ブラジル農牧調査研究公社(Embrapa)では、1970年代からセラード地帯の土壌や気候に適応した小麦の品種改良を手がけているが、セラードはブラジル中西部から北部に分布するサバンナ地帯であり、そのアルミニウムを含むやせた強酸性土壌は農耕には不適とされていた。
アルゼンチンからの小麦輸入では生産の不安定や政治的な問題も絡んでブラジル政府の頭痛の種であったが、収穫期が6月~7月と端境期に当たるために価格が高い有利さも備えている。
日本政府がこれまで手がけた数多くのODAプロジェクトの中でも、ブラジル政府が主導したセラード農業開発事業への大規模な技術協力と資金協力が並行して実施、資金協力は「日伯セラード農業開発協力事業」(プロデセール)と呼ばれ、開発の最前線では多くの日系人が事業に参加した。
相次ぐ小麦の品種改良で灌漑施設がない標高の高い乾燥地帯でも小麦栽培ができ、2019年のゴイアス州の小麦栽培面積は記録更新、ミナス州並びにバイア州でも小麦栽培を奨励している。
ミナス州小麦生産者協会(Atriemg)のエドアルド・エリアス・アブラヒム会長は、昨年5月中旬のセラード産の1当たりヘクタール当たりの小麦の純益は1,000レアル、1トン当たり1,200レアルとパラナ州産600レアルの2倍に達したと説明している。
昨年のミナス州の小麦栽培面積は8万ヘクタールであったが、今年は10万ヘクタールに拡大、ゴイアス州は1万3,000ヘクタールから3万ヘクタールと2倍以上、バイア州並びにブラジルア連邦直轄地では小麦の栽培用種子不足が懸念されている。
昨年のセラード地帯での小麦栽培は降雨に恵まれて1ヘクタール当たり平均35袋を収穫、灌漑施設のある小麦栽培は100袋に達した一方で、設備コストが非常に高い。
今年のバイア州の小麦生産は昨年同様の3万トン、ゴイアス州は昨年の7万200トンから11万800トン、ブラジリア市は9,400トンから1万1,400トン、ミナス州は20万7,200トンから21万400トン、今年のブラジルの穀物生産は前年比0.7%増加の550万トンを国家配給公社(Conab)では予想している。
バイア州の1ヘクタール当たりの小麦生産は6,000キログラム、ゴイアス州5,514キログラム、ブラジリア市3,787キログラム、ミナス州は2,514キログラムと灌漑施設の有無で大きな開きが出ている。(2019年5月28日付けヴァロール紙)