11月の懇親昼食会はアントニオ・パロッシ下議並びに日本大使館政務班の澤田洋典参事官をスピーカーに迎えて、2009年11月13日正午過ぎから2時過ぎまでインターコンチネンタル・ホテルに120人が参加して開催した。
初めにアントニオ・パロッシ下議は「金融危機後のブラジルの展望」と題して、昨年の日本移民100周年記念祭では日本から皇太子殿下を初め多くの実業家のトップが訪伯して、日伯間の交流が更に緊密化してきており、金融危機後のブラジル経済の回復は世界から注目、日本企業も大いに注目しだして多くの企業がファンダメンタルズの堅固なブラジル進出を検討しだした。
慢性インフレや対外債務で常に問題を抱えていたブラジルは15年前からインフレコントロールや対外債務の減少、今では対外債務を上回る外貨準備高を擁し、国際通貨基金(IMF)からの借入れから今では金融危機の対応策として融資能力増強を急ぐIMFに対して、拠出金を借出すまで好転している。
金融危機から最も早く脱出したブラジルはワールドカップやオリンピック開催などインフレ整備の大型投資が目白押し、今後は10年以上に亘って持続的経済成長が約束されている。
またブラジルは地上デジタル放送の日本方式採用を世界に先駆けて採用、日本の最先端技術移転された日伯方式採用は南米各国で採用が決定している。
ブラジルには3つの大きなリザーブ(貯蓄)があり、対外債務を上回る2,000億ドル以上の外貨準備高、計り競れない埋蔵量を誇る岩塩層下原油、世界の肺と呼ばれて酸素を供給する広大なアマゾンの熱帯森林、環境にやさしい大半が水力発電所によるクリーンな電力エネルギー、エタノールを初めとする代替燃料など世界的に恵まれた条件化での今後の持続的経済成長が見込まれている。
また政治的にはラテンアメリカで盛んに行われている憲法改正による大統領の長期政権維持に対して、ルーラ大統領はブラジルの憲法に定められた2期連続で大統領の席から潔く去ることで、ラテンアメリカ諸国の権力者と一線を引くことで、ブラジルの政治の安定性を世界に知らしめていることも海外投資家にとってブラジルへの投資促進の呼び水にもなっている。
また世界金融危機で企業の収益が圧迫されて国庫庁の税収が落込んでいる上に、経済刺激策採用で減税や免税政策を採用して国内消費を刺激したために雇用が増加、今年は100万人の雇用創出が見込まれている。
今後は教育レベルのアップ、司法、破産法、保険法、クレジット法などの改革を図って行くことがブラジルの発展にとって重要であると強調した。
また日本や外資系企業からブラジルへの投資促進のためには煩雑な税制改革や移転価格税制を解決することが重要であり、財務省では率先して問題解決に当たっていると説明、最後に昨年の日本移民100周年で更に日伯関係は緊密化してきており、日本人とブラジル人は実の兄弟であると結んで大きな拍手が送られて講演を終了した。
続いて在ブラジル日本国大使館政務班の澤田洋典参事官は「2010年大統領選を巡るブラジル政治情勢」と題して2010年に行われる選挙として大統領、512議席の下院議員、2/3に相当する54議席の上院議員、州知事並びに州議会議員があると説明した。
有力大統領候補として与党の労働者党(PT)候補のジウマ・ローセフ官房長官、ブラジル社会民主党(PSDB)の元保健相のジョゼ・セーラSP州知事、元国家統合相のブラジル社会党(PSB)のシロ・ゴメス下院議員、元環境相で緑の党(PV)のマリーナ・シルバ上院議員を挙げた。
また10月の世論調査ではセーラ候補が40%の支持率、ジウマ15%、シロ候補12%、マリーナ候補5%で11月はジウマ候補が19%に上昇してセーラ候補は36%に減少、セーラ候補の替わりにアエシオ・ネーベス候補が立候補したシナリオではジウマ、シロ並びにアエシオ候補が20%前後で拮抗すると予想している。
