テーマ:「2016年の回顧と2017年の展望」
副題: 『景気回復に向けて、いま為すべきことは?』
日時: 2017年2月23 日(木)
13時~18時 シンポジューム(途中コーヒーブレイクが入ります)
18時~19時 懇親会(カクテルパーティー)
会 場: ホテル インターコンチネンタル
(Hotel Intercontinental São Paulo , Alameda Santos, 1123 – Tel.: (11) 3179-2600 Sala Di Cavalcanti )
金融部会
貿易部会
機械金属部会
自動車部会
コンサルタント部会
化学品部会
電気電子部会
食品部会
運輸サービス部会
建設不動産部会
繊維部会
全プレゼンテーション
2017 年上期業種別部会長シンポジュームの録音記事掲載
前半司会 大久保敦 企画戦略委員長
そろそろ開始時間になりましたので、これより2017年上期業種別部会長シンポジウムを開催いたします。プログラムの予定とちょっと変わりまして、私、前半の部の司会を担当いたします企画戦略委員長のジェトロの大久保でございます。よろしくお願いいたします。後半は小池総務委員長の方にバトンタッチをしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それではシンポジウム開会にあたりまして、松永会頭よりご挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
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開会挨拶 松永愛一郎 会頭
皆さん、こんにちは。会頭の松永です。本日はお忙しい中、2017年度上期業種別シンポジウムに皆様お越しいただいて大変ありがとうございます。本日は大使館から小林参事官がお越しいただき、この後半戦にはですね、中前総領事もお越しいただけるということになっております。お二人からは最後にご講評をいただきますので、何卒よろしくお願いします。業種別シンポジウムですが、半年に1回開催をしております。カマラの活動の中でも最も重要な活動の一つというふうに位置づけられております。
現在11の分科会がございまして、このそれぞれの部会が本日のために、それぞれの業種であったり、経済分析を行い、また活発な意見交換をして、本日のプレゼン資料を取りまとめております。このプレゼン資料は皆様のみならず、外部の一般の方にも公表することにしております。
長年このブラジルで色々事業をなさった会員の皆様の、非常に貴重な情報も含まれておりますので、今後の皆様の企業活動にぜひともご参考いただければというふうに考えております。
また、本日の副題として、「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということを副題として掲げております。
まさにブラジルの2016年度は激動の年であったと言っても過言ではないと思います。リオデジャネイロ・オリンピックの成功といった明るいニュースはありますが、大半は、大統領の弾劾であったり、底の見えない経済リセッション、あるいは政財界を激震させた大型の汚職の捜査といったような、かなりネガティブなニュース、これが満載でした。
しかしながら、昨年の後半成立したテメル政権は、経済再生を第一義に掲げて様々な手を打ってきました。それも奏功しまして、やっと最近になってですね、インフレの鎮静化、あるいは金利の下方修正、また経済指標についても好転をしているといった明るいニュースも入るようになってきております。
まさにこの潮目の変わり目において、我々会員企業は何をすべきか、そういうことがですね、本日のシンポジウムの中にも色々ヒントが隠されていると思います。ですので、皆様最後までご清聴いただければというふうに思っております。
最後になりますが、本日のシンポジウムに向けて色々資料をまとめたり、色んな援助をしてくださった関係者の皆様に私の方から御礼を申し上げ、私の開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
司会
松永会頭、どうもありがとうございました。それでは早速各部会の発表に移りたいと思います。何かと行き届かぬ所が出てくるかと思いますけれども、タイムキープも含めてですね、皆様のご協力をお願いできればと思います。
先ほど会頭から話がございましたけれども、今回の副題は「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」です。前回はですね、「どん底の時期ならではの戦略は 課題整理と対処方策」ということがテーマでしたが、各部会からですね、中々厳しい景況感、じっと耐え忍ぶ会員企業の皆様の状況が明らかになっております。
今回は、皆様のおそらく最も関心の高いであろうブラジルの景気回復の動きと、その見通しをですね、各部会から可能な限り報告いただきまして、各業界が今でき得る取組み課題ですね、こちらを明らかにしたいと考えております。
さらに、カマラの活動、ブラジル、日本政府への要望も各部会に議論をいただくようにお願いしました。各部会で活発に議論いただきまして、ありがとうございます。
それでは、各部会長、もしくは副部会長から発表をいただきます。皆様も大変関心の高いテーマだと思います。発表者の方がですね、少々熱が入って時間オーバーする可能性がございますので、その際は私の方から少し合図をさせていただきますので、ぜひともご協力をお願いいたします。
それではまず始めに、金融部会の大谷部会長より発表をお願いしたいと思います。大谷様、よろしくお願いいたします。
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金融部会 大谷隆明 部会長
皆さん、こんにちは。今年より金融部会長を務めさせていただきます、三井住友銀行の大谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。恒例によりまして、まずは金融部会より、ブラジル経済動向、銀行業界動向、また保険業界動向に関して発表させていただきます。
なお、資料で使っております市場の各指数は日々変化いたしますので、本日の資料では便宜的に2月17日時点という体裁をとっております。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。それでは、最初のスライドをご覧ください。
ここでは2016年の主なトピックスを4つお示ししております。
まずはペトロブラス社を巡る汚職捜査の進展です。2014年3月に捜査がスタートして以降、2016年末までその捜査は第37ステージまで進展しております。現在、オデブレヒトグループの司法取引による供述内容に注目が集まっております。その内容次第ではテーメル政権に甚大な影響を与える可能性があります。
二つ目はブラジルのソブリン格付についてです。政治的混乱に伴う財政再建の遅れ等に対する懸念から、格付機関はブラジルのソブリン格付を軒並み「投機的水準」に引き下げました。ただし、政治的混乱に一服感がある現在、各格付機関はアウトルックの見直しを検討し始めております。
三つ目は、先ほど会頭からもお話がありましたように、2015年12月から始まりました大統領弾劾、およびテーメル政権成立です。昨年8月末、下院、上院とも圧倒的賛成多数でルセフ大統領の弾劾が成立し、その結果、副大統領であるテーメル氏が正大統領に就任しました。
しかしながら、テーメル氏は国民の負託を受けて誕生した大統領ではなく、また贈収賄等の面で若干後ろ暗い点があることから、国民からの支持率は10%程度と非常に低い状態が続いております。ただし、調整型政治家であるテーメル大統領の高い議会運営能力や、優秀な政権メンバーの存在により、歳出上限法、景気刺激策といった新しい施策を打ち出すことに成功しており、史上センチメントは大幅に改善しております。
四つ目は8月に開催されましたリオデジャネイロ・オリンピックです。南米初の夏季オリンピックは準備遅延、ジカ熱、リオ・デ・ジャネイロ州の財政危機等の諸問題で非常に心配されましたが、予想外に成功裏に終了しました。
次のスライドは2012年以降の主要経済項目推移についてお示ししています。簡単にご説明申し上げます。
まずGDP成長率ですが、2016年はマイナス3.5%という見込みでありまして、2015年に続いて2年連続のマイナス成長になりそうです。一方、今年は、現在推進している金融緩和策や、昨年12月に発表されましたFGTS、勤続年数保証基金の給付資格発生前の引出し許容等の景気刺激策によりまして、0.5%のプラス成長となる見込みです。
貿易収支は2014年に2000年以降初の赤字を記録しましたが、2015年、2016年は国内経済低迷による内需停滞、それに伴う低調な輸入を主要因としまして、貿易黒字を確保しております。なお、今年につきましても、コモディティ価格の復調により、昨年と同程度の黒字を確保する見込みです。
株価につきましては、景気低迷、政治的混乱を背景に、2012年から15年まで4年連続で前年末終値割れを記録しました。このトレンドは2016年の初めまで続きまして、2016年1月には終値37497ポイントまで低下。しかし、当時労働者党と連立政権を組んでいたブラジル民主運動党が連立離脱を決定して以降、ルセフ大統領の弾劾可能性が高まったと好感し、株価は上昇に転じまして、2016年10月には2012年3月以来の64000ポイント台まで回復しました。
11月の米国大統領選におきまして、市場予想に反しましてトランプ氏が勝利したことから、先行き不透明感が高まったとして、2016年終値は60227ポイントとなりました。
次に政策金利とインフレについてです。2012年以降、インフレ圧力は食料価格や人件費の上昇を背景に強まってまいりました。当時、2014年の大統領選を控えていたルセフ大統領は、これ以上のインフレを看過できないとして、電気料金やガソリン価格等の政府が価格決定できる財について市場とは乖離した形で価格を統制しました。これによりまして2014年のインフレ率を、ターゲットレンジをかろうじて下回る水準に抑え込むことができました。
しかしながら、これらの抑制は、電力公社や石油公社の業績に大きくマイナス影響を与えたため、2015年からは政府は介入を控え、その結果、前年対比大きな反動となり、インフレ率は2015年末時点で前年比10.67%と二桁台に突入してしまいました。
これらの一連の過程におきまして、ハイパーインフレのトラウマを持つ政策決定者は金融引き締め策を志向し、政策金利を14.25%まで引き上げました。
2016年に入りまして、食料価格の安定、エネルギー価格の安定により、年後半以降インフレ上昇圧力は次第におさまり、結果として2016年は6.29とインフレターゲットレンジ上限を下回りました。これに合わせ、政策金利も10月以降2回にわたり引き下げられ、13.75%となりました。
2017年につきましても、インフレ圧力は小康状態でありまして、4.5%未満になるとの予測でして、政策金利も9.5%と一桁台になるとの予測です。
それでは個別に見ていきたいと思います。
このスライドは四半期ごとのGDP成長率および鉱工業生産推移をお示ししておりまして、棒グラフがGDP成長率を、折れ線グラフが鉱工業生産をお示ししております。
2016年第3四半期のGDP成長率は前年同期比2.87%と10期連続のマイナス成長ではありますが、そのマイナス幅は縮小しております。
鉱工業生産につきましても、前年同期比4.6%と12期連続のマイナス成長ですが、GDP成長率同様マイナス幅は縮小に転じております。
次のスライドはGDP成長率推移です。2015年、2016年と2年連続のマイナス成長ですが、2017年以降はセンチメントの改善や現政権の政策によりプラス成長となる見込みです。
次のスライドは財政収支についてお示ししております。2013年までは黒字を維持しておりましたが、2014年の景気鈍化以降歳入が伸び悩む一方、歳出がふくらみ、赤字に転じております。テーメル現政権は歳出上限法や年金改革を通じまして、歳出抑制を図り、財政規律の回復に努めております。
次のスライドは対米ドルのレアル相場推移をお示ししています。2002年の大統領選の過程におきまして、当時急進的な左派勢力であった労働者党のルーラ氏が勝利する可能性が高まり、市場は急激なレアル売りを進めました。その結果、一時的に1ドル=4レアルを突破する事態となりました。しかしその後、ルーラ氏は大統領就任後、市場の予想に反し、前任大統領カルドーゾ氏の政策を引き継ぎ、財政規律と所得格差是正のバランスを重視した穏健な姿勢を示したため、次第にレアルは落ち着きを取り戻しました。
以降、中国の成長に伴うコモディティバブルの恩恵を受けて、資源国であるブラジル通貨は買われ続けてきました。リーマンショック付近でいったんは売られましたが、内需刺激策推進により先進国に先駆け成長軌道に戻ったこともあり、2011年7月には対ドルで1.5391レアルの最高値を記録しました。
2011年後半からは徐々にレアル安が進展しました。資源価格の下落による資源国通貨売り、国内景気減速、政治的混乱等により、2015年後半にはそのトレンドは加速しました。2015年9月には4.2レアル台に突入し、2002年以来のレアル安更新となりました。
2015年後半から2016年2月ごろについては一進一退の状態となりましたが、先ほど申し上げました通り、16年2月にブラジル民主運動党が連立を離脱するという話が出てから、ルセフ大統領弾劾の可能性が高まりまして、急速にレアル高が進展しました。
その後、ルセフ大統領停職、テーメル暫定政権の発足、ルセフ大統領弾劾成立、テーメル新政権発足という一連の政治イベントが、ブラジルの先行き不透明感を払しょくしたとして、市場はさらに好感しました。
11月の米国大統領選結果により、一瞬揺り戻しがありましたが、テーメル政権の政策に対する信任は高く、2016年末は3.2552、昨日時点では節目である3.1レアルを割る3.06レアルまでレアル高が進展しております。
続きまして、次のスライドは対円のレアル相場推移をお示ししております。
対円のレアル相場は2016年2月時点に、いったん1レアル=28円までレアル安が進みましたが、ブラジルに対するセンチメント改善および対ドル円相場が円安に進んでいることもありまして、昨日時点では1レアル=36円後半までレアル高が進展しております。ドル・レアル相場は激しく乱高下しておりますが、円・レアル相場は比較的落ち着いておりまして、またレアルの最高値、最安値のタイミングもドルとはずれております。
次のスライドはBOVESPA市場推移をお示ししております。ブラジルに対する投資家センチメントは改善し、昨日時点では68590ポイントまで高くなっております。
次のスライドは、政策金利とインフレ率の推移をお示ししております。政策金利の推移は実線でお示ししており、2015年7月に14.25に引き上げられて以降、2016年10月まで15カ月間にわたり同水準を維持してきました。
一方、点線でお示ししておりますインフレ率が2016年後半にかけて沈静化してきたことを受けまして、政策金利は2016年10月に0.25%、11月にも0.25%引き下げられ、2016年末の政策金利は13.75%になりました。
このインフレ鎮静化を背景に、現在ブラジルの中央銀行はインフレ退治から景気刺激策に舵を切りつつありまして、2017年、今年の1月11日に0.75%、昨日にはさらに0.75%の切り下げを行い、政策金利は現在12.25%と大胆な金融緩和策に転じております。
次のスライドはブラジルの中央銀行が発表しております外国直接投資推移です。景気低迷の局面ながらも、外国直接投資は比較的安定推移をしております。2017年も変わらない水準を維持するものとみられております。
次のスライドは失業率をお示ししております。昨今の景気低迷を受けまして、企業の雇用調整局面は継続しておりまして、昨年12月は12.0%まで上昇しました。この数値は今年第2四半期に12.6から12.8%でピークを迎えるだろうと思います。
さて、次のスライドでは金融部会所属の各銀行に回答いただきました、2017年、18年の予測について、予想最大値と最小値というレンジで表記をいたしました。なお、2月10日を回答期限に集計したものでございますので、その後の材料は織り込まれていないことをご了承ください。
まず、2017年、18年のGDP成長率ですが、それぞれ0.5%~1%、1%~4%とみております。いずれも、Focusという100以上のブラジル金融機関の予測をブラジル中央銀行が取りまとめた企業トレンドと同様に、17年は小幅な成長にとどまり、18年からはいよいよ本格的に経済回復を実感できる水準に転じるものとみております。
インフレ率は、2017年、4.5~4.8%、2018年、4%~5%と、概ねターゲットレンジの内側におさまるものとみております。
為替レートは、2017年、3.1~3.4レアル、2018年は3.2~3.5レアルとみております。
年末の政策金利につきましては、17年につきましては9.5~9.75%とみており、市場の見方同様、17年中に金融緩和はさらに進み、水準は一桁台になると考えております。
続きまして、次のスライドをご覧ください。このスライドは各行の今後の見方についてコメントをサマリーしたものでございます。まず、ブラジル経済はいつ回復に転じるのか?、その契機となるものは何か?についてですが、ブラジル経済の回復は、まあ色々意見がありますが、ベースシナリオとしては、2017年、今年の第3四半期以降になると思います。
テーメル政権の政策に対する市場の信任も高く、政治的混乱も一服したことによりまして、先行き不透明感が払拭されております。また、現在進められている政策金利引き下げや、為替の安定が、今年第3四半期以降には企業投資の増加や個人消費の活性化という形になって現れてくるものと思います。
次に、経済回復を見据えて、今、我々日系企業が行うべきことは何か?についてですが、景気回復とともに攻めの経営を行うべく、中長期ビジネスプランの策定をすべきだと思います。投資・資金計画を練り、優秀な人材を確保すると同時に、リストラ・経費削減を推し進め、攻守両面にわたる綿密かつ地に足の着いた計画を立てることが重要だと思います。
また、ブラジルにおける中長期ビジネスプランを遂行するためには、本社のサポート、コミットメントが不可欠でありまして、そのためにはブラジルに関する様々な情報を本社あてにタイムリーに提供することが重要だと思います。
我々金融部会は、政治経済情勢やマーケット情報の提供等で皆様のお手伝いをさせていただきたいと思います。
最後に第3項目目の、アメリカ新大統領トランプ氏の政策がブラジルに与える影響はあるのか?それはどのようなものなのか?についてですが、現状を踏まえますと、直接的な影響は限定的と思います。ブラジルの米国依存度は低い一方、トランプ氏の政策スコープにはブラジルが入っていないこと。また、世界が心配する米国の保護主義政策も、幸か不幸かブラジルはそもそも閉鎖的な市場であること等を踏まえますと、あまり心配するような影響はないのではないかと思います。
続きまして、2016年の銀行業界についてご説明いたします。
最初に貸出残高推移についてです。2011年以降毎年二桁ペースで増加していた融資残高合計は、2015年には6.7%と一桁の伸び、2016年にいたってはマイナス3.5%となりました。
2016年の貸出状況は、個人向け貸出はかろうじて微増いたしましたが、邦人向け貸出は全部門において減少しました。これは経済の減速、ペトロブラス社汚職問題等を背景とした大手ゼネコン、造船会社の倒産等により、金融機関が保守的な与信運営を行ったことや、景気低迷による企業の資金ニーズの低下等を要因としたものと考えます。
次のスライドは、業界全体における平均貸出利鞘の推移になります。2015年以降上昇トレンド、すなわち金利引き上げが行われております。これは昨今の保守的な貸出姿勢を示すものと考えます。
次のスライドは不良債権比率についてです。これらのグラフは90日超の延滞債権の推移をお示ししております。2015年以降、金融機関の保守的な与信方針や失業によりまして、延滞債権が増加してきました。2016年については、貸出抑制、借入ニーズの低下等により、不良債権は改善傾向にあります。
銀行業界としては、しばらく保守的な運営が続くものと考えられます。ただし、収益性や財務基盤は非常に堅固であるため、引き続き銀行業界は堅調に推移するものと考えております。
最後に、2016年の保険業界についてご説明させていただきます。
このスライドは保険料収入推移をお示ししております。保険監督庁の統計データによりますと、2016年1~11月までの累計の保険料収入の伸び率は前年同期比で0.9%にとどまりました。二桁成長が続いておりました2010年~2014年に比較いたしますと、2015年に続き2016年も、経済が低迷する中、保険マーケットの成長に大きくブレーキがかかっていると言えます。
次のスライドは、保険種目別の保険料収入をお示ししております。全種目とも成長が鈍化している中、自動車保険について新車販売不振が大きく影響し、前年同期比マイナス成長を余儀なくされています。また、生命保険、傷害保険も失業率の増大に伴って伸び悩んでいるのが実情です。
次は保険種目別の損害率のデータをお示ししております。全体としては2016年1~11月累計で損害率は48.2%に達し、前年同期比2ポイント悪化しております。特に運送保険、自動車保険の損害率悪化が顕著となっておりますが、景気低迷による治安悪化を背景に、運送貨物の盗難や、自動車車両や部品の盗難といった事案の増大が少なからず影響しているものと考えられます。
最後に今後の保険市場の成長見通しについてご説明いたします。2016年のブラジル保険市場の成長は、損害保険、生命保険ともに名目1%程度の成長に留まったと見込まれておりまして、インフレ率を加味した実質成長見通しでは大幅なマイナスとなっております。
2017年以降、ブラジル経済の先行きには薄日が差しているようにも見えますが、実体経済回復の足取りは重い中、ブラジルの保険業界をめぐる目先の環境は引き続き厳しいものと予想されております。
しかしながら、中長期的には、社会構造の変革に伴いまして、ブラジルにおける保険商品に対する一般的ニーズは間違いなく高まると思われておりますので、かかる将来的な需要の発掘に向けて現時点から準備を進めていくことが肝要かと思います。
以上で金融部会の発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
司会
大谷部会長どうもありがとうございました。ちょっと関心の高い分野でもございますので、ただ今の発表につきましてご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。いかがでしょうか。はい、どうぞ。
質問者
為替について質問させていただきたいと思います。もう一つは先ほどのスライドにあった外国の直接投資の点で。為替についてはですね、今レアルは対円ベースで非常に、円に対してだんだんじり高の状態になっていると思います。
それについて、色々客観的に言われているのは、先ほど仰られたようなテーメルの歳出制限法とか、年金改革とか、そういうものが功を奏しているような話を言われているんですけども、それは非常に期待度をマーケットが持っているということなんだろうと思いますけど、ではこのじり高がですね、いつまで続くのか、本質的要因はどういうふうに考えられるのかとか、あと先ほどのグラフを拝見させていただきますと、じり高の後急激に下がるという、こういう傾向がブラジルの通貨に対してはあるように思います。
そこら辺を勘案して、実際今後どうなるのかと。一人事務所で、円ベースでお金をいただいているので、3月決算時期、またレアルが上がると実質値段が下がってしまうことがあるので、その点でちょっと関心を持っていることです。
もう一つは外国直接投資の関係ですけど、先ほどのスライドでまあ安定的なようなお話をされたと思います。それほど変わっていないと。最後の方のところですね。でも日本企業を見るに、どんどん帰っている駐在員、私も顔の見える駐在員もどんどん帰って行ったり、少なくとも日本は投資をやっていないと。
代わりにだからどこかの国がやっているという形になると思っているんですが、中国とかありますけど、そこのような代わりにやっているところはどういう視点でどういう目的でやっているのかということを推測できるようでしたら、個人的で結構ですので、ご教示いただきたいと思います。2点で、以上お願いいたします。
大谷部会長
