対中輸出が4月に42%拡大した。過去には、2005年の鳥インフルエンザでブラジルは世界最大の鶏肉生産国になった経緯がある。
アフリカ豚コレラ(ASF)の発生に伴い中国では2018年8月から1億5,000万頭から2億頭の豚を殺処分しており、世界最大の豚肉生産国かつ消費国ある中国では35%の減産につながった可能性があり、ブラジル経済にもその影響が出始めている。2019年4月にブラジルは、中国に対して3,580万ドルの豚肉を輸出した。月間の輸出額としては、1997年に始まった統計史上最高額となる。またサンパウロ大学ルイス・デ・ケイロス農業高等専門学校応用経済先端研究センター(Cepea/Esalq)によると、2018年4月の水準と比較すると42%の増加。
Cepeaのアナリスト、マリステラ・デ・メロ・マルチンス氏は、「豚コレラにより供給が縮小しているため、中国は、豚肉と鶏肉の輸入を急激に引き上げている」という。2月以降、中国は、サウジアラビアを追い抜きブラジル産鶏肉の最大の輸入国になっている。4月に中国の豚肉輸入と鶏肉輸入は、ブラジルの豚肉輸出全体の28%、鶏肉輸出全体の11.5%を占め、主要輸出先国としての地位をより強固なものにした。
鶏肉と豚肉の生産チェーンをまとめるブラジル動物蛋白協会(ABPA)によると、この2品目の輸出拡大の影響について、どの程度の規模になるのか現時点では予測は出ていないという。同協会のフランシスコ・トゥラ会長によると、鶏肉は生産サイクルが短いため、需要には迅速に対応しやすいという。一方、中国人1人当たりの年間豚肉消費量は40kgだ。
2018年にブラジルが輸出した鶏肉は64万6,000トンで、EUとアメリカ、カナダに次ぐ第4位の輸出国だった。2019年には輸出量が90万トンに達すると期待されている。だが、ブラジルには輸出急増を妨げるいくつかの要因がある。
肥育
最初の要因は、豚の生産サイクルそのものが長いこと。種付けから生まれた子ブタが最初に屠畜可能になるまでに、ほぼ1年を要する。第2の要因は、中国が調達するのは輸出資格のある食肉会社が生産した製品に限られるということだ。現時点で中国への輸出が認可されている食肉処理場は、わずか9か所である。
「この問題は、ブラジルにとっては大きなチャンスになる。なぜなら、中国では豚肉生産が従来の水準に回復するまでに2年から3年を要すると見られるからだ」と、トゥラ会長は言う。同会長によると、2005年の鳥インフルエンザでは、ブラジルが世界最大の鶏肉輸出国へと変貌した。トゥラ会長は、豚肉においてもブラジルは、コスト面で競争力を備えており、過去の歴史を繰り返す可能性があるという。
豚コレラが中国とその他のアジアの国々で猛威を振るっている間、国内最大の生産地帯であり輸出地帯であるサンタ・カタリーナ州の養豚業者は、高値を存分に謳歌することになる。2月以降、食肉会社の系列外の独立系生産者に対する報酬は、33%も増加している。一方、サンタ・カタリーナ州豚肉生産者協会のロジヴァニオ・ルイスデ・ロレンジ会長によると、食肉会社の系列の生産者は、価格をおよそ20%引き上げた。
「中国で発生しているこの問題の影響を我々は享受しており、今後数か月で価格が高騰すると確信している」とロレンジ会長は言う。同協会は、州内で8,000人の養豚業者をまとめる。サンタ・カタリーナ州コンコルジア市で生産者に対して親豚を供給するスルヴィ農場のオーナー、クライル・ルザ氏は、過去2年間は需要の落ち込みと業界の低迷で老齢の親豚を利用していたこともあり親豚の半数を屠畜に回した時もあると話す。「生産者らは親豚グループを刷新させなかった」と、同氏は言う。
だが今、豚の販売拡大に農場は親豚の屠畜を見合わせている。過去60日で、問い合わせは30%から40%拡大しており、親豚の価格も20%から30%増加した。「誰かの不幸は別の誰かの幸運なのだ」と、中国における豚コレラで生産者が確保している利益についてルザ氏は言う。
もうひとつの側面
同じく、この問題はインフレにも影響している。ゼツリオ・バルガス財団(FGV)によると、豚肉の卸売価格、は2019年5月に入ってからだけで、17.09%も値上がりした。
中国で危機に陥っている豚肉生産のもうひとつの側面が、豚の飼料に使われるブラジル産大豆(粒)輸出の縮小だ。大豆業者をまとめるブラジル植物油脂工業会(Abiove)によると、業界は2019年に大豆輸出額が21億ドル減少すると予想しているという。(2019年5月12日付けエスタード紙)