2001年上期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会

  • 日伯間加え、国際航空路線順調な伸び
  • 国内路線は2社割り込み価格破壊
  • JNTO、白人客誘致に頭をしぼる
  • 海運船腹量が7年間に2倍増
  • 広告・宣伝媒体はTV減、新聞増
  • ホテル増設、ベリーニ、N.ウニダスが激戦

 

●M&A目立った年 業績は年央から回復

司会: ありがとうございました。それでは最後に、運輸・サービス部会の横山部会長お願いいたします。

横山: 日本航空の横山と申します。前任者の加藤の後を引きついでご報告させて頂きますが、何分、来て4カ月ぐらいしか経っておりませんので良くわかっ ていない事と、見ますと範囲が9業界ぐらいあり、通信のほうは、江口さんにお願いしたのですが、それにしても後七つぐらいあり、まとめる事に自信がないの ですが、なるべく時間内に終わらせたいと思いますので、よろしくお願いします。皆様の業界、非常に好調という報告がありまして、私がまとめる一部を除きま すと、大体景気の影響が最後に現れてくるところが多いのではないかと言う感じがしております。いままで調子が悪かったところも徐々に良くなってきていると いうのが大雑把なまとめです。順番に、航空、旅行、海運、貨物、リテール、広告宣伝、ホテルこの順番で報告して行きたいと思います。

最 初に航空業界ですが、全体としてはまずまずであったと。わけまして日伯ですがこれについては、96年ぐらいから徐々に減ってくる傾向が、日本の景気とも関 連する出稼ぎ需要のほうが回復傾向にありましてバリグさんの名古屋線3便、私ども(JAL)の日本行き、5本飛んでいるのですが、前年比でちょっと増えて いるという現状です。客態別では、中国人、韓国人のお客様が増えているというのが特徴かと思います。

それから、米伯間は極めて激戦地区でございまして、週132便飛んでおります。私どもの4便、ニューヨークに飛んでおり、これも全体としてお客様が増えております。

国内の方ですが、6786万人、前年比8%増えていると報告されています。とくに最近は2社ほど、格安航空会社が出現し、価格破壊、国内線の運賃につい ては相当な影響を与えているようです。2000年は概ね順調で、2001年につきましてもほぼこの傾向が続くであろうという事がいわれています。とくに成 田の問題ですが、Bランウエイがオープンされる予定です。これがオープンされますと、発着枠が増え、競争がますます激化して、かなりの影響が出てくるもの と思われます。航空業界については、とくに原油価格の問題が非常に大きいとなっております。つづきまして、旅行エージェント業界。これも似たような感じで すが、日本への旅行者数が増えているという事があり、例えばツニブラさんですと、前年比で 24%売上増になっている。ただし、期待はずれは、「ブラジル発見500年イベント」。相当企画が予想されていたが、実際にはそれほど伸びにはつながらな かったと言われております。


●カントリーリスクは 治安、為替問題が影響大

JNTO さんの調べでは、ブラジル人の外国旅行者数はこの所、非常に大幅な成長過程にあり、昨年度も30%強増えているが、日本行きのシェアー、これがそのうちの 0.6%しかないという事で、この辺を何とか色々工夫して、日本行きを増やして行く事が、今後の課題と思われます。2001年も、大体大きな変動はないで あろうと予想されているようです。旅行につきましては、常々言われている、カントリーリスクとして、治安の関係、あと為替の問題、この辺が非常に影響が大 きいと思われます。

つづきまして海運業界。これはアジア・ブラジル、アメリカ・ブラジル、欧州・ブラジル、それぞれあるのですが、全般的に前年比プラス。二ケタまでは行きませんが、それぞれ増えております。

2001年の展望ですが、主要定期航路で新造型コンテナの就航が活発化していることもありまして、船腹量の増加は1995年から7年間で実に2倍以上に 達しているという事がありまして、そうなると価格破壊的な問題が出てくるので、その辺の価格の問題、サービスの安定の秩序等々が課題ではないかという風に いわれております。