ご質問ありがとうございます。まず為替の動きですが、ブラジルの為替は非常に思惑で動くんですね。だいたい市場と、スポット取引と先物取引とあるんですけども、通常でしたら、普通のマーケットでしたら大体6対4のところがですね、このブラジルの通貨に関しては1対10の割合でですね、先物のボリュームが非常に多いんです。
ブラジルの通貨といいますと、皆さん為替する時に中銀に登録するということで、regulated carrencyだと思われがちですが、実は先物につきましては、シカゴのマーカンタイル市場を通じましてBM&Fとつながっておりまして、そこから先の取引ができるんですね。だいたいボリュームが1対10ぐらいですので、先物の参加者というと大体、昨年のデータで46%がオフショアの参加者というふうになっています。これがですね、思惑でばーっと投機したりするもんですから、はっきり言ってですね、良くわかりません、動きは。
ブラジル、まあいま経済良くなる良くなるという期待感はありますけど、実体経済はよくなっていないですよね。そんな中でなんで為替はこんなに強くなるんだろう、というのはですね、外からの投資家が、テーメル政権がいろんな政策に取り組んでいると、そういうのを基に、これはブラジルよくなるんじゃないかという思惑でダーッと買っているもんですから、これが大きな動きを呼んでいるんですね。
これは本当にブラジル独特の特徴でございまして、大体6対4のところが1対10で先物が10倍ぐらいあるというところですので、はっきり言ってですね、ブラジルの為替を予測するのは非常に難しいです。こんなこと言ったら身もふたもありませんけども、大体各銀行さん色んな、ブラジルの銀行含めまして、為替セミナーやっていますけど、大体為替の予想というのは外れています。これは難しいんです。
で、皆さん、予想を聞きますと、オフィシャルなコメントが大体返ってきます。大体現状より0.2~0.3ぐらい安くなるという予想ですね。これは単に金利差のアービトラージで、セオリーに基づいてコメントしているだけですので、実際のところはよくわかりません。その時々の状況でころころ変わるというのが本当だと思います。ですから、ぜひ、皆さんにはですね、お取引先の銀行のディーラーに声をかけていただいてですね、本当に彼らが皮膚感覚で感じている相場を聞いていただいたらいいのではないかと思います。大体、正面切って銀行に聞きますと、銀行はオフィシャルのコメントを返すというのが普通でございます。
それから、外国直接投資ですけども、まあ確かに日本からの大きな投資というのは減っていますけども、実際10億とか20億ぐらいのですね、小さな投資というのは、小さなM&Aというのはたくさんありまして、件数的には決して減っていないんじゃないかという気がしております。それと、金額的に大きいのはやはり、まあ統計で中々出てこないんですけども、中国が大きいのではないかと思います。
あとは、やはりブラジルというのは、まあアジアが日本の裏庭と言ったらアジアに失礼かもしれませんが、第一投資目標地域としますと、やはりヨーロッパにとっては裏庭といいますか、最初に投資するべきところというのはやはりブラジルなんじゃないかなと思っておりまして、そういった意味で、今のような状況でも、ブラジルに対する投資熱といいますか、直接投資額は衰えていないのではないかと思います。
司会
どうもありがとうございました。大変貴重なコメントをいただきましてありがとうございます。ちょっと時間がオーバーしておりますので、これで金融部会の発表から今度は貿易部会の発表に移りたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、貿易部会の今井部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
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貿易部会 今井重利 部会長
皆さん、こんにちは。ただ今ご紹介にあがりました、貿易部会、伊藤忠の今井でございます。本日はよろしくお願いします。私は昨年に続きまして、今年も貿易部会を担当させていただきます。今日の私の説明は、貿易部会ということなので、貿易収支を中心に説明をさせていただきます。よろしくお願いします。それでは次のスライドをお願いします。
このグラフは、縦棒が、左側、青が半期ごとの輸出。右の縦棒の緑が半期ごとの輸入。目盛は左側です。右側が、目盛が貿易収支で、これは折れ線グラフが表しております。下の方にですね、横に赤い棒がありますけど、これが貿易収支ゼロのところでございます。
このグラフで申し上げたいことは3点ございまして、一つは右側のこの貿易収支のグラフの折れ線なんですけども、見ていただくと、2000年からずっと黒字でございまして、これが段々黒字幅が下がってくるんですけども、14年のここまでは黒字で、14年にこれが赤字になりまして、39億ドルの通年で赤字になりました。
その後ですね、また黒字がどんどんいきまして、15年が年間で197億ドルの黒字、16年が477億ドルの黒字と。ということで、まあ残念ですけど、ブラジルの内需の低迷に比例しまして貿易収支の黒字幅がどんどん広がっているというのが1点目でございます。
二つ目はこの棒グラフの絶対値なんですが、例えばこの一番高い所、これが2011年の下期でございますが、輸出が1380億ドル前後ございました。輸入が1200億ドル前後でした。これが段々下がっていきまして、16年の下半期は輸出が950億ドル、輸入が710億ドルということで、このピークの11年の下期から5年間で約4割ダウンになりました。全体で4割貿易の総量が減りましたというのが二つ目のポイントでございます。
三つ目はもう少し、過去2年ぐらいの輸出と輸入を見ますと、輸出はですね、大体900億ドルぐらいで、半期ごとに見ても意外と横ばいになっています。ところが、この輸入の方を見ると、やはり過去2年、半期ごとにやはり基本的には下がっていっていますと。ということで、2年前は半期900億ドル台だったのが、先ほど申しましたけど、直近の16年下期は710億ドルということで、要はですね、輸出は横ばい、輸入は下がっているということで、やはりこれは内需の深刻さが窺われるなという貿易結果になっております。
次のスライドから輸出、輸入に分けて少しご説明をさせていただきます。
これは輸出の主要商品別ということでございまして、まず一番下の合計のところからいきますと、これは金額と数量とございますが、数量はプラスの1.2%で増えていますと。ただ金額ベースにしますとマイナス3.1%で減っているというのが現状でございます。
少しアイテムごとに見てみますと、一次産品と半製品と工業製品と三つに分けているんですけども、例えば一次産品はですね、基本的には大豆以外は数量が伸びている。大豆はですね、統計的には北米産の大豆に輸出は売り負けているんじゃないかというような現象になっています。ただ、金額的には商品相場の下げということで金額は下がっているということでございます。
半製品の方はですね、まあ若干減っているアイテムもございますけど、基本的には数量増ということで頑張っているということでございます。ただ、価格はですね、かなりアイテムによって違っているなと思っていまして。例えば、粗糖は価格もそんなに落ちていない、若干上がっているぐらい。ただ、木材・パルプはかなり価格が下がっているという状況です。逆に鉄鋼製品は、数量がマイナスでもですね、価格がかなり上がっていることでプラスになっているというような状況でございます。
工業製品につきましては、基本的には輸出を頑張っているということで、基本的には数量も金額も、まあ一部マイナスもございますけど、大体プラスに推移しているという状況でございます。次のスライドをお願いします。
今度は国別でございます。これはですね、まず左側の表でございまして、1番中国、2番米国ということで、これはあまり変わっていないと。ただ、輸出総額で見ますと、これは金額ベースでマイナス3.1%でございます。
ちなみに、中国はですね、まあ先ほどの大豆とか原油のブラジルからの輸出はだいぶ減ったんですけども、鉄鉱石の輸出がだいぶ増えたということで、まあ中国は若干減っていると。2番目のアメリカ、これも若干減っているんですけども、原油とか鉄鋼製品はだいぶ輸出が減っていると。ただ一方ですね、航空機については輸出が増えているということで、トータルで若干減になっております。
真ん中に緑の線で日本がありますけども、日本は順番で行くと6位なんですけども、比率でいきますとマイナス5%ということで。輸出はですね、全体がマイナス3.1%に比べてマイナス5%、全体よりちょっと下がっているということです。
あと右側、これは地域別を作ってみたんですけども、地域別は結構、ブラジルの輸出というのは、全方位外交じゃないですけど、かなりバランスが取れているなというふうに思っておりまして。例えば中国、日本、アジア全体ですと33%、輸出比率がございまして、米州、米国、メルコスール、あとそれ以外の南米、これも全部足すと32%ということで、まあ大体3分の1。あとはヨーロッパ、中近東、それ以外も35%。大体3分の1ずつで、まんべんなく地域ごとには輸出しているなという構図でございます。次お願いします。
次は輸入でございます。輸入はですね、全体でいきますと、右の下、数量についてもマイナス5.5%。金額ベースですとマイナス19.8ということで、20%減。ということで、輸入はかなり下がっているという状況でございます。
この中で、右のパーセンテージでございますが、一つやはり面白いと思いましたのは、塩化カリウム。これは農業の肥料の原料でございますけど、これはやはりブラジルは農業生産が広がっておりますので、増えていると。で、例えば下の方のですね、農業に比例して殺虫剤とか除草剤も伸びているということで、やはり農業関係は輸入は比較的伸びているなと。
あと燃料、これはディーゼルとか重油ですけど、これも輸入が増えているという状況です。ただ、やはりですね、一番ひどいのは乗用車。工業製品は全般にかなり下がっているという構図でございます。次お願いします。
今度は国別でございます。左の表で、1番アメリカ、2番中国になったんですが、これはですね、15年と16年は逆転しました。中国が1番だったのが2番に落ちております。金額を見ますと中国の落ち込み幅が広いんですけど、中国はやはり工業製品一般ですね、ブラジルの輸入がかなり落ちているということで下げていると。1番に米国がなりまして、これは金額ベースは若干下がっているんですけども、例えば工業製品一般はやはり輸入が落ちているんですが、例えば米国からの輸入ということでプラスになったのが先ほどの燃料油ですとか、塩化カリウム、航空機の部品等がプラスでして、トータルで米国は1番になりましたということです。
次に、緑のが日本でございますが、日本はマイナス26.9%ということで、全体よりもやはりさらに落ちているということで、順位も15年は6番だったんですが、16年は8番目に下がりました。順位も下げているという状況です。
右側の円グラフですね、これも地域別で輸入を作ってみたんですけど、やはり輸入の方もですね、先ほど申し上げたように、アジアで約3分の1、米州で約3分の1、ヨーロッパ・その他で3分の1ということで、輸出同様輸入もですね、まんべんなく色んな地域から3分の1ぐらいずつ輸入しているという構図でございます。次お願いします。
今度は日本でございます。左が日本への輸出なんですが、まあ鉄鉱石が1番なんですけど、鉄鉱石も含めて基本的には、全体でマイナス5%なんですが、例えば鉄鉱石は金額もマイナス11%ですが、日本向けの鉄鉱石は例えば数量的にも15年は2900万トン輸出したのが16年は2500万トンということで、まあナンバーワンの輸出産品の日本向け鉄鉱石もやはり減少しているという状況です。
一つだけ気を吐いているのが航空機なんですけど、航空機は150%アップで、これはですね、JALグループさんがブラジルのEmbraerさんの飛行機を採用したということで、航空機だけはどーんと伸びている状況です。
輸入につきましては、これは全体的に非常に落ちている。特に乗用車などがかなり落ちているという中で、先ほどの航空機の裏返しで、航空機関係の部品、これはプラスになっているということで、それ以外は総じて全部マイナスというのが対日貿易輸出輸入の構図でございます。次お願いします。
今度はブラジルへの対内直接投資ということで、左側は年ごとの金額なんですけども、例えば2011年はこのグラフでは一番大きくて、695億ドルでした。それ以降はですね、まあ年によってばらつきあるんですけど、基本的には500億ドル台で、比較的やはり横ばいで安定しているなというのが見て取れます。例えば15年は579億ドルで、16年は537億ドルと、そんな感じでございます。
右側に国別を書きました。ただこれはですね、中国が直接投資ではなくて、どうもSPCを通しているみたいで、推測ですとオランダとか、ルクセンブルグとか、バージンアイランドとか、この辺は多分実質的には中国から投資が来ているんじゃないかというふうに言われております。全体でですね、例えば16年は537億ドルでしたけど、中国からは多分100億ドル以上の投資が来ているんじゃないかというふうに言われております。
この赤の所は日本なんですけど、日本はですね、全体でほぼ横ばいの時に日本はマイナス50%強ということで、半減しているということで、日本の地盤沈下、直接投資離れというのがかなり16年は顕著に表れてきた年だなというのがデータ上出ております。次お願いします。
次は、直接投資の業種別を作ってみました。これを見ますと、例えばですね、一次産品につきましては、金属・鉱物採掘業、これはマイニングですけど、これはプラスになっていまして、16年は25億ドルなんですが、これはたまたま、このうち15億ドルはアングロアメリカンがニオブとリンの権益を中国企業に売りましたと。あと、バーレがですね、銅と金の権益をカナダ企業に10億ドルで売りましたということで、この二つで大体25億ドルという、マイニングは結構顕著な状況になっています。
次の工業一般なんですが、全体でマイナス4%なんですが、まあ業種によって若干まだらがありますけど、基本的には対内投資は工業は頑張っているというふうに見て取れます。一番下のサービス業。これ、全体ではマイナス13%なんですが、これは業種によってだいぶばらつきがあるなということで、倉庫業、運送業、金融業関係はかなりのプラス。一方インフラ系の通信、電気、ガス、この辺がかなりマイナスというような状況になっていまして、トータルですとまあ7%強のマイナスというのが業種別でございます。次お願いします。
これはですね、冒頭のまとめの総括に今年の1月のところだけ入れました。1月の貿易黒字は27億ドルということで、元々ですね、16年は500億ドル以上黒字と言われたのが477億になりましたと。17年も500億ドル以上の黒字になると言われていますけど、とりあえず1月は27億ドルの黒字に留まっていると。ただ、やっぱり貿易の絶対値を見ますと、1月単月で輸出が149億ドル、輸入が122億ドルということで、例えばこれを6倍するとですね、16年の下期と同じような貿易量になりますので、基本的には1月も伸びていないというのが結果でございます。次のページお願いします。
これが最後のスライドです。まず、上の枠は今申し上げたところのまとめでございまして、16年度の貿易収支は477億ドルでかなり黒字なんですけど、輸入、輸出とも減少傾向。特に輸入が減少していますと。ということと、対内投資は537億ドルということで、そんなに落ちていない。という中で、やはり対日は輸出、輸入ともにマイナス5%、マイナス27%ということで、平均よりも下がっている。特に対内投資についてはマイナス51%ということで、全体がマイナス7%なので、日本の地盤沈下がかなり顕著だなというのが統計から見てとれます。
そういう中で、先日の貿易部会の中でこの次の「いま、為すべきことは?」ということでご相談、アンケート、ご意見いただいたんですけど、そういう中でやはりございましたのは、やはり今の貿易統計を見ても日本との貿易の地盤沈下が非常に顕著に現れた年だなということで、やはり我々日本企業として危機感を持たなきゃいけないというのが現状認識なのかなというところから始まりまして、部会の中で、そういう中で、他との連携の強化、例えばオールジャパンもそうですし、あとアメリカとかドイツとか他の商工会とかそういう団体と連携して動いていくとか、あとはやはり実体経済まだ良くないので、今年は我慢の年、来るべきブラジルの将来の成長に準備をする年ではないかと。
ということとか、やはりこういう中では、ブラジルをもっと売り込まなきゃいけない、宣伝をもっとうまくやらなきゃいけないというご意見とかですね、あとは政府に対して規制緩和、投資促進の制度改正というのを働き掛けていこうと。それもですね、大きな網でかけるというよりも、アイテムを決めて働き掛けていった方が効果的じゃないかと。というような意見が出まして、その辺をまとめたのが下の表でございまして、いま為すべきことは、ということで、上の三つは定性の総論でございまして、今まで申し上げているように、輸出入ともに貿易の増大が必要だと。そのためにはやはり対内投資も必要だと。やはり対内投資をして、消費の活性化、内需拡大を図っていくというのが定性面かなと。
そういう中で、次の真ん中の二つですけど、私どもやるべきこととしては、日本・ブラジル双方への広報、宣伝活動を活性化する。やはりブラジルの高い将来をアピールしていくと。例えば今年は 5月にジャパン・ハウスの開所式もありますし、8月にクリチバで日伯経済合同委員会もありますので、そういう機会もとらまえてですね、やはりブラジルを、対ブラジル、対日本両方にですね、うまく宣伝していく、働き掛けていくというのが必要なのかなと。ということと、もう一つ、先ほど申し上げたように他の国の商工会との、もしくは他の部会との交流、連携を深めていく。貿易・投資促進の課題を当局へ提言していくということなのかなと思います。
最後の二つはですね、今年、欧米、まあトランプ政権から始まってですね、ヨーロッパ側もフランスの大統領選挙とかドイツの総選挙等々ありますし、中国は景気いま変調していますし、10月、11月には5年ぶりの第19回中国共産党大会もありますし、まあ政治の動向が貿易動向を左右する可能性もあるのかなということで注意しなきゃいけないということと、一番最後は、まあ最近日本人、日系企業をめぐって色んな治安、安全等々ありますので、この辺はやはり、仕事をする、貿易をする上でも細心の注意を払ってやっていくということなのかなというふうに思っております。
これで私のまとめでございます。ご清聴どうもありがとうございました。
司会
今井部会長どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。はい。どうもありがとうございました。それでは引き続きまして機械金属部会の発表に移ります。池辺部会長より発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
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機械金属部会 池辺和博 部会長
皆さんこんにちは。機械金属部会の池辺でございます。よろしくお願いいたします。2016年の回顧と2017年の展望というテーマで機械金属部会の発表をさせていただきます。私の発表の内容ですけれども、まず機械金属部会に関連するマクロ的な指標を三つほど紹介させていただき、その後、まあ多種多様の業種や分野の企業が会員となっております機械金属部会ですので、今回のこのシンポジウムに際してレポートを提出していただいた企業をこのように6つの分類した形で各分野の状況を報告させていただき、最後に本日の副題となっております「景気回復に向けて、いま為すべきことは」ということに触れさせていただきたいと思います。
まず機械金属部会に関連するマクロ指標ということですけれども、これは先ほど金融部会の発表の中にもございましたけれども、ブラジルの鉱工業生産の対前年比比較ということで、先ほどの金融部会は四半期でのプロットでしたけれども、これは月単位でのプロットになっております。まあ我々の機械、製造現場等で使用されることが多いんですけれども、その生産においてはですね、2014年の4月から34カ月連続での前年比のマイナスというふうになっております。生産活動が長期間停滞しているということで、我々の顧客さんであります製造業が不振になっているというのが改めて思い知らされるところでございます。
ただ、唯一の光明といいますか、2016年の2月以降ですね、このマイナス幅が減少になってきており、先月、2017年の1月はマイナス0.1%とほぼ前年並みまで戻っているということで、今月以降ですね、プラスに転じていくことを期待しております。
続きまして、同じく経済生産活動の指標となります段ボールの生産なんですけれども、ご承知の通り、経済生産活動が活発になりましたら製品等の梱包・輸送に使用されます段ボールの需要が増加するということで、これを見ておりますけども、これは四半期単位での前年との比較でございます。
2013年の第4四半期以降、やはりこちらの方もですね、マイナスが続いております。このグラフには2016年の第2四半期までしかプロットしておりませんけれども、2016年の第3四半期、第4四半期もやはりマイナスで、2016年年間を通してマイナス2.3%であったということになっております。ただ、今年の1月ですね、1月単月ですけれども、5.5%のプラスということで、先ほどの鉱工業生産同様ですね、回復の兆しが見えかけているのかなという期待をしております。
続きまして、これは建設業界の実績でございます。我々の機械金属部会にはですね、建設機械や空調設備関連等の会社もございまして、建設市場の動向というのは非常に気になるところでございます。
これも四半期単位の前年比較ですけれども、やはり2014年の第2四半期以降ですね、このようにマイナスが続いております。しかも、政府の緊縮財政策、企業の設備投資の抑制、さらにはラバ・ジャットによるゼネコンの体力の低下等々でですね、ここに関しましてはまだまだ回復の糸口が見えないというのが実態かと思います。
以上のようなマクロ指標を受けてですね、我々機械金属部会のこの6つの業種別について報告させていただきます。
まず鉄鋼関連ですけれども、まあ主要の需要先というのが、やはり先程の建設業界ですとか、あるいは自動車業界、不調に陥っていますがやはり自動車業界ということでですね、鉄鋼の生産の方も、このグラフにありますが、過去5年連続で前年割れということになっておりまして、2016年で見ますと生産、それから国内販売ともにマイナスの9%というふうになっておりまして、鉄鋼各社もですね、高炉14基中の3基が休止されておりまして、稼働率も55~60%程度ということになっております。機械金属部会の鉄鋼関連の企業も非常に厳しい1年を強いられたということでございます。
輸出に関しましても、昨年度、前半はですね、レアル安もあって17%実は伸びたんですけれども、後半に関しましては、レアルの反発、それから中国の過剰生産による世界的な供給過剰ということもございまして、一転してマイナスに転じ、通年でも2%のマイナスというふうになってしまいました。
2017年の展望ですけれども、国内経済は緩やかな回復に向かうというふうに見られておりますし、まあ自動車の生産もですね、今年は若干回復するというふうに見られておりますので、鉄鋼の生産もですね、後半を中心に微増を予想しております。
ただ輸出の方は、米国に続いて欧州でもブラジルの鋼板に対するアンチダンピングの調査が始まったということで、先程出ましたけど、それに加えてレアルの高値維持が続いている関係もありまして、輸出に関しては非常に厳しい年であるかと思われております。
続きまして、電力と社会インフラにおける都市交通についてご説明させていただきます。
電力に関しましては、やはり生産活動等の経済活動が停滞している関係で、電力の消費は2015年、2016年の2年連続で前年比を割っております。工業分野の電力消費に関しましても、過去32カ月間減少が続いておりました。ただ、2016年の11月と12月の2カ月連続で増加に転じておりまして、2017年は工業電力の需要が増大するような予想が出ております。
ただ、消費が減少する一方で、昨年度も新規の水力発電や風力発電等の稼働が開始された関係でですね、発電容量は6.7%増加しておりまして、電力の需給ギャップは拡大しております。従いまして、昨年度、2016年度の電力の発電オークションの新設案件もですね、395メガワットということで、過去10年の平均に対して約10分の1程度であったというふうになっております。2017年度に関しましても、新規の発電設備案件はやはり期待薄で、しかも電力各社の設備投資もあまり期待できないということで、電力関連のビジネスもやはり苦戦を強いられていくものと思われます。
