2000年下期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会

● 国内航空業界再編の兆し
● 落ち込みにようやく歯止めかかる旅行業界
● 困った税関スト、サボタージュ
● 下期に期待のリテール、広告、ホテル業界
● クーリエ微増、貨物業界落ち込む
● インターネット関係好調

 

業績は回復、改善  ― 後退、低下なはし ―

萩野:部会長である、日本航空の加藤支店長の代わりに報告いたします。

運輸サービス部会は、メンバーの都合によって、今回は部会を開催せず、アンケート用紙をお配りし、それを回収して各社の報告を求めるということを致し ました。前にも申し上げましたけど、同一部会とはいえ、各種の業種が含まれているので、部会としての総括は難しいのですが、敢えてアンケート結果をまとめ てみますと、これまで皆さんご発表があった通り、前年同期あるいは前年の下期に比べて業績が「回復した、あるいは改善をみたと」いう回答が大半で、「後退 した乃至は落ち込みました」、というような回答は皆無でした。

下期の全般的な見通しは、やはりブラジルの景気については、急速な回復 はのぞめないとしながらも悲観的な見方はなくて現状維持乃至、一部の業界では上期より良くなるんじゃないか、という回答を頂きました。すなわち景気の天気 予報ふうに言えば、「曇りないし薄曇り」といったところでしょうか。もちろん、基準をどこにおくかというのは問題ですけれども、そういう回答のようでし た。

各業界について個別に申し上げますと、最初に航空業界。アメリカの景気が大変好調でこれに支えられてアメリカとブラジル間の航空 需要、これは極めて旺盛だったと言われています。しかしながら、優位に立ちますアメリカの航空会社の大幅な値引き競争があり、ブラジルの航空会社はたいへ ん苦しい上期となりました。


日本向け好転、国内路線は横ばいか低下 ― 航空

国際線の需要で日本の航空会社の関連します日本向けにしましては、出稼ぎの需要がピックアップいたしまして好調な需要で、前年比10%ほどにプラスに転 じたと報告されております。それに対しまして、ブラジルの航空会社は昨年のレアル切り下げの影響でドル建て債務が経営を圧迫し、そのため航空会社同士の提 携話、あるいは業界の再編成というのが急速に現実味を帯びてきた、というのが上期の動きでございます。

下期につきましては、相変わら ずブラジルの航空会社の経営はきびしそうで、これがためにブラジル企業とそれ以外の外国の航空会社との間で再編問題が具体化するのではないか、とりわけ ヴァリグとかTAMの2社については、何らかの具体的な方向性が打ち出されるのではないか、というふうに思われているようです。日本線の需要につきまして は引続き人の往来が順調でして、ある程度の収入増が期待されます。

航空業界と並びまして旅行業界ですが、97年以降、需要が毎年落ち 込んでいたのがほぼ歯止めがかかり、若干回復の手応えを感じたという上期だったと報告されています。一番の要因は先ほど出ました、出稼ぎが日本の景気回復 にともなって上向きに転じたということのようです。また、日本航空あるいはヴァリグが日本行きのサービスを強化したことが、勿論どちらがはじめか分かりま せんが、需要を押し上げる要因にもなったというふうにレポートされております。売上高は旅行業界としては前年同期比20%以上のプラスになりました。出稼 ぎのこちらから行く需要は伸びたんですが、逆に日本からの人の動きは予想以上には伸びず、前年を少し上回る程度だったようです。

今度 はブラジル人が国内で旅行する、国内のブラジル人の旅行需要ですけれども、やはりレアル切り下げの影響で経済の低迷を反映してか、対前年並みあるいはそれ を割り込む結果となりました。ブラジル人についてだけ言いますと、94年当時の水準まで落ち込んでいるというのが現状のようです。

下 期は日本向けの出稼ぎ需要がもう少し加速するだろう、あるいは維持されるだろうというふうに報告されております。また、ブラジルに進出しております日本企 業が日本向けに、あの何ていいますか、インセンティヴ、商売上のインセンティヴの目的で旅行を計画しているプランがいくつかあるようで、これも日本向け需 要を押し上げる背景になると思います。

