ日本国総領事/会議所名誉顧問並びに小林和昭在ブラジル日本国大使館 参事官に対してシンポジウム参加にお礼を述べ、年間2回開催の業種別部会長シンポジウムは 商工会議所のメイン行事であり、大統領選直前でのエドアルド・カンポス候補の飛行機事故で各候補は戦略の練り直しを余儀なくされている。

マリーナ・シルバ候補は一般的に経済問題には疎いのではないかと心配されていたにも関わらず、私の友人は、マリーナ・シルバ候補はブラジル経済に精通していると説明、現在のマクロ経済が良くないのでこのままでは先が憂慮されるが、11部会長がそれぞれの分野の回顧と展望を発表するので、経営の役に立ててくださいと述べた。

初めに金融部会の酒井浩一郎部会長は、2014年上期の回顧として経済停滞・インフレ進行・経常赤字・格下げ、高止まりするインフレ、公共料金凍結、インフレ抑制のため、為替介入プログラムによりレアル高へ誘導、引続き歴史的な低失業率も、工業生産低迷に伴い製造業を中心に求人減少、貿易収支赤字で経常赤字は引続き大幅な赤字など依然として厳しい状況が続き、下期の展望では公共料金凍結、レアル高誘導により、インフレターゲット上限に近い6.3%程度、金利は景気低迷下の更なる引上げは難しく、2014年末は現状の11%程度、景気低迷、工業生産減少に伴い、失業率が上昇に反転、経常収支は前年並みの赤字、保険業界の動向として保険加入者増加で保険業界全体が成長、2014年の保険種目別損害率では損害率が悪化しているものの、全体的には成績は横ばいなどと説明した。

コンサルタント部会の関根実部会長は、世界秩序変調下のブラジル経済と題してグローバル化の中断からブロック化への移行、BRICS開発銀行設立による国際経済の秩序の変化、昨年のブラジルのGDPは世界7位、人口は5位、面積は5位、自動車販売台数は4位、自動車生産台数は7位、人間開発指数は81位、公共事業汚職度は、BRICSの南アフリカの64位に次ぐ73位、ブラジルの政治・社会の安定、ブラジルの潜在成長力の掘り起し策として、国民所得分配政策から成長を伴う所得増加政策、産業保護政策から重点産業成長政策、教育の普及から教育の質の向上による労働生産性向上並びに産業の高度化対応、ブラジル・コストの削減として、インフラ整備・非関税障壁低減SISCOMEX,SISCOSERV簡素化INMETRO,ANVISA規制緩和・税務処理の簡素化・労働形態の弾力化・政策金利低下で為替市場介入抑制、分権化などを説明した。

自動車部会の近藤剛史部会長は、安倍総理がブラジルを訪問中にリオ市の賢人会議に参加、ブラジリア市での両首脳と賢人会議に参加、自動車産業界代表がマウロ・ボルジェス開発大臣に要望書を提出、サンパウロ市での日伯ビジネス・フォーラム参加、2014年上期の振り返りとして低調な四輪販売、月間販売台数の推移、カーニバルやワールドカップによる営業日数の減少、フリートの比率、支払い形態別販売比率、リース税額控除廃止、大幅減少の四輪輸出、2014年下期の展望として下半期は営業日数増加による販売増加、工業製品税(IPI)減税の継続、中長期展望としてブラジルの人口構成の推移、世帯別所 得分布、ブラジルの消費拡大は継続、ブラジル国内総生産の予想、自動車産業界のビジネス障害として高い車両価格、高い車両保険、高額な通行料、燃料費、メインテナンス代、インフレの未整備、低い競争力、移転価格税制などを説明した。

