部会長 : 上原 清助
1)99年の回顧
1月13日の為替変動相場制への移行によってスタートした99年度は、様々な業界に影響を与え、まさに激動の1年となった。
食品業界も例外ではなく、輸出関連企業にとっては輸出競争力を向上させる結果となったものの、国内市場全般では、国民の可処分所得の伸び悩みによる消費 環境の低迷が顕著となり、各企業とも製造コストのアップを充分に価格に転嫁できず、かつてない厳しい経営環境を余儀なくされる結果となった。外食業界では 入店客数及び客単価の伸び悩みが経営を圧迫した。小売業界においては大手企業による買収がめざましい勢いで進展し、消費者の低価格志向と相俟って「価格競 争」が激しさを増した。
2)2000年の展望
【業界別動向】
1.農産・畜産
1)プロイラー
99年度は、国内生産量・輸出共に好調で、前年比それぞれ16%、25%増となった。日本を初めとするアジアの市況回復や為替DEVALUEによる輸出競争力のUPが主な要因。
2000年度も同程度の数量が見込まれるが、価格は供給過剰感からやや軟化傾向となろう。
2)大豆
99年の収穫量は3,087万トン、史上最高を記録した98年に比べて5%の減となった。輸出はほぼ前年並み。年初の伯南部における多雨、世界的な相場下落が原因。
2000年度予想は、南部における乾燥が収穫に与える影響が懸念されており、3,000万トン割れという悲観的な見方もある。
3)オレンジ
99年のクロップの濃縮オレンジジュース生産量は1,114千トンと前年並み。果汁生産が大手5社に集約されたため、生産調整が行なわれ、価格も弱含みとなった(US$1,300~1,000/トン FOB SANTOS)。
2000年度も世界的な消費の横這いが予想され、99年度並みの生産量に調整されよう。価格も1,200US$をはさんでの展開が見込まれる。
4)砂糖
昨年はアジアを初めとした需要の伸び悩みと、主要生産国の増産のため国際価格はダウントレンドとなった。国内では、砂糖アルコールが政府の買い付けにより若干好転したのと、供給タイト感から価格が12月に急騰した(9月R$8.50/50㎏→12月R$19.00)。
2000年度は、砂糖農家が昨年の軟調な価格による収入不足のため充分な肥料等の手当が出来ておらず生産減が予想される。ロシア向け輸出が減少しても、 国内向け需要が堅調なことから国際価格は底を打ち回復が見込まれる。生産見込みは20百万トン、内輸出9~9.5百万トン。
5)コーヒー
99年度の相場は、年初の大豊作予想、9月以降の干魃懸念により大荒れとなった。
2000年は消費国在庫が低水準であり、00/01年クロップの減産程度が明かでないため、特に上半期は波乱含みの展開が予想される。
2.外食産業
各 店の業態・取組により更に明暗を分けた年となった。通貨下落に伴う輸入食材のコスト・アップが経営を直撃し売り上げ原価率が前年比10~15%程度アッ プ。また、来客数も総じて伸び悩み、あるいは減少傾向にある中で、高級店健闘、庶民層をターゲットとした店は総じて苦戦という特色が見られた。
2000年度は、各店とも値頃感の演出やサービスの充実等を一層推進することが急務であり、これが出来ないところは淘汰されるという厳しい1年となろう。
1)乳酸菌飲料
競合の激化と消費の低迷から前年割れの結果となった。需要喚起のためTV広告を全国規模で行ったものの、期待したほどの効果は得られなかった。一方で通 貨切り下げにより、アルゼンチン産リンゴの輸入が減少し国産価格が堅調に推移したため、輸出も含めて好調な結果となった。
2000年度は、引き続きTV広告の投入と訪問販売体制の一段の強化、人材育成にも注力していく。
2)即席麺
99年度の即席麺トータルマーケットはほぼゼロ成長となり、92年以降、体験したことのない極めて厳しい1年となった。通貨下落による製造コストアップを吸収せんとする各メーカーの値上げが消費者の購買意欲に水を差した格好となった。
2000年度も業界全体の大きな伸びは期待できない中で、価格競争を中心とした競合の激化と参入企業の増加が予想される。
3)調味料
家庭用調味料市場は対前年103%となったものの、その牽引役となったのは「安価ブランド」によるところが大きく、可処分所得が増えていない中での消費者心理を反映する格好となった。大手量販店のPBブランド戦略の進展等もあり、大手メーカーがシェアを失った。
2000年度も市場は堅調な拡大が期待される一方で、価格競争も激しさを増すものと思われる。また、流通業界の再編が一層加速し、これに如何に対応するかも大きな課題となろう。
以上