先週25日にヴァーレ社所有のミナス州都ベロ・オリゾンテ市近郊のブルマジーニョの鉱山廃水用ダムの決壊事故が発生して、50人以上の死者や300人近い行方不明者に達する大災害が発生した。
昨日28日のサンパウロ証券取引所(Bovespa)のヴァーレ社の株価は24.5%下落、時価総額は先週末の2,897億レアルから2,187億レアルに下落して、1日で710億レアルの時価総額が喪失、ブラジルの証券取引所の最大の時価総額喪失記録となった。
ミナス州では2015年11月にサマルコ社のマリアーナ鉱山廃水用ダムの決壊事故発生で過去最悪規模の人身事故となり、有毒物質を含んだ濁流によるドーセ川流域一帯の環境破壊、漁業および農業への壊滅的被害が発生して、鉱山廃水用ダムの補強や保全対策が最重要課題となっていたにも拘らず、僅か3年後に同様の事故が発生した。
ラッケル・ドッジ検察長官は、マリアーナ鉱山廃水用ダムの決壊事故発生から僅か3年で同じ事故発生は、未然事故防止対策の不備で企業の刑事責任は免れず、早急な賠償金支払い確保のためにヴァーレ社の資産凍結や厳重な罰金などは不可欠と強調している。
2015年にマリアーナ鉱山廃水用ダムの決壊事故が発生したサマルコ社は、大手資源開発会社ヴァーレ社とBHPビリトン社の合弁会社であり、ヴァーレ社にとっては、再度の事故発生で企業責任が問われ、今後の企業活動に多大な支障きたすのは避けられない。
2015年に発生したマリアーナ鉱山廃水用ダムの決壊事故の影響で、ヴァーレ社の株価は50%以上下落したが、その後の株価回復でブルマジーニョの鉱山廃水用ダムの決壊事故発生前の株価は250%上昇していた。
ヴァーレ社にとってブルマジーニョの鉱山廃水用ダムの決壊事故による鉄鉱石生産への影響は殆どないにも拘らず、他の鉄鉱石鉱山の廃水用ダムの補強やメンテナンス、株価下落に伴う時価総額の減少、社会的信用問題喪失、配当金や取締役向けボーナス支給などの停止を余儀なくされる。
昨日28日、格付け会社フィッチは、ヴァーレ社の格付けを「BBBマイナス」への引き下げを発表。また既に裁判所はヴァーレ社に対して、賠償金支払いのために120億レアルに達する資産凍結を言い渡している。
鉱山廃水用ダムの決壊事故が起きた25日のブラジル株式市場は休場だったが、米国預託証券では25日のヴァーレ社の株価は8.1%下落、28日には18%下落して2017年12月以来の安値で引けた。
ニュヨーク市のRosen Law Firm並びにロサンゼルス市のThe Schall Law Firm,Wolf Popper e Bronstein、Gewirtz & Grossomanの各法律事務所では、ヴァーレ社の投資家に対する損害訴訟を既に準備している。
ヴァーレ社の47.74%の株式は海外投資家が擁しており、ブラジル銀行年金ファンド(Previ)並びに連邦貯蓄金庫年金基金(Funcef)、ペトロブラス従業員年金ファンド(Petros)などで構成されるLitelファンドは20.99%、国内投資家は13.24%、社会経済開発銀行(BNDES)傘下のBNDES出資会社(BNDESPar)出資比率は6.68%と主な株主で構成されている。
ヴァーレ社の従業員総数は7万3,596人、ブラジル以外では米国並びにカナダ、ペルー、チリ、オーストラリア、インドネシア、モサンビーク、ニューカレドニア、中国で事業を展開している。(2019年1月29日付けエスタード紙)