つづきまして貨物業界。活発な国内消費に支えられて部品輸入、完成品の消費財輸入等々が増えています。全般的な傾向 でもありますが、家電製品、IT関係の産品の輸出入、これが非常に盛んであったと報告されております。それから、国内消費に食われた感のある輸出は特定品 のみにとどまり、伸び悩んだと報告されております。2001年は、前年同様の傾向が続くであろうといわれております。各種のメーカさんが増産体制にある、 あるいは新規支出を計画されている企業さんがいるという事で、駐在員の派遣の増員が期待され、これが将来に結びつけばいいなというコメントがされておりま す。

リテール業界、これは自動車販売ですが、先ほどご報告がありましたので割愛させて頂きますが、非常に好調に増えていると。それから 2001年についても、1割前後は伸びるであろうと言われております。自動車販売はとくにアルゼンチンから輸入されている部分があり、亜国政情の影響が大 きいと報告されております。

つづきまして広告・宣伝業界ですが、今までどうしても何か切り詰める時はこういった広告・宣伝のほうのコス トを抑える傾向にあるのですが、ようやく、2、3年の傾向から脱して、広告宣伝のほうにもお金を使って頂くような形になってきたという報告です。ブラジル 全体で見ますと、TV関係が幾分減少、雑誌関係が横ばい、新聞関係が微増と、そういう風な形になっております。2001年は、大統領選を控えて、各新聞、 雑誌社とも活発な企画が予測されているという事です。

 

●“きれいな街づくり” にどう対応する

あと広告関係ではマルタ市長(サンパウロ市)になりまして、アウトドア関係で、視覚公害、きれいな街づくりなどというような事が、非常にうるさくなっておりますので、その影響が懸念されるという風に報告されております。

最後にホテル業界。2000年についてはさきほど申し上げましたが、ブラジル発見500年のイベントを期待、20%程度の増を見込まれていたようです が、計画倒れに終わったという風になっております。2000年は、今までの低迷から脱出しつつあります。とくにパウリスタ近辺、多数のアパートメント・ホ テルがオープンし、いわゆる低価格という事が前面に出てきたことが特筆されます。

2001年も、ホテル建設は続行しており、5月にグア ルリョスに新ホテルがオープンされる他、パウリスタ等についても多数のホテルを計画されているようです。ただ今後の見通しは、パウリスタ近辺から、ベリー ニ、ナソンエス・ウニーダス界隈に新ホテルの激戦区が移って行くのが予想がされております。ビジネス・ホテルに比べまして、とくにリゾートホテル関係が今 のところ好調で、その傾向は今年も続くであろう。前年対比で10%程度の成長を予想していると報告されております。外的要因につきましては、とくに宿泊の お客様の多い、欧米・日本の経済のパフォーマンス、それからメルコスール、とくにアルゼンチンの状況、これらの影響が大きいだろうといわれています。以 上、駆け足ですが。

司会: ありがとうございました。以上で各部会長の皆様からの発表が終わりました。ご協力大変有り難うございました。

 

2001年上期業種別部会長懇談会-運輸サービス部会(レポート)

I. 航空業界

2000年の回顧

総体的に業界全体としてまずまずの業績であったといえる。日伯間では96年から漸減傾向にあった出稼ぎ需要の回復により、好調な路線運営がなされた。バリグは名古屋線(週3便)が好調、JALも前年比微増となっている。客体では中国人の動きが活発化している。米伯間は米国の好景気に支えられ好調を持続したが、99年11月より開始したJALのNYC線(週4便)も徐々に浸透しつつあり、週132便の激戦区の米伯間で健闘しているといえる。国内ではTAMの成長がめざましく委託化を基本とした経営が成功しており、一方バリグは過去の借り入れ金が足を引張った結果となり、苦しい経営を余儀なくされている。再編問題はとくに進展がない。昨年の国内線利用者数は6784万人と前年比8%増。最近の格安航空会社2社の出現で益々競争激化となっている。

 

2001年の展望

伯国の政治経済社会情勢が安定しているので、おおむね堅調に推移するものと思われる。日伯間では出稼ぎ関係以外に県人会、宗教関係、企業間の動きが予想される。2002年春に予定されている成田のBランウェイ供用開始で益々競争激化が予想される。米伯間では米国の景気の翳りが懸念される。欧伯間にはTAMの参入が予想される。

