2008年7月当時、甘利経済大臣と伴に日伯貿易投資促進合同委員会の創設者である前開発商工大臣のミゲル・ジョージ氏も姿を見せ、平田事務局長は去る8月行われた第5回バイア合同委員会が成功裏に終わった事や、その一部成果としての移転価格税制やビザ案件などが一歩一歩着実に改善している事を報告、同氏に感謝を表明する一方、同氏にも昼食会講師を要請し快諾いただいた。(ビザ案件に関するミゲル氏のコメント:伯米間の商用マルチビザの有効期間は10年であるのに対し、、、、)
講演要旨
ピメンテル商工開発大臣は前政権と同様、ジルマ政権は引き続きアラブ諸地域との関係促進強化を優先課題とした上、今年、世界の注目を集めたエジプトやチュニジアの大規模反政府抗議、リビア内戦(アラブの春)の最中でも、同地域への輸出は昨年比31.6%増を記録していると前置き。
今後もアラブ諸国とのビジネス促進強化を挙げ、今年11月アラブ首長国連邦ドバイで開催予定のBig5建設見本市に、昨年に引き続き開発商工省が所管する国家輸出促進庁とアラブ会議所が連携出展する意向を示し、中近東への経済ミッション派遣を表明。
また昨今の国際経済に触れ、2008年のリーマン危機がEU圏に飛び火、その後のEU発金融危機は随分前から取り沙汰されている根深い外的誘発現象であると持論を展開、同大臣によると昨今の危機の裏には深層かつ構造的な4つの変革プロセスがあると述べた。
1.産業パラダイムシフト
20世紀から21世紀に掛け大きな変化として、世界の如何なる国々よりも廉価な工業製品を生産するアジア諸国、特に中国の勢いに象徴される産業パラダイムシフトを第一に挙げた。アジア諸国は農産物や鉄鉱石の僅かな分野を除き工業製品では世界貿易の大半を占め、世界経済はこの現象から逃避出来ず、ブラジルとて決して例外ではないと警鐘。
2.基軸通貨
二つ目に国際貿易における決済通貨としての米国ドルの信認が揺るぐ中、基軸通貨の代役について言及。今やグローバル経済が定着した環境下において、最早いつまでも20世紀の基軸通貨に拘り依存する訳にはいかないと断言。米国政府は競争力強化のために自国通貨を安めに誘導しているとし、世界の為替市場を悲惨なほど混乱に陥れていると付け加えた。
ドルから他の通貨へと基軸通貨が代っていくのは時間の問題であり、バスケット通貨制の採用や或いは又、いずれ何処かで新しい通貨制度に移行し、21世紀の終わりまでドルが、引き続き基軸通貨としての役割を担えるはずがないと示唆。しかしながら多くの国々が外貨準備を米ドルで保有し続ける間、代役の通貨が登場する間そのプロセスは複雑であるとした。
また、EU金融危機の煽りによる最近の急激なドル高・レアル安(月初1.60レアルが今日現在1.85レアルの為替相場)についてコメント。年末にはインフレ圧力とならず且つ輸出業者にとっても適正水準と言える、1ドル1.70レアル程度になることを示唆。
3.消費市場の変化
第三番目として米国やヨーロッパ諸国などが既に飽和・成熟、その代役として存在感を高める発展途上国の著しい経済興隆の影響で、消費市場に大きな変化が起きていることを述べた上、今やダイナミズモは北半球から南半球にシフトした事を明らかにした。
途上国の消費市場の開拓は緒に就いたばかり、これからもまだまだ伸びる余地が残されていると自信を表明。米国やヨーロッパの衰退を前に我々ブラジルには大きなポテンシャルがあると強調、長期的にはこの変化は地経学に限らず地政学的な分野でも起こり得ると付け加えた。
4.広大な国土に多くの人口、豊富な資源国家の出番
最後の四番目に、21世紀のリーダーとしての国家のモデルは、広い国土に豊富な資源、市場として認識できる多くの人口すなわち教化された国民を有し、また工業生産以外に技術開発能力も備え、且つ安全な法事国家の下に民主主義が定着している事が不可欠となるが、ブラジルはこれ等を全て満たす数少ない国の一つであると自信を表明した。
「ブラジルが将来、成功の鍵を手にするかどうかその行方について、巷のビジネス書には記されてないが、その一章を書き綴るのは我々自身である。」、「色々な諸条件は見事なまでに揃っているし、世界に手本を示す事も可能だ。」 自信に満ちたスピーチの最後に一言と断り、「アラブとユダヤを祖先に持つブラジル人の融和・共存文化に触れたジルマ大統領の国連演説を今思い浮かべている。」と講演を結んだ。