ペトロブラス石油公社は、完全買収までに天文学的な買収資金を投じた米国テキサス州のパサデナ製油所を二束三文に相当する僅か5億6,200万ドルで、米国石油メジャーのChevron社との売却交渉を完結した。
ペトロブラスがChevron社から受け取る売却総額5億6,200万ドルの内訳は、現金で2億1,200万ドル、残りの3億5,000万ドルは株式譲渡で支払われ、同社の売却終了で海外での石油精製事業から完全撤退する。
2005年1月にベルギー資本のトレーディング会社Astra/Transcor社がパサデナ製油所を4,250万ドルで買収、2006年9月にAstra社は、パサデナ製油所の50%を3億6,000万ドルでペトロブラスに譲渡した。
ペトロブラスは、2012年6月に残りの50%買収のために8億2,000万ドル支払、最終的に一般的には理解不能な総額12億4,900万ドルを投資して、パサデナ製油所を完全に買収していた。
またペトロブラスはパサデナ製油所の完全買収資金12億4,900万ドル以外に、2006年~2013年にかけて設備の近代化やメインテナンス、環境改善などに6億8,500万ドルの投資を余儀なくされていた。
しかし2006年のパサデナ製油所の買収後、2008年に減損処理として1億6,000万ドル、2009年に1億4,700万ドル、2012年に2億2,300万ドルを計上、総額5億3,000万ドルに達していた。
ペトロブラス石油公社の元取締役のパウロ・ロベルト・コスタ氏並びにネルソン・セルヴェロ氏は、パサデナ製油所買収時に1,500万ドルの賄賂をAstra Oil社に渡したと自白、買収価格は7億4,100万ドル上乗せされていた経緯があった。
パサデナ製油所は、ラヴァ・ジャット作戦の汚職問題に絡んでいる物件であり、2018年2月にペトロブラスによるバサデナ製油所の販売価格が低すぎるために、連邦会計検査院(TCU)の捜査対象になっていた。
有価証券取引委員会(CVM)は、2018年10月にジウマ・ロウセフ元経営審議会議長を含む12人に対して、パサデナ製油所の買収価格決定の不正を指摘していた。
パサデナ製油所の1日当たりのガソリン並びにディーゼルの精製能力は11万バレル、貯蓄能力は540万バレル、Pasadena地区は運河に接した物流拠点に最適のロケーションで、メキシコ湾への玄関口であるヒューストンシップチャネルに位置している。
ペトロブラスはプレソルト鉱区の石油・天然ガスのコア事業に資金を集中するために、2015年から海外資産売却で46億ドルを調達、海外での石油精製事業では日本並びにアルゼンチンから撤退、今回のパサデナ製油所売却で、海外での石油精製事業から完全に撤退する。
また石油配給事業では、パラグアイ国内での石油配給事業から撤廃、南米地域ではアルゼンチンやパラグアイ、チリでの自社資産売却進めている一方で、ウルグアイのガス供給事業、ボリヴィアでの天然ガス生産は継続。
海外での石油開発事業では積極的な自社資産売却を進めており、最近ではペトロアフリカ社の50%の株式を売却、米国のメキシコ湾でMurphy社とジョイントベンチャーを立ち上げて米国での石油事業を縮小した。
現在のペトロブラスの海外での原油生産は、米国のメキシコ湾を中心に1日当たり2万バレルとピーク時の16万8,000バレルの僅か12.0%まで減少、ウルグアイのガス供給事業、ボリヴィアでの天然ガス生産、アルゼンチンでの僅かな石油開発・生産は継続している。(2019年1月31日付けヴァロール紙)