今年のラテンアメリカ経済はブラジルとコロンビアが牽引か

2018年のラテンアメリカ諸国の平均GDP伸び率は、米中貿易摩擦激化並びに国際コモディティ商品価格の低迷で、ブラジルのGDP伸び率1.30%を下回る1.20%増加が予想されている。

しかし2019年のラテンアメリカ諸国の平均GDP伸び率は、構造改革や公共投資活性化が期待されているジャイール・ボルソナロ新政権のブラジル並びにインフラ部門への投資拡大と法人税引き下げが予想されているコロンビアが牽引して、昨年の約2倍に相当する2.20増加が予想されている。

国際通貨基金(IMF)では、2019年のブラジルのGDP伸び率は昨年の1.30%から約倍増の2.50%増加を予想、今年のコロンビアのGDP伸び率は、2014年以降では初めて3.0%を上回ると予想、アルゼンチンは、昨年のGDP伸び率が2001年以降で最悪となるマイナス2.65%からマイナス1.60%に回復すると予想している。

アルゼンチンでは今年10月に大統領選挙があり、為替危機やコントロールの利かないインフレ、国際通貨基金(IMF)の500億ドル規模の救済が不発に終われば、クリスティーナ・キルチネル元大統領の復帰もの可能性も否定できなくなる。

今年のブラジルの経済成長が低迷するシナリオとして、ボルソナロ新政権の構造改革第一弾として予定されている年金改革向け政治工作の失敗による、年金改革の先送りが最大の焦点となっている。

Oxford Economics社のカルロソ・デ・ソウザ氏は、ボルソナロ新政権の経済政策リスクとして、市場競争を重視しながら,マクロ経済の安定化や人的投資などの政府の役割を再確認する市場志向的側面(マーケット・フレンドリーアプローチ)を指摘している。

またメキシコの昨年のGDP伸び率は2.19%、今年は2.52%増加が予想されているにも拘らず、昨年12月1日に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)次期大統領は、早々にメキシコシティ空港の代替施設の建設中止を発表して、投資家や企業経営者は先行き不安を抱いている。

また大統領選挙中のブラドール大統領候補は、財政プライマリー収支のGDP1.0% 以上の黒字並びに公共投資の活性化、公務員と給与カット、政府のブロクラシー軽減や汚職撲滅を公約して当選した。

ラテンアメリカ諸国では、ブラジル並びにメキシコに次いで経済規模の大きなアルゼンチンでは、今年のインフレ指数は50%に達した昨年の半分に相当する25.0%まで削減、天候異変による壊滅的な打撃を受けた農畜産物の輸出回復を謳っているが、経済回復は今年の最終四半期までずれ込むと予想されている。

またボリビアでは今年10月に大統領選挙が予定されており、エヴォ・モラーレス大統領の4期目当選若しくは2003年~2005年に大統領を務めたカルロス・メッサ氏の復帰の可能性が話題となっているが、GDP比7.5%に相当する財政プライマリー収支赤字並びにGDP比5.3%に相当する経常収支赤字、異常に高いドル通貨に対するボリビア通貨の是正をエコノミストは指摘している。

20011年から米ドルに対するボリビア通貨は6.9ボリビアーノ (boliviano)で推移しているにも関わらず、現実的な1ドルが10ボリビア―ノの貨幣価値を大幅に上回っていると社会経済研究センターのロベルト・ラセルナ氏は指摘している。

今年のペルー経済成長率は、GDP比4.12%増加と昨年の4.10%並みの伸び率が予想されており、昨年3月に就任したマルティン・ビスカラ大統領(Martín Vizcarra Cornejo)は、企業経営者並びに海外投資家の信頼を得ている。

パラグアイは、ラテンアメリカ地域では過去10年間で最も安定した経済成長率を達成しているものの、同国経済は隣国のアルゼンチン並びにブラジルとの貿易に依存、今年のGDP伸び率は昨年の4.44%並みの4.16%増加が予想されている。

昨年のチリのGDP伸び率はGDP比3.9%、今年のGDP伸び率は法人税引き下げによる投資部門活性化などの要因で、引き続きGDP比3.41%増加をFocousEconomics社のAlmanas Stanapedis氏は予想している。

2017年の財政収支赤字がGDP比4.5%、2018年の財政収支赤字がGDP比3.0%であったエクアドルは、国際コモディティ価格が低迷している石油の輸出に依存して経済が悪化しているために国際通貨基金(IMF)に対して、80億ドル相当の財政援助に駆け込む可能性がある一方で、レニン・モレノ・ガルセス大統領は、石油の国際コモディティ価格が1バレル当たり70ドルに回復するまで、中国政府に対して16億ドルのクレジットを検討している。

過去6年間連続で経済リセッションに落込んでいる今年のヴェネズエラのGDP伸び率は、昨年のマイナス18.0%を大幅に下回るマイナス5.0%が予想されているが、輸出の98%を石油に依存しているために、昨年の1日当たりの石油生産は140万バレル、今年は油田の生産性低下やメンテナンス不足で80万バレル程度に低下が予想されている。(2019年1月11日付けヴァロール紙)

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