2000年上期業種別部会長懇談会-繊維部会(レポート)

部会長 : 木村 武

1999年の回顧

1月半ばの為替切り下げ、変動相場制移行により、繊維業界も先行き見通し不透明な大混乱のスタートとなったが、為替切り下げによるコストアップ分は、川 上、川中、川下の各段階で負担吸収し、年末にはやや復調はしたものの、年間を通じて低調であった消費市場での商品価格への転嫁は出来なかった。

輸出は、11月までの実績を98年度と比較して見ると、当初想定された程には急伸せず、綿糸で言えば輸出の長期減少傾向に歯止めが掛かった年であった。

輸出の増加が望め輸入が抑えられること、ブラジル経済の予想を上回る早い落ち着きがインフレ等の先行きの見通しを楽観視させたこと、このマインド変化が 国内の繊維需給バランスを品種によりムラはあったものの概ね好調にさせ、押し並べて99年は98年より良い年となった。

2000年の展望

ブラジル経済に対する堅調予想、レアルおよび金利の安定見通し、インフレの落ち着き予想、輸入の低調・輸出の増大見通しから、内外にて偶発的な異常事態 が発生しない限り、今年は大きな落ち込みのない年になるであろうと期待している。一時的な需給環境の変化に気を抜くことなく、競争力強化のための経営努力 がより一層求められる年である。

1.綿紡

1)原綿

98/99 年度のブラジルの綿作は、前年度比26%増、2年前の31万トンから見ると68%増の52万トンの大幅な増産となったが、国内の年間原綿消費高は80万ト ンと言われており、不足分の約30万トンを輸入綿に頼ることになった。国際商品である綿花はNYに定期相場があり、国内綿も基本的にこの綿花相場に連動し ている。国内綿は2月中旬にはポンド当り120センターボまで上昇し、その後国内新綿の出回りに伴い相場は下降に転じ4月にはポンド当り90センターボ前 後の水準となり10月末まで安定的に推移した。これはNY綿花定期相場の低迷の影響も受けている。しかしながら、11月に入り紡績の順調な綿糸の販売状況 から相場は上げに転じ、ESALQ指数は10月末のボンド当り92.13センターボが12月末には101.35センターボと10%上昇した。

国際綿花相場は、米国を始めとする綿作国で生産が伸びたことに加え、輸入大国である中国の綿花輸出等から供給過剰感が強くなり弱含みで推移した。米綿は 13年ぶりの安値でNY綿花定期相場は、年初ポンド当り60セント近い相場が年央には50セント前後と大幅に下落した。98/99綿花年度は、米国農務省 発表の数値によれば世界生産高が1,840万トン、世界消費高が1,850万トン、季末世界在庫907万トンとなり、対消費季末在庫率は49%と高水準で あった。

99/2000年度の国内綿の見通しは、全体として植え付け面積は前年度並みで生産予想も50万トン程度と見込まれており、今年も30万トン程度の輸入が必要となる。

世界の99/2000年度の綿花需給予想は、米国農務省の昨年12月の発表によると生産高は1,900万トン、消費高1,910万トンと98/99年度 に比べ生産、消費共に増加しているものの、季末在庫は900万トン近い水準であり、対季末在庫率は47%の高水準を保ったままである。

相場については、大幅減産予想の中国の動向が国際相場に影響を与えるが、中国自体の在庫は未だ高水準であり(生産高414万トン、消費高446万トン、 季末在庫324万トン、在庫率73%)、季末在庫率40%が相場の分岐点との見方からすると、今年も相場は低水準に推移するものと思われる。

2)綿糸

レ アルの大幅切り下げと言う波乱に満ちたスタートを切った99年であったが、終わってみれば次の点からまずまずのシーズンであったと言える。①原綿代のコス トアップ分を一応価格転嫁出来たこと。②繊維製品の輸入が減少し、逆に輸出が増加して国内の需給バランスが好転したこと。③50年振りと言われる寒くて長 い冬物商戦が好調であったこと。

