異業種交流委員会(長野 昌幸委員長)主催の平上博泰氏の講演会、テーマ:「日雇い労働者」から「りんご経営者」を経て「ゴルフ場経営者」への道(ブラジルで成功する秘訣を聞き出す会)は、2019年4月3日午後6時から7時過ぎまで40人が参加して開催、初めに長野 昌幸委員長が開催挨拶で平上博泰氏の略歴を紹介、進行役はユーモア溢れる根岸誠副委員長が務めた。
初めに弟さんの平上文雄氏が出演した日本のドキュメンタリー番組「世界の村で発見!こんなところに日本人」のVTR上演で、平上家がサンタ・カタリーナ州の広大な農地で行っているリンゴ栽培やワイナリー事業、敷地が13ヘクタールで二世の奥さんと二人暮らしの住居を案内しながら移住時の苦労話などを語った。
平上博泰氏は小学6年中退で離婚した母親と3人兄弟でブラジルに移住したが、勉強しなくて済むとほんの子供だったので気苦労もなくブラジルの環境に溶け込めた。初めに入植したのは、パラナ州ウライ市のラミー栽培農場に日雇いとして、日の出から日没まで1日12時間労働。次いで同州アプカラーナ市の野菜農場で日雇いをしたが、農場主からブラジルで生活するには、フェジョンを食べなければならないと口酸っぱく言われたことが記憶に残っていると説明した。
次にサンパウロ州ボツカツ市の桃農園管理。新米移住者には土地分譲ができないと分譲地購入できずに、すぐに同州ジュンジャイ市に移転して桃農園の管理支配人となり、収穫期には寝る暇がないほど働いたが、母親の口癖で「他⼈様の仕事と思うな、自分の仕事と思ってやれ」と黙々と必死で働いた。
次にサンパウロ州マイリンケ市で農地購入、歩合制でも桃、プラムも栽培したが、栽培技術向上に専念。漸く1967年に14ヘクタールの土地を購入。1989年にコチア組合を脱退して、平上兄弟商会を設立した。
母親の教えとして、他⼈に使えておるときは自分の仕事と思ってやれば、 何時かは自分の物になる。“ なにくそ!” 糞にも良いのと良く無いのがあり。焼け糞、ええ糞は良く無いが、なに糞は良い。 人生は何時も上り坂、頂上に着いたと油断するな。「お前たち兄弟は右手と左手のようなもの。 父さんがいないので、二人で仲良く頑張らなければならないよ」といつも思い出しながら歯を食いしばって頑張った。
1970年代に入りサンパウロ近郊での狭い土地での農業に疑問を持ち、1971年に北伯地域のサンフランシスコ河流域バイア州とペルナンブッコ州の熱帯果実栽培視察に1カ月間参加したが、当時ブラジルのカリフォルニアとも云われ常に有望と思われたが、当地は想像もつかない程の貧困で、子供の教育を考えて再移住を断念した。
1972年かねてから後澤憲志博士の声掛かりであったサンタカタリーナ州のリンゴ栽培視察に、 コチア産業組合から十数人が出向き、カサドールやフライブルゴ、クリチバーノス等視察したが余り乗り気にならず、 最後にサン・ジョアキンの果実試験場(標高1400m)へ行きリンゴ樹の結実に目を疑ったが、土地は起伏状態、石だらけの岩山でどこに植え付け可能か途方に暮れていたが、後澤博士の「山や石は削り動かせられるが、気候は人間の力ではどうにもならない。」とのアドバイスで、サン・ジョアキンへの入植決定のいきさつを説明した。
しかし1974年に入植、 20ヘクタールを作付したものの最初の数年間は収入が無く サンパウロからの送金や当地でのジャガイモの種苗栽培で乗り切る。その後徐々にリンゴ、桃、プラム、キウイ等を拡張し、1978年度にコチヤ産業組合に見切りをつけて脱退して土地を購買、金融等を自力で行う。現在は300ヘクタールでリンゴ栽培してサン・ジョアキン市の発展に貢献している。
現在の平上博泰氏の教訓として、若い時の苦労は買ってでもせよ!自分の生涯は人生の学校で卒業は無い!年齢は60歳でストップ、付き合いは自分よりも年少者と!肝に銘じて邁進している。
サン・ジョアキン地域のブドウの特徴として、海抜が1300メートル以上と高く、収穫期間が他の栽培地域よりも1カ月間遅いために23度まで糖度が上昇する。またワイナリーにも微量投資して、日本にワインを輸出した経験はあるものの、100年のスパンでの投資ができなければ投資回収は難しいと説明。
サンパウロ市から西方のカステロ・ブランコ街道51キロ地点に300 ha の用地を購入して、バイーア州のIlha de Comandatubaゴルフ場を設計したアメリカ人のダンブランケン氏の監修でVista Verde Golf Clubを造成したが、分譲地の販売は未だ開始していないと説明。最後に講演に関したクイズ問題では参加者全員が足元を掬われて笑い転げていた。講演後には、平上博泰氏差入れのワインや非常に大きくて糖度の高いフジや軽食をつまみながら非常に楽しい懇談会となった。
講演中の平上博泰氏
開催挨拶を行う異業種交流委員会の長野 昌幸委員長
平上博泰氏の移住の苦労話に感銘を受ける参加者
講演後の懇談会では参加者全員で記念撮影