 

定期航路は堅調な荷動き―海運
他方、自動車専用船は全く低迷

次に海運業界。定期船の分野ではアジアからの南米東岸への航路、それからアジアからマナウス、あるいは北米からマナウス、またはブラジルからオーストラ リア、ニュージーランドこういった定期航路につきましては、輸出入ともに堅調な荷動きで運賃水準も安定的に推移しております。しかしながら、ブラジル各港 で発生した税関の長い間にわたるストライキ、サボタージュ、これにより一部輸出貨物の通関に遅れが出る、または輸入貨物についてカスタムクリアランスが出 来ないで、港に長期間滞留させるという事態が発生しまして、船会社側にはコンテナのインベントリーに大きな支障となっております。

完成車、主として日本からの自動車の完成車輸入は全く低迷いたしまして、採算割れとなっております。

下期につきましても、定期船分野では季節的な要因での荷動き低下というのは予想されますが、堅調な荷動きが推移するものと思われます。

貨物業界は、通関とかあるいは引っ越し荷物といったものを扱っておりますが、引越し荷物は日本からの赴任者、日系進出企業の赴任者、駐在員の動きが減っ たために需要は減少しました。そのほか航空貨物の通関とか、あるいは梱包作業というものにつきましては輸入が増加したものの、輸出は減少傾向だったという 報告がございます。下期についてはこの傾向がそのまま継続されるという見通しになっております。

それからクーリエー業界、主として航 空を利用したクーリエーのサービスですけれども、輸出、輸入はともに微増、2%から3%前年に比べて増加しております。またクーリエーを利用しましたエ ア・カーゴにつきましては対前年比で14%の増。数字から判断して一応大きく底を脱したように見えるという上期でございます。

下期は現状のトレンドが続くとは思うのですが、ただメルコスールの中でいえばアルゼンチンの外貨収支が悪化して為替に影響が出るようであれば、若干クーリエーの近隣諸国との動きも含めまして、業績になんらかの影響があるかもしれないとレポートされております。

 

インターネット関連好調

それから通信業界、これはKDD、NTTといったインターネット関連の業界でございますけれども、ブラジル国内でインターネットのフリーアクセスの業社 が出たことから市場が刺激されて利用者が急増しました。ただし、国際回線や国内の接続料金がまだ高額なため事業としての収益は充分に得られなかった。一 方、企業の中でのネットワーク、ホームページをつくったりという事業が順調に伸びたことにより、前年比15%程度売上を伸ばした企業もございました。下期 はインターネットについては利用人口が一定限度に達しますために急激な伸びは期待できませんが、上期同様インターネット関連のビジネスが伸びるのではない かと思われております。

リテール、これは豊田通商の自動車販売のみでございます。販売台数は業界全体で対前年15%ぐらいの販売台数 をマークしております。社会保障基金ですがPISの支払方法にからんだ一部自動車価格の販売店での混乱がありましたが、かえってこれが転嫁されて公平な対 応が可能になるというふうに思われます。下期には景気回復といいますか、全体で140万から150万台の予定を30%ぐらい上回る販売高になるのではない かと思われております。

ホテル業界、広告業界まとめて申し上げますと、下期は選挙等のイベント及びそれに関連するイベントも増えますので、人の動き、あるいは広告の活発化というのが期待されております。

各業種についての上期、下期の予想は以上のとおりです。    

それから「対伯投資を伸張させるためには何が必要か」というのは、今まで皆さんがご発表になったのと同じ様なアイテムがレポートされておりますので割愛させていただきます。以上です。

2000年下期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会(レポート)

航空業界

上期の回顧

依然として好調なアメリカの景気に支えられ、伯米間の航空需要は極めて旺盛であった。しかし、絶対的優位にある米国企業の大幅な値引き競争に引きずられ、伯企業は大変苦しい上期となった。

