福岡部会長発表
ポイント
- アルゼンチン危機、テロ後の世界景気動向に留意
- 不透明、大統領選挙がらみの思惑
- 上期の為替は1ドル=2.3-2.6レアルか
- トピックはSPB実施再延期
- 米同時テロのダメージ大きい世界の保険業界
- 国内保険料率4倍以上に高騰
否定できない電力コスト上昇
福 岡:金融部会、2つのパーツに分けてご報告します。一つは銀行業界、もう一つは保険業界です。バックグラウンドにつきましては、いま、コンサルタント部会 の田中さんがお話になったのと、殆ど同じようなまとめになっておりますので省略させて頂いて、ごく簡単に結論だけ申し上げたいと思います。最初に銀行業界 の2001年度下期の回顧について。
まず電力問題については、いまご報告ありましたように、工業部門にはあまり重大な影響は与えずに終了 した。アルゼンチン問題は紆余曲折がありましたが、年末の状況に見られるように、ブラジル経済への波及は大変限定的であった。そのバックグラウンドにはブ ラジルのファンダメンタルズが強いということで、市場がブラジルを完全にアルゼンチンと切り離して捉えているという結果になっております。また、昨年9月 に発生したニューヨークのテロ事件の影響は、少なくともブラジルに関する限り、現時点では重大な、あるいは具体的な影響は特に見られません。
2002年度上期の展望。まずアルゼンチン問題ですが、いま下期の回顧でお話ししましたように、あまり影響を受けていないと言いながらも、やはり、輸出が 40%程度落ち込んでおり、今後じわじわとブラジル経済へダメージを与えて行くのではないか、と推測しております。従いまして、引き続きアルゼンチンの情 勢、それからテロ以降の世界全体の景気動向には留意していく必要があるだろうと思っております。
電力問題は、今年は今のところ、大きな経済阻害要因にはなり得ない展望をしていますが、ご存知のように値上げ等もあり、各業界に与えるコスト上昇圧力は否定できないと思います。
また、ブラジルに対する海外直接投資も、2002年度は180億ドル予想されており、これは基本的に海外市場が、「ブラジル経済基盤は大変底堅い」という 評価をしている査証だと思っております。全体的に影響してくると思われますのは、大統領選挙で、選挙への思惑が市場全体にどういう要因となって反映して行 くか、と言うことは大変不透明な状況だと思います。
政策金利は年末に16%予想
為替は上期1ドル=2.3~2.6レアル予想
引き続きまして、2001年度下期の銀行業界トピックスのうち、一つはSPBが再延期されたことです。これはご存知のように「ブラジルの決済システ ム」(SISTEMA DE PAGAMENTO BRASILEIRO=RTGSを柱とするブラジル決済システム)の改革で、再三にわたって計画が延期 されておりますが、中銀がこの制度の確立に万全を期すために、各銀行における進捗状況の検査を何回も繰り返していると言うことで、再延期になっておりま す。
2002年度上期の相場見通しですが、まず、為替相場。2002年度は大きな悪材料が見当たらない一方、目先がブラジル経済の好材 料出尽くし感もあって、当面はレアルのじり安の展開が予想されるであろう。年末の時点では1ドルが2.10レアル程度になるという一部金融機関の方の予測 もありますが、大体のところの予想レンジを取りますと、上期は2.3から2.6レアルに落ち着くだろう、と言うのが金融部会のまとめであります。
レアルの政策金利につきましては、2002年度の第1四半期までは政策金利は19%から18%程度に据え置く公算が強いと思われ、その後は先ほど申し上げ ました大統領選挙の要因もあり、景気刺激策の一環として利下げが徐々に実施され、最終的に2002年度末には16%程度まで下げることも考えられる、と言 うのが金融部会の取りまとめであります。
保険業界の2001年度振り返り
引き続きま して、保険業界についてご報告します。まず、2001年度の振り返りですが、通常の業界の売上高にあたる総収入保険料は前年度対比で107.7%の順調な 伸びを示しております。一方、保険業界の特殊なチェック指数であります損害率は、全種目ベースで66.2%、一昨年と比べ1.1ポイント減少しましたが、 まだ66%台を超えており、業界の収益に大きく悪い影響を与えております。中でも、保険料の太宗を占めます自動車保険は、損害率が一昨年の72.5%から 3.4ポイント改善し69.1%ということですが、約70%台をまだ保っており、業界の経営に大きな影響を与えております。
それから9 月の米国の多発テロに伴う問題。これはみなさんご存知と思いますが、まだ最終的な保険金の総支払い額算定ができない状況です。ただ、いずれにしましても、 日本においてもそうですけれども、世界各国において、業界に与えた影響は大変甚大でして、すでに保険会社の倒産を招いており、これが今後の世界的な保険業 界の再編成をさらに促す導火線になるのではないか、と思っております。
収保高伸び予想だが、足引っ張る自動車保険損害率
2002年度の展望は、先ほど申し上げました売上高にあたる収入保険料は昨年並み、すなわち、7%から10%程度の好調な伸びが見込まれますが、損害率は 引き続き高い率を保たざるを得ない状況で、業界全体の収支は、おそらく本業の保険業務収益だけでは赤字になるのではないか、と思います。
それと、やはり特徴的なのは米国の同時テロの影響で、すでに再保険マーケットが大変ハード化、すなわち保険料の高騰、あるいは条件の厳しさというところに 手をつけており、ブラジルでも、すでに大企業物件などの保険料の更改料率が4倍以上にもなっているのが散見されております。今後もおそらく、保険料の高騰 と言うところになって行くと思います。
最後に毎回ご報告しております、ブラジル保険業界の特殊な組織の再保険公社IRB。前回もご報告 申し上げましたが、民営化が図られ、すでにその実行も謳われながら、再三延期されており、現在のところ民営化の時期については全くめどが立たず、結果的に 保険業界民営化はたいへん中途半端なかたちになっているという状況です。
金融部会資料
●【予想レンジ】為替及び金利
2002年上期 | |
為替(レアル=1ドル) | 2.30-2.60 |
レアル政策金利(%/年) | 19.00-17.50 |