都市交通における地下鉄関連ですけれども、御承知かと思いますけれども、サンパウロ州だけですでに落札された6件のプロジェクトがですね、工事の延期やサスペンド状態となっております。サンパウロ州政府の投資も、2016年度、昨年は前年比で約12%の減少と、2014年度に比べると44.5、約半分になっているということでございます。
この最大の削減分野が、地下鉄・近郊鉄道を含めた交通輸送分野ということで、当初の予算に対して25%の削減というふうになっております。従いまして、地下鉄や近郊鉄道のほとんどの路線の拡張工事も一時中止や先送りの状態になっておりまして、我が機械金属部会の会員企業の中でももろにこの影響を受けている会社もございます。
2017年度に関しましては、サンパウロ州政府はですね、民営化による工事の再開等を計画しておりまして、年内にもコンセッションの入札が行われる予定にはなっておりますけれども、いずれにしましても、工事の再開等具体的な動きになるのは2018年以降かなというふうに考えております。
続きまして、建設機械と業務用空調の関連でして、どちらも建設に密接に関係している業界でございます。建機に関しましては、ラバ・ジャットの関係で大手のゼネコンの公共事業への参加の中止や認可取り消し等がございまして、先程も言いましたように、建設業は3年近く不振が続いております。加えて、2015年度ですけれども、年末にICMSの減免措置が廃止されるという憶測が流れまして、年末に駆け込み需要が発生しました。
その関係で今年、16年の初めはその反動で激減してしまったと。ということで、例えば油圧ショベルで見てみますと、2014年に対して2015年が34%落ちたのに対して、さらに2016年も30%のダウンということで、2年で約半減というような結果になっております。
小型建機に関しましても、状況は同じといいますか、さらに非常に厳しくて、2016年で前年比47%。その前年であります2015年が2014年比の42%ダウンということだったものですから、 2016年は2014年に対して約3分の1の市場にまで減ってしまったというのがこの小型建機の事情でございまして、農業や製造業、墓地等の非建設用途の需要を開拓することでカバーしているということでございます。
業務用空調ですけれども、こちらもやはりビルや工場等の建設減によって、需要は2016年で言いますと前年比マイナス12%というふうになっております。ただまあ、空調の場合はですね、既存ビル等の交換や増設需要もあるせいか、まあ建機に比べたらですね、落ち込みはそれほど大きくはないと言うふうになっております。
2017年の展望ですけれども、やはり建設業界の回復は2018年以降になるかと予測されますので、建機に関しましても、あるいは業務用空調に関しましても、2017年は横ばいか、あるいはせいぜい後半に微増かというような予想をしております。
続きまして、切削工具とベアリングですけれども、これはどちらも主要顧客先が自動車業界ということで、このあと自動車部会の方から詳しい市場の説明があるかと思いますけれども、このグラフにありますように自動車の生産は4年連続で減少しておりまして、昨年は対前年比で11%のダウンと。ピークでありました2013年に比べると42%もダウンしているということで、環境は非常に厳しいものとなっております。
ということで、切削工具に関しましては航空機や医療機器等の自動車業界以外の需要を掘り起こすことによってカバーし、あるいはベアリングに関しましては、新車の買い替えで消費者が現有車を修理するという需要がございます。このアフターマーケットの取り込みを強化することによってカバーしているというような状況でございます。2017年ですけれども、自動車の生産は若干回復するというふうにみられておりますけれども、特にベアリングに関しましては自動車のモデルチェンジとの関連もあってですね、本格回復はまあ数年先になるという見方もあるようです。
続きましてトラクターですけれども、こちらは農業は比較的、先程の話にもありましたけど、比較的堅調で、一時ストップされていました政府の農業向け低利融資の方も再開されたということで、トラクターの販売台数は16年度前年比マイナス4%と、まあマイナスなんですけども、大幅前年割れの他の分野に比べたらですね、比較的下げ止まりになってきたと言っていいのかなと思います。
2017年度も農作物の収量増が予想されている関係で、トラクターの需要は15~20%の増加が予想されておりまして、まあ我が業界にとってはですね、唯一と言っていい見通しの明るい分野かなと思っております。
最後になりますけれども、産業機械の中の非汎用圧縮機とポンプについて。非汎用圧縮機につきましては、主要用途が資源開発あるいは石油関連ということで、ペトロブラスの投資抑制、資源価格の低位安定等でですね、市場はまあ壊滅的と言っていいかなというふうになっておりまして。
この表はガスコンプレッサーの輸入実績の2年間の比較ですけれども、2016年合計でですね、前年比70%以上のダウンということで、特に大型のターボコンプレッサーに関しましては、まあほぼゼロに近い状態まで落ち込んでいるということです。このクラスのコンプレッサーはほとんどが輸入になっておりますので、この輸入実績イコール市場規模と見ていいかなと思っております。
2017年ですけれども、ペトロブラスの投資回復はまだ先になるかと思われます。ただ原油価格の回復と、プレサル鉱区におけるペトロブラスの30%以上の権益優先権の撤廃によって海外資本の投資が増えることを期待しております。
ポンプについても、大型のカスタムポンプに関しましてはやはりコンプレッサーと同様で、主要用途の製鉄や石油化学が不振なことがありまして、需要は大幅な減となりました。ただ一方で、農業向けが主体の標準ポンプに関しましては、市場は前年比の5%増であったということでございます。で、2017年度ですけれども、上期はほぼこの状況が続き、下期に穏やかな回復基調になるのではないかと予想しております。
それでは最後になりますけれども、本日の副題になっております「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということを、会員企業よりのコメントを整理する形で紹介させていただきます。
まず、最初に書きましたコスト削減ですけども、これはもちろん景気回復期に限らず常に必要なことなんですけれども、顧客の投資額が限定されている折ですから、他社よりも割安な価格を提供することによる競争優位とともにですね、顧客の投資額低減を図るということでございます。
それから、品質の向上。これはもちろん、コスト同様にですね、品質面での競争力を強化するということなんですけれども、まあ閑散期といいますか、この今時間の余裕のある時にですね、日本の親会社、あるいは本社の支援を受けてですね、こちらの現地の技術力をアップしていくということでございます。
それから、ソリューション提案の強化ということで、単品売りになりますと価格優先の競争になりますので、自社製品を通じてお客様の課題や要望を解決するソリューション型のビジネスに転換していくということでございます。
それから、客先情報の収集というのは、まあ過去1、2年前にありました引き合いや案件がこの経済状況で中止や延期になった部分がございますので、その案件の再度掘り起こしということで顧客様の訪問。その訪問を通じてお客様の情報を把握することによって、景気回復の後にお客様のご要求に迅速に対応できる体制も整えておくということでございます。
最後に、やはりこの、時間的な余裕があるといいますか、この時期にですね、新規の業界や顧客、それから未開拓であった地域への開拓も進めていきたいというような意見が出ておりました。
以上が私の発表でございます。ご清聴ありがとうございました。
司会
ありがとうございました。ただ今の発表につきまして、ご質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。はい。それでは、機械金属部会の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
引き続きまして、自動車部会の発表に移りたいと思います。溝口部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
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自動車部会 溝口イサオ 部会長
はい。皆様、あらためまして、こんにちは。それでは私から、自動車部会の報告をさせていただきます。今回は、2016年の振り返りと2017年の展望について、四輪業界、二輪業界の順に説明させていただきます。
まず始めに、四輪業界の2016年振り返りです。2016年の自動車市場は失業率の上昇などによる景況感悪化、購買意欲低下の影響を受け、販売は205万台、前年比80%となり、4年連続での減となりました。輸入車比率についても、レアル安の影響を受け、13.2%と5年連続で低下しています。
続きまして、こちらは2015年と16年の月別の販売台数です。昨年1月以降、市場環境は好転しておらず、左側の2015年に比べ販売がさらに落ち込んでいることがお分かりいただけると思います。ただし、前年比で3割前後減少していた2015年と比較すると、徐々に下げ幅は縮小傾向にあり、底打ち感は出てきたと見ています。
また、在庫月数は各社生産調整が一巡。最近では1カ月台前半で推移しており、ほぼ適正と言ってよい在庫水準となってきました。
こちらは生産と輸出の推移です。市場の状況を反映し、2016年の総生産台数は215.7万台、前年比88.8%となりました。一方で、レアル安の影響および国内市場縮小により、各社が輸出向け生産にシフトしているため、輸出は前年比124.7%と増加しました。
こちらは輸出台数をカテゴリー別、輸出相手国別に見たものです。カテゴリー別では乗用車とバスが約3割増加いたしました。輸出相手国別では、販売が上向きとなっているアルゼンチン向け輸出が増加しました。また、金額は小さいもののアメリカ向けも上位に入ってきており、こちらは昨年から欧州ブランドの一つがアメリカ向けの輸出を開始したためと聞いております。
次に中古車・新車別の販売台数です。新車については先ほど申し上げた通りですが、中古車市場はその規模を維持しており、2016年は前年とほぼ同等の約1000万台となりました。
続きまして、こちらはブランド別の販売台数とシェアの実績です。左は2015年から16年のシェア構成の変化を示しておりますが、Fiat、GM、ワーゲン、Fordという、いわゆるBIG4が約5%シェアを落としている一方、日系ブランドは1.5%シェアを伸ばしております。右はブランド別の変化になりますが、厳しい市場環境下でも、日系ブランドがそのブランドや品質などを背景に健闘していることがお分かりいただけるかと思います。
こちらは昨年、一昨年の新車販売店数の変化とその増減の内訳を示したものです。BIG4が200店近くの販売店を閉鎖する一方、日系ブランド、韓国ブランドは逆に販売網を拡大。市場全体としては、前年比で販売店数が増加しています。
続きまして、2016年のトピックとして、11月に開催されましたサンパウロモーターショーを紹介させていただきます。厳しい市場環境の中開催されましたが、全ての主要ブランドが参加し、来場者は70万人を超え盛況となりました。日系ブランドについても、トヨタさんは、エティオスの輸出拡大、新車・中古の包括プログラムなどによる事業強化、ニッサンさんは、キックスのブラジル生産と新型フロンティアによるシェア拡大、弊社については、ブラジル開発モデルによる競争力強化、をアナウンスし、各社がブラジル市場へのコミットメントを示しました。
また、新車発表に加え、先進環境安全技術やコンセプトカーを日系ブランドが積極的に展示し、来場者・メディアでの注目を集めました。
続いて、今回のサンパウロモーターショーのトレンドとしてSUV市場の活況に触れさせていただきます。左上のグラフにあります通り、全体市場が落ち込む中、SUV市場は前年を上回り、成長を続けています。また右上のグラフを見ていただきますと、SUVの中でもコンパクトSUVが拡大していることがお分かりいただけるかと思います。このような中、モーターショーでも各社から多くのコンパクトSUVが発表・展示され、このセグメントは今後も活況となる見通しです。
次に2017年の展望に移ります。
まずは経済指標の予測です。中央銀行の2017年予測ではGDP成長率は2年ぶりにプラスとなり、インフレと金利はさらに低く抑えられる見通しです。
こちらは、それらの状況を踏まえた2017年の自動車業界予測です。2016年の総市場は205万台でしたが、ANFAVEAは2017年販売台数予測を、総市場で213万台、前年比4%増と、市場が5年ぶりに増加に転じると予想しています。
一方、自動車部会としては、先月の販売実績が依然前年割れとなっており、上向きとなる時期がまだ明確には見通せないことから、ANFAVEAよりも若干低めではありますが、総市場で前年比2.4%増の約210万台と予想しております。
なお輸出は、レアル安により増加した昨年をさらに上回ると予想。生産台数は、国内市場の回復、および輸出台数増により、前年比12%増となる予想です。
続きまして、長期展望に移ります。まずは市場の長期予想をする上で重要となる、各金融機関の経済指標予測を見ていきます。
GDP成長率は、各行半年前の予想より若干下方修正する一方、インフレ率と金利は直近のトレンドを受け、前回予想より低く抑えられています。いずれにしましても、2016年を底として、2017年から経済が緩やかに回復する予想となっております。
このような予測や足下の販売状況を総合的に見た場合、ブラジル自動車市場は底打ち状態にあり、回復の時期を正確に見極めるのは難しいものの、市場が好転するのは2017年の後半から2018年だろうと自動車部会では予想しています。
続きまして、日系ブランドの課題への対応についてご説明いたします。
こちらは、昨年のシンポジウムにてご説明させていただきました、日系ブランドとして認識する課題と、それに対する各社の取り組みです。前回同様、この項目に沿ってアップデートがあるトピックをご紹介させていただきます。
本日は、こちらの、事業体質の強化について、トヨタさんのエンジン工場の増強と、弊社からは地域に向けたモデル開発を取り上げさせていただきます。
トヨタさんでは、部品現調率向上、とりわけエンジン現地生産による為替影響とコストの低減を目指し、昨年5月に中南米で初となるエンジン工場の開所式を実施されました。そして、11月にはその工場の能力拡大のため追加投資を発表されました。
これにより、投資額は6億レアルから11億8000万レアルに増え、エティオスのエンジンに加え、2019年下期からカローラのエンジンを生産する予定です。また、生産規模は現状の年産10万8000基から17万4000基になる予定と聞いております。このように現地生産を進めることにより、市場競争力と事業体質のさらなる強化を図られています。
続きまして弊社の事例を紹介させていただきます。ホンダでは、お客様が求める商品をよりスピーディに開発・生産することを目的として、2013年に四輪研究所をサンパウロ市内からスマレ工場敷地内へ移転しました。また2014年には、営業などを含めたSEDBA機能の集約を完了しました。
その成果の一つといたしまして、南米のお客様に向けたコンパクトSUV、WR-Vをこのブラジルの研究所で開発、今年の3月から発売する予定です。このように地域に根差した商品開発・生産を行うことにより、市場競争力の強化を図るとともに、現調化や輸出を含めた事業体質の強化を推進しています。
それでは、四輪パートの総括に移ります。
この半年を振り返りますと、政府からは消費刺激策が出され、自動車業界においても底打ち状態からの回復が期待されています。一方で、失業率は低下しておらず、購買意欲は上向きにはなっていません。このような状況から、回復に向けてはまだ状況への注視が必要であり、急激な変化が今後も起こり得るという認識の下、環境変化に負けない事業体質の強化が引き続き求められます。
具体的には、為替対応を踏まえた部品現調化や、生産性向上などによるコスト低減、および、輸出促進を長期的な視点で推進していくことが重要だと考えます。一方で、現調化や輸出のさらなる加速には、低いコスト競争力を打開する恒久的な取り組みも官民連携の下で必要と考えております。
こちらは、そのような背景を踏まえた政府への提言でございますが、自動車政策や自由貿易政策、人材育成、労使関係、人的交流を含め、幅広い領域について取り組みが必要と考えております。引き続き業界一丸となって是正提言を粘り強く続けていくことだと考えていますので、どうか皆様ご協力賜りますよう、よろしくお願いいたします。
続きまして、二輪業界の状況について、簡単ではありますが触れさせていただきます。
まず、生産・販売の動向です。長引く不況や、解雇増による購買力の低下により、2016年の国内卸販売実績は86万台、前年比72%と、5年連続で前年割れとなりました。また、低調な販売状況を反映し、生産は89万台、前年比70%となりました。
こちらは、登録ベースの月別販売推移です。前年比で見ますと下げ幅が徐々に大きくなってきており、例年盛り上がりを見せる12月も低調な販売となり、なかなか回復の兆しが見えない状況です。
最後に、二輪販売の支払い形態別推移です。緑のグラフはローンによる販売比率を示していますが、与信審査の厳格化に加え、可処分所得の低下などにより、ローン申請数自体が減少しています。これが市場の縮小に大きく影響していることがお分かりいただけるかと思います。
このような厳しい状況ではありますが、ブラジル二輪市場は日系ブランドがシェア8割以上を占める重要な産業と認識しておりますので、四輪と同様、引き続き市場環境に応じた事業体質強化、および商品競争力強化を図ってまいります。
以上で自動車部会の報告とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
司会
溝口様どうもありがとうございました。ただ今の発表につきまして、かなり関心の高い分野かと思いますけども、ご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。はい。それではこれで自動車部会の発表を終了させていただきます。溝口様、どうもありがとうございました。
では、前半の部の最後となります、コンサルタント部会の発表に移りたいと思います。関根副部会長より発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
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コンサルタント部会 関根実 副部会長
西口コンサル部会長が今週出張で不在でございますので、今日私関根が代わりに発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
今年に入りまして、ブラジルの金融市場、非常に活性化しておりまして、先程から発表ありましたけども、株式についてはBOVESPA指数が5年前の水準、2012年の水準まで戻ってまいりました。で、為替につきましては、去年の初めは1ドル=4レアルだったところが、今日現在ですと3.06ですけども、約25%レアルが戻してきております。
それから、金融市場では、CDS、各国のカントリーリスクを示す指数があるんですけども、Credit Default Swap、これが昨年の初めは500ポイントだったんですけど、現在では225ポイントと半分以下に下がってきておりまして、ブラジルの金融市場がブラジルの経済回復を先取りしているという状況になっております。
まあ我々、ブラジルに住んでおりますと、連日ラバ・ジャットのCorruptionのニュース、治安の悪化、失業率の増加と、良いニュースはほとんどないんですけど、なんでこんなに金融市場が活性化しているのかと、ここら辺をコンサル部会でディスカッションしてみました。
まず、貿易収支が良いと。先程貿易部会から詳しい報告がありましたので、簡単に。総合貿易収支、このスライドの右上の所なんですけど、これはモノの輸出入プラス、サービスの輸出入を合計したものです。通常ブラジルはこの総合貿易収支がマイナスなんですけども、昨年と一昨年、2年間は若干ですけどもプラスを計上しています。それぞれ150億ドルの黒字でございました。
このスライドの右下のグラフがその内訳なんですけども、2016年につきましては12月ベースではなくて10月ベースです。10月累積で12カ月間さかのぼって、モノの輸出は1530億、モノの輸入は1145億でプラスになっているんですけども、まあ先程来ご報告のあります通り、経済がさえないので輸入が減ったことによってモノの貿易収支が改善したと。まあ結果オーライなんですけども、中身は決して喜んでいられない数字です。
それからサービスの輸出入、右下にありますけど、サービスにつきましては輸入超過というポジションになっております。
スライドの左側の方は品目別の輸出なんですけども、先程来詳しいご説明がありましたので省略させていただきます。
次に直接投資なんですけども、外国からブラジルに入ってきている直接投資と、それからブラジルから外国に出ていく直接投資。これを棒グラフにしたものが左上のグラフです。2016年で見ますと、流入が639億ドル、流出はわずか88億ドルで、ネットで552億ドル。若干減ってはおりますけども、直接投資はブラジルに順調に入ってきていると。2017年以降の予想なんですけども、徐々に景気回復でこれは順調に伸びていくであろうという予想でございます。
スライドの右側の方は国別の投資の源泉国なんですけども、先程もお話ありましたけども、オランダとかルクセンブルグ、ヨーロッパの小国が大きなシェアを占めているんですけども、これの実態は、貿易部会からのお話の通り、ほとんどは中国ではないかと見られております。公表されておりませんので詳細は分かりませんけども。
スライド右下の方は、今年のラテンアメリカにどのくらい直接投資が行われたのかと。外国からの直接投資ですけども、ブラジルが58%ということで半分以上をブラジルが占める予想です。近年ブラジルがちょっと調子悪くなってきたので、ブラジルからメキシコにシフトするという動きがありましたですけども、11月にアメリカの大統領選挙でトランプ大統領が選出されてから、メキシコに非常に厳しい事を言っていますので、今年はメキシコへの投資にストップがかかって、ブラジルは漁夫の利的にその分増加が期待されております。
ブラジル、まだまだ構造改革が必要なんですけども、外国の投資家から見るとブラジルは現時点では最も魅力的な投資先と、どうも見ているようですね。まず左側の方で、ブラジルの政治的、制度的な環境ということなんですけども、昨年の5月にジルマ前大統領からテメル現大統領に代わりまして、まあ8月から正式にテメル政権が発足しましたんですけども、それまでの政治的な混乱が落ち着いたということがまず第1点ですね。
2番目に、エンリケ・メイレーレスさんが財務大臣に就任されて、元中銀総裁、その前はBankBostonのアメリカの頭取をやられた方。国際金融界にもよく知られた方なので、オーソドックスな政策で、まああまりひどい事はやらないだろうという、まあ安定感が増したということですね。それから、ジルマ政権の時に財政支出、大盤振る舞いしまして、赤字に陥りました。これがテメル政権になりまして、メイレーレス財務相が支出の天井を作るということで国会を通しまして、一応その公共支出の歯止めがかかったという状況です。
それから、財政赤字を改善するために、まあ昔から言われていることですけども、年金制度、社会保険、INSSの改革というのがようやく始まりました。拠出期間の延長、それから受給年齢の引き上げと、まあ過渡的な措置が採られておりますけども、長年の懸案がようやく始まったということでございます。
右側の経済環境の方なんですけども、メイレーレス財務大臣、2018年には330億ドル、合計で、民営化のプランを出されています。中身は従来からあるプロジェクトで、目新しいものはほとんどないんですけども、再度ブラジルで民営化の動きが出てきているということですね。
2番目に、金利の引き下げ。まあインフレが落ち着いてきているということで、ようやく4回連続で政策金利が下がってきております。今日からは12.25%。で、あと数回やって、今年末には一桁台の金利になるであろうという予想ですね。
