2003年上期業種別部会長懇談会-自動車部会(資料)

自動車

2002年度、自動車の生産/販売実績は以下のような結果となりました。

生産台数は年初の業界予測190万台に対して177.5万台と大幅に落ち込み、国内販売台数も年初の150万台予測に対し138.3万台と落ち込んだ。
前年に引き続いた為替の大幅切下げ、インフレ圧力、高金利、株安などブラジル経済のマイナス要因が重なって、販売が落ち込み減産対応、余剰人員の削減、雇用不安が広がった。

昨年の8月にそれまで懸案になっていたIPI(工業製品税)が販売の促進、雇用維持を目的として引き下げられ、
≪1L 以上:25%⇒16%(11月1日からは15%)/1L以下:10%⇒9%≫一時的には前年を上廻ったものの、為替の切下げとインフレによるコスト UPで値上げが繰り返され、加えて金利がUPした事もあって再び失速した。余剰生産キャパシティーを抱えながらの生産ダウンで販売競争も今迄以上に激し く、収益悪化にも歯止めがかからず、99年の為替切下げ以降ほとんどのメーカーで収益改善の見通しが立っていない状況である。この数年で約$200億の投資をしたが、メーカーの大半は4~5年連続赤字の状況で遊休率も40%と言われている。

一 方、為替が切下がった事で輸出競争力が大幅にUPし、輸出戦略をどのように強化させるかが、大事になってきた。例えば、フォードはアメリカ、ヨーロッパへ の輸出モデル(Eco-Sports)を今年(2003年)3月から生産を開始する予定であり、フォルクスワーゲン、ルノー、ダイムラークライスラーも 2004年~2005年にかけて輸出を考えたワールドカーをブラジルで生産すると発表している。これは、今迄のメルコスールを中心としたブラジル生産拠点 をアメリカ、ヨーロッパを含めたグローバル展開の出来る輸出拠点として位置付け始めたと言える。

ブ ラジル政府による経常収支改善の柱とした”輸出促進”のニーズとも一致し、官民一体となった貿易協定 及びF.T.A.の締結に向けた動き(メキシコ、南 ア、EU、中国、インド等)を加速させている。昨年8月にメキシコとの間で2国間貿易協定が締結され輸出が開始された。その他にもロシア、インド、中国、エジプトと言った国々にも新たに輸出販路を広げている。

四 輪関連部品メーカーも状況は同じで為替切下げによる原材料UP、輸入部品コストUPを価格に反映出来ず、収益悪化を招いている。やはり、輸出ドライブがか かっており、輸出の販路を持ったメーカーと国内のみのメーカーとでは業績に大きな差が出ており、メーカー間格差が広がった年であった。

今 年(2003年)は懸案されたルーラー政権の出足は無難な滑り出しではあるが、イラク問題、USAリセッションといった国際問題は先行きに予断を許さない 状況であり、国内四輪市場の今年の見通しは悲観的なものにならざるを得ない。予測困難な金利、為替、インフレ動向が仮に現状レベル (1US$=R$3.5,基本金利:25.5%、インフレ:10%)が続いたとしても、良くて前年並と考えられ、拡大は期待できないというのが関係者の一 般的な意見である。昨年にも増してドル高による輸入部品コストUP、原材料(鉄、アルミ、プラスティック等)のコストUP、インフレによるコストUPの圧 力が強くなり、四輪の価格は昨年以上のUPを余儀なくされる事から厳しい年になると予測される。

尚、四輪車の輸出については、今年は昨年の貿易協定の締結でメキシコへの本格的輸出の開始、加えてアルゼンチン四輪市場が回復の兆しを見せている事、中国向け等の大型商談の締結によって輸出拡大の期待が持てる。ブラジル
国内は引き続き厳しいものの、輸出は拡大が見込める事で生産台数としては前年を多少上回ると予測されている。
四輪業界は今年も引き続き為替タフネスUPの為に、部品の更なる国産化の推進と輸出拡大の為のラインナップ強化
及び海外販路の開拓が課題となる。

一 方輸出拡大の為に、官民協力して交渉を進めている2国間貿易協定やF.T.A.、F.T.A.A.締結に向けた動きが加速する年になるが、メーカー間競争 といった観点で見ると、これらの締結の動きによってはメーカー間での優劣が付き易くなっている。 特にヨーロッパ、アメリカ系メーカーにとってはプラスとなり、日系及びアジア系メーカーにとってはマイナス(※)となる事が考えられ、デリケートな問題に なってきている。
※ (日伯によるF.T.A.及び貿易協定についての交渉は今のところ始まっていない。)

 

■ 二輪車

2002年度、二輪車の生産/販売実績は以下のような結果となりました。

 

2001年

2002年

前年比%

生産台数

753,159

861,392

114.4

販売台数

692,266

792,945

114.5

輸出台数

60,190

68,447

113.7

 

二輪市場は生産/販売供に、前年比14%以上増加し、堅調に推移している。輸出についてもアルゼンチン向けは大幅ダウンしたものの、他仕向けが伸びて前年比13.7%とUPした。
二 輪車は生活の足として、特に北部(田舎)を中心に販売が伸びており、販売方法もコンソルシオが50%以上を占める事で金利UP等の影響を受けにくい事も強 みとなっている。今年は各種不安要素も多々あるものの、前年比+10%以上の販売は確保できると考えており、輸出についても為替切下げによるコスト競争力 UPで前年比+10%以上の拡大はできると見ている。
二輪業界の課題も四輪車同様、部品の国産化促進と輸出戦略強化である。

 

 

ルーラ大統領指導下のブラジル政治、経済が各部会、各業界に与える影響について

2003年2月6日

ルーラ政権は、新政権として初めて下記の7つの目標からなる『自動車産業活性化プラン』を作成し、活性化に向けた意欲を示している。

 

  1. 自動車産業の発展とモニタリングを目的とした委員会の設立。
  2. 国内需要と生産の拡大。
  3. 輸出促進
  4. 車両更新プログラム(10年~15年使用車に対する代替促進)
  5. 車両及びコンポーネント開発の国産化(国民車構想)
  6. アルコール車生産販売の促進
  7. 労働関連統一契約書の導入。

 

まだ、具体的な動きはないが、ANFAVEA(自動車工業会)と各々の項目について話合いが持たれている。

新政権の今までにない積極姿勢に対し、業界は好意的に受けとめている。

 

 

日伯間のFTA締結の必要性あるいは与える影響

2003年2月6日

経常収支改善の為の輸出促進は、政府の大方針となっており、メーカー(民間)のニーズとも合致している。現在検討されているEUとのF.T.A.、USA とのF.T.A.A.の動きは自動車業界全体にとっては輸出拡大のチャンスにもなり、部品・完成車の輸入コスト削減にも繋がる事から官民協力体制を強化し て締結に向けた動きは加速されると予測している。

課題は国内部品メーカーにとって、この動きは死活問題になることと、ヨーロッパ系、アメリカ系メーカーにとっては有利になるが、日系・アジア系メーカーにとっては不利になるといったデリケートな問題を含んでいる。
しかしながら、中長期的な全体の流れはF.T.A.、F.T.A.A.締結の方向で進んでおり、特にEUとのF.T.A.への動きは加速している様子である。

現在のところ、日伯のF.T.A.に関する動きはなく、日本の孤立化が心配される。

まずは、日伯が交渉のテーブルに着く事が求められ、官民の協力体制が不可欠になってきている。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30853