メルコスールと欧州連合(EU)が最終的に、長期に及んだ折衝を終結させ、自由貿易協定(FTA)の合意に至った。両経済圏を合わせると、GDPは19兆ドル、人口7億5,000万人の市場が誕生する。
今回のFTAは、欧州市場に対してブラジルの輸出品のアクセスを拡大し経済を活性化させるという理由から、ブラジルの歴史上で最も重要な通商協定である。同時に、ブラジルの工業製品に対する最大のサプライヤーに市場を開放することになり、競争力を確保するための構造改革の加速も求められることになる。
ブラジル企業にとって特恵待遇でアクセス可能な国際市場が現在の世界の輸入の8%から25%に引き上げられるため、EUとの市場の統合はブラジルにとり、国際貿易における重要国との同盟関係に向かって一歩、前に踏み出したということである。
EUが農産物市場をどこまで開放するかにもよるが、全国工業連合会(CNI)は、今回の合意でブラジルの対EU輸出がほぼ100億ドル増加すると試算している。
ブラジルの製造業にも、ダイナミックなプラス面がある。例えば、EUへの農産物輸出の拡大はブラジルの工業部門にもプラスの波及効果をもたらす。というのも10億レアルを輸出するごとに、国内では鉄鋼業界や化学業界、機械・設備業界などでおよそ3億レアルの工業製品が消費されるという相関関係があるためだ。
今回の協定ではさらに、衣料から化学品、さらには航空機に至るブラジルがEUに輸出する工業製品に対して現在2.5%から17%で設定されている輸入税率をゼロに引き下げる。その上で、現在のEUに対する輸出額の56%が、工業製品だという点は強調しておくべきだろう。
市場へのアクセス以外にも、今回の合意には、2経済圏の間で通商を促進することとブラジル国内のビジネス環境の近代化を促す規定が存在する。財の輸出入に対する煩雑な行政手続きの簡略化するため、さらに、技術規定に対応するため、政府調達市場を開放するため、そして、貿易に対してこれまで以上に中小企業が参画するのを促進するために、対応を進めることが重要となる。
国内の競争激化は、否応なく国内改革を深化させる。だが貿易協定を通じたブラジルの経済開放は緩やかなものでブラジルの財界にとっても予測可能となり、最長で10年間にわたり段階的に、生産チェーンの論理に従って進められる。
市場が突然解放されるようなことはなく、ブラジルには、前例のない貿易協定で得るものがあるよう確かな政策を計画して導入するために活用できる時間が与えられるだろう。こうした状況ではあるが、企業は、今後数年間に自社の事業モデルに貿易協定が与える影響への予防的な準備に注意深く対応すべきである。
戦略的交渉によってまとめられた貿易協定は、ブラジル経済の3つの産業に対する投資回復に欠くことができない。だが潜在的な可能性をフルに実現できるかどうかは、これらの協定の内容とブラジルの競争力を高める国内の各種改革の行動計画の練度に左右されるだろう。(2019年6月29日付けエスタード紙)