(Teams) ブラジル令和2年度官民合同会議開催

ブラジル令和2年度官民合同会議は、2020年12月14日午前8時から9時まで開催、初めに本省から挨拶及び報告として、中南米局の林貞二局長は、今年はCOVID-19パンデミックによる影響で、両国にとって経済情勢が厳しい予想、経済協力開発機構(OECD)では、今年の日本のGDP伸び率はマイナス5.3%、ブラジルはマイナス6.0%、2021年の世界のGDP伸び率は4.2%とV字回復を予想、ブラジルのビジネスの一線で活動している商工会議所会員は苦労されているが、会議での意見や要望を政府の政策に生かしたいと説明。

また日伯関係も色々な分野で中止を余儀なくされており、オリンピック・パラリンピック開催も来年に先送り。日メルコスールEPAも中断しているが、10月のオンライン活用で外務大臣会談、11月日米ブラジルの枠組み立ち上げはブラジルが先進国の日米連携の重要な意義となった。来年以降は米国の新政権誕生で米中関係の変化、EUとの関係などが流動的。菅政権はデジタル分野でのブラジルとの関係強化、気候変動への対応、農産物輸出強化、ブラジルのOECD加盟支援などについて説明した。

安東義男参事官は、ブラジルは200万人の日系人を擁する世界最大の日系コミュニティ、5万人の在留邦人を擁して日伯関係強化で貢献。邦人保護、COVID-19パンデミックによる人の往来問題、10月から在留資格のある人の入国再開、短期出張からの帰国緩和措置、日伯間の往来再開の検討、日系コミュニティの福祉向上、JICAとの連携によるビジネスの環境整備などを説明した。

商工会議所からの「コロナ禍におけるビジネス状況及び今後の見通し」に関する報告として、初めにアマゾナス日系商工会議所の本田 貴弘会頭(ホンダ)は、アマゾナス州マナウス市 新型コロナウィルス感染拡大経緯及び対応状況説明では、アマゾナス日系商工会議所会員数の推移、マナウス工業拠点の総売上高推移、部門別売上高推移、マナウスフリーゾーン雇用数推移、工業団地従業員送迎バス強盗に対する安全対策、ロジスティクスや道路などインフラ整備の現状などについて説明した。

南伯日本商工会議所の和田 好司会頭(さわやか商会)は、1974年からの南伯日本商工会議所設立の経緯、相次ぐ南大河州からの進出企業撤退、会頭選出問題解決として地元の日系企業代表の就任などについて説明した。

リオデジャネイロ日本商工会議所の旭 俊哉会頭(三井物産)は、リオ州を牽引する石油・天然ガス分野は、コロナ禍で石油の国際コモディティ価格下落、ペトロブラス石油公社のコスト及び投資削減。ダメージが少ない川上の石油開発分野。プレサルの原油生産継続、連邦政府の入札中止やロイヤリティ収入減少。観光収入減少などについて説明した。

パラー日系商工会議所の山中 正二副会頭(山中商事)は、コロナ禍でパラー州の経済も大きなダメージを受けている。在留邦人や日系人のCOVID-19感染や死亡状況について月間推移を詳細に説明した。

パラナ日伯商工会議所会頭代理として、ルイス・ニシモリ下院議員は、COVID-19パンデミックで生活や仕事様式の見直し、ブラジルの国会は4月からオンライン形式採用も論争ができない問題を抱えている。またコロナ禍で年内に予定されていた税制改革や行政改革は来年に先送り。ブラジルの農畜産分野はコロナ禍にも拘らず、輸出全体の43%を占めるほど好調に推移。来年は日本への牛肉輸出促進。日本などへの安定した食糧供給などについて説明した。

