米国議会は昨年末に35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案を可決、また米企業の海外所得への課税も原則として廃止を決定している。
米国の連邦法人税率35%から21%への大幅な減税政策並びに海外所得への課税廃止の採用で、米国企業による対外直接投資減少並びに米国内への資金流入傾向が明らかになってきている。
2017年の米国企業によるブラジル向け対内直接投資は、全体の15.7%を占めていたが、今年上半期のブラジル向け対内直接投資は、不透明や大統領選挙や連邦法人税率の大幅切下げで僅か6.6%に留まっている。2005年上半期の対内直接投資は全体の30%を占めていた。
ブラジルの法人税率34%は、G20諸国並びに Brics諸国の中でも最も高い税率であり、世界平均の22.96%を大幅に上回っているとコンサルタント会社EYは説明している。
米国では企業が海外で稼いだ利益にも課税する「全世界所得課税方式」で、米企業は海外子会社から配当を受ける際に35%の高税率が課せられていたため海外に2.5兆ドルもの資金をため込んだままだったが、海外所得への課税廃止で、米企業は海外留保資金を本国に戻して設備投資や企業買収に充てやすくなる。
国連貿易開発会議(UNCTAD)では、米国による連邦法人税率35%から21%の引下で、米国企業が海外に保有している1兆9,000億ドルに達する資金が米国本国に還流する可能性を指摘している。
ブラジルへの外資系企業による対内直接投資総額の22.0%に相当する1,000億ドルは米国企業の資産であり、そのうち380億ドルは金融部門向け投資、160億ドルは製造業部門、52億ドルは自動車関連産業向けとなっている。
今年上半期のブラジルへの対内直接投資トップは、オランダで19億ドルとなっているが、連邦法人税率の引き下げ並びに海外所得への課税廃止は、米国企業の海外投資戦略に大きな影響を与えているとブラジル米国商工会議所(Amcham)のDeborah Vieita会頭は指摘している。
またAmcham会議所の調査では、米国企業のブラジル向け投資は、米国の連邦法人税率の引下以外にも10月の大統領選挙シナリオに対する警戒感、構造改革の行方、不透明な民営化コンセッションなどの要因で、直接投資に慎重になっていることが判明している。
経済協力開発機構(OECD)が先週27日に公表したリポートによると、トランプ米大統領が実施した連邦法人税率の減税が、今年上半期に1,450億ドルに達する世界的な投資フローの大きな阻害要因に繋がっている。(2018年8月1日付けエスタード紙)