2~3月にかけ20~25%の値上げを実施したが、最終消費者の購買力は失業、不景気、雇用不安から 弱いものであり小売り価格に転嫁できず、早くも4月には糸値の値下げ要求が厳しくなり4~6月にかけ5%程度値下げを行い、川上、川中、川下の各段階でコ ストアップ分を負担吸収した。

輸出は、レアル切り下げによる国際価格競争力の回復により、国内市況が一服気味であった4~8月にかけ て輸出成約を積み増ししたが、89年の56.4 千トンからすると11月までの集計ながら13.8千トン(98年同期9.9千トンで39%増)と、輸出の長期減少傾向に歯止めが掛かった年であった。

2000年度は為替の動向如何であるが、輸入の低レベルによる国内需給バランスの良好見通しから、輸出も含め順調に推移するものと思われる。

2.毛紡

イタリア、日本、韓国の高級品種細番羊毛の需要は旺盛で、中国、インド等の羊毛消費後進国でも細番志向が強くなり(製品の高級化現象)、中、太番手のいわゆる定番品は需要が低迷した。このため、無いもの高の余りもの安の相場展開となり、羊毛の消費の絶対量も減少している。

ブラジルの産毛量は、ピーク時の38千トンから98/99年度は12千トンに99/2000年度は11千トンの予想で、減少の一途を辿っている。国内のアバレル用市場は非常に小さいものであるが、椅子張り等の資材向けは安定している。

3.絹

99年度の生糸・撚糸の状況は予想数字で、生産量は1,500トン(対前年比20%減)、輸出量は1,773トン(対前年比6%増)、輸出金額はUS $4,825万(対前年比7%減)、輸出単価は前年比US$3.27/KGダウンのUS$27.23/KG(対前年比12%減)であった。

2000年は生糸の実需増というよりも供給減という観点から価格のアップが期待できそうだが、世界の7割の生糸生産国である中国の動向と「元」の切り下げ問題から、今年も不透明な状況が続くと思われる。

4.化合繊

原料は年間でポリエステルは約20%、レーヨンは30%弱の値上げとなり、これを糸値で約20%の値上げをしたが、中間段階で値上げ分を吸収し末端価格には余り波及していない。輸入の停滞もあり、数量的には98年度を上回った。

2000年度は、原料価格は上昇傾向にあり、為替による輸入抑制効果もいつまで続くかであり、99年度並みの販売量の期待感はあるものの、難しい年である。

5.織物

1)薄地織物

2~3月に19%、9月に3%、合計約23%の値上げを行ったが、数量的には98年比3.3%減少した。これは夏らしい気候が訪れず衣料の消費が 2000年に持ち越されたためである。輸出は数量的に前年比10%増となった。しかし、価格面では値下げを強いられ厳しいものであった。

2000年度は、希望的観測だが昨年の天候不順による夏物持ち越し分に、$1=1.8~1.85Rと想定し輸出と言うオプションが加わった分だけ期待感を強めている。

2)シャツ地織物

原材料費の上昇分を吸収すべく約25%の値上げを行ったが、期前半は順調な荷動きであった。期後半はこのため期待大であったが天候不順により低迷し、年 末になり荷動きは好転した。輸出は昨年比拡大はしなかった。総じて言えば、国内が比較的正常な状態であったことから良好な年であった。

2000年度は、為替の輸入抑制効果の持続期間と現行輸入規制(最低価格制度)の継続の可否によって需給バランスは大きく変わるため、また、コストアップの未転嫁分約5%の値上げを交渉する必要があることから、期待半分、厳しさ半分である。

3)厚地織物

輸入は大幅に減少し、寒い冬であったことから重衣料は在庫一掃された。しかしながら、原価上昇分は小売りの強い抵抗に遭い、川中、川下で吸収したため採算的には不満が残った。

2000年度はまずまずの滑り出しであり、大きな為替の変動がなければ、忙しい年になると予想される。

以上

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