足許のブラジルカントリーリスクに 対し影響を与える外的要因

米国景気のスローダウンと原油価格の影響は(SINケロシン価格1ドルで年間40億円の影響)、直接航空業界の業績を左右する不安材料である。

II.旅行エイジェント業界

2000年の回顧

97年度以降推移してきた業界全体の低調傾向に歯止めがかかり、若干復調した内容となっている。日本向けの出稼ぎ需要の復調,及び在日の出稼ぎ者のコンスタントな帰国・訪問、在伯進出日本企業(主としてメーカー)のインセンティブ顧客招待訪日の活発化、商用目的訪日ブラジル人の若干の復調等が要因である。JALとバリグの増便も大きく影響があったと考えられる。ツニブラ社の統計では対前年度比約24%の売上増となっている。他方、期待したブラジル発見 500年イベントによる日本からの観光客は予想外に低調であった。また、下期のペルー観光のキャンセルもマイナス要因であった。一方、訪日ブラジル人数は 2000年暫定数で対前年比で11.7%の伸びとなっている(JNTO調べ)が、ブラジル人外国旅行者数が大幅な成長過程にあり、昨年も対前年比で30%強の大幅増となっていることを考えると日本行きのシェア(0.6%と低調である)を増やすことも重要であろう。

 

2001年の展望

日本向け旅客のメインとなっている出稼ぎ目的の訪日者は降下する気配はなく、漸増の傾向にある。在日定着型に変化した出稼ぎ者の一時ブラジル訪問は若干減少する傾向にあるが、大幅に減る要因もない。宗教関係団体の訪日は横這い。県人会、クラブ、協会等の団体訪日は多少増加する見通し。日本を含む中国、東南アジア向けのパッケージ旅行も若干増えると考える。インバウンド(日本からの観光客の地上手配)は昨年度並みと推測。ブラジル人の海外旅行者数は、引き続き増加すると思われる。

ブラジルのトヨタカップ出場の有無も影響が大きい。

足許のブラジルカントリーリスクに 対し影響を与える外的要因

治安の安定・為替の安定が直接影響する。

III.海運業界

2000年の回顧

定期船コンテナ貨物におけるアジア・ブラジル間の輸出輸入は共に堅調に推移した。南北米州航路においても船社の統廃合が進み、また米国の好景気に支えられ、需給バランスは安定を取り戻している。ブラジル出し米国向け貨物は前年比8%増となり,木材と農業生産物が、米国出しブラジル向け貨物は前年比4~5%増となり、パソコン及び機械部品が大幅に増加した。欧州向けも同様に堅調な動きであった。乗用車の輸出はメキシコ向けを中心に34%増加したが、輸入は反対に2%減少した。

 

2001年の展望

世界の主要定期航路における新造大型コンテナ船の竣工が活発化し、総船腹量の増加は2002年までは毎年約10%と大きなものになり、1995年の 280万TEU(20フィート換算)から僅か7年で2倍以上に達すると予想されている。船社間の健全な競争関係を保ちながら、サービスの安定と秩序を維持していくべき成熟期がここ数年続く事になる。

足許のブラジルカントリーリスクに 対し影響を与える外的要因

米国経済のスローダウンがもっとも懸念される

IV.貨物業界

2000年の回顧

全体的には活発な国内消費に支えられて国内生産用の部品輸入や完成品の消費財の輸入が顕著であった。とくに家電製品用の電子部品・部材の輸入貨物が目立ち、かつセルラー電池の生産は、ブラジルが世界においてかなりのシェアーを確保していることもあり、これらの部品輸入が貿易金額の大半を占め非常に目立つ。また自動車生産も増産計画に基づき,関連企業の進出や部品メーカーの現地生産化も進行しつつあり,加えて部品・部材及び半完成品の輸入貨物が増加した。国内消費に食われた感のある輸出は特定品のみに留まった(品質・価格の点で)。引越し関連では前半期で下げ止まり、後半には増加傾向にある。

 

2001年の展望

前年同様、国内消費の活発さに助けられ、消費財の生産も増産へと継続されると期待できれば、輸入部品・部材は相変わらず好調さを維持できる。各種メーカーが増産体制あるいは新規進出を計画しており、順調に行けば派遣駐在員の増員も期待できるが、一方、金融業界の統廃合による減員は確実と思われる。次項の外的要因に左右される要素が強い。

