今月10日下院議会本会議で第一回新社会保障年金改革案の採決が行われ、最低可決に必要な下院議員513人のうち308票を71票上回る379票の賛成票を獲得して可決、下院本会議での第二回新社会保障年金改革案の採決及び上院議会での2回の採決は8月以降に延期されたが、新社会保障年金改革法案の国会での承認は確実と楽観視されている。
約5カ月間を要した下院議会本会議での第一回新社会保障年金改革案の承認の一方で、連邦政府や地方政府(州・市)の公社民営化の並行して行われており、ボルソナロ新政権下の4年間で公社民営化プログラムが成功すれば最大4500億レアルの資金調達に結び付く。
この公社民営化プログラムには、連邦政府の直接及び間接的な資本参加を含む132連邦公社の民営化が予定されており、2回のプレソルト鉱区の石油・天然ガス入札は今年末までの実施が予定されている。
また公社民営化プログラムには、公社民営化並びに公社資産売却、公社の資本参加株式の売却、社会経済開発銀行(BNDES)の投資管理会社であるBNDES出資会社(BNDESPar)の1,437億レアルに達する持ち株売却も含まれている。
今年1月にダヴォス会議に出席したパウロ・ゲーデス経済相は、公社民営化プログラムによる連邦政府の臨時歳入は7,000億レアル~8,000億レアルに達すると楽観視している。
しかし経済省民営化・資産売却担当のSalim Mattar長官は、ジャイール・ボルソナロ新政権1年目の今年の公社民営化プログラムでは、公社の持ち株放出を加速させると説明、公社民営化プログラムによる臨時歳入を6,350億レアル、入札及び不動産売却で1,150億レアルを見込んでいる。
金融市場関係者の連邦政府による公社民営化プログラムによる臨時歳入予想として、ブラデスコ銀行BBIでは4,700億レアル、スイス・クレジット銀行では4,000億レアルを見込んでいる。
社会経済開発銀行(BNDES)は、1999年以降で99公社に達する民営化オペレーションを実施した結果、連邦政府には545億ドルの臨時歳入に繋がっていた。
またミッシェル・テーメル政権時には、124件の民営化プログラムで464億レアル(120億ドル相当)に達する臨時歳入を記録、そのうち280億レアルは石油関連公社の民営化であった。
現在の連邦政府の直接コントロール下にある連邦公社は46公社、そのうち国庫庁のコントロール下にあるのは18公社、また間接コントロール下(子会社)にある連邦公社は88公社、そのうちペトロブラス石油公社の子会社は35公社、ブラジル中央電力公社(Eletrobras)は30公社、ブラジル銀行は16公社、連邦貯蓄金庫は3公社、社会経済開発銀行(BNDES)は3公社、郵便公社は1公社を擁している。
民営化プログラムでは、連邦政府の直接コントロール下にある連邦公社を12公社まで削減、そのうちペトロブラス並びにブラジル銀行、連邦貯蓄金庫、社会経済開発銀行は国庫庁の支配下に入らない。
イタマール・フランコ政権時の連邦公社総数は145連邦公社、フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ政権時は、前政権よりも39公社削減の106連邦公社に縮小した。
しかし労働者党(PT)のルーラ政権並びにジウマ政権では、前政権よりも48公社増加の154公社に増加したが、テーメル政権下では20公社削減して134公社に減少、ジャイール・ボルソナロ政権では、134公社の内122公社民営化で僅か12公社まで削減する予定となっている。
今年1月1日のジャイール・ボルソナロ政権誕生時の今年の民営化プログラムでは年内に760億レアル(200億ドル相当)の民営化を発表したが、今年上半期の民営化による臨時歳入は540億レアル(141億ドル相当)、そのうち483億レアル(126億ドル相当)は公社民営化並びに資産売却、新規株式公開(IPO)、57億レアル(15億ドル相当)は民営化コンセッション収入となっている。
今年2月27日には連邦貯蓄金庫は、ブラジル再保険院(IRB Brasil Re)の8.9%に相当する持株を25億レアル(7億ドル相当)で放出。3月8日にはペトロブラスはパラグアイに擁する燃料配給会社の持ち株放出で16億レアル(4億ドル相当)を調達している。
また5月1日にペトロブラスは、完全買収までに天文学的な買収資金を投じた米国テキサス州のパサデナ製油所を二束三文に相当する僅か20億レアル(5億ドル相当)で、米国石油メジャーのChevron社に売却している。
連邦政府は、天然ガス市場の民営化を促す「ガス新市場プログラム(Programa Novos Mercado de Gas」を発表、ペトロブラス石油公社が川上から川下まで独占している天然ガス市場開放を発表した。
このガス新市場プログラムにはガスパイプライン並びに液化天然ガス(LNG)ターミナル、天然ガス製油所など国内外の投資家に開放して、一般家庭向けプロパンガスの価格引き下げや大口製造業向け天然ガス価格引き下げによる競争力の強化を図る狙いがある。
6月13日にペトロブラスは、ボリヴィアで生産される天然ガスをブラジルまで輸送するガスパイプライン事業Transportadora Brasileira Gasoduto Bolivia-Brasil(TBG) の51%の株式を331億レアル(86億ドル相当)を売却している。
また6月26日に、連邦貯蓄金庫はペトロブラスの普通株2.3%の放出で73億レアル(19億ドル相当)を調達、6月28日にはブラジル銀行はNeoenergia社の9.35%の持ち株売却で18億レアル(5億ドル相当)を調達、今年上半期の民営化プログラムの公社民営化並びに資産売却、新規株式公開(IPO)で483億レアル(126億ドル相当)を調達している。
ジャイール・ボルソナロ新政権誕生後6カ月間での民営化プログラムは社年度目標の71%に相当する540億レアル(141億ドル相当)の資金調達を達成、下半期には残りの29%に相当する220億レアル(59億ドル相当)の資金調達で目的を達成する。
ジャイール・ボルソナロ政権が終了する2022年までに、民営化プログラムの公社民営化並びに資産売却、新規株式公開(IPO)の12オペレーションで3,067億レアルの資金調達、鉄道や道路などのインフラ整備部門並びに石油・天然ガス、電力エネルギーなどの12回の入札で1,763億レアルの資金調達が見込まれている。
公社民営化並びに資産売却、新規株式公開(IPO)の12オペレーションの内ペトロブラス公社関係は総額795億レアル、社会経済開発銀行(BNDES)関係は1,437億レアル、連邦貯蓄金庫は372億レアル、ブラジル銀行は217億レアル、連邦政府の持ち株放出などで246億レアルが見込まれている。
また石油・天然ガス入札で1,143億レアル、道路関連インフラ整備入札で1,153億レアル、鉄道関係入札で405億レアル、電力エネルギー入札で205億レアルの臨時歳入が見込まれている。(2019年6月14日付けエスタード紙)