経済リセッション開始5年後の全ての産業は回復途上

2014年第2四半期から始まったブラジル国内の経済リセッションは既に5年を経過しているにも拘らず、すべての産業部門も生産は経済リセッション以前の水準を下回っている。

特に今年3月時点の建設部門生産は、経済リセッション開始の2014年第2四半期よりも26.5%下回っており、2014年末に連邦警察の特別捜査「第7次ラヴァ・ジャット作戦」の開始でゼネコン大手オデブレヒト社やカマルゴ・コレア社など一連のゼネコン企業は、罰金や課徴金支払いのため自社資産売却を余儀なくされ、またインフラ整備事業の入札参加を禁止されて壊滅的な打撃を蒙って企業の存続問題に発展していた経緯があった。

今年3月時点の製造業部門生産は、経済リセッション開始の2014年第2四半期よりも16.7%減少、サービス部門は11.7%とそれぞれ依然として二桁減少、小売部門は5.8%減少している。

また今年3月の失業者総数は1340万人と2014年3月末のよりも91.0%増加、GDP総額は2014年3月末のよりも4.9%減少、一人当たりのGDP も8.8%減少している。

製造業部門の平均設備稼働率は76.4%と2014年3月末のよりも5.6%減少、2010年のピーク時よりも10.0%減少しており、製造業部門向け投資が大幅に落ち込んでいる。

元中銀総裁でエコノミストのセルソ・パストーレ氏は、過去2年間でブラジルの一人当たりの平均GDP伸び率は僅か0.3%増加に留まっており、今年は昨年の水準に留まると予想、今年末の一人当たりのGDPは経済リセッション前の8.0%減少を予想している。

2020年以降のブラジルの年間平均GDP伸び率が2.0%増加を記録すれば2026年には経済リセッションの水準に戻るとパストーレ氏は説明、1988年の経済危機からの回復には9年間を要したと説明している。

ジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)エコノミストのクラウジオ・コンシデラ氏は、ジャイール・ボルソナロ新政権の不必要な政治発言や未熟な政治工作の影響で、年金・恩給改革の国会承認の遅れで国内外の投資家の投資意欲を削いでいる。

ジャイール・ボルソナロ新政権の不慣れな政治運営で、年金改革をはじめとした構造改革が大幅に遅れている上に、米中貿易摩擦の炎上で世界経済の縮小、今年1月25日のヴァーレ社ミナス州ブルマジーニョ鉱山のフェイジョン1鉱滓用ダムの決壊事故発生の影響による今年のブラジルの鉄鉱石生産は前年比6.5%減少、アルゼンチンの為替危機による自動車輸出の大幅な減少もブラジル経済の足かせになっているとコンサルタント会社テンデンシアス社のアレサンドラ・リベイロ氏は指摘している。(2019年5月20日付けエスタード紙)

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