新井化学部会長
上げはレアルで増だが、ドルでは大幅ダウン
新 井 化学部会の新井です。 うちの部会、同一業者がいない部会ですけども、上期の中で共通したことを簡単にまとめますと、業界全体で工業用の原料を商品としての販売が多いというこ と。 消費者直結型のものが多い。 そういう中で、インフレの中で消費者動向、あるいは原料として納めている先の製品価格の動向に影響される。見ていく中で、レアルベースでは売り上げは大幅 に増、ただしドルで見た実態では大幅のダウン。 これが各社共通点で、とくに主要原料を輸入に頼っていることもあって、為替の転嫁ができないということは採算の悪化に直結と。 こういうのが共通のところだったと思います。
具体的にいいますと、樹脂加工分野ですけども、タイヤ、自動車通信といった大きな市場の大半が不調だった。
一方で化粧品、包装資材関係は増加、その他日用雑貨、文房具関係は例年と比べ大きな変化はなかった。 いま申しましたように、ここも売り上げ減に加えてドル高での原料コストアップが製品価格に転嫁できない。 採算悪化する苦しい状況でリストラが必要ではないかと。
タイヤ業界 - 新車用不調、交換用堅調
タイヤ業界も新車用のタイヤは不調だったが、交換タイヤ市場が堅調だった。 これを米国向けなどの輸出で補ったけども、輸入原料が中心であり、コストは 増、採算悪化というような状況だった。 ちなみにタイヤの方ですけれども、自動車部会の方に移られて当部会ではないですけれども、レポートを頂きました。 伊藤さんの分取っちゃったかもしれません(笑い)。
写真フイルム - 上期は前年並み
写真フィルム・ペーパーは、年初は順調。いま田中先生もおっしゃったように、去年の11月以降、市況は3月にちょっと落ち込み、さらに5月以降のドル高 で憂慮すべき状況。 ただ海外に出なくなった分、国内のレジャーで済ます傾向のためか、小売、数量ベースではほぼ前年並みか若干の増で推移したのではない かと。 ただ中身を見ても、地域差が出ていて、南部の方は観光減による売り上げ不振、東北部の方は増というようなことが起こっている。 ドル高に伴う市場 価格の上昇で、需要見通しが立て難い状況になってきている。
筆記文具 - 採算悪化を懸念
筆記文具業界ですけども、ここ数年順調に伸びてきた。 上期も売り上げは8%ぐらい伸びたが、これは結局為替の変動に合わせた値上げを実施したもので あって、数量ベースでは前年並みではなかったかと思われる。 輸入原料が中心で、64%ぐらいの業界なので、採算の悪化が今後とも懸念される。
水処理剤 - ドル高が直撃
水処理剤は、2000年から2001年にかけて15%ぐらい伸びたということですが、実態はインフレおよび為替変動による値上げが大きな要因であり、市場 規模は横ばい。 70%から90%は輸入原料ということで、ドル高は経営を直撃。 常に値上げにかられ、輸出企業を中心に若干の値上げが通ったものの、ペ トロブラスのように、年に1回しか価格調整を認めないようなところは、“お手上げ”に近いような状況のようです。 あとはこの中でブランド力による差別化 みたいなところが起こっていて、その中でどうやって生きていくかと云うようなお話でした。
接着剤・シール剤 - 販売好調だが値上げ追いつかず
接着剤・シール剤では、コンシュマー市場は、電力危機それから多発テロによる購買意欲の減退、一昨年からの中国からのジェネリック品の猛威による影響な どがあったものの、去年の年末にかけて回復基調に入って上期も販売額、数量とも好調を維持した。 大幅なドル高による原料高に値上げが追いつかず、付加価 値率が大幅にダウンした。
工業材料 - 値上げしにくく採算悪化
工業材料部 門は、自動車業界の不調にもかかわらず、エンジンシール剤の出荷は新しい採用なども増えて好調だった。 ただ輸入品が多いということでドル高の影響を直接 受けており、値上げが通らない、通しにくいというお客さんが多いということで採算は大幅悪化、特殊な接着剤関係が伸びた以外は、あとは面白いところで、ブ ラジル系、中国系のスピーカーメーカーも伸びた。 一方、このドル高の影響で、国産品への転換を図る客先が増えてきているという状況であります。
好調の化粧品業界
化粧品業界は、女性相手の商売ということですが、昨年度(2001年)は、97年度比170%ぐらい伸びたというようなことで、値段の安い商品を中心に 大幅増進。出荷ベースの市場規模5300億円ぐらいで、世界でイタリアに次ぐ5番目の市場となっているそうです。 この中で輸入規制、高関税、薬事登録費 用、品切れ問題というようなことがありまして、ブラジルブランドが益々強くなっている業界だと。 これはあまり為替の影響を受けてないようで、為替の差損 分がそのまま転嫁できる趣向製品のようです。
農薬 - 上期販売はドルベースで17%ダウン
農薬業界は、合従連衡が進んでいまして、いま田中先生の方で「不況、危機を知らず」と言いますけども、確かに生産物はそうですが原料がほとんど輸入とい うことで、それを転嫁させるべく細かく20%ぐらいの値上げは通ってきているけども、それ以上の為替の下落率でレアルベースでは、例えば99年の1月から 見ますと倍になっている。
しかしドルで見た場合は20%のダウンという状況になっていまして、一方では業界の合併等の後遺症である流 通在庫の整理が行われ始めたことがあって、上半期は前年比ドルベースで見た場合17%のダウン。 ということで、たまたま今農牧業の好況というのは収穫期 の数字を表すので収穫期が上期、農薬など我々の販売期は下期と、このズレがありまして、上期は17%以上のダウンで、インフレが管理されている中で値上げ が押し通しにくく、皆さん採算悪化が共通の悩みということで上期が終了しています。
政治経済混乱を乗り切れば、に下期の期待
下期につきましては、引き続きドル高の今後の趨勢、これの一点に尽きまして、これが継続されるようであれば相当厳しい状況におかれるという認識で一致し ます。 一方でブランド力があるグループ、あるいは一方でブランド力でなく価格でくるという、欧州勢などを含めたジェネリック品の動向が新たな不安と。 特に筆記業界や農薬業界など、下期の売り上げが1年間の60から70%占める業界は、選挙戦の状況、政治経済のさらなる混乱というところが最大の不安要因 で、これをうまく乗り切れば、全体としての消費も含めてそんなにひどくはないので、採算も良化し、結果として笑う年になるのかもしれないという淡い期待を 描いている。 化粧品などは例外で、新しい企業が進出してくるとか、まだまだ海外からの投資が進みそうな業界もあります。 以上
化学部会資料
1) 化粧品業界の出荷ベースの市場規模は5300億円で米国、日本、仏、イタリアに次ぐ世界第5位。 内訳は3%がブランドものの高級化粧品、53%が訪問販 売、マス市場38%、フランチャイズ6%となっている。輸入規制、高関税、薬事登録費用、品切れ問題などで現地生産をしているブラジルブランドが益々強く なってきている。因みに01年度は輸入US$1億7000万に対し輸出US$1億4600万と欧州(スペイン、ポルトガルなど)向けを中心に輸出が伸びて きている。また輸入業者が直接店舗展開を図るケースも増加。
2)農薬業界は6月末にBayerがAventisを吸収し新生Bayer Crop Scienceが発足しSyngenta((Novartis+Zeneca),BASF(Cyanamid→BASF), Dow Agro Science (Rohm&Haas→Dow)と続いた業界大型再編成が一段落。 各社とも合併劇の中で積み上がった流通在庫の調整に入った。