政策対話委員会(佐藤真吾委員長)労働ワーキンググループ(山崎一郎グループ長)主催の「労働組合と労使交渉」セミナーは、2019年4月16日午後4時から5時30分まで40人以上が参加して開催、司会は山崎一郎グループ長が務めた。
講師は名コンビのFator法律事務所のダグラス・マイア弁護士がポルトガル語で説明、佐藤ジルセウ弁護士が日本語に翻訳して説明、初めにダグラス・マイア弁護士は、ブラジルでの労働組合の成り立ちとして労働組合の初期では、1888年の奴隷解放、1989年の共和国宣言などの歴史の変化並びにヨーロッパ移民の影響を受けた。ヨーロッパ移民は労働者の権利が比較的保証されていた母国の経験を踏まえて労働者組織を作った。その後バルガス政権から民事政権の移行期間には、ブラジルン組合は政治色の色濃い労働者グループによって組織され、バルガス政権誕生で労働組合は政府の統制下に置かれ、1930年に労働省設立、1934年に労働法(CLT)制定、次いで社会保障院(INSS)の設立。労働組合運動は1964年の軍事クーデターで中断、再び政府の統制下に編入された。
1970年代後半にはサンパウロ州内工業地帯でストライキ運動、組合運動も表舞台に登場して統一労働者連合(CUT)や労働者党(PT)の設立、大統領直接選挙を求めるDireta Ja運動へと繋がった。
民政化とともに制定された1988年憲法は組合運動の自由化、公務員の組合参加が承認された一方で、バルガス時代の遺産として組合費の義務的徴収や単一組合制度が組み込まれた。また組合所属制度並びに特別職業カテゴリ―についても説明した。
1943年の制定以来実に74年ぶりとなるブラジル労働法の改正は、2017年11月11日から施行され、労働組合費の支払い義務から任意支払いへの移行で、一連の労働組合の組合費徴収額は80%以上減少。多くの労働組合では、労働組合費収入の大幅減少に伴って労働組合所属の職員削減、組合支社数削減、社用車や組合員のみが利用可能なリゾート地に擁するリゾートホテルの不動産売却、組合の合併などを説明した。
また社員が200人以上の企業による労働者代表委員会の形態や目的、裁判外合意件数の推移、労働組合の今後などについて説明、質疑応答ではBoletoの支払い拒否、雇用者組合、組合の力の復帰の可能性、労働者組合委員会での問題発生、特別労働者の雇用比率などが挙げられた。
ホンダのリカルド・キタジマ氏は「ブラジルに於ける労働組合との交渉」と題して、ブラジルの自動車メーカーと労働組合では地方労働組合との関係、実質賃金交渉、交渉の内容や力関係、経験則に於けるアドバイスについて説明した。
労働ワーキンググループセミナー「労働組合と労使交渉」Fator弁護士事務所(2019年4月16日)
左からFator法律事務所の佐藤ジルセウ弁護士/ダグラス・マイア弁護士
左から講師のホンダのリカルド・キタジマ氏/Fator法律事務所の佐藤ジルセウ弁護士/ダグラス・マイア弁護士