2000年下期業種別部会長懇談会-化学部会

● 3センターのエチレン生産合計128.3万㌧
● 原油値上げでナフサ価格15%アップ
● 農薬メーカーは外資系17社上期売上げ合計5.7億㌦
● 大競合時代に備える業界

 

国際原油価格上昇たたるがナイロン、ポリエステルは好調

矢島:そ れでは2000年の化学業界「上期の回顧」、いつものように上流部門から順に報告します。石油化学と合成樹脂をまとめてお話しますが、業界の動向を示すエ チレンの生産量を見ますと、ブラジルの三つのセンター会社のエチレン生産量は合計で128万3000トン、この期間の能力対比で90.5%の稼働率を示し まして、これは高くもないけれども、低くもないレベルを示しております。注目すべきはこの間の国際原油価格の値上がりでして、石化向けの出発原料、原料ナ フサが年初200ドル/トンであったものが、6月末には230ドルラインへと約15%アップしました。これを受けてエチレン価格も期間中、3センター平均 で8%値上がりしました。

次に誘導品の動向を見て参りますと、合成樹脂はこのナフサ価格の上昇をうけて、今年に入り値上げが続いてお ります。約10から15%の値上げですが、電力料金の値上げもあり、昨年来蓄積しておりましたコストアップ要因を製品価格へ思うように転嫁できていないの が現状です。さらに韓国、台湾からの安値輸入品に押されまして、これに対抗するために必然的に手取りマージンが圧縮されてきているのが悩みの種です。

合成樹脂以外の誘導品ではナイロン、ポリエステルなどに代表される合繊繊維が末端衣料品の旺盛な需要に支えられ繊維用中間原料でありますカプロラクタ ム、エチレングリコールがともに好調でありました。ただエチレングリコールは年央海外に新増設能力の立ち上げもありまして、後半弱含みへ転化してきており ます。もう一つの誘導品で合成ゴムは自動車用タイヤ、サンダル用等が好調で、自動車タイヤには、タイヤコード用に上記のナイロンも出荷旺盛で、これは自動 車産業が今年になって着実に回復していることの証であると見られます。

で、同じ事は塗料、接着剤、さらにこれらの溶剤製品も好調に推移したことにも現れております。原油価格とナフサの値上げがあったにも関らず、上期の化学上流部門はまずは堅調に推移したと言えます。


農業不振で農薬業界厳しい局面に

次に各化学業界を順に見て参ります。農薬ですが、異常気象と前年度末からの流通在庫の過剰で、上期の農薬業界は苦しい展開を強いられました。農薬市場を 作物別に見て参りますと、ラニーニャ現象の影響で開花期のコーヒーが落花し収穫減。大豆は種まきの大幅遅延で収穫時期が大幅にずれ、上期の収量は通常の半 分以下。コーンは2月からの秋作に干ばつが重なり、この影響で全く不振。ジュース用オレンジは昨年来の価格暴落で、収穫さえされない状況が続きました。総 じて農家経済は厳しい状況に置かれ、この結果、外資系農薬工業界17社の上期の売上合計は5.7億ドルと昨年同期比8.7%増でありましたが、そのうちの 7社が前期対比でマイナス、加えて過剰在庫中心の在庫販売が重なりました。秋作の不振とあいまって、在庫の調整が出来ないまま上期を終えたというのが実状 です。客先の農家からは支払い延期の要請があり、代金回収の長期化を招いておりまして、レアルプラン以降順調に来た農薬業界は厳しい局面に立っておりま す。


金属工作油は販売2割アップ
役務提供増す水処理業界

次に金属工作油業界ですが、本年上期の販売は前年同期に対して2割アップ。しかしながら前期比は4%増に過ぎず、ほぼ同水準でありました。これは主力の 自動車分野が順調に回復してはいるものの、鉄鋼・繊維分野が微増ないし横ばいであったのに加えまして、欧米系競合メーカーの攻勢が活発化で販売環境が厳し さを増してきていることによります。

その次に水処理業界ですが、客先を大別しますと、石油、石油化学、鉄鋼、紙パに代表されます大手 需要家中心のA市場、それ以外の中小需要家からなるB市場で、ボイラー、冷却設備向け使用量は変わりませんでしたが、鉄鋼、紙パは需要も上々で要望も厳し くなく、商売がやりやすくなりました。新しい傾向としては、製品納入売り切りの従来タイプの商売から漸次、サービス、役務提供の度合いが高まってきていま す。ただ、この分野は人手がかかり、会員企業にあっては、これへのフォローは非常に難しいとしております。