3番目に、産業活動。昨年の下期に底を打ったというのが大方のコンセンサスになってきております。徐々に回復していくけれども、まあ来年10月に総選挙を控えていますので、それまでは徐々に、本格的な回復は選挙後、具体的には再来年からということになるかと思います。
2017年、今年、外国からの直接投資としては、現在の予想ではブラジルは7番目に多く投資資金が入るであろうという予想です。
毎年、国別の競争力という統計が発表されておりますけども、直近では138カ国の調査でブラジルの競争力は不名誉なことに81番目です。左の円グラフなんですけども、黄色い線がブラジルです。
この12項目につきまして、採点して、競争力を数値化しているんですけども、まあ政治体制、教育水準、労働力、技術開発力、金融市場、市場の大きさ、ここら辺12項目でですね、ブラジルが優れているのはグラフの一番左の市場のサイズ、マーケットサイズ、これだけがブラジルは優れていて、他はほとんどだめと。こういう、競争力が落ちるところなのにもかかわらず、ブラジルに投資資金が入ってきていると、非常に不思議なんですけど。なぜか、ということを後ほどご説明したいと思います。
M&Aにつきまして、部会長の西口さんの会社、EY、Ernst & Youngが毎年6カ月ごとにお客さんからアンケート調査を取られています。直近では昨年の12月なんですけども、上から2行目の所なんですけども、ブラジルにあるErnst & Youngのお客様、多国籍企業が多い訳ですけど、その31%がブラジルの現在の経済をポジティブに捉えられていると。これが昨年の6月の時点ではわずか3%しかなかったということで、昨年の後半に大幅な改善を見たというのがお客様の意見です。
真ん中へんの所にあるんですけど、6カ月前は11%であったM&Aへの関心が、今63%が前向きに捉えられていると。そのうち42%は今年M&Aをやりたいと思っていると。まあEYのお客様、グローバル企業で、必ずしも日系だけではないので、欧米の企業が中心なんですけども、まあ42%がブラジルでM&Aをやりたいと。すでにその73%は5件以上の案件をもっていらっしゃるということでですね、M&Aの業務は昨年は非常に低調だったんですけども、今年は活発化することが期待されています。
下の方で、EYのグローバルベースで、世界的に調査をまとめますと、57%がM&Aを前向きに考えていると、あるいはジョイントベンチャーをやりたいと。世界的に今、資金は余っていますから、中国の減速、アメリカの保護主義化、ヨーロッパのEUの混乱、ここら辺から、どこに投資しようかということからしますと、ブラジルはやはり有力な候補として残るということが言えると思います。
本日の副題の「景気回復に向けて、いま為すべきこと」なんですけども、やはり投資のターゲットとしては、一にインフラ投資であろうと。すでに最近、鉄道とか計画が発表されておりますけども、加えて港湾等ですね、インフラが一番期待できるであろうと。あと一つ、農業も重要なセクターで、これは中国勢が非常に関心を示しております。
戦略的には、デジタルテクノロジーをもっとブラジルに持ってきて、まあターゲットとなっている候補先の会社の事業分野の融合・統合、セクターコンバージェンスとか言われますけども、そこらへんをやっていこうということですね。
それから、M&A、ジョイントベンチャーをやるに当たっては、労務ストラクチャリング。ブラジルは前近代的な労働法で労働組合が強すぎるがために、我々日常頭を悩ませている訳ですけども、ロボットをもっと導入して、人的な能力に頼らない製造工程を作っていくということを考えましょうということですね。
それから、DDを慎重にやりましょうと。DDというのはDue Diligenceの省略なんですけども、M&A、ジョイントベンチャーをやる時には候補先の会社のDue Diligence調査というのを通常監査法人に頼んでやるわけですけども、まあ監査法人が見抜けないDue Diligenceというのも、特にこのブラジルの場合は多いですね。
まあDue Diligenceで通常出てくるのは、税金の債務の偶発債務、税務署とトラブルになっていて、その税金を払わなければならない確立が100%ある、あるいは絶対こちらが税務訴訟で勝つ、払わないで済むと、それからその間の勝つか負けるか50%の確率であると、そういうような分類があるわけですけど、そこらへんの分類は分類する人のさじ加減でどうにでも変わるわけですよね。
ですからDue Diligenceの出てくる中身を、背景をよく調べる。そのためには財務諸表の数字だけでなくてですね、取り引き先の銀行とか、あるいは法律事務所、会計事務所、コンサルタント、ここら辺からのサイドインフォメーションを取っていかないと、こういうブラジルではM&Aで失敗すると。まあ早く言えばですね、ロンドンとかニューヨークとか東京で出てくる英文の企業の売り手のドキュメントを見ているだけでは分からないと。現地調査して、現場のサイドインフォメーションを取って慎重にやりましょうということでございます。
今年、景気回復の兆しが見えるんですけれども、実体的には来年の選挙が終わってからということで、まだ1年10カ月、非常に、現在のような状況が続くと思います。売上が中々伸びないので、売上を上げるために無理な販売をどうしてもしたくなるんですけども、それはまあ回避しましょうと。まあブラジルは市場が広くて、お客さんはいるので、日本の品質の良いもの、あるいはサービスを提供すれば売れるんですけども、問題は代金をちゃんと回収できるかどうか。
まあ通常90日ぐらいのサイトをつけて売りますと、ブラジルのお客さんは払わないのがむしろ通常であって、2度3度督促してやっと払うと。ひどいお客さんにつきましては、ディスカウントしてくれるんならば払いましょうというような交渉になって来るわけですよね。
ブラジルの場合、まあご存じの通り、日本から製品を輸入してブラジルで売りますと、高い輸入関税に加えて、IPI、工業製品税、PIS/Cofinsの間接税、それから州税のICMSと、まあ大体平均して40%ぐらいの税金を前払いしなければなりません。
で、その輸入したものをお客さんの注文通り輸入して売りますと、売上は立つんですけども、期日通り落ちないと、この前払いした税金はずっと残ってしまうと。バランスシート上資産から落とすことができない、でキャッシュフローを圧迫するということで、無理な販売がゆえに現金不足ということになりかねないですよね。したがいまして、与信管理を慎重にして、キャッシュフローをしっかり管理しましょうということでございます。
最後にまとめなんですけども、現在のブラジル国外の環境、グローバリゼーションの反動が始まったと。かなり歴史的な大きな変換点に入ってきているんだと言えると思います。92年のベルリンの壁の崩壊以降、グローバリゼーション、急速に進んできたんですけども、まあ欧州、アメリカの移民問題もありまして、保護主義化の動きが先進国で出てきております。
英国で6月にEUから脱退するという国民投票が通ったということ、11月のアメリカの大統領選挙では保護主義を唱えるトランプ大統領が当選したということで、これからの世界的な動きは、日本が熱心で、TPPはじめ多国間協定の動きから、今後は二国間のバイラテラルな協定に移っていくのではないかと、二国間協定を大事にしましょうということなんですけども。
そこでブラジルと日本との二国間、どういう状態になるかと、整理して締めくくりさせていただきたいと思うんですけども、まず右側の日本の状況は、今までアメリカと中国を中心に貿易・投資をやってきておりますけれども、まあアメリカの保護主義化、中国の経済減速およびその覇権主義が明らかになってきたというところから、貿易・投資の相手国を多様化する必要が出てきていますね。 日本は資源・食料の輸入国ですから、その供給先を確保する必要があると。それから日本の企業の生産余力ありますので、その製品・サービスの売り先をアメリカ・中国以外にも多様化していく必要があると。
で、どこに行くかということなんですけども、地政学リスクと最近よく言われています、geopolitics、国際紛争のないところに行きましょうと。その中で、マーケットサイズ、日本への親日国、それから海外最大の日系人がいるブラジルというのはやはり、最後に残ると思うんですね。
で、ブラジルの現在の状況、左側の方ですけども、ブラジル国内の政治・社会の混乱、PT政権が終わりましてようやく出てきたと、社会正義、Justica Socialが醸成されつつあると。ラバ・ジャットのCorruptionの捜査、過去3年間やっておりますけども、具体的に贈収賄の金を出した企業、それからそれを受けた政治家の固有名詞が出てくるというようなことは、かつてブラジルでは考えられなかったことで、まあブラジルの社会でモラルがようやく重視されてきているという傾向にあります。
PT政権が13年間、初期は良かったんですけど、終わりは非常にみじめな結果になりまして、いわば左翼ポピュリズム、これが減退してきているというのが、投資先としてはポジティブな面で捉えることができます。
それから構造改革、ブラジルは中々できないでいるんですけど、その方向性は一応見えてきたと。財政支出の削減に一応歯止めがかかったと。でも、ここでちょっと注意しないといけないことは、今財政支出の天井を作っているのは連邦政府予算の方だけであって、地方交付金を受けている各州の財政というのはもう大変な状態、真っ赤っかな訳ですね。
リオ州が一番ひどいわけですけども、交付金がつかないのに州政府が勝手に支出して、その尻拭いを連邦政府に今泣きついているというのがリオ州、リオ・グランデ・ド・スル州、ミナス・ジェライス州、サンパウロ州、大きな州はみんなそうなわけですね。ですから、出てくる数字は良い数字が出てくるんですけど、実態はそれほど良くなっていないということなんですけども、一応財政収支の削減のマインドは出てきたということはプラスとして捉えていいと思います。
それから、民営化の動きが再度出てきたと。それから、労働法の改正、社会保険、INSSの改善、ここら辺はもう国会でも審議が始まっておりまして、現在のテメル政権はあと1年10カ月の任期が決まった政権ですので、この間に全部完成するとはとても期待できませんけども、そういう動きが出てきたということはプラスと思います。
こういうブラジルと日本の二国間を見ますと、友好国で非常に補完性はあるので、まあ我々ブラジル現地にいるものとしては、日本の本社に長期的観点からブラジルにはぜひ直接投資、M&A、やりましょうと案件を上げていただきたいと思うんですけども、まあ会社によってはそんなこと言っていられないと、あと1年10カ月も待っていられないと、売上が伸びないんだから会社を閉めて帰ってこいという会社もいくつかあると思います。
現に私もそういう相談を受けているんですけども、まあブラジルは皆さんご経験済みの通り、会社を作るのは非常に大変なんですけども、会社を閉めるのはもっと大変なんですよね。ですから、私どものアドバイスとしては、ブラジルは数年後には必ず良くなるので、今我慢の時だけれども、もし帰ってこいというならば、会社は休眠化して、解散しないでですね、休眠化してまた数年後の本格的景気回復時に再開しましょうと、そういうサジェスチョンをしております。もし具体的なニーズがありましたら、私どものコンサルタント部会のメンバーにご相談いただければありがたく存じます。
最後、少しコマーシャルになりましたですけども、以上でコンサル部会の発表とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
司会
関根様どうもありがとうございます。お話、かなりグローバルな視点での話とか色々ございましたが、この発表につきまして色々ご質問とかご意見のある方いらっしゃるかと思いますけれども、いかがでしょうか。挙手をお願いできればと思います。どうでしょう。一人おられました。ではお願いします。
質問者
アロエイラ・サーレス弁護士事務所のカワカミと申します。よろしくお願いいたします。いくつかラバ・ジャットと汚職事件の話が出てきましたけれども、2015年に正式に反汚職法が発効されまして、その中で、特に去年はコンプライアンスという言葉がやっとブラジルに入って来まして、いくつかのブラジルの企業もコンプライアンス体制の構築を今やっているんですけども、コンプライアンスということはですね、日本は昔からやっていることですし、しっかりしていますし、日本企業もそれに慣れていますが、コンサルタント部会から見てですね、今後のこのブラジルはどうなるかという展望においてコンプライアンスシステムをどうしたらいいか、どう見ればいいかというご意見とか、そういった話はありますでしょうか。
関根副部会長
コンプライアンスへの対応につきましては、監査法人が専門部門を持っていらっしゃいまして、監査法人の中の弁護士さんが対応されますので。まあ日本とか欧米先進国ほどそう神経質になって対応する必要はないかと思いますけども、一応そういうコンプライアンス遵守の体制を作っておくということは必要でございまして、個別の対応になるかと思いますので、ぜひ監査法人の専門家と御話合いの上対応していただければと思うんですけれども。
ブラジル、一応法治国家なんですけれども、ラバ・ジャットで見ればですね、過去3年間の捜査で、企業家は、金を出した方はもう刑も決まって、罰せられているんですけども、受けた政治家の方は、収監されている人はいますけども、判決が出て刑が決まった人というのは一人もいないんですよね。
そういう国ですから、コンプライアンスの尺度が先進国よりも大分較差が大きいと言いますか、甘いと思います。ですから日本あるいは欧米でやっているコンプライアンスのチェックリストそのもの全部使う必要はないかと思います。少し緩くしてですね、較差を大きくして、一応対応はしておくということで、まあそこらへんのチェックリストの改良というのを専門家の監査法人の方と個別にやっていただければと思います。
司会
ありがとうございました。よろしいでしょうか。他、質問ございますでしょうか。はい。ではちょうど3時15分、予定通りですね、前半の部終了ということで、これでコンサルタント部会の発表を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、ここでコーヒーブレイクとさせていただきたいと思います。後半の部は、いまちょうど3時15分ぐらいかと思いますので、3時30分からということで、15分間休憩ということでお願いいたします。3時30分から後半の部開始いたしますので、皆様よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
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後半司会 小池淳介 総務委員長
そうしましたら、3時半を過ぎておりますので、後半戦を開始したいと思います。後半戦から司会を仰せつかっております小池と申します。本年度、カマラの総務委員長を仰せつかっております、三菱東京UFJ銀行の小池と申します。よろしくお願いいたします。
不慣れな司会ですので行き届かない点もあろうかと思いますが、よろしくお願いします。それでは後半戦トップバッターということで、化学品部会、鎌倉部会長様、よろしくお願いします。
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化学品部会 鎌倉勇人 部会長
皆様こんにちは。はじめまして、スリーボンドの鎌倉といいます。私1年半前からブラジルの方に駐在させていただいておりまして、2015年の真ん中ぐらいなので、えらい時期にブラジルに来てしまったなと感じていた次第です。
本日前半のプレゼンテーションを聞かせていただいておりますと、とりあえず経済の底は脱したかなというところを感じておりまして、それを受け、化学品部会が2016年どうであったか、2017年はどうなっていくかというところを、私の方から15分程度で説明させていただきたいと思います。
まずは化学品部会の所属する企業ならびに団体をご覧下さい。現在、会員数52社となっており、昨年より3社減っております。3社に関しましては、撤退されたというところではなくて、現地化によりまして日本人がいなくなったところで退会されたとお伺いしております。
今回は28社より2016年の回顧と2017年の展望についてアンケートを発表にまとめさせていただいております。なお、回答いただきました28社中15社が2000年以降にブラジルに進出した企業となり、新旧入り混じっているのが化学品部会の特徴になります。なお皆様、お手持ちの資料と前のプレゼンテーションなんですけど、ちょっと私の資料だけ文字化けしているようで、ちょっと見にくい部分があるかと思いますが、御容赦下さいませ。
こちらは化学品部会が関わる市場になります。ブラジルの基幹産業である自動車をはじめ、電子機器、建築、印刷、医療や農薬など多岐にわたっております。関わる市場が異なることから、今発表では、他の部会様のプレゼンテーションと重複する部分はございますが、できるだけ市場ごとに2016年の回顧を振り返っていきたいと思います。
こちらが市場別の2016年の回顧となり、2015年と比較した売上と利益の増減を示しています。
まず一番左の自動車、二輪車、航空機の市場は一括にさせていただいておりますが、化学品部会がメインとするこの輸送市場では、車やバイクの生産台数が落ちている中で、売上、利益の増減に関しては半々の結果となっております。
電気電子、工作機械の市場では、消費者の購買意欲の低下とともに生産台数も低下しており、非常に苦戦が強いられた結果となっております。
建築市場に関しては、なんとか社内努力によって利益は確保できたものの、売上は全ての企業で減少しております。
食品市場は価格競争が厳しく、利益確保ができなかったものの、売上が増加傾向にあります。
印刷、製紙市場では、期待されたほどのオリンピック効果も少なく、売上を減少させる結果となっております。
農薬、肥料、飼料の市場では、気候に恵まれなかった2015年に比べると、2016年は非常に気候に恵まれたこと、ジカ熱やデング熱など蚊の対策により売上を増加させる企業が多くなる結果となっております。
医療、医薬品、化粧品の市場は、公定価格や国の援助、競合品の台頭など懸念事項が多い中で、積極的な販売策により、景気後退の影響は少なく、好調を維持できている結果となっております。
コンシューマー市場に関しても、消費者の購買意欲が低下する中で健闘を見せております。
以上、化学品部会の2016年の結果を簡単にまとめますと、各社対策を打つことで一定の効果を見せておりますが、2015年から続く景気後退の影響が色濃く残る結果となりました。2015年度も市場自体が縮小しているとの意見はございましたが、2016年はさらなる悪化を物語る経営難、すなわち支払いの遅延や倒産という意見が非常に増えております。中でも倒産した企業の従業員に給料が払えないというところから、商品を提供した我々企業に対し、裁判所より支払い命令が来てしまうような事態も起こっております。
あまりネガティブなことばかり話していても何も始まりませんので、ここからは皆様のモチベーションが上がるような明るい話題に切り替えて行きたいと思います。
2016年度、景気が後退し、多くの企業が苦しみに耐える中で、確実に売上と利益を増加させている企業も存在しております。どういった企業努力があったのか、少し深掘りして説明させていただきます。
売上と利益が増加した要因を二つに分けております。多少、運の要素も必要となりますが、お客様よりの要因に関しては外部要因、企業内努力によるものを内部要因としています。
外部要因の一つ目。景気が後退する中でも他社との差別化を図る販売方法の見直しなどにより、多くの企業で新規顧客を獲得することができています。例えばブラジルにはない技術や材料を提供することで、今まで関わりのなかった顧客と人脈構築を図ったり、販売ターゲットを富裕層に絞るなど、各社知恵を絞った結果となります。
また、ここにはちょっと記載しておりませんが、競合会社も我々と同様非常にこの難局に苦戦しています。我慢比べに負け、競合会社が撤退したことで結果的に新規顧客を獲得することもできています。
外部要因の二つ目。ブラジル国内が厳しい、そういった中で、貿易が少しずつ簡素化され始めたアルゼンチン、南米の中では比較的経済が安定しているチリなど、周辺諸国への輸出を強化、販売拡大を目的とした代理店の設置を行っている企業が増加しております。
外部要因の三つ目。リスクは伴いますが、沈黙する市場を自らで活性させるために新商品を投入し、成功されている企業もあります。購買意欲が低下、すなわち新しい物は買わない、しかしながら持っている物は壊れた場合を想定して、修理用途に特化することで成功されている企業例もあります。
外部要因の四つ目。お客様からの支払いが遅延する中で、与信管理を強化し、回収率を下げないように努めている企業も増えております。
次に内部要因に関して説明いたします。化学品部会の企業の多くは自社工場を持っており、今回アンケートをいただいた28社のうち約半分の企業が工場をもっております。そのため、外部要因に頼らずとも、自社の努力による部分、すなわちコストダウンを実施することで、経費を抑え、利益を増加させることができます。
では内部要因の一つ目。移転価格や運賃など、ブラジルで発生する高い経費を少しでも抑えるために、原料や商品の商流を見直す、すなわちサプライマネージメントの強化を図ったり、労働時間の変更や短縮によりコストダウンを実行された企業もいらっしゃいます。
余談にはなりますが、弊社、100人規模の小さな工場ではあるんですが、食堂の方も完備しております。皆さんも心当たりがあると思うんですが、ブラジルのスタッフの方、本当によくご飯を召し上がります。弊社の場合、汗水たらして頑張っているスタッフのためにですね、お昼はビュッフェ形式で食べ放題になっております。
それとは別にですね、毎日3時のおやつとして実はサンドイッチの方を提供しておりました。ただ、経費削減のためにこれをクッキーに変えたところですね、まあある日突然スタッフが集まって私のところにやってきて、頼むからサンドイッチに戻してくれと。泣いて懇願された次第です。ただ、会社の経営がじり貧状態でして、体力がそぎ落としていく中ですね、日に日にボリュームが増していくスタッフの姿を見て違和感を感じている次第です。話を戻します。
内部要因の二つ目になります。工場設備を増やすことで生産性を向上させ、結果的に経費削減につなげたり、開発スピード向上を目的とした、例えばですが農薬の試験場なんかを新たに設立されている企業様もいらっしゃいます。
内部要因の三つ目。スタッフを減らすどころか、増員させることで、何が何でも販売拡大につなげてやろうという非常に前向きな姿勢もございました。
内部要因の四つ目。ブラジル特有の、まあ労働裁判になりますが、顧問を雇う、弁護士による現場教育などを実施することで、将来的な経費を抑えるという意見もございました。
以上をまとめますと、リスクを恐れることなく、他社が尻込みする中で積極策に出たことは、その市場では注目を集める存在であったと推測されます。また、自分達の不断の努力によって、何とかこの景気を乗り越えて行こうとする姿勢が、2016年の成功の秘訣だったのではないでしょうか。 すみません。
このページは多分すごく見にくいと思うんですが、こちらは2016年の結果を受けた2017年の展望になります。色のついている部分が2017年良くなっているというところを示しているものになります。ブラジルの経済はまだまだ油断できない状況ではありますが、化学品部会の持つ市場自体は多少の回復傾向の見込みがあり、多くの企業で売上、利益ともに増加と回答しております。
2017年の展望に対する理由になります。プラス要因の一つ目。日系企業ならではの商品以外の付加価値、すなわちサービスを提供することで、お客様の満足度を向上させ、他社への流出を防ぐ。二つ目。輸出の強化などで販売拡大を継続すること。三つ目。さらなるコスト削減を徹底するというのも多くの企業の意見となります。まあ、為すすべなく、ただただ耐えるしかなかった2015年や2016年に比べては明るい話題が増えているかと思います。
ただし、当然ながら懸念事項もございます。市場によっては、下請けメーカーさんが倒産してしまっているのですぐには市場が回復しないとの意見もございます、また、中国や韓国など、廉価品が出回る中で、化学品ならではの当局認可や新商品の登録が遅いことから、対策を打てないという問題は依然として残っています。
医薬品や化粧品などはANVISA、ブラジル国家衛生監督庁というところに申請が必要になりますが、申請期間が最低でも1年以上というところで、簡単には新商品が販売できません。また、農薬の登録審査などでは、日本では2年から3年で完了するものが、ブラジルでは6年から7年もかかってしまいます。せっかく特許を保有していても、ブラジルで販売するころにはジェネリック製品が発売されてしまい、商売としてのうまみが減ってしまいます。
