ABDIとの自動車部品サプライヤー育成事業会合の開催

ブラジル産業開発機関(ABDI アウグスト・フェレイラ総裁)一行と政策対話委員会産業競争力強化・中小企業育成WG (グループ長 タケウチパウロ)との自動車部品サプライヤー育成事業会合は、2017年1月27日午前9時30分から正午過ぎまで商工会議所大会議室で開催、進行役は政策対話委員会の吉田章則調査員が務めた。

 商工会議所では、今までブラジル自動車部品サプライヤーの競争力強化と育成事業に関して、ブラジル政府、特にMDICとの間で議論を重ねてきており、ブラジル政府もBrasil Mais Produtivo計画などを立ち上げ、中小企業育成事業を進めている。また、ABDIは航空機部品産業において、リーン生産方式を活用した裾野産業育成事業を展開している。

今回ABDIから商工会議所と共に、自動車部品サプライヤー育成事業に関して、共同研究事業ができないかを模索する会合を持ちたいとの要望が寄せられていた経緯があった。商工会議所として産業競争力強化WGメンバー並びに自動車部会からは昨年5月に「サプライヤーへの教育支援活動に係わるアンケート」に回答した本活動に関心を寄せている自動車部会メンバーが参加して開催された。

今回の会合のトッププレゼンテーターとして、ABDIのマリア・ルイザ・カンポス・マシャード理事は、「ブラジル航空産業の今後の展望」と題して、ブラジル航空産業の創成期の状況、1945年にブラジル航空技術大学(ITA)設立並びに航空機産業技術センターとしての役割、世界第3位の商用旅客機メーカーでもあるブラジルの航空機メーカーエンブラエル社(EMBRAER、Empresa Brasileira de Aeronáutica S.A.)は1969年設立、ブラジル航空機産業の特徴、ボンバルジエ社と競合する中型ジェット機生産、日本並びにロシア、中国が参入してきて競合が激しいエグゼクティブジェット機市場、世界のジェット機市場として今後20年間には3万5000機の需要、2016年のジェット機生産は1400機以上の拡大、エンブラエル社の従業員数は1万9000人、世界の90航空会社のジェット機を納入、850機のエグゼクティブジェット機納入、2016年には68機の商用ジェット機並びに75機のエグゼクティブジェット機納入、530機のジェット機受注残を抱えていることなどを説明した。

続いてABDIのシンチア・アラウージョ・マットス技術開発担当部長は、「航空産業開発サプライヤー育成プログラム(PDCA)及び成果」について、PDCA育成プログラムの概要、目的としてサプライヤー業界のリーダー育成、養成のためのセオリー、実施プログラム、指導内容、結果測定、日本の「カイゼン」方式や「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」の<5S>導入及び普及、実践方式、モニタリング、PDCAプログラムの70社に及ぶプログラム参加サプライヤーリスト、改善結果などについて説明した。

続いて国内サプライヤーチェン開発担当のパウロ・クラーロ部長は、「航空業界サプライチェーン開発」について、初めに株式会社 フジドリームエアラインズ(本社:静岡県静岡市)へのジェット機納入を紹介、エンブラエル社の世界の支店網、世界60か国の90航空会社にジェット機を納入、同社への世界の地域別サプライヤーのうち北米は56%を占めるが、ブラジルの国内サプライヤーは18%まで上昇、2008年の世界金融危機後の航空業界の停滞、航空機部品産業育成プログラム(PDCA)の教育制度、パートナシップ、業界リーダーの育成、国内サプライヤーの育成並びにシェア拡大などについて説明した。

社会経済開発銀行(BNDES)のアナ・パウラ氏は、「社会経済開発銀行(BNDES)支援」と題して、過去10年間のBNDES銀行のクレジット残高推移、ラヴァ・ジャット作戦汚職問題による昨年のクレジット落込み並びにクレジットの部門別シェア、新しいクレジット政策、業務内容の紹介、従来型の直接オペレーション、新しい他銀行を介した間接クレジットオペレーションのフローチャートなどを説明した。

中小企業育成WGのパウロ・タケウチWG長は、初めに商工会議所の政策対話委員会並びに産業競争力強化・中小企業育成ワーキンググループの構成や目的について説明、また経済リセッションの影響を受けた昨年の乗用車生産は僅か216万台、今年は240万台まで回復が予想されているにも関わらず、10年前の2006年の水準に留まる予想、今後20年間の楽観的、悲観的予想の自動車生産台数、自動車業界の直面する課題としてコスト競争力の強化、現調率アップの課題、部品サプライヤーの競争力アップ、セクター別地場企業の問題点や課題、自動車メーカーに直接部品を供給する一次請け企業ティア1 (tier 1, tier one)、2次請け企業ティア2(Tier2)の技術力判定やコスト、投資、エフィシエンシー指数、直面する問題点、心配されるファイナンス状況、今後の問題意識の共有、税制システムや労働法、自動車業界向け技術ポリシーやコスト競走力アップなどについて説明した。

トヨタブラジル社のロナルド・ヒロユキ・カワグ チジェネラルマネージャーは、「ブラジル自動車部品サプライヤー協会」について、協会設立の目的や基本的ポリシー、経緯、組織図、機能、サプライヤー従業員向け各種トレーニングの目的、実習、講習会、社会的責任プログラム参加などについて説明した。

デンソーブラジルのウイルソン・アバロリ氏は、デンソーの企業概要、資本構成、従業員数、パラナ州クリチーバ市の本店並びに工場、サンパウロ州サンタ・バルバラ市の技術センター並びに工場、製品紹介、サプライヤー規模やファイナンス状況などについて説明した。

アイシンブラジルのロナルド・イト氏は、アイシンの世界の製造拠点、従業員数、ブラジルのサンパウロ州イツー市の本社、製品、主要顧客名、現調率引き上げ目標、原材料や部品、設備機器などのサプライヤー向けサポートなどについて説明した。

G-KTブラジル社のファービオ・ナシメント技術開発担当マネージャーは、G-KTブラジル社は為替レート変動の影響並びに現調率アップのためにブラジル進出、技術力不足のカバー、知識の習得、社内プロジェクトチーム結成、主要顧客、現調率アップでコスト削減、工程管理や金型設計、製造コスト計算などの教育実施などについて説明した。

最後の質疑応答では、経済リセッションによるファイナンス状況悪化、部品サプライヤーの技術革新、中長期的な視点による自動車業界の展望、一向に改善されない中古機械・装置の輸入、自動車技術革新政策(Inovar Auto)、サプライヤーの選択基準、ロイヤリティ送金問題、パテント問題などが挙げられたが、今後も会合を継続することで参加者全員が合意、第1回会合は多岐にわたる意見交換が行われて成功裏に終了した。

Ana Paula Paschoini (BNDES), Cynthia Araújo Nascimento Mattos e Maria Luisa Campos Machado Leal (ABDI)

Felipe Barbosa e Paulo Takeuchi (Grupo de Trabalho Competitividade Industrial e Desenvolvimento de Pequenas e Médias Empresas (PMEs), da Comissão de Relações Institucionais (CRI) / Honda South America) 

Paulo Claro (Embraer), Atsushi Okubo (Jetro, São Paulo) e Fujiyoshi Hirata (Câmara)

Fotos: Rubens Ito / CCIJB

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