ラジル日本商工会議所名誉顧問でもあるサンパウロ総領事館の大部一秋総領事夫妻の送別会を兼ねた6月の懇親昼食会が2012年6月15日正午からマクソウドホテルに130人が参加して盛大に開催、司会は平田藤義事務局長が務めた。
特別参加者紹介では、Souza Ramos/Mitsubishi Motors do Brasil/Suzuki Veículos Brasil社のエドアルド・デ・ソウザ・ラモス会長、同社のロバート・デ・マセード・リッチャー社長、西島章次在ブラジル日本国大使館公使、大部一秋在サンパウロ日本国総領事夫妻、木多喜八郎ブラジル日本文化福祉協会会長などが紹介された。
ソウザ・ラモス社のエドアルド・デ・ソウザ・ラモス会長は、「ブラジルにおける日本ブランドの立ち上げ-Souza Ramosグループと三菱自動車」をテーマに講演、初めに「私は人生に於いて強運の持ち主である」と述べ、父親が自動車業界で働いていたために、実家にはいつも自動車業界関係者が訪問、ブラジル経済の激動や自動車業界の浮沈みなどを耳見聞、大学卒業後は父親のワーゲン社のディーラーで販売員として仕事を開始、その後はワーゲン社からフォード社のディーラーとなり9ディーラー店まで拡大したが、ブラジルのハイパーインフレ、金利高騰、輸入自動車の輸入税の高騰などブラジルの経済変動に翻弄されて、売上は半減して倒産直前までになったために、負債返済のために大半の財産処分を迫られた。
しかし、ブラジルには天然資源、水資源、ブラジル全土で耕作可能などブラジルのポテンシャルを信じて、”苦あれば楽ある”で、ブラジル経済は、必ず良くなると経済危機の脱出を信じ、また私の夢であるブラジル国内での自動車生産を模索していたところ、破産寸前の私にチャンスが巡ってきた。
ゴイアス州で税制恩典を得て、三菱自動車のピックアップ生産のライセンスを獲得、父親の言葉の通り、”危機は来るが、危機はまた去ってゆく”を信じて人生をかけた。それとブラジル人は、何十年に亘って色々な危機に遭遇してきたために、危機に対する免疫ができているために、危機に耐える奇想天外な発想ができると説明した。
ブラジルの金融システムは非常に強固であり、低い失業率並びに膨大な外貨準備高、可能な金利引き下げ、可能な課税率の引下げ、可能な金融取引税(IOF)の引下げなどの要因で、ヨーロッパの金融市場混乱は波及しないと断言した。
また円高の為替で日本の製造業は危機に迫られているが、今後引き続き経済が大幅に拡大するブラジルに投資する絶好の機会であり、またブラジルは日本の世界最高のテクノロジーを必要としているために、Win-Winの関係を築くことができ、また日本の自動車部品メーカーにもっと進出してきてほしいと強調して講演を終え、近藤正樹会頭から記念プレートが贈呈された。
在ブラジル日本大使館の西島章次公使は、「国際的観点からみた日本経済の今後の課題」をテーマに、30年前に2年間、サンパウロ大学で客員教授をしていたが、ハイパーインフレ並びに世界トップの高金利、慢性的な資金不足やブラジルコストなど常に危機的状況から脱出できない未来の大国等の論文を書いていたが、今では一桁台の金利、コントロールされたインフレ、強硬な金融システム、投資適格国で大きく飛躍するブラジルと変容している。
しかし、日本経済は大変な局面に直面しており、1990年代からの傾向的な経済停滞、一人当たりの名目GDPは、2000年の世界3位から2010年は14位に後退、国内的な要因として、少子高齢化の進展並びに労働生産性の低迷、ひっ迫する政府の財政、外敵要因として、国際競争力の低下並びに少ない直接投資の流入となっている。
世界の貿易に占める日本のシェアは、1980年は7.2%、2010年には4.8%まで低下している一方で、中国は1.0%から9.4%と飛躍的に増加しており、中間財・部品輸出へのシフトや輸出先や地域の多様化、日本の対外直接投資は米国並びに英国、ドイツよりも少なく、インフラ並びに金融、通信などサービス部門における日本企業の競争力不足やM&Aに不慣れなことが、グローバル化を充分に享受していない。
円高メリットを生かして急成長する新興国の国内市場を確保するために、新興国への進出が必要である一方で、国内産業の空洞化をもたらし、雇用機会を漏出させる可能性がある。
日本への対内直接投資は、欧米諸国や新興諸国と比較して極端に少なく、外資系企業の東京の株式市場の上場企業数は僅かに14社、2010年の純流出は13億ドル、東日本大震災の昨年も13億ドルの流出となっている。
日本経済が、海外企業の受け入れに対して依然として閉鎖的であり、また、日本独特の商習慣などからの理由で、外国の企業には日本市場は魅力にかけるために、法人税の実行税率の引き下げや規制緩和をする必要がある。
ブラジルへのインプリケーションとして、ブラジルで日本を拠点とするサプライチェーンを創出の可能性としては、距離の問題並びにインフラなどの効率性の問題、国産化比率などの障壁の問題などがあり、初めに生産拠点のために直接投資の必要性、短期的には難しいが、中長期的には、ブラジルは輸出基地となる可能性はあるが、インフラの改善やメルコスールとの貿易協定などが条件となってくる。