ブラジル日本商工会議所の村田俊典会頭(双日)は、2020年の商工会議所活動、及び会員企業を取りまく環境はコロナの影響により大変劇的であったが、同時に未来を先取りした前向きの変化もあった年。さらに、グローバル経済、ブラジルの政治経済環境は各会員の属する業種・業界(部会)もその事業に大きく影響を与えた。本日は、商工会議所で開催した、フォーラムで発表された各部会の声を簡単に説明、詳しいデータにご興味のある方は商工会議所のホームページ参考を説明。

下記のプレゼンのスライド3の商工会議所活動の初期ステージは、コロナウイルスに関する情報発信と会員間の情報共有が活動のメイン。3月末には会員企業の退避状況確認アンケートなども実施。商工会議所活動の大きな柱の一つである昼食会は中止にし、3月の総会なども少人数で実施。従来年2回開催してきた業種別部会長シンポジウムは「ウェブフォーラム」と名称を変更し、8月から12月迄6回開催。

9月24日には、特に日本本社のブラジル関係者を含め直近のコロナ感染・対応状況、政治情勢、経済情勢について会頭、財務委員長、イノベーション・中小企業委員長等自らが講師になって日本向けウェビナーを開催。

商工会議所主催、当方から依頼した会員企業主催のセミナー(会計事務所や法律事務所)、JETRO様との共催セミナーなどへの出席者は延べ人数で実に7千人を超えた。従来のプレゼンシャルでのセミナーでこの人数を集めるのは到底不可能であった。コロナによる環境変化がこの様な形で多くの会員企業の参加を可能にしたのは非常に価値のある事だと、我々は自負していると説明。

スライド5のコロナによる企業活動の影響について、渡航やオフィス再開に向けてのアンケートを9月末にJETRO様と共催。中でも一時避難した駐在員・家族がどの位ブラジルに再渡航しているかを見ると、駐在員については、本年度中に7割以上の方が戻っているが、家族は約半数が来年度以降になる様子。また、新規赴任対象者も半数が来年度以降の予想。今後は日本からの駐在員中心の企業運営を、ブラジル現地職員へのシフトする動きが今後加速すると考えられる。

また、工場以外の業務は、殆どの会社でリモートオフィスの推奨と継続がされており、ツールやウェブ環境の整備が進んでいる。また、会員企業には事務所の縮小や移転を検討・実施しているところもある。リモートワーク定着のため、ルールや管理方法を設定したり、オフィス・工場など衛生プロトコールを整備する必要がある。また、リモートワークに向け従業員への補助を実施している企業もある。

スライド6の会員の企業活動を見て行く上での経済指標として、小売り売上高は4月を底に9月には、年初の水準まで戻っている。しかし、細部(商品別小売り売上高、2月を100とした指数)を見ると、業界毎に凸凹がある。ステイホームから家具・家庭用品は急速に回復してきている。スーパーマーケットは一度もマイナスになることなく増加。書籍・文具、などはかなりの落ち込みが継続。建築資材は需要増加のため急回復している。自動車の販売台数は前年同月比との比較表では10月には昨年並みの販売に近づいているものの4-6月の落ち込みが激しすぎで、年度の販売台数は85%程度と予想されている。鉱工業生産や設備稼働率も4月を底にコロナ以前の水準まで持ち直している。スライド7では経済指標を踏まえながら、会員の各種業界からウェブフォーラムで説明頂いた内容を抜粋して説明。

スライド8の自動車業界は、コロナによる、生産・販売台数の低下を来年度以降どの様に補うかの戦いに加え、中長期的にも課題を抱えている。感染対策など、新たな環境変化への対応。長期的視点に立った現調率の引き上げによる為替リスクに強い事業体質作り。排ガス規制への対応、政府への要望。カーシェアリング、電動化、コネクテッドなど、グローバルに起こっている動きも取り入れて行く必要がある。フォーラムでは、ブラジル政府に対しては、税制改革の推進、両国政府に対する、日・メルコスールEPA締結なども要望として出されている。