足許のブラジルカントリーリスクに 対し影響を与える外的要因

● 米国景気のスローダウン:米国向けの輸出の減少・輸入の増加により貿易収支の赤字,中南米全体への悪影響

● ユーロ不安:対ドルの下落により南米製品の競争力が減退し欧州への輸出減少

● メルコスール/アルゼンチン情勢:メルコスールのシュリンク化が輸出の減少と輸入の減退を招く

● 原油価格/中東情勢:乱高下は輸送コストへ直接影響、顧客への転嫁が難しい

● アジア経済の減速:アジア間貿易取引に影響。

V.リテール業界 (自動車販売)

2000年の回顧

自動車販売の場合、好調な輸出に支えられて生産167万台(+23.7%)、卸売り148万(+17.8%)と順調に伸びた。安値乱売傾向が見られ競争が激化している。トヨタ、ホンダの大型追加投資が発表された。

 

2001年の展望

市場規模は生産,卸売りとも1割前後の伸びが予想される。崩れた価格水準是正のため、台数より利益重視の方針に変更されよう。

足許のブラジルカントリーリスクに 対し影響を与える外的要因

● アルゼンチン情勢:亜国からのスムーズな輸入継続に関係

● 外的要因統合:外貨借入に対する返済及び新規対応への影響(レアルの安定が必要)

VI.広告・宣伝業界

2000年の回顧

1999年度の変動為替相場制切り替えによるインフレの懸念も2年を経て漸く不安から脱出し一応の落ち着きを見せ、基本金利の引き下げや貿易収支の黒字など経済安定成長の明るい兆しもあり、長期的な広告企画が立てられるようになった。ブラジル全体でみると,TV関係は幾分減少(1999年度の48%が 2000年度には46%に)、雑誌関係は横這い(1999年度も2000年度も12%)、新聞関係は微増(40%から42%)となっている。

日本情報雑誌「MADE IN JAPAN」を始めとする日本語・日本文化紹介の書籍の販売が増加し広告掲載もコンスタントになった。

 

2001年の展望

来年度の大統領選挙を控え、各新聞雑誌社とも活発な企画が予定されている。企業側の出方次第の部分が大きい。媒体では、アウトドア関係はマルタ市長の視覚公害・綺麗な街作りなどで規制が厳しく活発な展開は見込みが薄い。新聞・雑誌も掲載料金の割引競争で凌ぎを削っている。

VII.ホテル伝業界

2000年の回顧

ブラジル発見500年のイベントを期待して年間20%の増長を見込んだが、イベントの大半が東北部の1地域で開催されただけで、サンパウロ市でも企画は不発に終わったようだ。2000年のホテル業界は概して復活のプロセスにあったといえる。パウリスタ界隈に多数のアパートメントホテルがオープンし、低価格でクオリティの高い客室を提供しており、ホテル業界に影響が大きい。大型投資の投下でビジネスマンの動きが活発化しつつある。とくに国内経済の安定の影響でリゾートホテルは活況であった。

 

2001年の展望

前年の傾向を引き継ぎホテル建設が続行している。従って価格競争も一段と激化しよう。ポサーダス社が5月にグアルーリョス空港に新ホテルをオープンする他、パウリスタ大通りとビラオリンピア地区にもホテルを建設中である。また、ブルーツリーでも2004年までに多数のホテルを建設予定である。パウリスタ大通り界隈は、現在、デラックスからビジネスまで多数のホテルが乱立しているが、今年から来年にかけてはベリーニ、ナソンエスウニーダス界隈が新ホテル激戦区となると予想される。またブラジル全体では、サンパウロの南部(ビジネス)、東北部(リゾート)が注目されている。サンパウロではとくにイベントの予定はないが、海外からの投資の増加によるビジネスマンの増加が期待され、前年対比105%成長を予測している。

足許のブラジルカントリーリスクに 対し影響を与える外的要因

すべての外的要因が影響する。とくに宿泊客が多い欧米と日本の経済のパフォーマンスが重要である。またメルコスール、とくにアルゼンチンの状況がブラジル経済に与える影響が懸念される。

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