ブラジルへの直接投資における経営戦略では、日本企業のブラジルのイメージがいまだに昔のイメージしかなくて、積極的に直接投資を勧めている韓国や中国、欧米企業に後塵を拝しており、またブラジル進出には長期的なタイムスパンを持ち、現地の商習慣の熟知、徹底した現地化、借り入れに依存しない充分な自己資本、現地での採算重視、現地通貨での利益重視、リスクの危機管理能力と情報網の構築、適切なパートナーとの関係、圧倒的技術的な優位性の必要性、日系社会の活用などを指摘して講演を終えた。
続いて特別行事である大部総領事の送別会に移り、総領事は、明治維新から150年もたっていない日本は、近代国家になって日清戦争並びに日露戦争、第一次世界大戦、関東大震災、第2次世界大戦で敗戦を迎え、その後も2度の石油ショック、94年のバブル崩壊、95年の阪神大震災、昨年の東日本大震災や原子力発電所問題などや円高の為替などで経済危機にあるが、徹底した楽観主義の人物が登場してきて、良くなる歴史を繰り返してきており、世界に出て行って戦う日本人が必ず現れると述べた。
今のブラジルは千客万来の状態であり、日本企業は、戦略的に攻めるアプローチが始まっており、今後は黄金の10年が続き、2014年のワールドカップ、2016年のリオのオリンピック、2020年には、サンパウロの万博などが目白押しとなっている。
ブラジルは『坂の上の雲』で何でもあり、2032年ぐらいまで世界の注目を集め、北の米国、南のブラジルとなる可能性を秘めており、すごい時代でわくわくしており、長期的なビジョンでは、日伯は相互補完関係にあり、昨年の日本のブラジルへの投資は75億ドルと拡大している。
日本が生きてゆくにはブラジルが必要であり、104年前に日本人がブラジルへ移住してから104年で日系人が150万人いるが、1000万人程度の影響力があるように感じており、また日本企業が進出できる地ならしができており、何時でも心の中でサンパウロは生きており、今後もサポートしてゆきたいと結んだ。
連絡事項では6月18日午後8時からサンパウロ州議会でのブラジル日本移民104周年記念式典で、商業並びに文化、経済面における日伯関係強化といったサンパウロ社会へ大きく貢献した団体を対象とした表彰式が行われ、商工会議所は羽藤ジョージ州議会副議長の推薦で表彰されるために、平田事務局長が出席者に参加を呼びかけた。
代表者交代では国際協力銀行 (JBIC) の細島孝宏氏は、通算で8年間のブラジル勤務、ブラジルの融資残高がインドネシアを抜いてトップとなり、社会経済開発銀行(BNDES)とタイアップしたレアル建てクレジットやアフリカ並びに中南米の第3国の枠組み造り、リオのカーニバルへの参加などを述べ、MOL BRASIL LTDA.の寺元清隆氏は、2008年にサンパウロに赴任後は充実したサンパウロ生活を送り、カマラゴルフで優勝したと述べ、着任したNISSHINBO DO BRASIL INDÚSTRIA TÊXTIL LTDA.の小金沢薫氏は田邊義雄前社長の帰国挨拶文を代読、7年半のブラジル勤務で、昨年の繊維業界の不況以外は順調で、社内では良い人間関係が築け、プライベートでは、ブラジル人のライフスタイルから人生の楽しみ方や家族関係を大切にすることなどを学んだ。
K-I CHEMICAL DO BRASIL LTDA.の江口克己氏は、ブラジルの農薬のマーケットは世界最大で、赴任中は大いに実績が伸びたが、6年間のブラジル勤務中に2回、強盗にあったと述べ、後任の高橋智氏は、農薬販売はお天気商売で相場が替わるが、ブラジルの周辺諸国にも積極的に事業を拡大したいと述べ、デンソーの斉藤隆昭氏はブラジルに2回赴任、クリチーバ近郊の製造工場以外にもサンパウロ州サンタ・バルバラ市で製造工場が稼働、ブラジルの自動車産業発展に貢献、会議所活動では自動車部会の副部会長を務めて、大いに意見交換を行ったと述べ、後任の福井氏はミュンヘンからブラジルに赴任したことを述べ、パイロットペンの早乙女辰男氏はサンミゲル工場が手狭になったために、2013年からジュンジャイ工場が稼働予定であり、ブラジル産の商品の開発を予定していることを述べた。
最後に木多喜八郎ブラジル日本文化福祉協会会長が、6月26日19時30分より文協で開催される大部総領事送別会の案内を行い、昼食会の出席者に参加を呼び掛けた。
ブラジル日本商工会議所名誉顧問でもあるサンパウロ総領事館の大部一秋総領事
(Fotos: Rubens Ito/CCIJB)
Souza Ramos/Mitsubishi Motors do Brasil/Suzuki Veículos Brasil社のエドアルド・デ・ソウザ・ラモス会長
西島章次在ブラジル日本国大使館公使
歓迎の辞を述べる近藤正樹会頭
左からエドアルド・デ・ソウザ・ラモス会長/西島章次在ブラジル日本国大使館公使/
近藤正樹会頭
左から近藤正樹会頭/大部一秋総領事夫妻/平田藤義事務局長
左から近藤正樹会頭/大部一秋総領事/エドアルド・デ・ソウザ・ラモス会長/大部栄子夫人
関係者一同が記念撮影
130人が参加した6月の懇親昼食会の様子