最後に総括になります。ブラジルの化学協会、通称ABIQUIM、こちらはブラジルにいる全化学メーカーが対象となっておりますが、2016年の速報が発表されておりまして、トータル生産量としてはプラス4.04%、トータル販売量は前年比でプラス3.92%と、非常にポジティブな1年だったと前向きなコメントを残しております。
そんな中、日系企業は、こちらのアンケート結果が示す通り、2015年や2016年は売上、利益ともに減少と回答した企業が大半を占めておりますが、2017年は減少予測を立てている企業はかなり少なくなっているかと思います。2015年の景気後退に対して対策ができた企業とできなかった企業で、2016年の結果は大きく異なりますが、2017年は概ね明るい兆しがあると考えられます。ただし、まだまだ飛躍できるような段階ではないかと思います。
日系企業がこのブラジルで飛躍する条件としては、毎回この場で言われていることだとは思うんですが、もっと自由度が高い、かつ安定した仕組みが必要となります。ブラジルコストの見直し、優遇されすぎている労働者の問題。政治が安定しなければ為替も安定しません。先程の繰り返しになりますが、各種手続きの迅速化は必須ではないでしょうか。この辺り、ゆっくりでも確実に前進した成果があることを化学品部会一同期待しております。
以上、駆け足でございましたが、ご清聴ありがとうございます。この場を借りて、ご協力いただきました化学品部会の皆様、ブラジル商工会の皆様、厚く御礼を申し上げます。以上になります。
司会
鎌倉様どうもありがとうございます。若干不調に終わった2016年に対して、2017年は自動車、二輪、電気電子、建築関連で多少売上の伸びが期待されるということで、化学品企業の皆様の各社のご努力に加えまして、鎌倉部会長の明るいキャラと、ポジティブシンキングに大変心強く感じた次第でございます。ここで皆様、ご質問、コメント等ございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。はい。では、鎌倉部会長、どうもありがとうございました。
それでは続きまして、電気電子部会、千野部会長様、よろしくお願いいたします。
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電気電子部会 千野浩毅 部会長
皆さん、こんにちは。電気電子部会の千野でございます。よろしくお願いいたします。
まず、電気電子部会の事業環境ということで、実はこのチャートをお見せするのは4回目になるんですけれども。電気電子部会、会員の皆様の商売の生業としていいますと、耐久消費財であったり、あるいは産業向けの機器であったり、あるいは公共投資の中でもこういった我々の機器が使われるというシチュエーションが非常に多い訳ですけれども、こういったところを生業にしている我々の業界に対して、まあここに四つ要因があるんですけれども、上からいきますと、レアル安。
これは特に電気電子系の部品について言うと、ほとんど国内調達ができないことから、ほとんど部品の輸入に頼っている訳ですけれども、輸入するものはレアル安で極端に値段が上がってしまうということで、コストの圧迫。それに対して売値はそうそう簡単に上げられるものではないので、非常に経営が厳しくなる。
それ以外の要因というのは、リセッションであったり、インフレ、高金利であったり、あるいは政局の混乱であったりと、この辺のところというのは需要の要因に効いてくる訳ですけれども、こういったものが一気に爆発したのが15年の夏であったということで、まあ15年の夏から1年半ぐらい非常に厳しい状況が続いてきたというのが電気電子部会の事業環境になります。下にコメントしてありますけれども、どの商売相手のところに行ってもどん底状態という非常に厳しい環境にあったということになります。次お願いします。
主要な商品カテゴリーごとに、これはですね、アマゾナス州のマナウスというところで、年間でそれぞれのカテゴリー何台生産しているのかという実績を14年、15年、16年というふうにプロットしたものです。これらの商品というのは、もちろん輸入もできるんですけれども、製品として輸入もできるんですけれども、輸入をするととんでもない高い税金を払わなきゃいけないので、競争力がないわけで、しょうがないので皆マナウスという、ジャングルの中で一生懸命ものを作る訳なんですけれども、そうした、マナウスで作られた製品の生産台数の実績になります。
一番ここで大きいのが携帯電話。これが大体年間で、14年で2000万台ぐらい作られた訳ですけれども、これが14年、15年、16年というふうに見ていただくと、例えば携帯電話の場合でいうと、これはスマホですね、14年から15年にかけて2割落ちました。それが今度、15年から16年にかけての落ち込みは4%。次に大きいのが液晶テレビ。これが大体1000万台ちょっとあるんですけれども、これもやはり14年から15年で26%ダウン。それが15年から16年でいうと10%ダウンということで、これは落ち方そのものは小さくなってきているというのがスマホ、液晶テレビといったところの特徴になります。
一方で、右端の方にある電子レンジ、エアコン。この辺を見ていただくと、実は2カ年のダウンというのが、それぞれ、例えば電子レンジでいうと27%、21%、エアコンにいたっては、14年から15年はそれほど落ちなかったんですけれども、15年から16年にかけてはかなり激しい落ち込みになっているということで、まあカテゴリーによってですね、結構違いが出ています。
一言で言うと、テレビなんかは非常に良い例なんですけれども、普及率95%ぐらいあるということで、まあ生活の中でも必需品に近いようなものになると思うんですけれども、そういったもの。あるいはスマホみたいに、何はなくてもまずスマホを買いたいという、お客様にとって非常にプライオリティの高いもの。こういったものに関して言うと、結構底打ち感が出てきた感じがする一方で、そんなにあわてて買わなくてもいいかな、あるいはもうちょっと我慢できるならしちゃおうかなというカテゴリーについて言うと、相変わらず厳しい状況が続いているというのが去年、年末ぐらいまでの状況になります。次お願いします。
こうしたことも含めてですね、会員の皆様に、いつもやっているんですけれども、アンケートを取らせていただいた結果というのをここにまとめてあります。上段の方には、昨年の8月時点で16年をどう見るかというふうなアンケートをした時の結果が書いてあって、それに対して下段の二つはですね、今回16年が実際にどうであったかということと、17年をどう見るかということで回答いただいた結果になっています。
ここで改善、維持、悪化というふうに三つに分けてあるんですけれども、改善というのはですね、販売額が前年比で10%以上伸びるというところを改善というふうにしています。維持というのは100%~109%。マイナスになるところは悪化というふうにカテゴライズして分けてみました。
昨年の8月から、実際に16年締まってみて状況がどうであったかというところを見ていただくと、若干、改善すると思っていたのがそれほどでもなかったというところはあるんですけれども、あまり大きな変化はありません。これ全般的に、先程見ていただいた業界の状況から比べると、そんなに各社悪い状況にないように見えると思うんですけれども、これは後でも述べますけれども、まあ業界は非常に悪い中でも、各社色々な努力をされている結果、何とかビジネスを維持している、あるいは多少なりとも改善させているというふうな結果というのが結構出ています。
16年から17年にかけてということなんですけれども、17年にかけてはですね、もちろん景気の底打ち感というのが出てきたということもありますし、それから今まで非常に厳しい経済環境の中で色んな企業努力をされてきたというところが一つ一つ実を結んでいるようなところというのもあるようで、そうした結果が出てくる年ということも含めて、17年は総じて非常にポジティブな展望をいだいておられるというのが全体の状況になっています。次お願いします。
ここからは、会員の皆様からいただいた主要なコメントをまとめてございます。まず16年の回顧について。これ、ネガティブ、ポジティブ、それからニュートラルという形で三つに分けていますけれども、まずネガティブの方から行きますと、まあやはり需要が低迷していて、マーケット自体は非常に厳しいですというところ。それから、ラバ・ジャットの影響。それとやはり、特に取引先ですね、取引先の経営の困難によって、これは取引先が倒産してしまったり、あるいは資金難で中々取引がスムーズにできなかったりと、こういうふうな厳しさがある。
それからあと、インフレですね。モノが売れない割にインフレでどんどんどんどん、特に労務費が上がっていくということで、コストが圧迫されてしまう。これで非常に厳しい状況になる。それと、あとは、国内の景気が悪い中で、これはいくつかの企業で、じゃあ海外に活路を求めようということで、輸出に力を入れていこうということで取り組まれている会社があったんですけど、そういう企業さんにとってみると、昨今レアルが戻っているという、レアル高になってきたというのがむしろ逆風になっていると、こういったコメントもございました。
それとあと、ネガティブの最後に書いてあるのは、長期間にわたって税関のストライキが続きまして、これでもう部材が入ってこない、モノが作れない、売れないというような状況が続いたという、この辺がネガティブな方のコメントになっています。
一方でポジティブな方ですけれども、まあ景気の底打ち感が出てきて、需要の下げ止まりが見られるようになってきている。あるいは為替が安定してきていて、結構先を見て色んな投資ができるようになっている。それと、この後に書いてあるのは各社の独自の企業努力というものになると思うんですけれども、高付加価値商品へのシフト。需要が限られている中でできるだけ付加価値の高いものを売っていくというふうなところへの努力。それから、競争力を強化して、限られた市場であってもそこでシェアを上げていく。
それとあとは、残存者利益と書いてあるんですけれども、撤退する会社があればそこを取りに行くといったような努力。あるいは新規ビジネスの立ち上げ、拡大。この辺にはですね、今までやっていなかった領域に、企業買収なんかも含めて入っていくというような取り組みをされている会社も多数あります。
あと、輸出の拡大。それから、コスト削減の努力によって採算性を維持していく、改善していくということですね。あと、まあ昨年あったオリンピック関連。これも、あまり一般の消費自体が盛り上がったという感じではないんですけれども、産業用の需要で一部特需があったということもあって、そういったところでのプラス要因というのが挙げられております。
最後、ニュートラルのところでは、まあこういった状況の中で投資の厳選をし、経営体質の強化、これを進めていく。従業員の削減というのもかなり厳しい事ではあるんですけれども、こういうことも断行されているというふうなのが16年の回顧に関する主なコメントになっています。
次に17年の展望についてですけれども、これも同じようにネガティブ、ポジティブ、ニュートラルという分け方をしています。まず、ネガティブな部分を見ますと、まあ底打ち感はあるものの、市場の環境、これは急速には改善しないだろうと。まだ時間がかかるだろうというふうに見ている会社が多いです。二つ目ですけど、特に公共投資、産業重要、この辺はですね、需要そのものが限られているので、かなり競争が激化していると。非常に条件が厳しくなっているというふうなところ。
それと、あとは税金関連での悪化の懸念。政府も財源がなくなっている中で、増税、それから優遇措置の変更、こういったものがいくつかささやかれていたりする現状もございますので、まあこういったことに対して大きな懸念があるということです。
それから、ラバ・ジャット。これは、先程どなたかのコメントにありましたけれども、現政権ですら完全にシロな訳ではないという中で、こういったことが懸念として挙げられております。
それと、グローバルなボラティリティ。これはトランプ政権であったり、Brexitであったり、あるいは中国の動向によってかなり大きく売られるだろうということで、ブラジル国内だけでなくて、グローバルな要因で結構為替相場が大きく変わってしまったりだとか、そういったことへの懸念というのがあります。
プラスの方ですけれども、底打ちが見えた中で、回復ということに関して言うと、これ以上はまず悪くならないだろうということと、ここから先は少しでも良くなるだろうということに対してはやはり大きな期待があるということです。それと、インフレ率が低下して、金利が低下してくると、やはりこれは一般消費者の購買力の回復というところに行くだろうということで、まあそこに対する期待があります。
それと、高付加価値商品へのシフト。それから競争力強化等々。これは個別の企業努力を継続してやってきたことの結果が徐々に出てくるだろうという期待があります。あと、新規ビジネスの拡大。これも同様ですね、輸出の拡大。こういったそれぞれの努力をきちっと結果として出す年にするというふうな意思の表れだと思います。
それとニュートラルな領域ですけれども、まあこういった中でも慎重な経営を志向する。ポスト・リセッションに向けて種蒔きをし、体制を構築するといったことをやっていく。それから、構造改革・経費削減努力、こういったものは維持、強化していかなければならないだろう。それから、資金管理・債権管理・在庫管理、こういったものは非常にボラティリティが高いので、これはぬかりなくやっていかなきゃいけないよねと。といったところが主要なコメントでございます。
以上、まとめて、サマリーにしますと、ポイント三つ、プラス一つで四つあります。一つ目は、結構電気電子部会の中では、最初のアンケートの結果の改善、維持、悪化という中からも見て取れることなんですけれども、各社、リセッション突入の前から事業構造改革に取り組んできた、そういった会社が結構多くあります。また、どん底の経営環境の中でも業績を改善させている企業が多いということは、そういった努力が形になって表れているのかなということになります。
一方で、景気回復、それから政治の安定、為替の安定、こういったものに大きく期待はするんですけど、まあそれにあまり頼るわけにもいかないので、そういった、ここから先も何が起こるか分からないよねという中での、そういった環境を意識して慎重な事業運営をしなきゃならないだろうということで、まあ慎重に進めるんだというのが二つ目のポイントです。
三つ目ですけれども、この後景気の回復、経済の回復というものがあるだろうとしても、ただこれ、ボリュームが回復したのでビジネスが良くなるというよりは、むしろ既存の市場が回復するというよりは、色んなこれから市場のニーズが変化して高度化していく中で、その中で新しい事業機会や、新しい強みを育てるという、そういった努力を軸に据えてビジネスをやっていこうというふうな意図があるかと思います。
最後にちょっとコメントしたんですけれども、実はこれ、アンケートの結果、12社答えていただいたんですけれども、うちの部会は25社ぐらいあるんですよね。なので、アンケート回答率は実は半分ぐらいでして、残りの会社の方がどうなっているかというのは実は定かではないところがあります。
実を言えば、過去2年間で退会された会社というのもいくつかありますので、これ、電気電子全体としてこうかと言われるとちょっとそういうところではないんですけれども、アンケートいただいた結果を見る限りにおいては、各社さん、色んな努力をされながらこの難局を乗り切ろうとしているんだろうなということでございます。
シンポジウムの副題「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということで、これは特に企業側がやるべきことという観点でのまとめをしています。短期的な業績に左右されずに、長期的な視点で経営を判断していく。急激な回復を期待せずに、慎重な経営・投資判断をしていく。経営の基礎体力、これをしっかりと強化していく。リセッションの出口に向けての準備を今しっかりと進めるんだ。あるいは、これは特に日本の会社ですので、品質の良さ、あるいは新しい価値の提案、こういったところに活路を見出していく。
こういった色んなことをやる中でも、ビジネスパートナー、この先誰と組んでいくのかということを慎重に見極めて、手を打っていく。それと、様々なスキームを活用し、組み合わせ、メリットを創造していく。こういったことをやっていく、等々が今やれるべきことであろうということです。
最後になりますけれども、商工会議所、ブラジル政府、日本政府への要望ということで、まとめました。これも、以前から書いてあることとあまり変化はないようですけれども、まあ政治・経済・為替、それから最近特に治安が非常に悪くなってきていますので、治安も含めて健全化・安定化、こういったところへの努力をしてほしいなというのがまず1番目。
それから新規事業、それから輸出拡大等々へのインセンティブ。このインセンティブというのも、その場しのぎのものではなくて、非常に長期的な視点に立ってコンシステンシーのあるようなものを是非お願いしたいというのが2点目。
3点目として税制の改善。これは言わずもがななんですけれども、まあ税制の問題点だけ挙げると何時間でも議論できるよねというぐらいに、ここにいらっしゃっている方々はよくお分かりのことだと思います。それから、労働法。これについても同様かと思います。特に我々の部会の中では、現政権がやはりこれから何かこう具体的に一歩踏み出しそうだというふうに見えますので、そういったところには非常に大きい期待をしているということでございます。
ビジネス・インフラの整備。それから、ブラジル・日本両国間での中長期的な関係の強化。ファイナンス、ファンディング、パートナーシップ、こういったものの支援・連携の促進。そういったものを含めてですね、一番上に戻りますけれども、今景気が悪くて、政治の混乱もあって、非常に悪いどん底の状況にあって、これが元に戻るんだよねということは期待するものの、じゃあ本当にブラジルというのが投資先として何の魅力があるんですかといったようなところが非常に重要なところだと思いますので。
ポテンシャルが非常に高い国だというのは我々も皆認識しているところなんですけれども、ポテンシャルは高いにしても、本当に実現されている、あるいは実現されようとしている市場としての魅力というものがやはり非常に大事なんじゃないかなということで、それをここにいくつかポイントを挙げましたけれども、こういったことを是非是非改善していただければというふうなまとめになっております。以上です。
司会
千野部会長様、どうもありがとうございました。それでは、ご質問等ございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。お話を伺って、2016年を振り返られると、昨年8月時点で予想したよりは改善が進まなかった。
一方で2017年は緩やかながらも底打ち感と回復への兆しがみられるというお話であったかと思います。それから、各社様のご努力による強みの創出。そしてボリューム獲得と違って知恵を絞った戦略を取られているということが印象的だったかと思います。では、どうもありがとうございました。
では続きまして、食品部会の秋元副部会長様、お願いいたします。
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食品部会 秋元壮介 副部会長
皆様こんにちは。ただ今ご紹介に預かりました、キッコーマン・ブラジルの秋元と申します。通常は部会長であられます味の素さんの方から発表させていただくところですが、今回部会長ご不在のため、私の方から僭越ながら発表させていただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
発表の内容といたしましては、2016年度の業界動向、そして原材料動向、2017年度の展望という流れでご説明申し上げます。
まず2016年度の業界動向ですが、先日食品部会が行われましたが、皆様共通して仰られていたのは、去年、一昨年は非常に厳しかったと。ただしこれからは少し兆しが見えるんじゃないかという意見が共通の認識です。ブラジル国内市場概況は、長引いた経済状況の悪化に底入れ感が出てきておりまして、回復の兆しが見え隠れしていると。
昨年下期以降のスーパーマーケットの実質売上前年比も、継続して前年を上回り始めているという傾向もあり、消費者の購入意欲が回復してきているという部分が窺われるかと思います。この点は後ほど資料でお見せしたいと思います。
また、食品・飲料・日用雑貨。重量、売上とも前年を割っているんですが、半年前より回復の傾向が見られ、前年比マイナス3.7%と、マイナスではありますものの回復傾向が出てきているのが窺われます。一方、購買データを分析すると、低価格指向、そして嗜好品への支出の抑制傾向が出てきている事が窺われます。
それではカテゴリー別の業界動向ですが、食品部会非常に多種多様のカテゴリーがございますので、いくつか拾ってご紹介させていただきます。
まず飲料部門ですが、発酵乳飲料。これはヤクルトさんを中心とした発酵乳飲料ですが、食品部会所属企業では数量ベースでは減るものの、健康系の砂糖を使用しないカロリー低減タイプの商品を開発したりと、新商品等の発売によってですね、金額ベースでは前年を上回る結果になったと言われております。
また一方で、水に溶かして割って飲むタイプの粉末飲料タイプについて、こちらはブラジル市場全体が103%と微増傾向にあるところ、実は食品部会所属企業では重点的な広告活動や流通への販促施策を徹底的にやったことが功を奏しまして、市場伸長率を大きく上回る結果となったと伺っております。
また、肉などに振りかけて調味する粉末調味料。こちらは市場全体が97%とダウントレンドのところ、味の素さんを中心に消費者キャンペーンや流通施策を行うことで、二桁増を達成したということで、我々食品部会会員企業がですね、市場全体をけん引しているという状況でございます。
一方で、スープですが、粉末スープ市場になりますが、市場全体が大きく減っている中で、クッキングタイプの新商品が大幅に伸長し、こちらも食品部会が市場をけん引している状況です。
つづいて、しょうゆでございます。市場全体は日本食の人気もあり、微増はしているんですが、現地メーカーによる低価格商品のシェアが広がり続けており、我々キッコーマンのような輸入商品については、現地製造メーカーとの価格差がかなり高く、厳しい状況が続いております。また懸念事項としまして、さらに、押し寄せる中華系のしょうゆメーカーの新入も見られ、我々キッコーマンとしても非常に気になる状況です。日本食および日本食のプロモーションを通じて、需要発掘を継続して行っていくことが必要であろうというふうに考えております。
清酒部門ですが、いわゆるカイピリーニャのピンガをサケ、清酒に代えたサケピリーニャなどの需要が好調でして、特に食品部会所属企業では年間では金額ベースで105%伸長したということなんですが、いずれにしても日本食レストランでの消費が落ち込んでいるということで、景気回復を実感するレベルまでには至っていないというのが現状ということです。清酒のような嗜好品への買い控えが引き続き強い状況に思われます。
続いてコーヒーです。こちらも後に触れますが、ロブスタ種というコーヒーのタイプがあるんですが、ロブスタ種の産地での干ばつにより原料価格が高騰し、製品価格が上昇。国内消費が伸び悩んでいる状況と伺っております。一方インスタントコーヒーは、世界的にインスタントコーヒー需要の伸びがあるということで、市場が伸長しております。
即席めん市場です。即席めん市場全体が数量ベースで微減傾向の中、食品部会所属企業ではリニューアルなどを徹底し、金額ベースでは微増に至ったと伺っております。
続いて、畜肉・畜肉加工品です。特に鶏肉についてですが、日本における在庫過多の影響から、ブラジルから日本への鶏肉の輸出が昨年対比で大幅に減少しているという状況ということです。一方で、食品部会所属企業で、2015年12月に日本向けの牛肉加熱加工品の輸出が許可されたものの、その施設の認定に、ブラジルの認定にですね、約1年を要してしまったということで、ブラジルにおける輸出承認への道のりの難しさが露呈いたしました。
また、加工食品で、唐揚げや餃子といった日本的な加工食品をブラジル国内で生産し、販売、特にBtoBですけれども、行うということでスタートし、好評を博しているということでございます。