国際線では、景気の上向き傾向にある日本向け出稼ぎ需要が唯一好調であり、名古屋を中心とする当該需要は、対前年を10%ほど上回るところとなった。

伯企業に対しては、昨年のレアル切り下げ措置による、ドル建て債務の支払が大きく重荷となってのしかかり、経営を圧迫する要因となった。そのため提携をはじめ、業界の再編成が現実味を帯び、国内航空会社間で水面下の交渉が始まったようである。

下期の展望

景気の急速な回復は見込まれず、伯企業の経営は引き続き苦しい状況となるものと推測される。そのため外国キャリアも含めた業界の再編問題が具体化し、伯国航空業界はRG,TAMの2社を中心に何らかの方向性を打ち出すものと思われる。

需要としては、引き続き日本線の好況が持続され、この方面はある程度の収入増が期待されるものの、その他の路線については国内線も含め、依然として苦しい状況になるだろう。

 

旅行業界

上期の回顧

97年度以降継続していた低落傾向に歯止めがかかり、若干回復への手応えを感じた上期であった。その要因には日本の景気回復傾向に伴う出稼ぎ需要が増加に転じたことがあげられる。またこれに伴い、JALおよびRGが日本線を増強したことが需要を押し上げる要因になったものと考えられ、売上高は前年比 22%増となった。

出稼ぎは伸びたものの、日本からのインバウンド需要はブラジル発見500 年等のイベントにもかかわらず低調に終わり、前年並みに留まった。

一方、ブラジル人の外国旅行は、レアルの切り下げに伴い激減し、対前年を大幅に割り込む結果となった。即ち、ここ5年にわたり二ケタの伸びを見せていたものが一気に6割減となり、94年当時の水準をも下回る176 万人となった。

ブラジル人が訪問する国別では、例年第一位にあった米国が対前年を52%下回った他、第2位のアルゼンチンで88%、同3位のドイツで74%と、それぞれ大幅に落ち込んだ。

下期の展望

日本向け出稼ぎ需要の増加傾向は、このまま維持されるものと思われる。またブラジルに進出する日本企業の、日本向けインセンティブ旅行が何本か計画されており、これが日本向け需要を押し上げる要因となるだろう。

ブラジル人の海外旅行需要は、例年下期の主流となる欧州向けが順調に推移すれば、94―95年の水準である260万人まで回復すると思われる。

 

海運業界

上期の回顧

<定期船部門>
アジア/南米東岸航路、アジア・北米/マナウス航路、大洋州/南米航路のいずれも輸出入ともに荷動きが堅調であり、運賃水準も安定的に推移した。

しかしながら、ブラジルの長期にわたる税関ストにより、一部輸出貨物の通関遅れ、輸入貨物の港頭地区滞留等が発生し、コンテナインベントリーに大きな支障を生じた。

<自動車専用船部門>
自動車輸入は依然として回復せず、南米東岸向け運航は大幅な採算割れとなった。

下期の展望

定期船部門は年度後半に荷動きが低下するものの、引き続き堅調なものとなると考えられる。自動車専用船については上期と同様の状態が継続されるものと思われる。

 

貨物業界

上期の回顧

<引越し貨物>
査証の発行が極めて厳しく、日本からの赴任者が減ったため、引越し貨物の動きも減少するところとなった。

<航空貨物・海運貨物>
昨年のレアル切り下げ以来同様の傾向であるが、輸入が増加したものの、輸出は厳しく減少傾向となった。

下期の展望

上期の傾向がそのまま継続されるものと思われる。このように需要の少ない中、業績を左右するのは、グローバリゼーションの流れにいかに乗り、ITを駆使した作業形態を作り上げることが出来るかという業務改革のスピードであると考える。業界としては、ITをベースとした作業改革を推し進めつつ、顧客の満足を得るべく事前の書類準備等に工夫を凝らし、下期を明るいものとすべく努力いたしたい。

 

