「金融危機後の米国、メキシコの政治・経済・マーケットに関する勉強会」に30人が参加して開催

JETRO サンパウロ(佐々木光センター所長)とコンサルタント部会(都築慎一部会長)共催の「金融危機後の米国、メキシコの政治・経済・マーケットに関する勉強会」に30人が参加して開催、初めにジェトロ・ニューヨークの梶尾朗調査次長が「米国経済の現状と見通し」について、米国のGDPは14.4兆ドルと2位の日本の4.9兆ドルを圧倒的に上回って世界トップ、人口は中国、インドについて3位、面積はブラジルを上回る937万平方キロメートルで4位と大国で、ヒスパニック系の人口が増加して24.4%を占めてラテン化が進んでいると説明した。

世界金融危機の影響で昨年のGDPはマイナス2.4%に落ち込んだが、今年の潜在成長率は人口増加などで2.8%前後の増加が予想、経済回復は住宅市場と輸出に依存、今年下半期からの官需から民需へのバトンタッチがカギとなる。

実質個人所得、実質総売上並びに鉱工業生産は底を打ったが、雇用の増加が進んでいないために、今後の経済回復は雇用なき回復となる可能性が残されているが、昨年9月にはパーナキンFRB議長が「技術的に景気後退は終了した可能性が強い」と述べている。

鉱工業生産・稼働率の持ち直し、景況感指数は50を超えて耐久消費財・コア資本財受注は緩やかに回復しているが、在庫は横ばいとなっている。

ドル安の為替は輸出に追い風となって特に機械・装置、電気・電子、航空機、医療装置、医薬品が輸出を牽引、しかし対ユーロではギリシアの財政悪化でドル高の為替になっていると説明した。

米国では1985年ぐらいまでは家計貯蓄率が10%で推移、しかし90年代のバブルで消費が大幅に増加して貯蓄率が5.0%前後まで減少、しかし金融危機後は再び上昇に転じている。

不良債権を抱えている銀行が多くて与信の厳しさが継続して、中小企業を中心に貸し渋りが一向に改善されておらず、今後2年間はこの状態が続くと予想されている。

2010年の中間選挙までのオバマ政権は雇用対策が最優先され、ライフワークとしているライフケア改革は未だにまとまっていないが、雇用対策に次ぐ優先順位であり、金融規制改革並びに気候変動対策まで手が回らないと予想されている。

米国の対ブラジル対策として中南米は地政学的に裏庭的存在であり、ブラジルを同地域の仲介役として期待、米国とはWTOドーハラウンドで敵対しているにも関わらず、過去数年間の二国間関係は深化してきており、オバマ大統領のルーラ大統領の手腕を認めて大統領就任後は早期にルーラ大統領を招聘、今後さらに二国間の関係は重要さを増していくと予想されている。

「米国経済の現状と見通し」ジェトロ・ニューヨークの梶尾朗調査次長

続いてジェトロ・メキシコの経済交流促進担当の中畑貴雄ディレクターが「メキシコの最新経済、産業・市場動向」と題して、カルデロン政権の国内改革課題として、税収がGDP比8.2%と中南米諸国の平均15%、ブラジルの40%を大幅に下回るためにインフラ投資ができないと説明した。

エネルギー改革ではPEMEX石油公社が市場を独占、しかしメキシコ湾の深海油田開発の技術が不足しているために、増産が必ずしも進んでいない。

2008年までの6年間のメキシコの主要マクロ経済指標として、GDP平均3.0%、一人当たりのGDPは2008年には1万ドルを上回ったが、昨年は為替の下落で8000ドル近くまで低下してブラジルと同レベルになり、消費者物価指数は4.0前後で安定、輸出競争力はあるが、外貨準備高は低い。

人口は1億人を突破、人口分布はピラミッド型で若い人口が多く、全世帯所得の64%は上位30%が占めて所得格差が依然として存在、自動車の普及率は中古車市場が拡大して44%を非常に普及率が高い。

メキシコは輸出製造拠点として低い労働コスト,穏健な労働組合、44カ国とのFTAネットワーク、世界最大の米国市場に隣接しているために輸送コストで強みがあるが、高い電力価格、陸上輸送コスト、未整備なインフラ、非効率な行政や煩雑な法制度など弱点も多い。

2008年の自動車生産台数は世界8位であるが、中古化市場が大きいために新車販売では世界13位、カラーテレビ、セルラー、コンピューターや家電は主力輸出製品であり、航空機産業は低い製造コスト、米国との2国間航空安全協定(BASA),関税優遇制度などが整っている。

ブラジルへは主に自動車、セルラー、自動車部品、エンジンなどを輸出、また南米諸国とは多くの特恵貿易協定や経済補完協定を締結、メキシコ進出日系企業は主に製造業の自動車部門、電機・電子、化学、鉄鋼・金属部門、非製造業の商業や運輸・倉庫部門など330社、そのうち製造業が250社以上で国内向け消費や輸出拠点になっていると説明した。

「メキシコの最新経済、産業・市場動向」ジェトロ・メキシコの経済交流促進担当の中畑貴雄ディレクター

左から都築慎一コンサルタント部会長/平田藤義事務局長/ジェトロ・メキシコの経済交流促進担当の中畑貴雄ディレクター/ジェトロ・ニューヨークの梶尾朗調査次長/ジェトロ・サンパウロセンターの大岩玲取締役(fotos Rubens Ito/CCIBJ)

30人が参加して開催された「金融危機後の米国、メキシコの政治・経済・マーケットに関する勉強会」

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