次にチョコレート市場です。市場全体では、数量ベースで2015年から続いていた減少傾向が2016年度に歯止めがかかり、2016年度はようやく横ばいに至ったということです。金額ベースでは、インフレ、原料等の高騰により値上げが進んでおり、微増傾向です。
一方、その傾向の業務用市場への影響度は非常に少ないということで、食品部会所属企業では数量ベースで微増、金額ベースで二桁の伸びに着地したということです。また、2016年以降ですね、砂糖をはじめとする主原料の高騰から、コスト上昇がまぬがれない状況という問題もあり、市場ニーズに合わせた商品開発が必要になって来るということです。
それから、香料部門です。食品部会所属企業では主力の菓子カテゴリー、ガムやキャンディー、それから飲料カテゴリー、炭酸飲料や果汁飲料など用の香料が既存市場では非常に低迷ということで、何とか新規開拓で補って、全体として前年並みに着地をさせているという状況です。
また、食品添加物についても同様で、新規顧客の獲得があるものの、景気悪化の影響で既存顧客の販売低迷や、処方数量の変更、つまりコスト削減のための、添加量を減らすなどの対応が出ているということで、売上としては横ばいに着地しております。
次にアセロラ製品です。アセロラ主要産地でありますサンフランシスコ中流域は降雨量減少により原料収穫量が非常に少ない状況と伺っております。厳しい干ばつによりアセロラ事業を断念する企業も出てきているということで、非常に厳しい状況です。
一方で、天然ビタミンCへのニーズが高まっているということで、ビタミンCがより多く含まれる緑化アセロラというタイプの商品に注目が集まり、販売が堅調に推移しているということです。
次に種苗部門ですけれども、2016年末にですね、ドイツの製薬大手、バイオメジャーのバイエル社が米国のモンサント社を買収したということで、世界的なM&Aが進んでいるということです。ブラジル種子業界では、種子需要は安定するものの、天候不順による影響で販売は減少傾向。
次に外食産業です。こちらも、長引く経済不況の中、高級レストランを中心に客数・売上とも減少傾向ということです。一方で、価格的に値ごろ感がある業態、例えばポルキロやRodizio、そして日本企業ではゼンショーさんなど、価格的に値ごろ感のある業態は伸長し、食品部会所属企業では前年比を大きく伸ばしております。
それから、輸出部門ですが、コーヒーやオレンジ果汁はともに天候不順による供給減のため非常に厳しい状況と伺っております。鶏肉原料は年初から日本の在庫が増え続けているため、日本在庫過多により価格低迷が続いております。
次に、原料の動向について少し触れさせていただきます。先程少し触れましたが、ご覧のグラフは砂糖相場の推移になります。砂糖相場は2012年以降サトウキビの生産が安定して、落ち着いておりましたが、2015年以降ご覧の通り一気に上がっております。グラフは粗糖キロ当たりのレアル単価の推移ですが、2015年9月以降、ご覧の通りニューヨーク相場と比較しても非常に高い水準で推移しております。これにより、関連食品製造メーカーの収益を圧迫していると伺っております。
次に乳相場です。こちらも2016年は生乳価格の上昇で国内相場が高騰しました。グラフは全粉乳キロ当たりのレアル単価ですが、レアル安の影響で、レアル建て価格の上昇が顕著に見てとれます。
続いてコーヒーです。こちらも先程少し触れさせていただきましたが、2016年下期はブラジル国内相場が右肩上がりに推移しているのが見て取れます。ニューヨーク市場との価格乖離があり、レアル安が進んだことに加え、国内需要に対する供給不足によるものと言われております。特に、先程触れました、ロブスタ種が不足により、大幅な減産。一方で豊作だったアラビカ種も農家の売り渋りが続いたということで、国内需要がひっ迫し、価格が上昇いたしました。
次に鶏肉相場です。こちらの紫色のグラフになりますけれども、輸出の好調な手羽の価格が高騰を続けております。昨年末に過去最高に高い水準まで到達しました。一方で骨付きもも肉は、緑色のグラフになりますけれども、輸出減から国内での余剰感から相場が下落しております。
続きまして、スーパーマーケットの売上になります。こちらは電化製品や洋服、それから食品、日用雑貨全て含んだデータになります。スーパーマーケット売上前年比、名目売上前年比になります。ご覧の通り、累計で約110%前後で推移をしているのが見ていただけます。
実はこの名目売上前年比というのはですね、インフレ値上がり分が含まれてしまっておりますので、この名目売上率からインフレ値上がり分の率を引いた実質売上前年比がこちらのグラフになってございます。赤でクローズアップしておりますけども、つまり値上がり分を差し引いてみましても、2016年下期以降ですね、各月1%~5%の微増が続いておりまして、一般消費者における景気の回復が見ていただけるかと思います。
次に、食品、飲料、日用雑貨の購入重量前年比のデータになります。ご覧の通りですね、年間で見ますと各月前年比でマイナス3%~マイナス5%の推移を続けておりまして、消費者の買い控えは引き続き続いているということが推察されます。
このデータを、ブラジル全土と地域別で割った表になっております。各エリアでマイナスの数字が出ておりますけれども、数量ベースではマイナスになっておりますが、その下の赤の四角と丸で囲っている部分ですね、こちらが売上高前年比実質金額ベースになっておりますけども、こちらを見ていただきますと、マイナス3.7%となっております。これが半年前は実はマイナス4%でしたので、快方傾向にあり、例えばエリア1、エリア2、エリア5、エリア4といったあたりは半年前と比較しますと非常に改善が見られるということで、ブラジル全土でもですね、地域ごとには快方の傾向が見られるということが言えると思います。
こちらはカテゴリー別に見たデータになります。ご覧の通り、ほぼすべてのカテゴリーで購入重量前年比が低下しておりますが、半年前と比較してみますと、アルコール飲料やお菓子などは快方に転じており、少しずつ回復の兆しが見え隠れしております。
コーヒー・牛乳・甘味料サブカテゴリー前年比ですが、こちらも、砂糖部門、コーヒー部門、牛乳部門など増加傾向にあり、砂糖はこれは値上がりの影響もあり前年比で30.8%と大きく伸びております。お手元の資料は私ちょっと間違えまして、コーヒーという文字を書かせていただいておりますが、このコーヒーというところは牛乳になります。申し訳ありませんがご訂正をお願いします。
小麦粉・調味料系サブカテゴリーです。食用油も前年比で5.3%増。一方でパン、即席めん、魚缶詰も前年比でマイナスということで減少傾向が見られます。
また、肉・乳加工品系のサブカテゴリーデータになります。こちら、ヨーグルト、アイス、冷凍牛肉、発酵乳飲料、冷凍ピザ、デザートなどが大きく減少しており、特に嗜好品を中心に非常に厳しい状況が続いているのが見ていただけるかと思います。
最後に、テーマでございます2017年度の展望、「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」について、食品部会で意見をまとめてございます。
経済状況については、楽観的な予想が徐々に増えてきておりまして、2017年度の実質GDP成長見込みも3年ぶりにプラスに転じるという見込みも今日何度か発表があったかと思います。食品部会としては、これらの快方のタイミングをじっくり見極めながら、消費者の動向や社会的変化を見据えた商品開発と市場開拓を進めていきたいと考えております。また、一部の会員企業様のご意見では、チリやペルー、コロンビアといったブラジル以外の南米諸国で売上をカバーしながら、ブラジルと両輪で顧客開拓を進めていくということに注力する企業が出てきております。
また、各会員企業、進出の度合いにそれぞれ違いがありますので、何とも言い難いですが、景気回復時の波にですね、乗れるように、そしてその波に乗り遅れないように、今のうちから事業基盤の強化、そして新規事業の種まきなど、現段階からしっかり進めていくこと。そしてこのブラジルで、様々な局面で同じような課題・問題を抱えている会員企業様がいらっしゃいますので、情報共有を密に行いまして、より効率的にビジネスを進められるように協力体制を築いていくことが肝要かと存じます。
簡単ではございますが、食品部会からの発表は以上になります。ご清聴ありがとうございました。
司会
秋元様、どうもありがとうございました。ご質問等ございませんでしょうか。ちょっと後半になって皆様お疲れかと思うんですが、もしご質問等あれば是非お願いいたします。特にございませんか。
ではちょっと私から、個人的な興味で、今2017年の展望で消費者の動向や社会的変化を見据えた商品開発・市場開拓というお話ございましたけれども、もし差し支えなければ具体的な事例とか、どんな戦略がおありなのかというのをもしお話しいただける部分があるのであれば、お願いいたします。
秋元副部会長
はい。ちょっと食品部会の各企業様のご意見は、私の方からは申し上げられないので、我々キッコーマンとしての意見になってしまうんですが、我々キッコーマンは南米全体を担当しておりまして、他のメルコスール圏ですとか、太平洋同盟のエリア、それぞれ市場を見て回ってみますと、やはりアメリカの影響を非常に受けているエリアと、それからメルコスールのようにブラジルを中心に自分たちの文化が根付いているところ、そこで嗜好がだいぶ違うことが分かっております。
なので、我々は特に軸足をブラジルに置くのであれば、ブラジル向けの、ブラジル人の人たちの嗜好に合った、あるいは食生活の嗜好に合った商品開発、あるいは味の嗜好に合ったもの、そういうものを開発していく必要が重要なのではないかというふうに考えております。
司会
ありがとうございます。ご質問ございませんでしょうか。ちょっと時間が余り気味で進んでおりますので、もしあればお願いします。
元々食品業界さんは比較的景気の下振れに対して耐性がおありな方かなというふうには理解しておりますけれども、それでも景気の底入れとか、回復に向けて、先取りする形で、業界平均を超えるような伸長を見せていらっしゃる分野がおありで、一方でご苦労されている分野もまだおありだというふうに理解いたしました。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、運輸サービス部会、細谷部会長様、お願いいたします。
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運輸サービス部会 細谷浩司 部会長
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こんにちは。私、ここに数回立つんですけど、今回皆さんの顔が一番暗いような気もしますけど、時間的なものなのか。運輸サービス部会、部会長の細谷です。日本通運から来ています。よろしくお願いします。次のページ行きましょうか。
我々、こういった、物流、海運、航空貨物、航空旅客、旅行、ホテル、通信、ITというふうに多岐にわたっていますので、その分野ごとに1ページずつプレゼンを作っておりまして、各々16年の回顧、17年の展望ということで説明していきましょう。
まずは、物流業界に入ります。先程電子部品さんの話でもありましたけど、去年8月に待遇改善を目的とする税関ストライキが入りました。税務調査官というか、税金関係全箇所なんですが、ブラジル全土において開始されまして、かなり皆さんの業務にも支障が発生したことと思います。あとは、これがすごい良いニュースで、やっとブラジルも世界基準に近付いてきたかなというネタなんですけど、世界基準に則した、農務省による木材規制強化というのが2月に開始されまして、海運、航空貨物両方とも農務省検査官が通関前後に、木材で梱包しているやつの検査を実施することになりました。
写真が出ているんですが、木材、パレットなんですが、あそこにスタンプがありますけど、あれがない貨物というか、あの刻印の確認という作業が入りました。画期的なことだと思います。次に、オリンピック、もうすでに古い話になりますけど、オリンピックの時に、事前に、物流がギブアップというか、一杯一杯になるのかなと思いましたが、リオの空港とか港の混雑の事前回避ということで、サンパウロなりその周辺の港・空港に荷物を逃がしていただきまして、物流的には大きな影響は出ておりませんでした。ありがとうございます。
次に、その下の段の17年の展望に入りますが、先程言いました、ブラジル全土で行われた税関ストライキは、1月19日だったかな、収束しております。ただ今後も、物流に大きな影響を与える、税関、農務省、および港湾関係のストライキについては、今後も大きな懸念材料となると思っております。
ちょっと引越の話になりますが、引越の荷動きの面から見る限りでは、日本人駐在員は確実に減少しているのかなというふうに私ども推測しております。ちょっとこの下の図を見ていただけますか。これはですね、引越の日本発の船便の件数データなんですよ。これで駐在員の移動先の動きをちょっと検討してみようということで、サンプル数が年間19000から20000件のサンプルです。
上から一番長いグラフになりますけど、南アジア・オセアニア向けはまあ落ち着いた傾向かな、過去3年の動きを見ていると。東アジアは急激にやっぱり減少しております。まあ中国が入っていますので。欧州は波がありますが、落ち着いた傾向。南米向け、ここですね、南米向けはというと、やっぱり減少気味です。下の二つが中米、北米ですか、増加傾向にあるというふうに結果が出ております。まあ、現地化が図られているのか、それとも単に駐在員を減らしているのか、色々企業様で理由がおありでしょうけど、まずこんな結果です。
次、海運業界に入ります。まず、コンテナ船の話をしましょう。コンテナ船は供給スペースが半分近くに減らした関係で、運賃レベルは改善しております。まあ、適正水準近くにまで戻ったという話です。このコンテナ船の関係で、2015年に色んな会社がくっついたり離れたりしたんですけど、2016年もかなり進みまして、かつて17社ありましたコンテナ主要船社が現在では10社にまで絞られております。ちなみに、コンテナ船社でいうと、邦船3社と言われるMOLさん、日本郵船さん、川崎汽船さんも2018年にコンテナ関係はくっつくことに決まりましたので。
それで、2017年のコンテナの展望なんですが、先程言った、競争船社は減っているものの、なんと2015年以前に、景気のいいころですね、発注した大型コンテナの竣工が今年多く竣工されます。ということで、マーケットについては予断を許さないというのが大方の見方です。ちょっとタイミング悪いですよね。
次にもう一回黄色い方にいきまして、完成車、自動車船ですね、その輸送に関してなんですが、2016年は原油をはじめとした資源安で、資源国、例えば中東、アフリカ、南米の購買力が下がり、これらの国向けが落ち込んでおります。
ブラジルについては従来のアルゼンチン向けだけでなくて、他の南米諸国やメキシコ向け輸出が増えて、15年対比で25%の増量となっております。完成車の17年の輸送なんですが、ブラジルについては輸出車台数はさらに伸び、輸入車台数はさらに減るのではないかというふうな予想を立てております。
次、ドライバルクの説明をしたいんですが、ドライバルクというのは、ばら積み船ですね、船の腹の中に入れる、コンテナ輸送じゃないやつなんですが、これは中国の輸入需要増、鉄鉱石とか原料炭により市況は若干回復を見せました。
しかし、中国以外の需要の鈍さから、引き続き厳しい市況が続いているようです。17年の展望については、やはり中国の市況のけん引力には懸念がありまして、例えば国内景気対策の脆弱さとか、国内鋼材、中国のですね、中国向けの鋼材輸出に対する保護主義的措置が強められる傾向があり、ブラジルからの鉄鉱石の輸入、輸出の伸びも比較的穏やかになるのではないかというふうに見ております。次のページお願いします。
航空貨物です。主要3港というのがありまして、我々日系社会の工場さんが存在しているマナウス、あとサンパウロにあるグアルーリョス空港、あとサンパウロにある貨物専用空港であるビラコポス、これを主要3港として名付けているんですが、これの比較をしております。この数字を使っております。
輸入は景気後退の深刻化により、部品などの原材料を含む品物の輸入が大きく落ち込んでおりまして、対前年同期で6.9%のマイナスという数字が出ております。輸出は前年同期比で3.9%の増です、これは。この増の理由は、生鮮品、あと自動車部材関係、あとは飛行機関連の部材の輸出の増加というふうに推測されています。これもあまり詳しい数字が出ていないので、各飛行機の貨物部門に聞いたレポートでございます。
17年の展望としましては、関係機関によれば本年は、輸出貿易額では昨年比で7.2%増が見込まれておりまして、航空輸出についても増加傾向が今年も続くようです。また、エティハド航空が3月でブラジル路線から撤退します。それによりまして、2016年より色んな航空会社が撤退をもう行っておりまして、貨物輸送のスペース不足による貨物運賃の値上げ傾向が出てくるのかなというふうに懸念をしております。
下の表は主要3空港の貨物取扱数量と為替変動の相関性を表しています。普通、レアル高、レアル安によって輸出が増えたり、輸入が増えたり、バランスを取って動くんですが、作ってみて分かったんですけど、あまりバランス、今回は取れていません。もうレアルの高い安いだけでものが動かないようなこの国の状況、なってきているのかなというふうに思っております。物流、我々、この運送の関係では、何としても今後の輸出入の取扱数量の伸長に期待したいところです。次のページお願いします
航空旅客。これはですね、回顧としましては、国内線は旅客と座席がほぼ同規模で減少しております。近年にない前年割れの実績となっております。国際線については、ブラジルの航空会社の計しか出ていないんですけど、利用率は2.3ポイント上昇しているんですが、全体では需要調整による規模減が続いています。多くの会社が利用率低迷の打開策として、廉価な運賃での営業を展開、安売り競争でしょうね、したため、利用数の減少以上に収益は悪化しているとのことです。
次、展望いきます。ここら辺から皆さんに関係するかもしれませんが、国内線はLATAM航空やGOL航空の業績悪化に伴って、両社とも低需要路線を中心に運休・減便する可能性が高いというふうに言われております。国際線につきましては、リオ・オリンピック以降に実施されたサンパウロ、リオ関係路線や地方都市発着路線の縮小により、渡航者数は減少もしくは横ばいになると推測されております。
下の特記事項をちょっと読み上げますが、3月26日からエティハド航空が路線から撤退すると言いましたけど、同じ日、3月26日からエミレーツ航空が大型機を投入します。A380という、今言われているエアバスの一番大きいやつ、それがサンパウロ=ドバイ=成田線に大型機材導入ということで、3月26日より始まります。
日本政府が目標に掲げる訪日外国者数の拡大に関連して、航空業界としては、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ブラジルからの訪日旅客数をいかに拡大させるか、これが課題となっていますが、そのためにはスポーツや経済だけでなくて、文化・教育・芸術などの様々な分野でのブラジル=日本間の交流の活発化と相互理解が必要であるというふうに思われます。
旅行・ホテル業界なんですが、上の2016年の回顧。一言で言いますと、オリンピック・パラリンピックが開催されたにも関わらず、国内線航空券、国際線航空券、国内ホテル、すべての分野での売上が10%前後減少しております。この数字に不況による影響が大きく表れているのかなというふうな業界のお話でございます。
展望いきましょう。会社は経費削減のため出張を減らす傾向にあるようです。また個人さんは、失業などへの不安から個人旅行、特に海外旅行を控える傾向にございます。昨年はオリンピックという一大イベントがあったのですが、今年は何もイベント、大きなものがないということ。
また、エティハド航空が3月をもってサンパウロ線を廃止することで、航空運賃が全体的にまた上がってしまうのかなという懸念がございます。さらに、昨今の治安悪化、黄熱病の流行などにより、日本からブラジルへ来る観光客が減っていくかなという懸念もございます。このような理由から、旅行業界にとって2016年以上に厳しい年になるかなということが考えられております。
一方でホテル業界は、2017年は効率・創造性を優先した少額投資の期待から、緩やかな市場の回復を見込んでおります
トピックスがあるんですが、二つあります。今年の3月14日より、一人2個手荷物OKとか、3個OKとかありましたけど、受託貨物を航空会社が有料で預かるということができるようになります。受託貨物の有料化を採用するかどうかというのは各航空会社の裁量にゆだねられていますので、3月14日以降飛行機に乗られる方は事前のご確認をお願いします。
もう一つ、これは良い知らせなんですが、皆さん赴任の際に黄熱病のイエローカードですか、黄熱病の予防注射を打ってイエローカードを持っていると思うんですが、これの有効期間が10年間だったのが、生涯有効というふうに変更になりました。すでにお持ちの、有効期間が経過した予防接種証明書も有効ですので、生涯大切に保管して、パスポートと一緒にお持ちになって、色んな国に行かれる時にお持ちになっていただいた方が良いと思います。
次、がらっと変わりまして通信業界の話です。通信業界でも色々ございまして、このページは携帯電話、モバイル関係のお話です。16年の回顧としては、全体的な契約者数は、長引く景気低迷の影響に加え、キャリア間の接続料金引下げに伴って、複数SIMを持たれていた人が少なくなりまして、前年より約1400万件減少しております。今はやりというか伸びてきている4Gの契約数に関しては、この左の表ですが、2Gと3Gから4Gへの移行が順調に進んでおりまして、前年から約3500万件増加。ブラジル市場の25%を占めました。これは伸びていくと思います。
17年の展望としましては、これは右の図を見てほしいんですけど、折れ線グラフ、4Gへの移行はさらに加速して、年内に3G、3Gが青い線ですから、3Gの契約数を超える見通しです。あと、前回も話題にしたんですが、会社更生手続きをしておりますOi社については、債権者との交渉が継続中で、具体的な対処については2018年にずれ込む模様です。
次、テレコム・データセンターのからみです。インターネットユーザー数、ここは世界第4位で、1億3900万ユーザーです。人口が多いので、日本より多いユーザー数です。ブロードバンドのマーケットシェア。NETが32%、Vivoが28%、OI社が24%。若干昨年と比べるとOi社が減ってきているような感じです。ブロードバンドのアクセス数も毎年増えておりまして、2672万回。あとインターネットの普及率は約66%で世界第64位。これも伸びてくる傾向です。
展望としましては、個人のインターネットの利用多角化に加え、ビジネスにおけるインターネット経由でのシステム利用が増加するなど、引き続き利用者の増加が見込まれます。大都市中心部以外、郊外の工業団地とかですが、ここでの高速化、安定化、低価格化が求められています。ハイスピード回線の提供が継続的に進むことが見込まれます。しかし、個人の動画サービスの利用や、企業のサービス型システム利用の大容量データ通信サービスの提供が進むことで、回線の安定性のさらなる低下が懸念材料として考えられます。
次、IT業界が最後になります。ハード、ソフト、サービス、インフラ関係です。システムのサービス化に伴い、サーバーやソフトウェアを一般企業が保有する形態ではなく、ベンダーが一元的に提供する傾向になってきております。
MicrosoftによるWindows10への乗り換え、というか無料アップデートも対応が終了しております。またWindows Server 2016が販売開始され、ライセンス形態が大きく変更されています。ライセンス携帯の変更というのは、今までプロセッサーかなにかの回数で契約していたのが、コアと言われる、今一つのサーバーに色んな頭脳が入っていますので、性能によって課金されるという契約が、金額が上がるというシステムに変わっていくそうです。
17年の展望としましては、Windows7と8.1と10を混在利用する企業が増加し、ソフトウェア導入時において対応確認事項が増加する見込みです。コスト削減の目的で、サービス利用によるシステム更改の需要が高まる見こみというふうに仰っています。またクラウドサービス、マーケットは成長を続けておりまして、2012年、USドルで217ミリオンあったものが、17年にはUSドルの1.1ビリオンに達することが予想されます。さらに多くの企業でクラウドサービスの導入が進むというふうに見ております。