クーリエ業界

上期の回顧

<輸入>
対前年比3%増

<輸出>
対前年比2%増

<エアカーゴ>
対前年比14%増
数字から判断すると、一応底を脱したように思える上期であった。

下期の展望

アルゼンチンの外貨収支が悪化し、為替に影響が出るような事態になれば、一旦底を脱したかに思える業績に悪影響を及ぼすことが考えられる。その意味から上期実績に安穏としていられない下期となるだろう。

 

通信業界

上期の回顧

インターネットのフリーアクセス業者の出現により、市場が刺激され利用者も増加したが、国際回線、国内接続料等が未だ高額であるため事業として収益を計上するには至らなかった。一方、企業内ネットワーク、あるいは電子商取り引きを可能にするホームページ作成等の事業が好調に伸び、対前年比15%程売上げを伸ばした企業もあった。

下期の展望

上期に伸ばしたインターネット人口も一定の数まで到達し、下期にはその動きも止まるものと思われる。今後は通信インフラの整備、パソコンの低価格化、回線費用の低下がない限り、インターネット接続のみに依存する企業の存続は難しくなるだろう。

従って下期も企業内ネットワーク、電子商取り引き、サーバーホスティング等を通じてインターネット関連ビジネスを伸ばして行くことが望まれる。また WAPサービス(セルラーからインターネットに接続して各種情報を収集したり、メールのやり取りを行う事が出来るサービス)をブラジル内で初めて導入するところから、この分野での成長が今後期待される。

リテール業界(自動車販売)

上期の回顧

販売台数は業界全体で対前年を15%上回る実績となった。

当初、一定年数を経過した中古車の買い替えを促進すると言う「中古自動車買い替えプログラム」によって販売が増加するとの期待があったが、当該プログラムがアルコール車のみとなったため、業界側ではこれを打ち切ると言う事態が発生した。

PIS(社会保障基金)の支払い方法が6月より変更になり、それまでこれを収めていなかった多くのディーラーが支払いを求められるところとなった。これにより業界は一時混乱したものの、それぞれのディーラーが納税後の同一状態で価格競争に臨めるようになり、公平な対応が可能になると期待される。

下期の展望

景気回復が確実との期待があり、年間140―150万台、即ち計画30%増の販売が見込まれている。

 

ホテル業界

上期の回顧

当初期待された「ブラジル発見500年」イベントに関わる集客は、北伯で数多く見られたものの、サンパウロではそれ程の成果は挙がらなかった。しかしアニェンビーで行われた各種イベントに関する集客が予想よりも多く、サンパウロの4つ、あるいは5つ星クラスの客室占有率は対前年を28%上回るところとなった。

下期の展望

経済動向に左右されるが、回復基調にあると言われるブラジル経済のもとで、対前年同期比20%の客室占有率を期待したい。下期には「ブラジル発見 500年」イベントがサンパウロ周辺でも開催されるため、これによる集客増を見込んでいる。また地方自治体の選挙もあるところから、人の往来が多くなり、これが客室占有率の向上に寄与するものと考える。

 

広告・宣伝業界

上期の回顧

TV放映、アウトドアー、販促プロモーションについては昨年並みの成果を得る事が出来たが、新聞、雑誌等の印刷媒体は期待通りの結果を得る事が出来なかった。

下期の展望

本年は選挙の年にあたるため、これに関する宣伝が多くなるものと期待される。以上

「いま、対伯投資を伸張させるために何が必要か」

―運輸・サービス部会―

  • 複雑かつ手間のかかる輸出入手続きの簡素化
    ブラジルコスト増加の一因となっている
  • 規制緩和
    不透明な裏金、商慣習を生む温床となっている。
  • 治安対策強化
    生活の基盤が脅かされれば対伯進出の意欲が減退する
  • 為替の安定化、自由化
    南米唯一の為替管理国家か?
  • ブラジル関連情報(含む観光情報)の発信
    対外的に、ブラジル情報が極端に少なく在外公館がこの役目をになっているものの、対伯進出のために必要な精度の高い情報を得るのが困難である。
  • ビザ発給制限の緩和
    対伯投資の伸長には人(人材)の 往来が不可欠。

以上

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30746