平成22年度官民合同会議に外務本省から水上正史中南米局長が参加して開催

平成22年度官民合同会議が2011年2月22日午前9時から午後2時30分までサンパウロ市内マクソウドホテルに、外務本省から水上正史中南米局長、在伯日本大使館の三輪昭大使など40人が参加して開催された。

司会は在伯日本大使館の今西靖治参事官が担当、初めに水上中南米局長がブラジル経済関係促進の基本方針について、経済の三本柱としてFTA/EPAの締結、資源・エネルギーの安定確保、官民一体となってのパッケージ型インフラ輸出で一つでもサクセスストーリーをつくってゆくことが重要であり、ブラジルはこれらの条件が全てそろっているために協力は惜しまないと強調、またブラジルやメルコスールとのEPA締結への共同研究の提言についても説明した。

三輪昭大使はEPAについて補足させてもらいますと前置きして、EUとメルコスールはFTA交渉で10年以上かかっているが、アルゼンチンを先頭に交渉が進んでおり、日本はブラジルとのEPA締結では前向きな姿勢を見せており、ブラジルも日本とのEPAで得られるものが多いとみていることを説明した。

前田一郎専任理事は韓国のブラジル進出を危惧しており、またEPAではブラジルとメルコスールと交渉中で脅威であり、考慮して頂きたいと述べた。

三輪大使は「ジウマ・ルーセフ新政権の経済政策の動向」について、ジウマ大統領は朝9時から夜9時までビシビシ仕事をしており、長い歴史の中で初めての大統領で2月9日の信任式で10分ほど話をしたが、仕事の話ばかりであったと述べ、またジウマ大統領の初出張はリオの洪水被災地訪問、北東地域の停電発生では関係閣僚を集めて原因を追及させていると説明した。

また閣僚名簿ではPT党の自分に近い人物が多く入閣、最低サラリーでも自分の意見を貫き、今年のGDPは5%に抑えてインフレ抑制を最重視、外交では米国が米国籍のアニータ夫人と結婚しているパトリオッタ外相に関心を持っており、政治的にブラジルに注目、米国とブラジルの外交は大きく変わる局面に差し掛かっていると説明した。

中山立夫会頭が大型インフラ案件はトップセールスが重要であるが、ジウマ大統領に伝わってないのではないか、日本が高速鉄道プロジェクトに対して売り込みに来ないので1回目の入札はキャンセルになったが、韓国勢に負ける可能性を指摘、経団連がブラジル工業連盟(CNI)と伴に5月17~18日にバイア州サルバドールで開催する日伯経済合同委員会にジウマ大統領とピメンテル商工開発相を招待、また同時期に経済産業省とブラジルの商工開発省(MDIC)も加わって日伯貿易投資促進合同委員会(日伯貿投委)を開催して、盛り上げていきたいと述べた。

次回貿易投資促進合同委員会に向けた対応[ブラジル日本商工会議所]では、初めに寺田健司ホンダサウスアメリカ副社長が「移転価格税制」について、日系メーカーの生産車は所得階層がトップのAクラス、しかし欧米メーカーは価格の安いリッター車、車や家電などの耐久消費財の価格低下が長期化してマージン率低下、移転価格税制はブラジルにとって何のメリットもなく、OECDのガイドラインに沿ってほしいと説明した。

前田一郎丸紅ブラジル社長は「査証取得にかかる問題」について、短期滞在ビザの発給に関わる諸問題、ビジネス障害、アルゼンチン・チリ・コロンビア・ペルー・メキシコ等中南米のほとんどの国、また米国・カナダ・EU全域・韓国・香港・豪州等への出張の際には、日本人ビジネスマンは短期滞在ビザ取得が不要、在ブラジル日本大使館のご尽力でブラジル外務省・商工省と協議して戴いた結果、「一定期間(1年又は3年)有効な数次商用目的の短期滞在ビザ発給」の可能性が浮上してきており、日伯経済交流促進のための強力な民間企業支援となることが間違いないので、実現に向けた日本政府・大使館の支援を依頼した。

出見宏之南米新日鐵マネージャーが「技術移転にかかる問題」について、技術ノウハウの重要性、ノウハウライセンスの容認、ノウハウライセンス・譲渡に関する契約期間やノウハウ守秘期間の契約当事者による自由な設定の容認、特許とノウハウ双方を同時送金対象とすることの容認、第4回日伯貿易投資促進合同委員会での結果などについて説明した。

大塚ブラジルキヤノン社長は「知的財産(模倣品対策)」について、中国からの模造品密輸ルート、模造品の種類、インクジェット、バッテリーやカメラの模倣品の出荷国、模倣品の見分け方、代理店、警察関係者や税関職員向けトレーニングセミナーや開催地、模倣品による事故や危険性などについて説明、その後、ヴィデオで模造品・密輸の実態を見せた。

各会議所からの報告ではブラジル日本商工会議所の前田一郎日系社会委員長はリオ水害では会議所が音頭を取って各企業に支援を依頼、現金物資は3370万円相当、本社サイド29万1000ドル、総額6250万円に達して温かい寄付金を寄贈できたことを報告した。

