2000年下期業種別部会長懇談会-建設不動産部会(レポート)

1.2000年上期の回顧

〈建設業界〉

本年は昨年と比べると、為替、金利、インフレ共、安定しており、年前半から建築主の設備投資が増えるものと期待されていた。しかし、我々の業界では目立った受注の増加は見られず、各社の上期の数字をまとめてみると、2000年全体計画値の41% (7社平均)となっている。但し、この数字は、昨年同時期と比べて+7%となっており、本年が昨年よりは、良くなっていることを示している。

また、一部建築資機材(セメント、アルミ、鉄等)の値上りは続いており、厳しい受注競争と相俟って、低利益による受注を余儀なくされている。そのため各社共、昨年より行っているかなりドラステイックな経費削減をより一層進める必要に迫まられているが、会社の組織、機能を考えると実行出来ない部分もあり、そのジレンマに頭を悩ませている。

〈不動産業界〉

建設業界に比べると、こちらの業界には薄日が差して来たような傾向が見られる。事務所スペースの需要は、その規模の大小、賃料の高低によって差はあるものの、根強いものがあり、パウリスタ、マージナル地区の空室率が15%程度(2000年7月現在)であるにもかかわらず、設備関連の充実したビルでは入居率100%を達成しているところが多い。このため、昨年の同時期に比べると好調のようである。但し、新規物件の供給もかなり多くなってきており、各々のビルの物件力を正確に把握し、客層のニーズに合った物にしてゆかないと、厳しい競争には勝ち残れない。

アパートの賃料、売買の相場については、新旧あわせて、物件供給過多の傾向にあり、どちらもその相場は低下している。アパート販売では、昨年まで好調だった高級アパートの売れゆきが落ち込んできており、販売業者では手持未販売物件のコンドミニオの支払い等の経費がかさんで、その経営が圧迫されている。

2.2000年下期の展望

〈建設業界〉

各社の意見を総合すると、下期に入っても上期と同様の状況が続くと予想される。その要因として下記の項目が考えられる。

1)建築主の設備投資再開が予想以上に長引いており、大型工事の発注につながらない。

2)財政責任法が制定されたため、本来ならば選挙前に活発になる公共工事が減少、そのため民間工事の競争が一層厳しくなっている。

3)石油価額の高騰による、建設材料、輸送費の値上りが工事の採算性を悪化させている。

このような状況下で各社の下期の受注予想は2000年全体計画の49%(昨年比+4%)、通期では90%(昨年比+6%)となっており、厳しいながらも昨年を少し上回っている。この背景にはブラジル経済の好転もあるが、それと同時にこの苦しい状況を何とか切り抜けたいという、切なる願いも含まれている。

〈不動産業界〉

オフイスビルについては、引き続き需要は堅調に推移すると思われる。しかし、ビルの二極分化は確実に進行しており、設備関連の充実したビル、例えば、情報通信設備、OA設備、セキュリテイ、電気・衛生・空調設備の行届いたものと、そうでないものとの差は広がる一方である。

アパートについては、交通、環境の良いものが売れ始め、昨年まで好調だった中間所得者用アパートは売れ残りが目立ってきている。そのため今後は、もう少し下の層をターゲット(月収R$3000程度)としたシステム、例えばアソシアチボ方式等を採用したアパートの販売が検討され始めている。

3.いま、対伯投資を伸張させるために何が必要か?

我々の業界には、対応の難しい問題である。現在の課題及び各社の意見をまとめると下記の通りである。

対伯投資は、国内貯蓄が不十分なブラジルでは、経済成長に欠かせないものである。近年、投資が増大傾向にあるものの、ブラジル政府には、明確な戦略がないため、投資を誘致できる潜在力が十分に活用されていない。

1)投資し易い環境の整備
税制、財務、法務、労務、為替制度、治安等の改善

2)南米各国の市場の活性化
メルコスールの強化 (生産、販売の効率化等)
メルコスール参加各国の相互理解と協調

3)ブラジル進出の有効性アピール
官民協力によるイベント開催

各社業績の推移(2000年)
(2000年期初計画を100とした場合の比較)

会社名 受注 従業員
期初
計画
上期 下期
(予想)
実績
(予想)
期初
計画
上期 下期
(予想)
実績
(予想)
A 100 40 50 90 100 95 95 95
B 100 50 50 100 100 120 80 100
C 100 20 50 70 100 100 90 90
D 100 40 60 100 100 100 100 100
E 100 50 50 100 100 100 100 100
F 100 50 50 100 100 100 95 95
G 100 35 35 70 100 100 100 100
7社
平均
  41 49 90   102 94 97

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30747