現在の選挙戦情勢では政治経験、知名度や現役のSP州知事であるセーラ候補がリードしているが、ルーラ大統領と常に多岐に亘る式典に出席して知名度アップを狙っているジウマ候補が追い上げてきており、北東伯では知名度の高いシロ候補が健闘、環境問題が世界的に話題となっているシナリオはマリーナ候補の参入は時流に乗って好感を持たれているが、本格的な選挙合戦は来年にずれ込む。
大統領選の注目点としてカーニバルが終了しないと経済活動が始まらないブラジルの慣例、また南アフリカで開催されるワールドカップではブラジル人はサッカー辺倒の状態に陥るために7月以降に本格化、また80%の支持率を集めるルーラ大統領の影響力、セーラ候補とアエシオ候補のPSDB党の動向、シロ候補とマリーナ候補の動向などが大きく左右する。
高支持を維持するルーラ大統領は強力な選挙マシーンであり、ジウマ候補を常にルーラ大統領と行動を共にしてメディアに登場、また来年3月に放映が予定されているルーラ大統領物語「ブラジルの子供」の影響、文盲でも投票が可能な電子投票の影響やブラジル民主運動党(PMDB)との協力など大きく選挙戦に影響する。
PSDB党の動向としては高支持率を維持しているルーラ大統領との直接対決イメージを回避するために、大統領立候補を来年3月に先送りを予定しているが、全国的に知名度の低いアエシオ・ネーヴェス・ミナス州知事は同党の大統領候補の年内決定を主張、前回の大統領選では北東地域の票の取組みに完敗したために、副大統領候補として北東地域から選出する可能性がある。
セーラ候補の政策は与党に近いが、1994年以降の国民投票的選挙では与党が勝利を収めているために来年の大統領選挙はPT党有利、しかしネーヴェス候補は大統領就任前に死亡したタンクレード・ネーヴェス氏の孫でカリスマ性がありPT党に警戒感を与えている。
PSB党のシロ候補はPT党との連立与党であり、ジウマ候補との票の奪い合いを懸念しているために、ルーラ大統領はシロ候補のサンパウロ州知事選を支持、しかし党内のマルタ・スプリシー女史などが抵抗、シロ候補の支持率が20%を超えれば大統領選の可能性もでてくる。
マリーナ候補は元環境相で各党が環境をテーマにしている時点での立候補は非常にタイムリーであり、またマンネリ化していたPT党対PSDB党の二極構造に待ったをかけ、ルーラ大統領との似た生い立ち、著名人の幅広い支持、副大統領候補にNatura社の社長を選んで他の候補の票を奪う可能性が大きい。
大統領選は5回連続でPT党とPSDB党の対決が続いており、カルドーゾ大統領とルーラ大統領で16年とブラジルの政治は安定、国際舞台でも大きく活躍しているが、有権者にとっては選択の幅がなく、中傷合戦になりがちであり、第3勢力の出現で政治の質の向上が期待されている。
PMDBは閣僚6人、州知事は1/3に相当する9人、下院議員は92人、上院議員は17人でそれぞれ議長席を維持、1,201市長で党員が200万人を抱える最大政党となっているが、大統領選挙では惨敗、1995年以降は常に政権側に付いている。
また上院の汚職、腐敗問題が続出しており、上院は政治ボスの集まりであり、来年の上院選では2/3が改選されるために大物政治家の落選危機が見込まれているが、改革は有権者の手に委ねられていると結んで講演を終えた直後に平田事務局長はプログラムには予定されていないが、パロッシ元財務相のテーブルへ行き、澤田参事官の講演のコメントや感想を求めると快諾、パロッシ元財務相は澤田洋典参事官の「2010年大統領選を巡るブラジル政治情勢」はよく分析されていて素晴らしい講演であったと最大級の称賛の言葉を贈った。