機械金属部会の相原良彦部会長は、2014年上期の回顧では業界全体的には不振であったが、地下鉄案件の成約が唯一明るい話題となり、銀行金利の上昇並びに為替の変動、アルゼンチンの外貨規制や国内景気の減速、景況感の低下による自動車やカーエアコン販売 の低迷、ワールドカップ開催による製造業部門の減産、鉱山向け機械販売の不振、大幅な在庫調整、米国シェールガス開発によるブラジルへの天然ガス関連投資の減少、代理店の在庫増加、コスト競争力のある中国製品の脅威、ペトロブラスの投資減少、人件費削減対策、中国の粗鋼生産の動向、政策金利の引き上げの影響、クレジットの与信強化、ペトロブラスの業績不振を説明、2014年下期の展望では石油・天然ガス関連案件向け投資の減少、火力発電案件が有望、紙・パルプ業界ではクラビン社以外は設備投資実施予定、洋上石油設備投資向け入札、10月の大統領選の行方、新規OEM攻略による販売増加、鉄鋼・製糖・都市交通向け引き合い案件のフォロー、北部地域の展示会向け出展、継続する自動車販売の落ち込み、代理店との共同による市場ニーズの掘り起こしなどを説明した。

貿易部会の岡省一郎部会長は、今年上半期の回顧では輸出入とも昨年同期比減少、輸出は大豆並びに大豆粕が増加、鉄鉱石の輸出量は増加したにも関わらず、コモディティ価格の減少で輸出額は減少、紙・パルプは増加、自動車はアルゼンチンの外貨規制で大幅に減少、粗糖はインド並びにタイの増産の影響で輸出が大幅に減少、輸出相手国は中国が1 位、日本は5位、地域別にバランスのとれた輸出先となっており、輸入では輸入相手国では中国が2013年に続いてトップ、日本は9 位に後退、中国を中心にアジアからの輸入がトップ、対日輸出では大豆並びに木材チップが増加、日本からの輸入では乗用車・機械部品が増加したが、自動車エ ンジンや自動 車パーツは減少、対内直接投資はオランダが米国を抜いてトップ、日本の対内直接投資は約21億ドルで6位、中国は第三国経由の対内直接投資で詳細は不明、鉱業部門への投資は大幅増加、農畜産部門や原油・天然ガス採掘部門への直接投資は大幅に減少したことを説明した。

後半の司会は岡省一郎企画戦略委員長が担当、電気電子部会の三浦修部会長は、2014年上期の回顧では韓国テレビメーカーがLCDテレビの半額のプラズマテレビを200万台以上販売して業界に衝撃、為替の変動、Selic金利引き上げに伴う銀行金利の上昇、ローカルコンテンツ規制の対応、保護貿易主義、アルゼンチンのセーフガード、安価な中国製品による打撃、ブラジルコスト、レアル安の為替によるコストアップ、ワールドカップ特需の期待、ワールドカップ向けテ レビ購入シフトへの影響、マナウスフリーゾーンでの投資拡大、法定賃金上昇率により固定費増加、反ワールドカップデモや公務員ストライキ、唯一好調なスマートフォン販売などを説明、2014年下期の展望並びにワールドカップの影響では、プロジェクターはワールドカップ特需で販売増加、ワールドカップによる営業日の減少、経済活動の遅 延、大統領選挙終了まで不透明な経済活動、期待できない家電製品の販売予想、消費の低迷、新車販売向けIPI減税延長にも関わらず、低迷する新車販売など全般的に低迷が予想されると説明した。

化学品部会の友納睦樹部会長は、2014年上期の回顧でアジアからの安価な製品の流入、生産性を上回る労務費の上昇、新ブランド導入による売り上げ増、大規模デモ発生による購買力の低下、旱魃による害虫発生の減少、中国製品との競合継続、ワールドカップ開催による工場稼働日の減少並びに販売機会の喪失、新製品上市、自動車販売不振による影響、アルゼンチン向け輸出の減少、欧米メーカーとの価格競争の激化、インフレ高、金利高、新規顧客の開拓、ドル高の為替による原材料の高騰、進む業界再編、2014年下期の展望ではレアル安の為替による輸入減、人員削減によるコストカット、設備投資による合理化効果への期待、ドル高傾向の継続、売上増加を上回る給与ベースアップでの収益減少、借入金圧縮、クレジット延滞率の増加懸念、高関税などの保護主義政策、大統領選後の期待感、インフレによる収益圧迫などを説明、また副題 『どうする日伯関係 -ビジネス環境改善に向け、いま為すべきこと』では、進展しない港湾や道路のインフラ整備、ロイヤリティ送金の制約緩和、VISA発給や移転価格税制の改善、税制改革などについて説明した。

