省間の対立でコンセッショネアの事業権返還に関する政令の告知が足踏み

 経済省とインフラ省の間で意見が対立していることから、空港と高速道路の民間事業主が問題を抱えるコンセッション契約に関連した事業権を友好的な方法で連邦政府に返還することを認める政令の告知が足踏みしている。減価償却前の投資に関する補償をコンセッショネアが受ける権利に関する見解の相違が原因で、取り組みが空転しているのだ。

 インフラ省らが中心になってまとめた法案の文言について経済省のスタッフは、公的枠組みによって常に恩恵を受けることになる無責任ともとれる応札条件で事業入札の落札業者となった国内グループに関連し、外国人投資家に間違ったメッセージを与えかねないと受け止めている。

 パウロ・ゲデス経済大臣の側近らは、契約を履行しない事業者へのこうした寛容さを、コンセッション契約における「モラル・リスク」と呼んでいる。仮にこの慣行が維持されれば、推進しようとされている意欲的な民営化計画に対して、プライベート・エクイティ・ファンドと年金ファンド、政府系ファンドなど新しい外国人投資家の関心を呼び起こすことは難しい。

 ボルソナロ政権が発足して数週間という早いタイミングで、インフラ省とパートナーシップ投資計画審議会(PPI)の中核メンバーが、この問題に関する大統領令の起草を加速させることを希望した。14箇条からなる素案は2018年の段階で完成した。この大統領令が施行されなければ、ミシェル・テーメル前大統領が裁可した法律にも、実効力が発生しない。同大統領は契約義務の不履行に陥っているコンセッショネアが直面する問題を解決するために、2017年6月の法律第13,448号(Lei 13.448)に署名した。これは、業界監督庁が延々と進めている失効手続きをより迅速にする代替案のひとつを模索する内容である。

 テーメル大統領は当時、この政令に自身が署名すること、そして港湾令で発生したように特定の民間のグループを優遇したと告発されないかという懸念を公の場で表明している。この港湾令は、ロドリマル者への利益供与だとして連邦検事総長(PGR)が、裁判所に大統領を告発している。結果として、法律の規制が効力を持つことはなかった。

 ヴィラコッポス国際空港(サンパウロ州)を運営するコンセッショネアと、ブラジリアとミナス・ジェライス州ジュイス・デ・フォーラを結ぶ国道040号線(BR-040)を運営するコンセッショネアは、既に、公の場でコンセッション契約の解消を正式に要求している。UTCとトリウンフォで構成するヴィラコッポス国際空港のコンセッショネアは、民事再生中である。国道040号線のコンセッショネアは、インヴェパルが親会社だ。トリウンフォは外にも、コンセブラの事業権返還の意思があることも表明している。     コンセブラは、連邦区とゴイアス州、ミナス・ジェライス州に及ぶ総延長1,176kmの、国内最大の高速道路コンセッション事業である。

 インフラ省は、減価償却前のすべての投資をコンセッショネアに補償するための価額計算メソッドを確立すべきという。この支払いは、当該資産の再事業入札で確保した事業売却益を資金源にし、会計監査後に示された実際に行われた投資額(資産の簿価)のすべてを考慮する。ヴィラコッポス国際空港と国道040号線の2事業だけでも、投資額の合計はざっと40億レアルを上回ると推計されている。

 一方、経済省はこうした考えに異議を唱える。この問題の本質について経済省は、これがブラジルの建設会社の手口であり、事業入札で落札業者になった後に契約条件を再交渉しようとする慣行だと位置付ける。コンセッション事業の多くで赤字体質にあるという特徴が示されているものの、パウロ・ゲデス経済大臣の補佐官らは、当該企業がすでに、契約の「関連会社」としてすでに利益を得ていると認識している。言い換えると、コンセッショネアの工事で関係する建設会社が受注している、ということである。

 ヴィラコッポス国際空港の場合、新規ターミナルのインフラを立ち上げるため、UTCのコンストランとトリウンフォと請け負い契約を交わしている。国道040号線の場合、支配会社の経営パートナーであるOASと契約を交わしている。こうしたことから、空港では159%に達する権利金へののれん代、高速道路では通行料金として定められた最高額に対して61%に達する割安な条件の提示という無責任な応札条件は、投資に関連して相殺されたというのが経済省の立場だ。

 ゲデス経済大臣のスタッフは、資産の簿価についても「減損」が考慮され、回復可能な投資を反映させるべきだと主張する。少し具体的に言えば、ヴィラコッポス空港の価値は、ターミナルにあるのでも滑走路にあるのでもなく、これらに関連して発生するキャッシュ・フローなのだという意見である。

 経済省のこうした考えは、資産の再事業入札を「負の価額」で実施することもあり得ると示唆する。例えばこうだ。現在の通行料金と工事の日程という現行の契約条件を維持するとして、投資家は、国道040号線の事業を引き受けるのに5億レアルを受け取る場合に限って関心があると申し出るような状況だ。その場合、キャッシュ・フローのリバランスを目的に通行料金は上昇するか、あるいは、工期を希釈することになる。そして資産の返還に対して責任があるインヴェパルには、何らの補償も行われない。実際のところ、この支払い額を規定するのは市場になる。

 経済スタッフの補佐官の1人は、予算が破綻し当初の計画を大幅に上回る事業費が吸い込まれていったパラー州のベロ・モンテ水力発電所のケースを、皮肉を込めて振り返る。「水力発電所の事業主が国家電力庁(Aneel)に出向き、事業権を返還したいから350億レアルを受け取りたいと言うのを想像したらどうだろう。みんな、そいつの顔を眺めて笑うだろう。だがそうやって笑えるのは、業界規定があるからだ。電力業界向けの、非常に盤石なものが」とこの人物はコメント。その上で、「日和見主義者に対して大目に見ることはないという明確なサイン、契約は厳格に尊重されなければならないという明確なサインを、市場に示す必要がある」と付け加えた。タルシジオ・フレイタス・インフラ大臣のスタッフらは、空港事業入札と南北縦断鉄道事業入札の成功に勢いづいており、こうした側面は確かに考慮すべきであるとしつつも、コンセッション契約の友好的な、つまり頭痛のタネになりにくい形での解消が不可能な状況になりかねないことを懸念する。いずれにせよ事業入札が再実施されるまでコンセッショネアは事業を継続し、かつ、これが終わりのない司法問題に発展するのを回避しなければならない。(2019年4月23日付けバロール紙)

 

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