平田事務局長は去る6月19日にアメリカ商工会議所で行われたGIE(主要14カ国で構成する外国投資家グループ)会合でパロッシ元財務相にお逢いの際、GIEとしてお願いした移転価格税制改善要請に対する前向きなスピーチについて非常に感謝の意を表明。
8月以降の定例昼食会にご招待して来たが、今回は三度目の正直、ご多忙な日程を特別調整され、たまたま13日の金曜日又PT党の選挙番号13に偶然ながら一致する日にご講演下さった事に何らかの縁起があると悦んだ。
かつては定例昼食会に現職のルーラ大統領が大統領候補者に選ばれる以前、本日のパロッシ元財務相同様ご講演された事を想起、ブラジル日本商工会議所でご講演される方は決まって大統領に選出されると言うジンクスがあると会場の笑いを誘いながら、来年ジルマ大統領候補への講演依頼がもし実現されない場合は、替ってもう一度パロッシさんに又是非お願いしたいと会場を沸かした。
山田唯資監事会議長は「2009年第3四半期の会議所の業務、会計監査結果」として、10月21日に監事3名が出席して開催、山田監事会議長は事前に会計の動きを記帳した書類や銀行からの照合票及び伝票を1枚1枚チェック並びに金庫内有り高の精査を実施した。
監事会は初めに平田事務局長から最初にこの期間中の業務の推移について説明、次いで会計事務所が作成、提出した貸借対照表、損益計算書、それに事務所が準備して米倉財務委員長並びに10月9日の常任理事会によって承認された月別会計種目別収支明細書、予算、実績対比表、財産目録、会費滞納現況表並びに2009年度第2四半期の各委員会や部会の予算と実績について逐一会計担当職員も加えての事務局サイドからの報告があり、それに対する監事側からの質問など等相互間で活発な討議が行われて審議、その結果、監事会は「2009年度第3四半期の会議所の業務遂行とその会計処理は適切であった」事を認めた。
3分間スピーチではパラナ州マリンガ市のシルビオ・マガリャエス・バーロス市長が「パルケ・ド・ジャパンへのご協力お願い」として、敷地面積が10万平方メートルの日本公園の完成のために免税口座団体(OSCIP)でレシーボ発行が可能であるリッファ(くじ引き)協力券販売で資金を調達するために、会員企業の協力券購入を訴えた。また平田事務局長は商工会議所の財政強化のためにも、出版物委託販売同様に会議所からのリッファ購入を会員企業にお願いした。
EMDOCサービス社のレネー・ラモス氏は「ブラジルと日本-移住及び査証」出版について、ポルトガル語/英語/日本語3カ国版の本を商工会議所で委託販売すると説明した。同書は実業界、人事スタッフ及び国際労働法の専門家に、ブラジル及び日本両国の各種就労査証について情報を提供し、両国の移住に関する法規の主な特徴を紹介することを目指しているという。
ブルーツリーホテルの広瀬純子ディレクターがエコノミークラスのスポットライトホテルは安らぎのコンセプトに食事はコンベニエンス・スタイル、マネージャーは日本の旅館の女将さんのように感謝をこめて接待するので同ホテルの利用を呼びかけた。
新入会員紹介ではブラジル・アステラス製薬のデヴァネイ・バカリン氏が山之内製薬と藤沢薬品が合併して誕生し、日本では2位で世界の売上げが100億ドル以上と自社を紹介して田中信会頭から会員証が授与された。
左は澤田参事官の講演内容についてコメントをするパロッシ元財務相/田中信会頭
マイクを持つパロッシ元財務相は澤田洋典参事官の「2010年大統領選を巡るブラジル政治情勢」の講演は素晴らしく分析されていると最大級の称賛の言葉を贈った。
在ブラジル日本国大使館政務班の澤田洋典参事官は「2010年大統領選を巡るブラジル政治情勢」と題して講演
パラナ州マリンガ市のシルビオ・マガリャエス・バーロス市長が「パルケ・ド・ジャパンへのご協力お願い」について3分間スピーチ
120人が参加した11月の懇親昼食会の様子