運輸サービス部会の森田透部会長は、2014年上期の回顧ではサントス港における2ヵ所の新港湾ターミナルの稼働による通関スピードの僅かな改善、貿易では輸出入とも減少、自動車の国内需要の不振、鉄鋼輸入の継続、ワールドカップ開催に対するゼネストによる物流アクセスへの影響、ワールドカップ開催による営業日数の減少、航空運賃の値上がり、傭船料の高止まり、IT業界の技術者不足、2014年下期の展望では、港湾民営化による港湾サービスの安定、競争原理の更なる導入、連邦政府の物流整備計画に期待、10月の大統領選挙の行方、消費マインドの低下、製造業部門の不振、アウトソーシングサービス需要に期待、IT業界の再編加速の予想、IT技術者の人件費の高騰、電力料金の値上げの可能性を説明、また昨年同様に2014年10月24日(金)7:15~16:00までサントス港見学会を行うことを説明した。

繊維部会の横山眞一部会長は、2014年上期の回顧では綿花栽培で新しい害虫の発生、ブラジル国内の原綿消費量に不足懸念、人件費の高騰、電力不足の影響、ワールドカップによる衣類の売上減少、唯一ワールドカップで活況だったのはタオル生産、政府・企業向けユニフォーム販売の 苦戦、インフレ上昇でクレジット支払いを優先したため衣類の購買力低下、ブラジル経済の不透明感上昇による貯蓄志向の上昇、全国的な抗議デモによる営業時 間短縮による小売販売の減少、Forever21などの低価格チェーン店のブラジル進出、中国の綿花備蓄在庫拡大の影響などを説明、2014年下期の展望では、綿花に新種類害虫対策強化、ブラジルコストの上昇による国際競争力の低下、ブラジル国内綿糸価格の行方、ク リスマス商戦への期待薄、繊維メーカーのコスト優先でリング糸からOE糸への切替傾向、大統領選の影響、新品種の遺伝子組み換えで除草剤の使用減少などが挙げられ、サブテーマ「どうする日伯関係-ビジネス環境改善に向け、今なすべきこと」では港湾インフラの充実、労働力の底上げのための教育制度改革、教育 設備の充実、外国企業による土地所有制限法、就労ビザの取得・切替などを挙げた。

建設不動産部会の奥地正敏部会長代理は、2014年上期の回顧では旱魃による電力スポット価格の高騰、ブラジル不動産会社との情報協力体制の整備、ペトロブラス石油公社の石油・天然ガス分野の投資減少による影響、景気減速による案件進捗の遅れや計画延期、ペトロブラス石油公社の石油・天然ガス分野の投資減少による影響、労務費・建築資材の上昇、優秀なエンジニア不足、2014年下期の展望では工事の採算性アップ、経費節減、効率的な業務改革、新規顧客の開拓、建築ニーズの掘り起こし、新工法の導入、社員や作業員の技術向上の必要性などを説明した。

食品部会の西井孝明部会長は、 2014年上期の回顧ではコーヒー原料相場の低迷、旱魃によるアラビカ種の収穫減による相場の急騰、小麦価格の高止まりによるコストアップ、競合他社との競争激化、新製品の投入、平行輸入品の価格上昇、ココア豆の高騰、ワールドカップによる特需なし、ブラジル種苗業界全般に付加価値商品(F1 Hybrid)の需要が増加、TOPICSとしてNHフーズ・ブラジルサンパウロ事務所オープン(4月1日)、「すき家」が6月にBarra Fundaに新店、2014年下期の展望では10月の選挙に起因するデモ等の社会的混乱、現政権によって価格転嫁が制限されている電気料金の動向が懸念、ブランド力の強化、南米各国への進出、マーケティング支援、豚肉の日本向け輸出強化ウクライナに関連したロシア情勢の不安定によるインスタントコーヒー輸出の減少、アルゼンチン経済情勢の影響、副題の「どうする日伯関係 ビジネス環境改善に向け、今なすべきこと」では、日伯国交樹立120年や2016年のオリンピックは日本の食文化紹介のチャンス、インフレ懸念が高まる食品市場において、より生産性が高く、コスト競争力のある食品産業の実現するための働きかけ、世界文化遺産としての日本食の普及、日伯食文化交流への支援などを説明した。