最後に来ました。この副題の、「景気回復に向けて、いま為すべきことは?」ということで、我々運輸サービス部会、色んな意見が出されまして、それをまとめたのがこのコメントでございます。 最低限の機能を残した組織を維持して、品質・キャッシュフローの悪化を防ぎ、景気回復を待つ。労働法改正、年金制度改革案の採用に期待する。モバイルを活用した新たな商品やサービスなどの開発による新市場の創出を行っていく。
あとは、魅力的な商品を創出して需要喚起を行っていく。次は旅行の方ですね。ブラジルへの旅行者呼び込みのハードルとなっています、治安の安定化、ビザの簡略化要求を継続し行っていきましょうと。あと、国際法にならって標準化を進めるように、強くこのブラジル政府に促していきましょうということが出ました。
今話した内容は、先程皆さんの発表の中にも同じようなものが出ていたんですが、決して我々の業界独自の内容ではなくて、色んな場面、色んな業種さんに通じるところがある方向性であると思っております。
これをもって、運輸サービス部会の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
司会
細谷さん、どうもありがとうございました。ご質問等ございましたらお願いいたします。よろしくお願いします。
質問者
スターツピタットハウスの森口と申しまして、駐在員様の住宅の斡旋を行っております。先程の資料によりますと、南米においては今年も駐在員の流入の減少が見られるというお話でしたが、実際に御社の引越の状況から勘案しますと、サンパウロにおける駐在員様の増減の傾向はどの程度とお考えでしょうか。よろしければお教え下さい。
細谷部会長
2014年のワールドカップがございましたよね。あれが終わった辺りから、こちらからの輸出、帰る人ですね、帰る人の数の方が入る人よりも多くなってきているんですよ。そして2015年、2016年と、大体数字ばーっと見てみると、帰る人が10、入って来る人が8.5ぐらいの比率で来ています。
今2019年の引越の、オーダーというんですかね、受付とかを見ていると、普通受付あった時に、帰る人があれば来る人の情報もあるですけど、10対9ぐらいですかね、という比率です。皆様も送別会の時に、後任者いないよという話があると思うんですが、そんな比率だと思います。以上でよろしいですか。
司会
はい、他にご質問ございますでしょうか。
細谷部会長
確かに、8.5から9ぐらいに変わっているので、景気は良くなっていくはずだと思います。
司会
ありがとうございます。よろしいでしょうか。今の話、海運は引き続き世界的な需給との兼ね合いでやや厳しい。それから航空貨物は輸出増もあるので、多少上向き。航空旅客、旅行、ホテルはオリンピックの反動で利用率が若干低下と。全体観としてはやや厳しいけれども、景気回復に向けて備えると、こういうお立場、こんなような総括でよろしかったでしょうか。どうもありがとうございました。
続きまして、建設不動産部会、奥地部会長様、お願いします。
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建設不動産部会 奥地正敏 部会長
皆さん、こんにちは。今年から部会長を引き継いでおります、戸田建設の奥地と申します。本日はよろしくお願いいたします。
それではまず、今日の発表内容でございます。まず、建設不動産部会として2016年の回顧と17年の展望ということで、まずは建設市場、そして不動産市場の現状をご説明いたします。それに基づいて、部会の皆さんのご意見、あるいはその動向ですね、その辺を説明をさせていただきます。
あと、本日の趣旨とちょっと異なりますけれども、弊社が今ジャパン・ハウスの施工を承っておりまして、今年の2月末に完成の予定です。この辺の、建築としての魅力ですね、ジャパン・ハウスの建築としての魅力を一部ご紹介させていただければというふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず最初に建設市場の現状ということで、これはGDPの成長率、あるいはこの失業率、そして建設コストの数字の面から見ていこうと思います。
このグラフは実質GDP成長率ということで、グレーが建設業のGDPの変化。黄色が全体の変動ということになります。どちらもやはり2014年を境にして下落傾向にありまして、全体のGDPとしましては、最新の数字で去年でマイナス4.3という数字が出てきております。これに関して、特に建設業の特徴としましては、悪い時により悪くなるというような傾向がありまして、2014年以降ですね、一般のGDPよりもさらに悪い数字を示しているということですね。
ですが、好調な時にはですね、経済好調の時には比較的伸びがいいんですけども、まあ悪くなるとやはり一般より悪くなってですね、より回復が遅れるというのがこの業界の、何と言いますか、流れかなというふうに感じております。
続きまして、これは失業率ですね。これは、去年の暮れに発表がありまして、全体の失業率が12%ということで、ブラジル全土の失業者数は1230万人に達しているということになっています。この中でもやはり建設業界というのは、まあワースト1位の、失業率は14.5%という数字になっております。これを裏付ける数字として、倒産した建設会社ですね、特に昨年は多かったんですけれども、1300社以上の会社がですね、倒産をしているというような現状があります。
次にこの、建設コストの推移ということで、2007年から昨年までの10年間の推移を表しております。この棒グラフは平米単価ですね。平米の建設コスト。このオレンジが建設コストの上昇率を表しております。このグレーが一般の物価上昇率、まあインフレ率ですね。これを表していると。ということで、やはり経済が良い時はですね、建設コストもより上がっているんですけれども。まずは建設コストですね。10年間で約1.8倍になっているということで、これはインフレ率とほぼ一緒の数字ということでございます。
コストの変動に関しましては、経済が良い時はより大きな上昇率を示しているんでございますけれども、特に経済が悪くなると急激な市場の冷え込みがありまして、まあ価格の抑制が起こって来るということですね。コストは上がっているんだけれども、抑制が効いているということになっているということでございます。
これは当社のデータなんですけども、建設コストの内訳の平均でございます。大体建設コストとしましては、人件費、資材、材料ですね、それと一般管理費とレンタル費ということに分けられますけども、特徴的なのは、昨年、人件費が半分を超えているということですね。56%という数字になっています。これは、一般的な日本の数字でいきますと、大体人件費は3分の1程度なんですけども、やはりブラジルの人件費の高さということで、こういう比率になっているということですね。
これが人件費と資材費の変動率ということで、これ2012年を境にですね、従来は資材費の方が、鉄骨とコンクリートですね、このコストの方が大きかったんですけども、2012年を境に人件費の方がどんどん増大をしているという状況になっているということですね。
これは、2012年から昨年までの4年間でどれぐらいコストがアップしたかということで、資材費、これは12.4%のアップ。これはインフレ率よりちょっと低い数字ですけれども。それに対して人件費ですね。これが41.3%も上昇していると、4年間で、ということでございまして、全体では、建設コストで4年間で27.8%の上昇になっているということでございます。
一般に建設コストとして、まあメーカーのお客様が工場を建設する時のコストとして、これは当然為替の条件もありますけども、まあざっくり言いまして、日本で工場を建てる場合を100としますと、大体東南アジアの場合は70~75というぐらいの数字になります。
ところがブラジルの場合は、90~95ということで、まあ場合によっては日本とあまり変わらないコストになってしまうという。大きな原因はこの人件費とですね、あとは税率の問題ですね。大きな要因があるということでございます。
これは当然ブラジルコストとして、まあここにおられる皆さんは当然ご理解していただけると思うんですけども、これが日本から初めて進出するお客さんに中々説明するのが難しくてですね、我々見積もりを持っていきますとですね、必ず言われるのが「戸田さんえらく高いね」というようなご意見をいただきまして、中国の工場だったら半分でできるよというようなお話をされるんですけども、これは決してうちの見積もりが高い訳じゃなくて、こういう要因があると。まあ皆さんご理解いただけるかというふうに思っております。
次に、不動産市場の現状ということでございます。これは不動産の、青が販売ですね。このオレンジが賃貸価格ということになりますけども、全国的に見ますと、賃貸価格の上昇は2014年でストップしているような状況でございます。販売価格に関してはやはり、頭打ちになっているというような状況ですね。
地区別に見ますと、まあ大都市のサンパウロとリオですけども、サンパウロでは賃貸価格が去年ぐらいから幾分か下がっているような状況ですね。リオに関しましては、もう去年から下降傾向が続いているということで、まあ一部オリンピックの部分的な需要というのはあったんでしょうけども、年間を通しますと去年からもう下降傾向にあるというような状況で、中々不動産に関しても芳しくないような状況です。
あと、これは工業用地の価格。サンパウロの周辺の価格でございますけども、大体2年前に比べて約20%ダウンしているような状況ですね。レンタル工場の賃料にしても、やはり10%ほどダウンしているということで、新たに工場を作られるお客さんにとっては、まあ良い条件になっているということが言えるかと思います。
3番目として、部会内の動向ということで、まあ経済についての各社の意見と、それと政府への課題、お願いしたい事ですよね。それと部会様の業績。それと回顧と展望ということで進めてみたいと思います。
まずは、これは部会員のアンケート調査でございます。今後どうなるかということでございますけども、多いのはですね、変わらないということですね。約47%ですね。これは、今年は去年と変わらない状況であろうという回答でございます。それに対して、良くなるというのが大体3分の1ぐらいですか、これは経済政策等でですね、良くなっていくんじゃないかということですね。で、まだまだ厳しい状況が続くんじゃないかというのがこのぐらいの部分ということで、中々、今年も厳しい認識をされておるということでございます。
次に、政府に期待したいことということですけども、大きく集約して4つですね。まずは、対外的な信用を回復することということですね。それと、経済政策を打ち出してほしいということで、特に建設に関係するのがPPI、あるいはMCMVですね。この辺を強力に進めてほしいということと、制度改革ですね。これは年金、労働法、あるいは税制ですね。この辺の改革を進めていってほしいと。あるいは、先程のブラジルコストですね。これは税金と人件費になりますけども。そのほかにも、インフラの不備とか、教育の不備、あるいは高金利ですね、この辺を是正をお願いしたいということが挙げられています。
次に、これは部会員様のですね、業績の推移ということで、2015年と2016年の実績と、あとは2017年の期待値ですね、どれぐらいいくかという数値を表したものでございます。大体右肩下がりになっているというのが現状ですけども、特にプレハブ業界様ですね、これはオリンピックの景気が良かった時の反動でかなり去年は落ち込んだというような事情があります。あと、例外なのは特殊技術ですね。これはCGCさんなんですけども、これは特殊な止水技術、日本独自の技術でございますけども、これを使って、リオの地下鉄とか、そういった止水の工事をやっておられる。業績としてはかなり伸びているというような状況になっております。
各業種さんの回顧と展望ということで、2016年と、それに対して2017年に向けてどういうことをやっていくかということでございます。
建設に関しては2社ですけども、これは設備投資抑制により工事が非常に減っているということと、受注競争の激化によって利益率が大幅にダウンしているというような事情があります。あるいは、工事が小規模化している。あるいは日系企業の仕事はほとんどなくなっているというような現状ですね。
それに対して、対策としましては、価格競争力をより向上させるということと、営業拡大に注力。これはまあ日系企業だけでなくてローカル企業に注力するとかですね、あるいは工場だけではなくて、病院とか学校、他の用途も取り込むというようなことでございます。
これはホス建設さんの昨年の竣工の実績でございますけども、例えばユニリーバさんとかですね、Ambevさん、ピレリ、グッドイヤーというようにですね、多国籍の企業、あるいはブラジルの企業の仕事を取り込んでおられまして、大体非日系の仕事で8割を確保しているというような状況ということでございます。
次は不動産ということでございますけども、工場用の用地としましては購入、レンタルともに需要今ほぼない状況であるということですね。あと、これはアパートの方ですけども、駐在員減少に伴う業務依頼の減と。ただ、借り換え需要ですね、これは安定しているというような状況でございます。
今年に関しましては、新事業で売上増ということで、これは仲介だけではなくて、オーナー事業でですね、より売上を拡大しようというような方策を立てておられるということでございます。
あと、プレハブ業界さんですね。これは先程言いましたように、オリンピック需要が終わりまして、新規需要、新規受注、これがなくて、非常に昨年は厳しい状況であったということですね。これに対しても、営業を強化するということと、クロージングというのは、案件はあるけどブラジル企業というのは中々すぐ決めてくれないと、まあずるずる行っていると、これを何とかクロージングに持ち込みたいというようなご意見でございます。
あと、サッシ業界さんですね。これはYKKさんなんですけども、これほとんどアパート向けのサッシですので、不動産市場の低迷でですね、受注が2割減しているというような状況です。これに関しては建設市場の回復を待つしかないというようなご意見でございます。
あと、やっぱり特色がありますのは、というか特筆すべきはこの特殊技術ということで、CGCさんですね。前部会長の藤井さんの会社でございますけども、大型工事の受注で売上、完工ともに好調と。で、売上は4年間連続右肩上がりということで、これはリオの地下鉄を去年止水工事をやられたということで、大幅に売上が上がったということでございます。
今年も大型工事、これはサンパウロの地下鉄工事ですけども、その辺がこれはどうなるかちょっと分かりませんけども、まあ状況によりますよね。これを受注できたら大きな仕事になると。あとは下水道の小型工事もかなり数が出ているということで、見通しとしては明るいということでございます。
今後、日本企業が生き残っていくヒントとしてですね、やっぱりこのCGCさんのやり方というのは一つ大きなヒントになるんじゃないかというふうに思っています。というのはですね、日本の独自の先進技術ですね、これはやはりブラジルにはない技術を持ち込むことで、やはりローカルの企業と差別化をしようと。価格競争に陥らない売り込みができる、営業ができるということかと思います。
建設業界のキーワードとしては、これからやはり環境技術、あるいは省エネ技術ですね、この辺をブラジルに対して売り込んでいくということが重要じゃないかというふうに考える次第です。それにはやはり、我々の業界だけじゃなくて、例えば空調機メーカーとかですね、あるいは太陽光発電のメーカーさんとかと一緒になって、オールジャパンでこういう技術を売り込んでいくというのが今後重要になっていくというふうに考えております。
ここで、部会の発表は終わりまして、ジャパン・ハウスの建築としての魅力をちょっとご紹介をしたいと思います。
ジャパン・ハウスはご存じの通り、今年の5月にオープンということで、商工会議所でも新年会において中前総領事、あるいはアンジェラ館長の方から事業のご説明があったと思います。皆さん、その辺に関してはよくご存じかと思いますけども、今回この建築にスポットを当てて、建築としてのどういう魅力があるかということをちょっとご紹介したいと思います。
まずはその設計者ですね。これは皆さんご存じと思いますけども、隈研吾さんということで、日本を代表する建築家の一人でございます。代表作としましては、最新のものでは去年かなり話題になりました新国立競技場ですね。これがもう着工をしております。あとは、これは新しい作品ですけども、新品川駅が今度できるんですね。新駅が。これの駅舎ですね、これの設計が決まっているということでございます。
隈さんの建築の特徴としましては、このように木とか石とか自然素材をふんだんに使った、柔らかな建築と言っておられますけども、例えば安藤忠雄さん、もう一人代表的な建築家いますけど、彼のコンクリートの建築と両極端をなすような柔らかい建築というのを主張されている先生でございます。
隈さんの設計なんですけども、一番特徴的なのはこの檜のファサードですね。これ今完成して外から見れますけども、これが一番建物として特徴的なファサードになっています。
これを施工しましたのが中島工務店さんということで、これは日本の岐阜の中津川に会社がある工場でございまして、報道でも言われている通り、皆さんご存知かと思いますけども、一昨年から去年にかけてイビラプエラの日本館の修復工事をボランティアでやられていたという所ですけども、その時に偶然隈先生が訪れましてですね、中島工務店の社長がおられたんですけど、その人と社長と意気投合しまして、急遽この檜を使ったファサードに変更になったというようないきさつがあります。これは元々アルミパネルの、金属パネルのファサードだったんですけども、これが木材に変わったということですね。
これが通称地獄組みと言われまして、これは釘を使っていない日本古来の木材の組み方ですね。実際ボルトを補強で使っているんですけど、こういう形で大工さんが5人、このはっぴを着ている大工さんが5人来られまして、組み立ててもらったということでございます。
これは去年の11月から今年の1月までやってもらったんですけども、ひとつは、先程細谷さんのお話にもありましたように、税関のストがありまして、この木材がサントス港に1カ月留め置かれまして、非常に工期的に切迫した状況になったんですけど、この大工さん非常に頑張ってもらいまして、正月返上で、休日も返上でやってもらいまして、何とか1月末にですね、全体の姿を現したということでございます。本当によくやってもらったと思っております。
もう一つこの外壁として、これはコボゴブロックということで、これはブラジルの伝統的な素材ですね、穴あきのブロックです。これは風通しが良くて、よくブラジルでも使われていますけど、住宅とかに。これを新たに隈先生がデザインしまして、特注のコボゴを焼いて、この外壁に使っているということですね。
これは内側から見た写真で、これ内側にはガラスのカーテンウォールが入っていて、その外側にコボゴがあるということで、隈先生の建築の特徴として、現代的なガラスのカーテンウォールと、素材ですよね、例えばブロックとかあるいは木材とかの組み合わせ、これが非常に対照的な組み合わせで、隈建築の特徴の一つということになります。
もう一つ、建築で特筆すべきなのは、この内装で和紙パネル天井というのを使っています。これは、小林さんという方がおられまして、越後の門出というところで和紙を作っておられる非常に有名な和紙職人さんですけども、この方が、ブラジルに来ていただいて、これを作ってもらったということでございます。
これは製作風景なんですけども、作り方としては和紙の塊を日本から空輸しまして持って来まして、これはうちの倉庫なんですけども、そこで一旦水に溶かします。その上で、このワイヤーメッシュというか、金属のメッシュですね、これに和紙を貼りつけるわけですけども、こうした形でメッシュを作っていくということですね。
これができあがった和紙のパネルということで、このようにメッシュ状に和紙が巻きついていると。非常に見た目も斬新な内装材ということで、これを天井とか、あるいは壁に現在ジャパン・ハウスでは使っているということでございます。
中島工務店さんもそうですけども、これはうちの社員と作業員ですけども、一緒に作業をして、やっぱり彼らも本当の日本の職人ですよね。職人の、何と言うか、スピリットというか、そういうものを非常に感銘を受けたということを彼らも言っていますので、うちとしても非常に良い機会に恵まれたというふうに思っております。
これが内装のイメージですけども、ここに和紙の天井が、これはメインのホールですけど、ここに使われるということになります。
最後のこの写真ですけど、この裏側のビルに壁画がありますが、これ、皆さん誰かご存じですかね。これ、書いてありますけど、オスカー・ニーマイヤーさんといって、ブラジルを代表する建築家でございます。もう3年前に確か101歳で亡くなられていますけども、ブラジリアの建築群ですね、あれはほとんどこのニーマイヤーさんが設計をされたということで、このニーマイヤーさんの肖像の下に今ジャパン・ハウスが建っているということになっています。
ジャパン・ハウスの大きなテーマとしてですね、やはりブラジルの文化と日本文化の相互理解というのが一つの大きなテーマになりますけど、この構図はやはり象徴的なものを表しているんじゃないかというふうに思っております。
最後になりましたけど、ジャパン・ハウスの見学会を3月15日の16時からやることになっています。これは先週のカマラの昼食会の後にメールで皆さんに募集しましたけども、ちょっと予想外で、その日のうちに定員を超えてしまいまして、今ちょっとウェイティングリストに載せていただいている状況ということになっています。
今ジャパン・ハウスの事務局とちょっと協議をしていまして、定員を増やして開催するか、あるいは日を分けるかということで、ちょっと今協議中ですので、しばらくご連絡をお待ちいただきたいというふうに思っていますので、是非よろしくお願いいたします。
それでは私の発表をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
司会
奥地部会長どうもありがとうございました。ご質問等ございますでしょうか。建築コストが引き続き上昇していると。それから不動産市況は全体的に低調であるけれども、逆に工業用地の取得には良いタイミングかもしれない。
それから部会としての経済の見方は概ね、引き続き厳しくて、特殊技術を除くと昨年の業績も全体的にはご苦労も多かったと。今年に向けては新規事業の投入、日本の技術も生かした営業強化を図られるというお話であったかと思います。どうもありがとうございました。
それでは最後になりますが、繊維部会、南村部会長様、よろしくお願いします。
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繊維部会 南村幸彦 部会長
皆さん、こんにちは。ただ今ご紹介いただきました、繊維部会部会長を務めております東洋紡ブラジルの南村と申します。皆様結構お疲れのことと思いますので、できるだけ簡潔に発表いたしますので、どうぞよろしくお聞きください。次お願いします。
発表は、2016年の回顧、2017年の展望、副題の3部構成にて、それぞれスライドに示した項目別に行いいます。では次のスライドお願いします。
まずは世界の綿花動向を説明します。こちらにお見せしているグラフは、2012/13綿花年度から2016/17綿花年度、この間の綿花の消費量の推移を表したものです。この期間、ご覧の通り消費量はほぼ横ばいでございます。そのうち中国がおよそ3分の1程度を占めておりました。ただ、スライドの下の方に、ちょっと見にくくて恐縮ですが、書かせてもらいましたけれども、綿花の輸入量ではバングラディシュ、ベトナム、これに次ぐ第3位のところまで下がっておりまして、中国の影響力が緩和されたと言えるかと思います。では次のスライドをお願いします。
次のグラフは、同じく2012/13綿花年度から2016/17綿花年度までの季末の在庫量の推移を表しています。グラフの上に矢印を書いているんですが、この折れ線グラフは国際綿花価格の代表的な指標であるニューヨーク綿花相場の推移を表しています。綿花の余剰在庫の減少傾向が続いておりまして、ニューヨークの綿花相場は右肩上がりの高値で推移いたしました。
需給のバランスを見ますと、2017年は堅調な相場動向を予想しますけれども、これまでの各部会のご発表にもありましたように、アメリカのトランプ政権の下での経済政策、またそれに伴う為替相場、そのあたりの動向次第では綿花相場も影響を受けるということが懸念されます。次のスライドお願いします。