 

毎月前年割れのフィルム  文具、ロジンは価格調整

次に写真フィルム業界ですが、この業界は99年以降不振が続いておりまして、数量、価格とも思わしくありません。本年上期4月までは、小売りベースでほ ぼ毎月前年割れが続きまして、メーカー出荷も同じ状況でした。価格も数パーセント下落を示しました。5月に入り、若干持ち直したものの上期累計では対前年 比マイナス。不振の原因を見ますと、消費者の所得増がないためと分析していますが、全般的にブラジル経済回復という見方が一般的ですけれど、この業界にそ の実感はないとしておりまして、農薬業界とならんで苦戦を強いられております。

塗料・接着剤分野には当部会会員に2社いますが、原料 の一つでありますロジンのメーカーから見た動向についてお話しします。この業界がようやく3月以降になって、塗料・接着剤関連企業も購買を再開し、荷動き も増加してきました。この理由は昨年末にいわゆるY2K、コンピュータ誤作動問題に絡みまして、年末に在庫を積み増ししたお客さん、需要家企業が多く、年 明けの製品出荷が低迷してきたためです。

製紙業界では稼働率が90%以上で操業したことで、製紙用製品の販売も増加し、このため低価格であった製紙用製品も5、6%の調整、いわゆる値上げができました。

その次は文具業界ですが、当部会では最川下分野に位置する会員企業からの報告です。主力のボールペン、サインペンは昨年が市場最高の業績でしたが、今年 に入りさらに伸びております。どちらかといえばサインペンの伸びが大きく、昨年かなり値上げしたため数量面ではマイナスでしたけれども、金額面ではプラス にふれました。その結果、上期は売上高で7%、利益率で3%の上昇を見ました。

 

川下分野はエチレン値上がりを懸念

化学品の輸出入について若干触れておきます。今回から商社の化学品担当部長さんが新たに参加されまして、その方の報告です。毎月の取り扱い品目が70に も及ぶ中で、上期は有機化学品の輸出が好調、逆に輸入は国内メーカーのプラント・トラブルで供給ネックとなった中間原料等が活発に行われました。

同じく自動車、製紙関連製品も活発化してきており、この分野の回復基調が本格化してきていることが伺えます。変わった輸入品目としまして、ブラジルは環 境対策後進国と言ってよく、先進世界ですでに使用禁止されている化学物質でもブラジルで禁止されていなければ平気で使用される。そのため、食品添加物の サッカリンは日本で禁止されて久しいけれども、ブラジルでは未だに使用が認められており、あのコカコーラにもブラジル品には含まれているそうです。で、こ のサッカリンの輸入がこの間行われているとの報告がございました。

以上が上期の動向でございます。つぎに下期の展望に触れます。

化学業界のみならず、経済活動全般への大きな影響因子であります原油価格は、6月末で30ドルを超すレベルで展開してきました。下期の原油価格はこの基 調から27~32ドルのレンジで振れるであろうと思われます。ちなみにこの8月1日のWTIは27ドル台後半をつけました。

経済一般 は上期の景気が継続する可能性が高く、例年下期が需要シーズンであります合成樹脂業界を中心にその基調を期待しております。ただし、石化原料ナフサが7月 から更に値上げされまして、6月末の230ドル/トンから一挙に295ドルと28%も上昇したことからエチレン以下の価格上昇が川下分野に与える影響が懸 念されています。

業界の対策としましては、こうした川上からの原材料の順次値上げ、電力代、輸送賃等公共料金の値上げを受けて、製品 価格への転嫁、少なくとも昨年の原価率を維持しながら、他方で高品位製品の開発投入で、販売シェアを図り、世界レベルの大競合時代の生き残りをかけていき たいとしております。
以上が上期の回顧と下期の展望です。終わります。

なお、対伯投資等うんぬんは、ちょっと長くなるかと思いますので後の部に譲りたいと思います。

司会:ど うもありがとうございました。コンサルタント部会と金融部会は、いろいろ不安要素はあるものの、概ね通期で好調ということのようだと思うんですけれども、 後の貿易部会、化学部会、若干縞模様ながら、まあまあトータルとしてはプラスかなということじゃないかと思います。では次に機械金属部会の宇治さんにお願 いします。これが終りましたらコーヒーブレイクを取りたいと思いますので宜しくお願いします。

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