福嶌教輝在サンパウロ日本国総領事/会議所名誉顧問は、講評で11部会長の発表は非常に参考になり、現在のブラジル経済の状況は厳しいが、数年後には安定した成長になると思うので勇気(Animo)をだして下さいと述べ、日本政府も民間企業を支援していくために提言をしてゆくと強調、また商工会議所関係者には安倍総理来伯の支援に対して心からお礼を申し上げますと述べ、日本ではブラジルの注目度が低くてよく理解されていないが、安倍総理はブラジルに対する新たな認識を持っているので“鉄は熱いうちに打て”のことわざのごとく東京にメッセージを伝える。

大統領選挙はエドアルド・カンポス候補の飛行機事故でいったん白紙に戻したが、マリーナ・シルバ候補のブレーンの中にFIESPの国際通商部(DEREX)のロベルト・ジアネッテ・ダ・フォンセッカ部長の兄のエコノミストであるエドゥアルド・ジアネッティ氏は、マリーナ・シルバ候補は経済に弱いのではと危惧されているが、マリーナ・シルバ候補は経済の動きをよく見ていると太鼓判を押したと説明、しかし大統領には構造改革を期待したいが、しなければブラジルは変わらないと結んだ。

小林和昭在ブラジル日本国大使館 参事官は、コメントで業種別部会長シンポジウムは大いに勉強になり、安倍総理の来伯では皆さんの支援に感謝しており、経済ミッションの来伯では与党の労働者党が日本企業の力を認めていることが確認でき 、ボルジェス商工大臣が9月に東京で開催される経団連/CNI主催の合同委員会並びに日伯貿易投資促進産業協力合同委員会に参加するのでビジネス障害になっている問題点を取り上げると説明、福嶌教輝在サンパウロ日本国総領事は日本政府のバックアップを約束、  小林和昭参事官 は、今がチャンスであると明言しているので“鉄は熱いうちに打て ”と少しでもビジネス障害を取り除く東京での会合になるように努力すると約束、また部会長並びに事務局の皆さんにはお礼を申し上げますと述べた。

最後に上野秀雄 総務委員長は閉会の辞で、本日発表したプレゼンテーションをすでに商工会議所サイトに掲載、また後日、テープおこしをした記事をサイトアップするので活用して下さいと結んで、2014年下期の業種別部会長シンポジウムは成功裏に幕を閉じた。

シンポジュームプレゼン資料リンク → http://jp.camaradojapao.org.br/camara-em-acao/simposios/?materia=13512

開催挨拶中の藤井晋介会頭

左から後半司会の 岡省一郎企画戦略委員長/前半の司会:の上野秀雄総務委員長

左から福嶌教輝在サンパウロ日本国総領事/藤井晋介会頭/小林和昭在ブラジル日本国大使館 参事官

左から小林和昭在ブラジル日本国大使館 参事官/天野一郎副会頭/江上知剛専任理事

左から酒井浩一郎金融部会長/関根実コンサルタント部会長/近藤剛史自動車部会長

左から近藤剛史自動車部会長/相原良彦機械金属部会長/三浦修電気電子部会長

左から坪井俊宣領事/平田藤義事務局長/天谷浩之アドバイザー

講評中の福嶌教輝在サンパウロ日本国総領事

小林和昭在ブラジル日本国大使館 参事官

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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