アマゾナス日系商工会議所の山岸照明顧問がマナウス工業部門におけるビジネス・投資上の問題点として、サンパウロなどへのインフラ整備不足による輸送問題、通関遅延問題、ビザ発給の煩雑さ、生産コストの高騰と競争力の低下、税務、労務などの制度改善要請専門職の人材不足を説明、また在日ブラジル人が帰国して、マナウスフリーゾーンでは大きな戦力になっていることを強調した。

パラー日系商工会議所の山本陽三副会頭は会員企業50社、そのうち進出企業が僅かに2社で会議などは全てポルトガル語、州都べレンの人口は160万人、連邦政府が貧困家庭の補助政策を継続しているために消費拡大で特にスーパー業界は事業拡張のために大型投資を行っていると説明した。

また日系二世が経営する会員企業では中国企業とタイアップして貨車生産、パラー州では鉱業、漁業や林業への投資が有望、インフラ投資では道路、港湾整備など大型案件が目白押しであり、今がチャンスであるために日本企業に進出してほしいと強調した。

リオデジャネイロ日本商工会議所の井上惣太郎会頭はビジネス環境の問題点として、事務所開設に時間がかかり、また税制も複雑でよく変更になり、政府関連公社のストの多発、短期ビザの有効期限が曖昧など非常にビジネスの障害になっていることを訴えた。

パラナ日伯商工会議所のオオシロ会頭のヨシアキ・オオシロ会頭が中小企業は資本金不足、コスト高、不十分な従業員教育や宣伝費など大企業と対等に競争できないために、パラナ商業連合/産業連合と組んで共同輸入を行って輸入コストや税コストの削減を実施していることを説明、西森ルイス下議はパラナ州では農業が盛んであり、今後は食品など付加価値を付けて日本への輸出を図る計画、また4月にはパラナ州の経済視察団を日本に派遣してビジネスチャンスをバックアップすると説明した。

南伯日本商工会議所の白井安弘会頭は会員数30名、進出企業が2社、会議所の活動として日本文化継承支援、環境意識の向上、いろいろなイベント開催で日系社会の交流の活性化、ホームページを情報発信基地とするために更に充実させると説明、一般論として南大河州は環境規制が非常に厳しい州であるために、日本の優れた環境技術の導入するための官民連携をして環境保護設備のセット販売、安全で効率的な日本のインフラ設備の売り込み、日本に滞在している日系ブラジル人の帰国後の有効活用、また南大河州論として駐在員への運転免許取得支援、フリーゾーンの設置、治安問題などの解消などで州政府主導の商工会議所との定期会合を説明した。

今後の官民合同会議のあり方について平田藤義事務局長は過去、年1回継続的に輪番制で開催してきた在伯日系6商工会議所代表者会議が遠隔地会議所からのコスト負担軽減の要請を受け2007年廃止に至った経緯を説明、しかし今後についてはブラジル日本商工会議所の事務局が他の5地域会議所の取り纏め役を果たす一方、両国政府への積極的な提言や地域会議所との交流活性化を提案。

また官民の連携を更に深めていく必要があるために、官民合同会議では5年、10年先を見据えた議題も取り上げてもらいたいと述べ、さらに在ブラジル日本大使館においては可能な限り予算を工面、担当書記官にもっとサンパウロにご足労いただきたいと要請した。

またパラー日系商工会議所の山本副会頭は地方の会議所の会員は二世が大半であるために、通訳を付けていただけると二世の参加ができるので検討してほしいと述べた。

芳賀克彦JICAブラジル事務所長は「日伯モザンビーク三角協力によるアフリカ熱帯サバンナ農業開発プログラム」構想、サンパウロ都市交通整備、サンパウロ州沿岸部衛生改善、ビリングス流域環境改善やサンタ・カタリーナ州沿岸部衛生改善プロジェクト、BOPビジネス連携促進などについて説明した。

ジェトロ・サンパウロセンターの澤田吉啓所長はジェトロの活動として日本の輸出促進、海外の企業を日本に紹介、海外市場の開拓、今年はバイア州への日本からの企業ミッション、環境技術の売り込みミッションを予定、また日本の地方企業のブラジル進出を促すために、ブラジル企業を日本に派遣する買付ミッションを予定していると説明した。

JBICリオ事務所の根本駐在員は日本政策金庫、国際協力銀行(JBIC)のブラジル向け取組として、ブラジルの社会経済開発銀行(BNDES)とタイアップして、日本企業が参画するインフラ・投資案件に対してレアル建て融資、また地球環境保全効果を有する事業向け資金援助にかかる協力も検討中であると説明した。

平成22年度官民合同会議の様子

左から司会を担当した在伯日本大使館の今西靖治参事官/在伯日本大使館の三輪昭大使/外務本省の水上正史中南米局長

40人が参加して開催された官民合同会議

 

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=35045