中南米の最新情報満載の中南米ビジネスセミナー開催

コンサルタント部会(西口阿弥部会長)、企画戦略委員会(大久保 敦委員長)並びにジェトロサンパウロ事務所(大久保 敦所長)共催による中南米ビジネスセミナーは、2018年3月14日午後2時から5時過ぎまでマクソウドホテルに100人以上が参加して開催。初めにコンサルタント部会の西口阿弥部会長が開催挨拶を行い、ジェトロ本部海外調査部主幹 竹下幸治郎は、「2018年中南米政治経済概況と中南米進出日系企業の経営実態調査結果」について、初めに2018年の中南米経済を見るうえでのポイントとして、メキシコや中米は原油価格並びに米国経済依存に対して、南米は鉱物資源や農畜産物の国際コモディティ価格に依存、南米資源国の近年の経済低迷の背景として、貿易収支や経常収支の悪化で通貨下落、インフレ並びに金利の上昇、消費低迷、生産減少による設備投資衰退の悪循環に陥っていた。

今年のラテンアメリカ諸国は、4月はコスタリカ大統領決選投票、パラグアイ大統領選挙、ベネズエラ大統領選挙、5月コロンビア大統領選挙、6月コロンビア大統領選挙決選投票、7月メキシコ大統領選挙、10月ブラジル大統領選挙、同決選投票と目白押しで大統領選挙の動向に注目。今年のブラジル経済はインフレ下降、金利引下げ、通貨高などで内需回復、雇用はサービス業、製造業、商業を中心に回復傾向。コロンビアは石油輸出に依存もインフレ、金利や為替レートも安定。ペルーは外需拡大による鉱物資源や農産物の輸出拡大。チリは、銅価格の回復による輸出額増加で対外収支改善、インフレや金利低下で輸入増加、耐久消費財の売上増加で景気回復予想。

今回の進出日系企業アンケート調査からみた中南米諸国のビジネス環境比較では、2017年のブラジル進出企業の営業利益見込みと他国との比較では、ブラジルの赤字は前年比半減、アルゼンチンの赤字比率は最小に対して、ベネズエラは最高の赤字を記録している。

2017年の中南米諸国の平均景況感は前年の11.5%から23.3%に倍増。チリの景況感は46.0%でトップ、次いでアルゼンチン31.7%、ペルーは26.3%、ブラジルは23.3%、唯一ベネズエラがマイナス21.5%と大幅に落ち込んでいる。

2018年の中南米諸国の景況感比較予想では、メキシコは51.4%でトップ、ブラジル並びにペルーが47.4%、コロンビアは43.4%、中南米平均は42.9%、ベネズエラは、継続してマイナス50.0%で景気低迷予想。今後1-2年の事業展開の方向性ではブラジルの上昇率がトップ。現地従業員、駐在員の増加傾向はない。直面している経営上の問題点として、チリでは内需拡大による競争の激化、アルゼンチンでは規制緩和の停滞。ブラジルでは現地での資金調達、対外送金、移転価格税制などが挙げられている。FPA/EPAの活用状況では、チリやメキシコが自由貿易推進している一方で、後れを取っているメルコスールの問題点などが説明された。

ブエノスアイレス事務所の 紀井寿雄所長は、「アルゼンチンの最新情勢と自動車産業」について、2013年以降の主要経済指標による問題点の指摘、マクリ大統領就任前の輸入規制、為替規制、融資の制約。マクリ大統領就任後の財政規律回復、債務返済による国際信用の回復、送金規制緩和、輸入規制緩和などの実施。懸念されるインフレ指数や予想を下回る経済情勢評価に対するマクリ大統領就任後の高揚感(ユーフォリア)季節の終焉。日本進出企業によるアクリ政権後のアルゼンチン再評価、拠点設立の動き、濃厚な投資再開の可能性。アルゼンチンの自動車産業は底を打って回復基調突入。アルゼンチン政府主導による2023年の年間100万台の自動車生産計画。日本とアルゼンチンの戦略パートナー「黄金の4年間」構想、アルゼンチンに向けた後押し材料として政府要人の往来、投資協定、租税条約、OECD加盟、日本・メルコスールEPA協定締結など保護市議経済から開放経済に舵を切ったマクリ政権との戦略的パートナ―などについて説明した。

サンティアゴ事務所の中山泰弘所長は、「チリの最新情勢とTPP」について、チリは資源国で農業国、26の国・地域と自由貿易協定を結んでいる自由貿易推進国で貿易額の93%を占めている。チリと日本との貿易では、日本はチリにとって第3位の輸出相手国、輸入は7位、チリから日本への輸出は銅鉱が50%以上を占め、サケが7.4%、モリブデン鉱3.9%。日本からチリへの輸出では乗用車、軽油、タイヤ。チリの貿易相手国は、輸出入とも中国が1位、米国は2位。チリは南米の自動車ショールーム。日智商工会議所の会員企業は76社、そのうち日系企業は56社、チリの投資環境メリットでは、安定した政治・社会情勢が中南米諸国では抜きんでて安定、優れた駐在員の生活環境、税制インセンチブが挙げられる一方で、デメリットでは、人件費や不安定な為替、行政・税務手続きの煩雑さ、治安、労働訴訟はブラジルよりも低いがデメリットなどについて説明した。

最後にメキシコ事務所の半澤大介所員は、「メキシコの最新情勢とNAFTA再交渉」について、メキシコの経済状況として、実質GDP成長率の推移、為替・インフレ動向、2011年以降の自動車産業向け投資では、生産拠点の強味として、労働コスト、FTAネットワーク、港湾整備、北米への陸路・鉄道アクセスが挙げられる一方で、弱点は高い輸送コストや電力コスト。2016年のメキシコの自動車生産は世界7位、中央高原のバヒオ地域に自動車メーカーが集中。2017年の自動車生産は393万台、輸出は310万台、国内販売は153万台。2020年の生産台数は460万台予想。メキシコは46カ国とFTA締結、TPP締結後は52カ国に増加。メキシコの自動車輸出は北米向けが84%、米国向けは75%。昨年の自動車関連の日系進出企業は1000社を突破、特にグアナファト州並びにアグアカリエンテス州に集中。自動車産業向け投資環境メリットでは、市場規模・成長性、安価な人件費、取引先企業の集中が挙げられるが、デメリットでは外国人・企業を対象とした犯罪、不安定な為替、高い従業員の離職率などが挙げられ、また現地調達率はアジアやブラジルと比べて低い点もデメリットに挙げられる。

エンリケ・ペニャ・ニエト大統領は、エネルギーや通信など11分野の構造改革を推進して発電事業への民間企業参入が容易となった。トランプ政権による米国の貿易赤字削減、米国の製造業や農業に対するカナダやメキシコ市場のアクセス改善のために2017年8月からNAFTA再交渉がスタート。メキシコのNAFTA再交渉スタンス。交渉状況や項目、また新たな交渉対象の新規項目、今年の大統領選挙スケジュールや有力候補の主張と情勢などについて説明した。

Pdfジェトロ本部海外調査部主幹 竹下幸治郎 「2018年中南米政治経済概況と中南米進出日系企業の経営実態調査結果」

Pdfブエノスアイレス事務所の 紀井寿雄所長 「アルゼンチンの最新情勢と自動車産業」

Pdfサンティアゴ事務所の中山泰弘所長 「チリの最新情勢とTPP」

Pdfメキシコ事務所の半澤大介所員 「メキシコの最新情勢とNAFTA再交渉」

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