生活産業部会(建設)については、マクロではポジティブ、ミクロでは対応に厳しい状況で、3月以降現場での感染発生、施主都合や行政指示による中断が約7割、まずは足元の建設スケジュールを軌道に乗せる必要がある。また、需給バランスの崩壊やレアル安による建設資材の高騰、建設需要の高まりによる人件費の高騰が経営に影響を与えている状況から、難しい施主との契約見直し交渉を行う必要がある。一方で、業界全体としてはE-コマース増加による物流倉庫などの需要増加、金利低下を受け個人、個人投資家の新規マンション購入意欲が増しており、空前のブームになっている。

スライド9の機械金属部会については、会員企業が立ち向かうマーケットは多岐に及んでおり、それぞれの特徴があり、細かくは説明出来ないが、総じて初期には生産・販売・メンテナンスなど大きなダメージを受けている。その後どのマーケットも回復している。中でも、建機関連の業界やブラジルの基幹産業である農業部門で戦う機械分野など、極めて堅調な動きをしている業界もある。

電気・情報通信部会では、レアル安のインパクトが大きすぎて、回復後も半数以上の会員が業績悪化を見通している。在宅の定着化をベースにした業務アプリケーションやクラウド化が進展する他、2021年度には5Gの周波数の割り当て入札が行われる予定で、米中の貿易戦争のなかで、ブラジル市場が世界的にも注目を浴びている。ブラジル政府は米国と中国の選択を迫られていますがまだ結論が出ていない。業界の性質として、韓国勢との競争がある。部会からは、日・メルコスールEPAの締結へ向けての強い要望が出されている。

最後に、スライド10の取り巻く環境と見通しについて、私見だが、我々は常に激しく上下するブラジルレアルレートに事業が左右され、スライド10の左上のグラフは2019年から少しずつ売り越されていた海外投資家のマネーがコロナ以降その売りを急速に拡大させてきたことを示している。また、通常はブラジルリスク(5年物CDS)と相関関係の深いブラジルレアルが今年の6月以降は乖離しており、その点からもレアルレートは売り幅が大きくなっていたことを示している。11月に入って、急速に海外投資家の資金が流入しており、1-10月で売り越されていた850億レアルの外国人投資家の株式投資は、11月単月で300億レアルほど再流入している。足元のレアル高は、コロナから続いていたトレンドが大きく転換したことを意味している。

一方で、コロナ対策で歳出上限法を撤廃して運用した2020年は、財政収支を大きく悪化させた。GDP比の総債務残高は2019年の75.8%から98.2%へと上昇。中央銀行はSELIC金利を足元2%に据え置いているが、10年物の国債のイールドは8%程度まで上昇。長期のリスクプレミアム幅も膨らんでいる。

反転したレアルレートのトレンドがこのまま続くのか、財政収支の悪化を市場が咎める事になるかは、2021年に持ち越された税制改革や、行政改革の行方に左右される。また年内会期には決着しそうにない2021年度予算、特に、歳出上限法を撤廃して、貧困対策に真水を投入するかどうかを市場は注目している。

会員企業を取り巻く環境は業界動向であり、金融市場や、政治動向であります。我々商工会議所は会員企業のベネフィットとなるべく、オールジャパンの精神でこれからもどんどん情報を発信して行きたいと説明した。

Pdf2020年官民合同会議 ブラジル日本商工会議所 村田俊典会頭

山田 彰大使は、昨年末は今年を楽観的な予想をしていたが、コロナ禍で一転。ブラジル経済はのCOVID-19感染拡大で大きなダメージを受けつつも回復している業界も多い。連邦政府はコロナ禍で構造改革は遅れているが、国会の方向性は維持されており、来年の税制改革実現に意欲を表している。来年はワクチン接種の普及で落着くと予想。経済も通常に戻り新しい社会が生まれてくる。ブラジルの潜在力は依然として健在で、両国関係強化はまだまだ伸びしろがあり、All Japanで支援すると説明した。

Pdfブラジル令和2年度官民合同会議出席者リスト 

 

Foto: S. Kusakano / CCIJB

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=47911