続きまして、ブラジルの国内の綿花動向がどうなのかということを説明いたします。こちらは各年の綿花の生産量と綿花相場の関係を示しています。2016年シーズン、ブラジルの綿花生産量は、バイア州、こちらの不作が響きまして、前年比でご覧の通り減少いたしました。同時に、経済不況であったり、繊維メーカーの撤退あるいは減産によって需要の方も減少したんですけれども、国内への綿花供給は不足気味となりました。
ブラジルの綿花農家さんは、国内市場よりも輸出に優先的に出荷される、そういうところがございまして、それが綿花不足の原因でございます。このことから、原綿の価格はブラジルにおいても高いレベルで推移しまして、綿糸、綿の糸の製造原価を上昇させることとなりました。次お願いします。
続きまして、次のテーマである綿糸価格の動向の説明に移ります。綿の糸といいますのは、より上質なコーマと呼ばれる種類の糸と、中程度の品質のカードと呼ばれる糸の2種類に大別されます。コーマの糸の方を赤色、カードの糸の方を青色でそれぞれ価格をグラフで示しております。
ご覧のグラフはその糸の市場価格の推移なのですけれども、2016年、先程ご説明しました通り、原料である綿花の相場が上昇いたしました。これに伴い糸の市場価格も、ご覧の通り上げ基調であったと言えるかと思います。とは言うものの、ブラジル国内のローカルの紡績会社さん、こちらの方が安値販売で攻めてまいりまして、価格競争の方は非常に厳しいものとなって、2016年、先程申し上げた綿花コスト、この綿花のコストの増えた分を補うほどまでには綿糸の価格というのは上がりませんでした。
ただ、2016年下半期になりまして、受注環境の方がまあ良くなりました。スライドの一番下に書かせてもらいましたけれども、ちょうど為替相場がどうなるかちょっと分からない状況だったので、輸入品、特に衣料品の輸入品が減りまして、そのことによる国内生産回帰が生じて、綿糸の受注は堅調になったという2016年の下半期だったと思います。では次のスライドお願いします。
続きまして、ブラジルの繊維産業、これを説明する上で欠かすことのできない輸出入の動向、これを繊維の種類ごとにご説明いたします。まずは綿糸の輸出入の動向です。2016年の綿糸輸出は、レアル安が続いて南米諸国向けの輸出が好調に推移いたしました。このため、数量・金額ともに、ご覧のグラフの黄色で表した通り、大幅に増えました。逆に綿糸の輸入は、市況の低迷もありまして、20%を超える減少となりました。
2017年の展望ですけれども、レアルが反発してきて、非常に輸出の採算が悪化しております。そのことから綿糸の輸出は、2015年から16年に見られたような、このような勢いをなくすだろうというふうに思っております。他方で、紡績糸の需給タイト感が増せば増すほど、輸入の方が増えるということが考えられます。次お願いします。
次のグラフは合成繊維。ポリエステルであったり、ナイロンであったり。そういった合成繊維の輸出入の動向でございます。2016年、衣料品、総じて国内消費が悪化しました。有力な企業であれば、こういった繊維であっても輸出に活路を求めようとしたんですけれども、為替の動向、影響を強く受けまして、特にレアル安からレアル高に持ち直したことで成約は低調なままに終わりました。2017年も、どうも需給の改善は期待が薄いなと考えておりまして、今の為替水準が続きますと、綿糸でご説明した時と同様、輸入増、国内生産減となるおそれがございます。次お願いします。
こちらのグラフは、ニット生地と既製服の輸入の動向です。これまでの綿糸、合成繊維と同様に、ニット生地の輸入は19%ぐらい、既製服の輸入はこれは43%という非常に大きな減少となりしました。こちらも消費の停滞によって小売業界の売上がダウンして、大統領が罷免された後で少しは環境良くなるかなという期待もあったんですけども、為替と同様、先行きどうなるか分からないという不安から、このマーケットは2016年、回復することはありませんでした。次のスライドお願いします。
次はファスナー。ジーンズとかジャケットに使われるファスナーの輸入の動向です。 14年から15年と同様に、15年から16年にかけましても、ブラジル全体の景気低迷、これが続いて、消費が冷え込んだ。それによって、国内のジーンズやジャケットを製造されるアパレルメーカーさんの生産が減少し、そのことでファスナーの輸入も14%、前年同期で減少した。というのが2016年でした。消費の低迷というのは中々、衣料品の場合には回復しがたいところがございますので、本格的に国内の生産が回復するのはまだ先であるというふうにみられております。次お願いします。
2016年の総評でございますけれども、原料高と製品安が年間を通じて継続いたしまして、繊維事業にとっては厳しい1年間であったと言えるかと思います。ブラジルの景気後退が続く中で、上からは家計購買力が低下し、衣料品に使うお金が減りました。
日本のちょっと景気の悪かった時もそうなんですけれども、たいがい家計を預かる主婦の皆様は、景気が悪くなってきたなと感じると、衣料品、服を買うタイミングをちょっと1年ぐらいずらすと。衣服というのは結構丈夫にできておりまして、1年、2年ぐらいなら去年のやつ、一昨年のやつを着ていても問題ない。
日本企業の衣料品の技術というのは非常に高いものがありまして、それが逆に景気の悪い時には、会社にとってはマイナスに作用して、何年たってもくたびれない、穴の開かない靴下なんていうのは本当に作っていいのかなと、作っといていいのかなと思ったりもするんですけれども、まあそういうことで衣料品支出が下がって、そうすると、服の値段が下がると、アパレルメーカーさんは当然糸とか織物の値段を下げてくれというふうに言ってきますので、糸と織物の価格が中々上がらない。上からぎゅーっと押さえつけられて。
他方で、さっき申し上げましたけれども、ブラジルの綿花については国際競争力がすごくついたものですから、綿花農家さんは輸出の方でお金儲けしようとして、国内の方に中々良い綿花、ここらへんが回ってこないものですから、供給不足ということで綿花の値段はぐっと上がる。
これまでの部会の皆様の発表にもありましたように、人件費というのは毎年確実に上がると。おまけに、一番右に書きましたけれども、ニューヨークの綿花相場もずーっと高いところにあるということで、下からはグーッとコストインフレに突き上げられて、上からはモノの値段が中々上がらないということで、間にはさんで我々繊維事業というのは厳しい1年でございました。次お願いします。
続きまして、発表の第2部である2017年の展望を説明いたします。次お願いします。
2017年の展望ですけれども、まず世界の綿花需給、こちらの方は前季に続いて消費が生産を上回ると。そのことによって在庫は減少すると予想しています。需給バランスから堅調な相場動向になるんじゃないのかなというふうに見込んでおります。
また、国内の綿花需給についても、7月後半、新綿がそのころ出るんですけれども、それまでは特に高品質品の供給が不足するんじゃないかという懸念を持っております。
レアル高につきましては、これまでも発表いたしましたけれども、綿糸と製品の輸入がまたぞろ増えてくるんじゃないのかなと。そのことによって国内生産と価格に大きなマイナス要因となるというふうに思っております。
ただ、綿糸の市況そのものにつきましては、先程カード糸とコーマ糸の赤と青のグラフでお見せしました通り、底打ち感が見られて、非常に良い状況が出るのかなと思うんですけれども、このあたりは各社さんによってまちまちでございまして、部会としてはもう少し先になるのかなというふうに思っております。
最後に、2017年、繊維業界におきましては、今まで申し上げてきた輸入品との競合もさることながら、ブラジルのローカルの紡績会社、こことの価格競争がこれまで以上に激しくなる、そういうふうに言えるかと思います。次のスライドお願いします。
では最後の第3部、副題につきましては、課題整理と業界の取組みの順に発表いたします。次お願いします。
まず課題整理として4点を挙げさせていただきました。一つ目は、汎用品を中心に輸入品が増えまして、販売競争が激化して、市場シェア、販売量が減るというところでございます。
2点目は、複雑な税制、労働コスト、未整備なインフラといったブラジル特有の阻害要因が挙げられます。
3点目は、この新しい市場をどうやって創り出すのか、15年16年のようなブラジル国内の不況、こういう時にも、強い販路、こういうものをどうやって見出すかということだと思います。
あと、4点目は、繊維部会特有の課題だと思うんですけれども、糸だけでは、綿糸だけでは中々付加価値を出せない。日本の消費者のように、はっきり言って目の肥えた、非常に、手触りとか光沢にこだわる消費者の方にとっては、この綿糸とこの糸はだいぶ違うと、だからそういうものについて高いお金を払うということがあるんですが、中々そういうものはブラジルでは難しいので、衣料品トータルで付加価値を表現する。そうすることによって国内不況に強い業態に変わりたいと、これが4つ目の課題でございます。次お願いします。
最後はその課題に関連して、業界としての取り組みをまとめました。一つは、高機能製品、先端素材、こういう市場を開拓すること。二つ目はブラジル企業として実務経験を蓄積して、先程申し上げたブラジル特有の課題、こういうものを解決できるような、そういう社内体制を築くこと。
あと、三つ目は、どうやって新しい販路を見つけるかということなんですけれども、アパレルメーカー、その他加工メーカー、繊維業界の中の有力企業と連携する。営業活動を強化する。そういうことで、特に海外市場、アルゼンチンをはじめとした南米市場への販路を拡大するということが必要かと思います。
四つ目は、輸入衣料、今トップセンターのところにあるForever21とかH&Mとか、衣料品全体、世界的に衣料品というのは、その時代その時代一番安く作れるところで大量に作って、それを全世界に輸出する。だからブラジルもかなり輸入衣料品の浸透率が上がってきております。それに対抗するために、国産品への回帰を呼び込むということで、業界を挙げて国産品のキャンペーンを提案する、そのようなことに繊維業界としても協力していくということが我々の為すべき取り組みの一つではないかなというふうに思っております。
ではこれで繊維部会の発表を終わりたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。
司会
どうもありがとうございました。ご質問等ございますでしょうか。今のご発表ですけれども、2016年のブラジルの綿花相場が上昇し、綿糸の製造原価が上昇してしまったと。
一方でブラジル国内の紡績各社の安値販売で競争が激化していると。その意味で各社様まだご苦労されている局面におありであるけれども、今年に関しては、他国を含めた販路の強化であるとか、先端素材など付加価値創造を通じて基盤強化に取り組まれると。こういったお話であったかと思います。どうもありがとうございました。
以上で11部会の発表を終わります。皆様、大変ありがとうございました。ここで、ブラジル日本商工会議所の名誉顧問で在サンパウロ日本国総領事の中前隆博様よりご講評をいただきたいと思います。中前総領事、よろしくお願いいたします。
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講評 中前隆博 在サンパウロ日本国総領事
皆様こんにちは。今日はお招きをいただきましてありがとうございます。毎度ながら、いつも遅刻をいたしまして、大変申し訳ございません。今日お話を伺いまして、そこで伺いましたこと、それから、これまでの各部会の会合に私どもの館員が、当館の館員が出席をさせていただきまして、色々お話を伺いました。その報告も一つ一つ注意深く読ませていただきました。
それを踏まえまして、私感じます事は、個々の業界の皆さんによってまだ評価に様々な差があるかと思いますけれども、概ねのトレンドとしてはやはり、景気回復が近いと、それを前提にどうするかという行動方針にマインドが変わりつつあると。いつ良くなるんだろうかというこれまでの議論とは違うものを強く感じております。
まさに、今回の副題であります、「景気回復に向けて、いま為すべきことは何か」というこの副題自体が、皆様方の概ねのコンセンサスを反映したものであろうかと思っております。
その中で、各社様それぞれ基盤の強化をされながら、新しいビジネスの発掘を模索されると。そこで日本の強みは、日本独自の品質の重視の文化であり、独自の先進技術を用いた、そういう形での差別化であろうというふうに伺いました。
そういうふうに認識をさせていただいた上で、当面の私ども日本政府として、あるいは大使館と総領事館の行動方針といいますか、大きなアジェンダとして、以下の三つ、注目点といいますか、留意点、以下の三つを申し上げたいと思います。
一つは、言うまでもなく、ジャパン・ハウスでございます。これが今年5月に開館になります。先程建設不動産部会様から建物についてのご説明をいただいたところでありますけれども、私ども、これは、建物も素敵なものをお陰様で作っていただきましたけれども、その中に何を入れるかと、そこで何をやるかということがこれからとても大切なことだろうと思っております。幸い非常に優秀な面々を事務局にお迎えすることができて、非常に創造的な、クリエイティブな仕事をもって準備をしていただいているように思います。
二つ申し上げますが、一つは昨月アンジェラ・ヒラタ事務局長からご説明いたしました中にもありましたように、ジャパン・ハウスが伝える価値、バリュー、いくつかありましたが、そのうちの一つは品質とprecision、精密、この文化を伝えることというのがございます。
それから、もう一つはジャパン・ハウスの一つの大きなミッションの中に、日本の多様な魅力を提示するということでありますけれども、この多様な魅力というのは具体的に何かというと、民間のビジネスの皆様方の活力、それから地方の様々な魅力、これをもって訴えていくということでございますので、企業の皆様方とのこれからの、色々な形でのパートナーシップ、連携というのが非常に大きな勝負になると考えております。
事務局から様々な形でのお声掛け等、あるかもしれませんし、また積極的にジャパン・ハウスと対話を重ねていただきまして、どういう形のものができるのかということを是非一緒に追及させていただければと思っております。それが一つ目。
二つ目は、当館にとりまして大きなアジェンダの一つでありますけれども、来年は、2018年、これがブラジルの日本人移住の110周年にあたります。これに向けて当地の日系社会の方々は、これを記念すべく様々な準備をすでに始めておられる所でございます。
ご案内の通り、安倍総理大臣は2014年、それから2016年、2度にわたり中南米の各国を訪問されまして、日系社会との連携の重要性を強く打ち出しております。それを対した上で、私どもも様々な具体的な日系社会との連携を推進しつつあるところでありまして、またさらに、来月、3月には、その連携の在り方に、新たな連携の在り方に関する懇談会、これが東京で開催され、これからの日本と日系社会の方々の関係の在り方、これのコンセプチュアルな考え方の議論が行われることになっております。
私どもサンパウロ総領事館としましては、現在のところ引き続き、日系の若い人たちの指導力、これをいかに養成するかということ。それから地方の日系社会をいかに活性化するかということ、特に若い日系人の方々に、日系としての誇り、これをどうやって持っていただくかということ、それから最近増加傾向にございますが、在日就労ブラジル人の方々およびその子弟の方々をいかにご支援申し上げるか、その中には日系社会からご要望いただいている、4世以降の方々への定住ビザ、これの扱いをどうするかということも大きな課題でありますが、そういう所に焦点を当てて施策を考えていきたいと思っております。その中におきまして、企業の皆様方との意見交換も非常に重要なことだと思っておりますので、よろしくご協力をお願いいたします。
三つ目ですが、これは当館として何をするかというよりは、環境として注目いたしておりますが、今年1月に発足しました新しい市長、就任しましたジョアン・ドリア市長でありますけれども、この方の市政の運営の手法がこれまでと大きく違うことに注目をいたしております。ドリア市長はご案内の通り、ビジネスマンの出身で、いかに市政の中にビジネスの活力を取り入れていくかということを積極的に打ち出しておられます。
早速私も呼ばれまして、日本の企業の方々とどういう形で協力ができるだろうかという宿題といいますか、課題をいただいたところで、他の国の企業の皆さんともそういう話を進めている。主要なインフラを含めた民営化も積極的に進めておられる。そういう新しいアプローチに対して、各国の企業がどういうふうに反応するかと、しているかということも注意深く見ていきたいと思っております。
ご案内の通り、先週ドリア市長はアラブ首長国連邦に出張いたしまして、投資の促進、あるいは民営化について大きなキャンペーンを行ったところであります。4月には2回目の外遊として韓国のソウルを訪問する予定だということも伺っております。そういう活動の状況をみながら、新しい市政と日本との関係の在り方、これを改めて模索しなければいけないと思っている中で、また積極的に情報を収集し、また分析していく中で、企業の皆様方との情報交換、情報提供もさせていただければと思っております。
以上が、私どもとして当面重要なアジェンダとして認識している事項でございます。本日は色々とまた教えていただきまして、ありがとうございました。
今後とも、総領事館、それから本日は小林参事官も来ておりますけれども、大使館と一緒になりまして、どういう形で日本企業の方々をご支援できるかということは、これは非常に大きな政府としてのアジェンダ、課題でございますので、引き続きご相談させていただきながら、できるだけのことをさせていただきたいと思いますので、遠慮なくご相談にお出でいただければと存じます。どうもありがとうございました。
司会
中前総領事、大変貴重で心強いご講評をいただきまして、誠にありがとうございます。続きまして、在ブラジル日本国大使館の小林和昭参事官様よりコメントを頂戴したいと思います。よろしくお願いします。
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コメント 小林和昭 在ブラジル日本国大使館 参事官
ただ今ご紹介に預かりました、ブラジリアにある日本大使館で経済班で参事官をしております小林と申します。僭越ながら、コメントをさせていただきたいと思います。
今日は、会員の皆様がまとめられたレポート、プレゼンを聞かせていただきまして、大変勉強になりました。毎回出席させていただいておりますけれども、本当に感謝しております。
実はこの場に立たせていただくのは今回が7回目になります。1回目は2014年の2月。まだワールドカップの前で、オリンピックはまだちょっと先というような時期で、ブラジルはまだまだ成長していくんだろうと、その時は結構前向きな話を聞いておりましたが、その後ブラジルは政治の混乱に巻き込まれ、リセッションが続き、5回ほど続けて悲観的、少し暗いレポートを聞く形になっておりまして。
ただ、私は良い時代のブラジルに出会っていないので、その時のレポートがどうだったのか存じておりませんけれども、こういった厳しい中で皆様が知恵を出して、色々対処を考えていただいたその発表を聞くという、まさに皆様の知恵を見ることができて、日本人の強さというのをそういうところからも感じることができて、本当に心強く思っております。
さて、ブラジリアの状況をここで私お話するのがいいのかなと思って、毎回少しずつ話しておりますけれども、ここ半年の状況ですけれども、まずブラジリアでは皆さんご存じの通り、数々の制度改正、政治改革が取り組まれております。財政、労働問題、税制、まあ残念ながら減税の内容のものは多分全く出てこないとは思うんですけども、そういったものについて前向きに取り組まれています。
サンパウロにいると非常に支持率の低い政権で、ブラジリアはどういう状況なのだろうと感じることがあるかもしれませんけれども、関係者の皆様、官公庁、議員の人たちはですね、意外なほどに自信を持って、また自信に満ち溢れて今仕事をしている感じがあります。
これはラバ・ジャット事件等を通して、汚職などできない状況になって、政治に専念できる状況ができているからかもしれませんけれども、彼らは自信を持って今やらなければいけない政治問題、やっていこうという、今までにない雰囲気ができています。そういった雰囲気に乗って、やはりブラジルコストというのを少しでも解決してもらうように、我々も支援していく。そういう姿勢が必要なのかなと考えております。
また、10月にはテメル大統領は日本に訪日しました。急なことだったのでイベント的なことはあまりない、少し、まあ我々の目から見ると寂しいというところもありましたけれども、この相当早い段階での訪日というのはやはり日本重視をテメル大統領が示したということで、そういったところについては好意的に受け止めております。
テメル大統領も訪日に関して非常に満足していたと聞いております。その場ではインフラ関係についても覚書が結ばれて、今後そういったところでの協力が進んでいくことを期待しております。
もう一つ変わったことがありまして、ブラジル大使館の内部のことですけれども、大使が交代いたしました。新しい大使が到着して、1月には信任状を奉呈し、本格的な活動を開始しておりますけれども、現在ブラジリアで各関係閣僚の方々の表敬を始めております。私もいくつか同席しておりますけれども、どの閣僚に会っても日本への大きな期待というのを示されています。
我々としてはこの期待についてどうやって応えていくか、その中で、期待に応えて何かサービスしていくだけではなく、日本が何を要求していくか、そういったところを考えていかなければならないと思います。例えばAGIRについても実現のためにはもう一歩踏み込んだ行動が必要になると思っておりますので、今後皆様と知恵を出し合って、どのように連携してブラジルコスト解消に向けてやっていくかというのを考えておりますので、大使館等も支援していく予定ですので、是非引き続きよろしくお願いいたします。
今後は日伯間の大きな機会がございます。4月上旬には賢人会議、また日本の経済産業省とブラジルの産業貿易サービス省内での定期会合である貿易投資促進委員会の中間会合、5月はジャパン・ハウスが開所しますが、そのほかにインフラ覚書に基づく会合が予定されており、初夏になりますと農業対話、8月下旬にはクリチバで日伯経済合同委員会、また貿投委の本会合等、夏に向けてたくさんの日伯間のハイレベルでの協議がございます。この機会を最大限に生かしていきたいと大使館としては考えておりますので、皆様のご協力をお願いいたします。
日伯関係の良好な状況というのは、こういった不況の状況になっても全く変わらないものですし、今年はテメル大統領も非常に改革に前向きである。来年は選挙になりますので、どこまで進むか分からないので、まさに今がチャンスだと思っております。経済的には非常に厳しい状況でありまして、皆様そういった大変な状況の時に協力していきましょうというのも中々厳しい部分もあるかと思いますけれども、我々も色々とやれることはやっていきたいと思っておりますので、是非今後とも一緒に行動できればと思っております。
最後に、ブラジルの景気回復ができるだけ早く実現すること、また会員企業の皆様のご活躍を祈念しまして、コメントとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
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閉会の辞 小池淳介 総務委員長
小林参事官、大変ありがとうございました。本日は「景気回復に向けて、いま為すべきことは」をテーマに皆様より発表をいただきました。お話を伺っておりますと、ブラジルはまだ本格回復に程遠いということではあろうかと思いますけども、一方で回復の兆しは確かに見えてきているというのが共通認識かと思います。
是非カマラの会員企業の皆様、お互い協力し合いまして、オールジャパンで2017年を良い年にできればなというふうに思います。いくつかの部会から頂戴しました、カマラ、あるいは両国政府に向けた様々なご要望、これらに関しましては、松永会頭の下、政策対話委員会を通じまして、皆様と力を合わせて引き続き検討・対応させていただければと思います。本日は大変ありがとうございました。
なお、このあとの懇親会でございますけれども、先程のコーヒーブレイクの会場とその隣の部屋で開催されます。是非皆様ふるってご参加いただければと思います。ありがとうございました。