異業種交流委員会主催の近藤健書記官による政治セミナー

異業種交流委員会主催の近藤健書記官による政治セミナーが7月21日開催、会場一杯の50人が熱心に聞いていた

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異業種交流委員会(阿部勇委員長)主催、在ブラジリア日本大使館の近藤健書記官による3年連続3回目で、毎回人気を博しているブラジル政治セミナー「大統領選挙と次期政権の行方」が7月21日午後3時から5時30分まで商工会議所会議室に50人が参加して開催された。

初めに阿部部会長がセミナー開催の挨拶を行い、わざわざブラジリアから駆けつけた近藤書記官にお礼を述べ、赤嶺副部会長が近藤書記官の略歴を紹介してセミナーは開始された。

近藤書記官は10月に行なわれる大統領選挙は、ルーラ現職大統領とアルキミン候補の一騎打ちの様相になってきており、昨年のメンサロン問題発覚前には、ルーラ大統領の再選は確実であったが、一時期は出馬も危ぶまれた程支持率を下げた。

またルーラ大統領は慎重な人物であり、貧しい生立ちからサクセスストーリーで大統領まで上り詰め、名前を汚さないためにも立候補しないのではないかと見られていたが、今年に入り支持率がぐんぐん回復してきて立候補を決定した。

対立候補のPSDB党では、アルキミン元聖州知事とジョゼ・セーラ元聖市市長が指名争いを続けていたが、党内調整でアルキミン候補を指名した。また大政党 のPMDB党はブラジル全国に党組織を網羅して、市長の数が最も多いが、中道でありイデオロギーや確固とした政策を持ち合わせずに利権で動く傾向にある。 また下院に80人の勢力を維持しているが纏りに欠けて、大統領候補は選出しないが他党との連立に強い。

PT党は労使や左派のインテリが多い都市部で強いが、田舎の支持が多いPMDB党を連立に引き込みたいが、PMDB党大会では与党と連立しないなど支離滅裂な党でもある。

大統領選には7人が立候補しているが、その中でも元PT党でPSOL党のエロイーザ・エレーナ候補は、立派なヴィジョンを持っているわけではないが、社会 的弱者に焦点を当てて過激な言動で国民に訴えるのが得意であり、また支持率を上げてきており、ルーラ候補の支持率を侵食する可能性があり、ルーラ候補の第 1次選での当選が難しくなってきた。

また8月15日から始まる政見放送では、サンパウロ州以 外に余り知られていないアルキミン候補にとっては有利に作用する。仮に第2次選にもつれ込んだ場合は候補者の拒否率が重要なファクターとなり、拒否率 22%のアルキミン候補はルーラ候補の32%よりも優位に作用する可能性がある。

今回の大統 領選はルーラ候補とアルキミン候補の一騎打ちが予想されるが,エロイーザ候補の支持率も両候補にとっては侮れない、またルーラ候補の支持者は低学歴及び低 所得者層に対して、アルキミン候補の支持者は高学歴及び高所得者層であリ、ルーラ候補の支持基盤の方が圧倒的に大きい。

ルーラ候補の選挙戦略として「貧しい者の父親」イメージ作り、ボルサ・ファミリア支給による庶民階級の支持、「低所得者層と中産階級を守るが金持ちは自分 で守れる」と強調、選挙違反にならない落成式やすでに出来上がっている建物や石油採掘プラットフォームなどでの演説で巧みに実績のイメージアップを図り、 PMDB党支持票の取込み、現職の強み、汚職に関わっていないクリーンなイメージ作り、道路穴埋めや建築材料減税措置による支出増加や金融界の支持、 PCC騒動の巧みな利用や前政権との経済指標の比較で好調な経済を強調することなどが有利に作用しているが、公務員やサラリーマンの中産階級の失望・離 反、8年間のPSDB政権の実績、産業界のアルキミン候補支持、汚職追及が続くCPIなどは不利に作用する。

アルキミン候補の選挙戦略は真面目で有能なイメージの売込み、ルーラ政権の低い経済成長の指摘、また戦術としてはPFL党との連立,反政府派筆頭のテメル PMDB党首の派閥の取込み、PT党の政治汚職に対する政治論理の強調や決選投票に持込んで逆転勝利を収めるシナリオを描いている。

大統領選挙の見通しで、近藤書記官はシナリオAとしてルーラ候補の第1次選での再選、シナリオBとしてアルキミン候補の支持拡大で決戦投票になるがルーラ の再選、シナリオCとしてアルキミン知事が決戦投票で逆転して大統領に選ばれると3つのシナリオを提示したが、政治ジャーナリストの意見としては、シナリ オBの決戦投票でのルーラ再選が最も多いと説明した。

ルーラ大統領が再選された場合は歴史に名を残すために経済政策に拘らないために、マクロ経済には変化がないが左派的傾向が強まり、構造改革、税制改革、年金改革や労働法改革はなかなか進展しない。

アルキミン候補が大統領に選ばれると、2010年に再選に向けて立候補するために、アエシオ・ネーベスミナス州知事の大統領候補のシナリオが消滅してしまうが、与野党の大統領候補の最右翼であるのはブラジル政界の周知の事実であると結んで講演を終えた。

最後の質疑応答では、アルキミン候補が当選するシナリオ、ルーラはニックネームか本名か、アルキミン候補の低所得者層への取込み、PCC暴動と選挙の絡 み、MSTやセンテットとの関わり、ルーラ候補のカリスマ性など多岐にわたって質問が飛んだが、間髪を入れずにテキパキと明確に答えて大きな拍手が送られた。

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