2018年のブラジルの粗鋼生産は、前回4月の予想である前年比8.6%増加から50%減少の4.3%増加の3,580万トンに下方修正を余儀なくされたとブラジル鉄鋼院(IABr)のマルコ・ポーロ・ロペス会長は説明している。
今年の粗鋼生産が前回予想を大幅に下回る3,580万トンに下方修正された要因として、欧州委員会は米国が鉄鋼とアルミニウムに適用した関税に対抗する措置導入による保護貿易主義の台頭並びに回復が遅れているブラジル経済が牽引している。
昨年のブラジルの米国向け鉄鋼製品輸出は、約470万トンでカナダに次いで2番目であったにも関わらず、 米国政府は5月末に、ブラジルの鉄鋼製品に輸入量制限(クォータ)導入を発表した影響で、今年の粗鋼輸出は、前回予想の前年比10.7%増加から5.0%増加の下方修正を余儀なくされている。
今年のブラジル国内の鉄鋼製品販売は、前回予想の6.6%増加から5.0%増加に下方修正。また鉄鋼製品輸入はドル高の為替の影響で、前回予想の10.1%増加から5.3%増加の240万トンに留まると予想されている。
トランプ大統領は今年4月初めに通商拡大法232条に基づき、中国産を含む鉄鋼・アルミニウムへの高い輸入関税措置の発表、また6月、中国から輸入する1,102品目で500億ドル規模に対する追加関税を決定、更に7月6日、米国側は中国輸入品818品目340億ドル分に対して輸入関税を25%に引き上げた経緯があった。
トランプ大統領による中国産鉄鋼製品に対する輸入関税の引上げで、米国向け中国産鉄鋼製品のブラジルへの大量流入が憂慮されていたにも関わらず、今年上半期のレアル通貨に対するドル高の為替が防波堤となっている。
5月下旬から11日間継続したトラック運転手の国道封鎖抗議デモによる影響にも関わらず、今年上半期の国内鉄鋼メーカー並びに輸入鉄鋼製品販売は9.3%増加の1,010万トンを記録、今年上半期の粗鋼生産は、2.9%増加の1,720万トンとなっている。
今年上半期の国内鉄鋼メーカーの鉄鋼製品の国内販売は9.9%増加の880万トン、輸入鉄鋼製品販売は5.6%増加の130万トン、一方鉄鋼製品輸出は5.7%減少の690万トンに留まったが、輸出金額は16.0%増加の43億ドルを記録している。(2018年7月26日付けヴァロール紙)